白い死神   作:フラット床

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4話

「つまり、なのはには物体の壊れやすい部位を視る力があって、それで暴走していてジュエルシードを壊して停止させた…ってことなの?」

あのあと現場にジュエルシードを回収しに行ったものの、結局()を突いたジュエルシードは砕けてしまっていたためユーノに説明を求められてしまった。とりあえず詳しい説明は避けて前述のように()()を視てモノを壊せることだけを教えた。

「まあ確かにあの樹は一刻も早く消滅させるべきだったし、あの距離でジュエルシードを封印するのは難しいことだったけど…一応研究のために輸送してきたわけだし、結果的にそうはならなかったとは言え魔力が暴走して次元震が発生する危険もあるから、もうなるべく壊さないでね」

「善処します…」

「それにしても物を壊す眼かぁ、聞いたことはないけどレアスキルってことかな」

「レア…スキル?何それ?」

希少技能(レアスキル)とは読んで字のごとく普通の人は持っていない稀少な技能(スキル)のことらしい。超能力のようなものだろうか。

(珍しい力で済ませるにはちょっと物騒すぎる気もするけどね…)

 

 

鳴り響いたアラームを一瞬で止める。このところの寝起きはとても良かったが、今日は思い出したと言わんばかりに調子が悪い。そのまま忘れてれば良いのに…、と寝ぼけた頭で愚痴りつつ布団に引きこもりをきめる。

『なのは、今日は友達の家に行くんでしょ?そろそろ起きなくちゃ』

「…はーい…今起きます…」

ユーノの念話(モーニングコール)に不服感ををあらわにしつつ――自分で頼んでおいた癖に――しぶしぶといった体で起き上がる。今日は兄の恭也と共に月村家へと出かけることになっていた。

『もしかして体調が良くないの?それなら無理はしない方が…』

「ううん大丈夫、ちょくちょくなる…っていうかここのところ調子良かっただけでいつもこうだから」

『そうなんだ…いや、それはそれで大丈夫なの…?』

 

結局準備に時間がかかりギリギリでバスに乗ることになったがそれ以外は問題なく月村家に到着した。インターフォンを鳴らすと内側からドアが開けられる。

「恭也様、なのはお嬢様、いらっしゃいませ」

「あぁ、お招きに預かったよ」

「こんにちは」

二人を出迎えたのは月村家メイド長のノエルだ。口数は少ないが仕事はきっちりこなす格好いい系の美人である。そのまま中へと通されるとすでに来ていたアリサとすずか、すずかの姉の忍がいた。高校時代からの恭也の恋人だ。そばに控えるのはすずかの専属メイドでありノエルの妹のファリン。明るくて優しい…が、よくドジを踏む。おまかせでお茶を頼むとメイド二人は準備のために退出していき、忍と恭也は部屋に行くとのことでなのはたちはそのままテラスでお茶会を始めた。

「相変わらず、すずかの家は猫天国よね」

「あはは…でも、子猫かわいいよね…私には近寄ってこないけど」

「うちの子達人見知りはしないんだけどなぁ…」

基本的に動物の方から私に近寄ってきたためしは無い。動物は感覚が鋭いというし、おそらく()の事を察知して警戒して近寄ってこないのだろう。

「里親が決まってる子もいてお別れもしなくちゃいけないんだけど…」

「そっか…少し寂しいね」

「でも子猫たちが大きくなっていってくれるのは嬉しいよ」

そんな他愛もない話題で談笑していると、思い出したようにアリサが言った。

「ま、見たところ今日は元気そうね。良かったわ」

「へ?」

「最近なのはちゃん何か悩んでるみたいだったから」

どうやらふたりがなのはを誘ったのは、最近なのはの元気がないように見えたかららしい。ジュエルシードまわりの悩みが自分でも気づかないうちに態度に出てしまっていたようだ。

「悩んでる事が有るなら相談しなさいよね、友達なんだし」

「私たちにもできることが有るかもしれないから」

「アリサちゃん…すずかちゃん…――っ!」

不意の違和感。空気を読まない、いやある意味完璧なタイミングで訪れたそれはもうすっかり慣れてきた感覚。魔力の反応だ。

『なのは!ジュエルシードだ!』

『うん!…でもどうしよう、二人が…』

『……そうだ!後から追いかけてきて!』

言うが早いか鳴き声をあげながら森へ向けて走り出すユーノ。コレを理由に追いかけろと言うのだろう。

「あら?ユーノ、どうしたのかしら」

「あー、何か見つけたのかも。ちょっと探してくるね」

声を掛けてくる二人に一人で行くと押しきり急いでユーノと合流する。現場に向かううちに反応が強まった。ジュエルシードが発動したようだ。人目につくことを避けるためにユーノが結界を張り、ジュエルシード発動の光を見れば。

 

「………なにあれ」

 

見上げるほどの大きな子猫がいた。ただ大きくなっただけに見える子猫は暴れる様子もなくのんきににゃーにゃー鳴いて居る。しかし軽くはあるがいつもどおり頭痛がするのでこの子猫がジュエルシードによるものであるのは確定だろう。

「たぶん、あの子猫の"大きく"なりたいって言う願いを"正しく"叶えたんじゃないかな…」

なるほど暴走もしなければ願いも叶っている。これこそまさしく正しい願望器の使い方…

「――ってなるか!!はぁ、とにかくこのサイズで放っておくわけにも行かないし、早いところ封印を…」

レイジングハートを取り出し、封印のために展開しようとした瞬間、飛来する金色の光。それは巨大な子猫に直撃し、子猫は衝撃に倒れ込む。

「な―」

「魔法の光!?」

光弾の飛んできた方を振り返る。遠くにの電柱の上に立つのはなのはと同年代に見える少女だ。腰ほどまである金の髪を二つに纏め、黒衣に身を包んで同じく黒い杖を持っている。少女が手に持った杖をこちらに向けたまま何事か呟くと先ほどの光弾が連続で放たれた。

「お願い、レイジングハート!」

〈Stanby ready.Set up.Flier fin.〉

当然それを黙って見ているわけには行かない。急いで展開、継いで飛行魔法を発動し射線上に移動する。

〈Wide area Protection.〉

防御魔法が広がる。光弾は障壁によって阻まれ、その役目を果たすことなく霧散する。目先の危機を回避し向こうの様子を伺うと、あちらも攻撃が防がれたのを見て手を止め、すぐ側の樹上に移動してきた。

「同系の魔導師…ロストロギアの探索者か」

「…」

「それに、バルディッシュと同系のインテリジェントデバイス」

『やっぱり僕らの世界の魔導師だ!ジュエルシードの事も…』

〔Scythe form.Setup.〕

確認するように呟いた後、鎌状に魔力刃を展開してそのまま鎌を振り斬撃を飛ばしてきた。

〔Arc Saber.〕

〈Protection.〉

すぐに動けずとっさに障壁を張り防御すると爆発が起こった。が、ダメージは無いようなので急いで爆煙から離脱する。目の前には鎌を振りかぶった少女。こちらも魔力刃を展開して受け止める。

「ジュエルシードは頂いていきます」

「くっ…何で、突然こんな…っ」

「答えても、多分意味が無い」

対話の意思は無し、刃を払いお互いに距離をとる。

(…どうしよう、相手は人。今までは化物が相手だったけど…魔導師って言っても視えないわけじゃない…!)

なのはにはこのまま戦うことに躊躇いがある。少女は素早く、今のなのはには狙って刃を当てるようなことは出来ない。当然、当てないように振る事も不可能だ。ならば()が視えている以上、そこに触れて切り離してしまう可能性は高い。出逢ったばかりの、それも同年代の少女相手にそんなことはしたくない。そもそもこの()は人に向けて使った事さえないのだ。いや、それならばいっそ刃を使わずに…

――だが、戦闘の最中にそんなことを考えていれば。

 

〈master!〉

「あ…」

 

レイジングハートの警告に我にかえれば、隙と見た少女が既に準備を終えていた。

 

〔Shooting mode.〕

「……ごめんね」

〔Photon lancer.〕

 

回避は叶わず、防御も間に合わない。一瞬のスローな視界を挟み、意識が落ちた。

 

*

 

結局目を覚ましたのは夕暮れ時だった。落下するなのははユーノがかろうじて救出してくれた様だが、巨大子猫のジュエルシードは少女が封印して持っていってしまったらしい。

「あの子…ジュエルシード、集めてるんだよね」

『そうだね、目的は分からないけど、僕らがジュエルシードの回収をする以上は、きっとまた…』

「…次に会ったときは、ちゃんとお話ししたいな」

(剣はダメ…魔法の使い方、考えなきゃだね…)

彼女とはきっと再び遭遇する。一度きちんと話を着けたいところだが、あの様子では聞く耳を持ってはくれないだろう。先ずは彼女を話をする体勢に持っていく必要がある。そのためにも、再会までに眼に関わりなく扱える魔法を覚えておくことを決めた。




あんまり見返してないけど書いたので上げます
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