バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第3話 救出作戦(前編)

成田空港でバイオテロがあったと情報が入り、すぐに空港は閉鎖された。指揮を取るのは自衛隊だった。まだ設立されたばかりのBSAAは自衛隊からは信用されておらず、今回は自衛隊が指揮することになったのだった。

グレッグ・リチャーソンは左肩にマシンガンを携えていくつも設えられたテントの合間を縫って、自らのテントに向かっていた。

たくさんあるテントには、隔離された客がすし詰め状態だった。中では早く家に帰してくれやここから出してくれなどと叫ぶ客が絶えなかった。他にはベッドに縛り付けられてもなお暴れるアンデッドがいる。拘束してるから怖くないが、あれが何万匹と増えた東京ではさぞかし地獄だっただろうと、グレッグは心の中で思った。

そして自分のテントに着いたグレッグの耳に最初に聞こえたのは同期なのに、自分より階級が1つ上の(みのり)の怒鳴り声だった。

 

「どうして救出を許可してくれないんですか⁈あの電話の内容を聞いたでしょ?……ちょっと大佐‼︎くそっ!」

 

ガチャンと乱暴に受話器を戻す秊にグレッグは声をかけた。

 

「どうした?またあの腰抜け大佐と乱闘を繰り広げていたのか?」

「戦意喪失したのは大佐。要するに逃げられた…。勝負はついてないわ、全く…」

「あの大佐とはやっていけねえよなぁ」

 

グレッグは椅子に座り、大きく背筋を伸ばした。

秊は日本人と見間違う程に日本語をペラペラと話すグレッグを見て、今の状況を聞いた。

 

「感染者は?」

「ああ、それなら心配無用だ。1番向こう側のテントでは拘束してるし、外から出てこようものなら弾が身体を突き抜けるさ。…それにしても…噛み付いたら感染して、そいつも同じになる…か。こいつはよくアメリカで見るホラー映画だな」

 

それからグレッグはふざけたように秊に呻き声を披露した。それを見ても秊は何の反応を示さなかったため、グレッグはすぐに謝罪した。

 

「悪い悪い、冗談だよ。しかし、これもウィルファーマ社から漏洩したやつか、はたまたテロか…」

「後者の線が濃厚ね。斎藤議員がいるところを狙っている。テロの可能性が高いわ。前者は…まあ薄いかな」

 

ウィルファーマとは、アンブレラ社が倒産してから発足した製薬企業だ。アンブレラが扱っていたJ-ウィルスを使ってワクチンを生成したり、研究を進めている。そこから漏れたという可能性も考慮に入れるべきだと秊は思っていた。

 

「何であれ、早く生存者を助けることが先決よ。だけどこれじゃあ…」

 

再び受話器の方を見た。

上から止められて動けなくて、悔しく思っているのがグレッグには分かった。

 

「苛ついているなら、隣でギャンギャン叫んでいる女を鎮めてやれよ。うるさくて仕方ない」

「女?」

「空港の入り口近くにいた女で、自衛隊員の制止を振り切って中に行こうとするもんだから、拘束したんだけどそれでも落ち着かなくてな…」

「そうね…。出撃まで動けないし、説得に行こうかしら?」

 

秊はそう言って立ち上がるのだった。

 

 

 

 

グレッグの言う通り、隣のテントからはうるさいくらいヒステリックに叫ぶ女の声が響いていた。どうしてこんなに叫ぶのか、少し気になって秊はテントに入った。

 

「早く手錠を解いて‼︎薺たちを助けないと…‼︎」

「それは我々が行います!だから落ち着いて……」

「あんたらじゃ、アンデッドに対抗出来ないわよ‼︎」

 

少し自衛隊を甘く見てるような発言が見受けられたが、その女はとても美しかった。

汚れひとつない焦げ茶色の髪に端正な顔付き、そして全てを吸い込むような青い瞳。女性である秊でさえ、見入ってしまいそうになった。

秊が視界に入った他の自衛隊員は敬礼し、玲奈に関することであろう資料を渡した。

そして秊は玲奈が拘束されている机の反対側に座った。

 

「どうも、私は自衛隊陸軍中佐の秊よ。うるさくて(かな)わないというグレッグの要請を受けて来たわ」

 

グレッグは奥でそれを言う必要ないだろと言った表情をする。

玲奈も漸くまともに話せそうな人が来て、少しだけ落ち着く。

 

「ここのボス?」

「いいえ。私たちのボスは腰抜けでね…。本部で待機」

「それなら実質ここを指揮するのはあなたね、秊中佐?」

 

挑発的な態度に秊は僅かな苛つきを覚える。

 

「さっきから言ってるけど、ここは自衛隊の仕事よ。あなたみたいな一般人がするようなことじゃない」

「一般人じゃないわ。私は政府公認のBSAAの隊員の玲奈。調べれば分かるわ」

 

秊は隣にいる隊員に確認を取る。確かにその通り、だが…秊を含めた自衛隊全体はBSAAを信用していなかったため…。

 

「ええ、そうね。でも今は自衛隊が指揮してる。BSAAの出る幕じゃない」

 

玲奈の表情にも苛つきが見えた。

 

「……手錠を外して」

「外したら行っちゃうでしょ?」

「自衛隊はいいわね?ちょっとでも抵抗したら拘束。流石国家のために働く飼い犬って感じね」

 

その言葉はその場にいる自衛隊員全員の逆鱗に触れた。

玲奈の後ろにいた隊員が玲奈の髪を乱暴に掴み、机に叩きつけた。

 

「っ…!」

「もう一回言ってみろ‼︎ああ⁈」

「やめなさい‼︎」

 

秊の低くも衝撃のある怒鳴り声に全員がビクッとなった。

隊員は恨めしそうに玲奈を見ながらも、離した。

 

「今のは悪かったわ。謝罪する」

「言葉では……何とでも言えるのよ…人は…」

「…それとあなたをここから出さない理由はもう1つ。あなたは感染してる」

 

玲奈は溜め息を吐いた。今まで何度となくその事を話してきて飽き飽きしているが、また話すしかないと思い、口を開きかけたその時…テントの外が騒がしくなった。

 

「な、何だ⁈あんた…!」

「困ります‼︎今入ったら……!」

 

テントの幕を大きく翻して中に入ってきたのは、動きやすいレザースーツで身長の高い男性だった。だが、その片手には拳銃が握られており、一言も発する事なく引き金を引いた。

ドンと1発の銃声は誰の身体にも当たらず、玲奈を拘束していた手錠の付け根を破壊した。

すぐに周りの隊員は銃をその男性に向けるが、男性はポケットから小さく折り畳まれた書類を出してこう言った。

 

「BSAAの竜馬だ。ここの代表と会いたい」

 

秊はすぐさま出てきて、竜馬の前に立った。

 

「秊中佐よ。今になって、この女性を助けに来たのかしら?」

「いいや、これを読めば納得するよ」

 

秊は竜馬が持つ書類に目を通し、そこで驚愕する。

 

『これより今回のバイオテロ鎮圧の指揮はBSAAが取る。秊中佐他隊員は竜馬隊員並びに玲奈隊員の指示に従うこと。また、これより救出作戦を実行せよ』

 

と書かれてあったのだ。しかも1番下には陸軍の最高幹部である幕僚長のハンコとサインまでしてあったのだ。疑いようがない。

 

「内容は理解したようだな。彼女から手を離すんだ!」

 

竜馬は叫んだが、誰も動かない。竜馬がもう一度怒鳴ろうとすると、先に秊が口を開いた。

 

「離しなさい…」

 

秊の声に最初は驚いている隊員たちだったが、渋々玲奈の拘束を解いた。そして付け加えるように伝達する。

 

「これからは彼ら2人の言う事を聞くように!…以上…」

 

誰しも納得していなかった。

こんな見ず知らずの男女に指導権を奪われてしまっては…。

玲奈は手首を摩りながら、真剣な表情で秊に詰め寄った。

 

「それで…生存者はどこなの?」

 

 

 

 

秊は先程のテントに戻り、とある音声を再生した。

 

「今から3時間前の内線電話の録音です」

『私たちは空港に閉じ込められている…。そこらにアンデッドがいて、身動きも取れないし、ここもいつまで持つか分からない…。お願い…早く助けに来て‼︎』

 

この録音の音声から聞こえる女性の声の主に2人はすぐに分かった。

 

「この声は…」

「間違いない。薺よ…」

 

録音を聞き終えた後に秊は空港の見取り図を机に広げて、とある一角に赤ペンで丸印を付けた。

 

「恐らく生存者たちが逃げ込んだのはVIPルームだと考えられています。空港の出入り口は完全封鎖のため、入るにはヘリで屋上から行くしかありません。すぐに隊を編成して……」

「君とそこの男で充分だ」

「⁈何ですって⁈」

 

秊は驚愕の声を漏らすが、玲奈は賛成している様子だ。

 

「そうね…。大人数で行くのは危険ね」

「どうして?」

「これ以上感染者を増やさないためよ。あなただって、自分の仲間を撃ち殺したくないでしょ?」

 

そう言って、玲奈と竜馬は奥へと向かっていく。

その後ろからグレッグは苛ついた声を吐き出した。

 

「おい!どういう意味だ、そりゃあ⁈」

 

しかし、グレッグが叫んでも2人は振り向くこともなかった。

 

「何なんだ!あの2人‼︎軍人にも見えないし、警察官ですら見えない」

「あの2人は名高いBSAAの隊員なんでしょ?彼らなりの作戦があるのよ。ともかく…お手並み拝見ね……」

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