バイオハザード リターンズ   作:GZL

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IF story1、終了です。



第9話 不穏な動き

空港ロビーが完全に崩れ落ち、謙二の姿はその瓦礫の下で潰されてしまったと竜馬たちは思っていた。仮に生きていたとしても、この量の瓦礫を退かすことなど不可能だ。

荒い息を吐きながら、自身の側に倒れたまま目を開かない玲奈を抱え、上空から降りてくるヘリに秊と共に乗る竜馬。

 

「何で早くあそこから出てなかったの⁈」

 

ヘリに乗って開幕紗枝の怒鳴り声がヘリの中に木霊した。

竜馬は耳を抑えたい気分だったが、まずは玲奈を早く治療するのが先だった。一応応急手当てをして、すぐに病院に向かおうと思った時…“奴”の声が崩れた瓦礫の方から聞こえてきた。

 

「……まさか…」

 

ヘリのプロペラでも掻き消されない程のはっきりとした声に、竜馬たちは戦慄した。ヘリのドアを開け、そこから空港を見ると…小刻みに瓦礫が動いているのだ。その状態が数分続いた後…本当の悪魔がこの世に降り立った。

全ての瓦礫を吹き飛ばし、そこから現れたのは…異形の怪物だった。元々人間らしさがどことなくあった謙二の身体は既に無くなり、身体はまるでヒルやミミズのような環形動物の身体へと変貌。肩にあった巨大な眼球は健在、しかし身体中にその赤く血走った眼球が備わり、それぞれが別々に動いて不気味さを一層増している。そして何より驚いたのが、口だった。真正面から奴を見たら、その大半は巨大な大口だけが見れる。ドロドロとした液体を吐き出し、全てを飲み込まんとする悪魔の大口…。

その異常とも呼べる体形に全員が固まった。

 

「何……あれ……」

「どうやら……あそこに置いてあったアンデッドの死体を食らったようね…。それでめちゃくちゃな変異が起きて、ただの怪物に成り下がってしまった…」

 

玲奈は痛む身体を起こして、そう解説した。

 

「どうすんだ、あれ⁈あれじゃ生半可な武器じゃ倒せないぞ⁈」

 

そう竜馬が言っている間にも、奴はノソノソと動き始める。

動きこそ遅いが、それでもあの巨体だと充分過ぎる脅威だ。

空港近くでテントを張っていた自衛隊員たちはやって来る悪魔に構わず銃弾を撃ち込んでいく。しかし、そんな弾では奴を止めることなど出来ない。

奴はその目に映る全ての人間を食らうつもりだった。身体から触手を何本も出し、自衛隊員たちを掴むなり、その大口に放り込んでいく。何回か咀嚼(そしゃく)した奴は食い終えた自衛隊員たちを吐き出していく。その度にまた身体だけが成長していた。

 

「くそっ!やりたい放題じゃないか…」

「……っ!」

 

それを見ていた秊は上空を飛んでいるヘリの上から飛び降りた。

 

「秊‼︎」

 

秊は左腕で地面に落下した時の衝撃を和らげたが、左腕は自身でも分かるくらいゴキッという音を響かせて折れた。その痛みを堪えながら、醜い姿へと変わってしまった謙二の元に駆け寄る。

その頃には奴はこの辺りにいた自衛隊員たちを全員食い終えていて、辺りは血と肉片が乱雑に広がる地獄絵図と化していた。

その光景ととんでもない悪臭に秊は吐き気を催したが、それも堪えて、大きな声で叫んだ。

 

「謙二ぃっ‼︎」

 

聴覚はまだ残っているようで、奴は秊の方に1つの眼球を向けた。更にゆっくりと大口を秊の方に向けた。

 

「もうやめて‼︎お願い‼︎謙二がしたかったのは真実をみんなに伝えたかっただけ‼︎こんな殺戮を繰り返す必要はないの‼︎お願いだから……もうやめてえええ‼︎」

 

秊は自分の全てを出し切るくらいの想いで謙二に叫んだ。

謙二はそれを黙って聞いていたが、すぐに咆哮を上げ、触手で秊の身体を掴んだ。

 

「兄……さん…」

 

捕まった時点で秊は何もかも諦めていた。

ここで自らの命は終わった…。そう思った。

が、一発の銃声が響き、秊を拘束していた触手が解放された。

地面に落ち、誰が撃ったのか見てみると、そこには散弾銃を構えて立っている玲奈の姿があった。

 

「玲奈…」

「こっちよ!」

 

玲奈は秊を立たせて、急いで走り出した。後ろからは何本もの触手が後を追いかけて来ている。避けてはいるが、玲奈の肩を掠めることもしばしばあった。

 

「くっ!」

 

玲奈と秊は車の影に隠れる。玲奈は散弾銃に弾を込めているが、秊はほぼ放心状態だ。この状態で逃げるのは厳しいし、2人で倒すのも無理があると考えた玲奈は1つの賭けに出た。

 

「秊、手榴弾ある?」

「……」

「秊‼︎」

「あるわ…」

「全てよこして」

 

秊から合計五個の手榴弾を受け取った玲奈は車に乗り、アクセルを全開にして奴の大口の方に突っ込んでいく。

その間にも奴は触手を使って、玲奈が来る前に殺そうと仕掛けてくる。何度も触手が車にぶつかり、その度に激しく揺れるが、玲奈はそれでもアクセルを緩めることはない。

そして玲奈はそのまま大口の中に車を突っ込ませた。そこで手榴弾を爆破させ、こいつの身体を内部から吹っ飛ばそうと考えていた。

が、事はそう上手く運ばなかった。

車の後方窓ガラスが割れたと思ったら、玲奈の左肩にあの触手が突き刺さって、貫通していたのだ。

 

「あぐっ…⁈ぐぅぅ…‼︎」

 

既にピンに指をかけている玲奈だったが、抜こうか迷ってしまっている。今この状態で抜けば、間違いなく玲奈は奴と共に吹き飛ぶ。だが抜かなければ、車は徐々に大口で挟まれ潰され、玲奈だけが死ぬ。

どっちにしろ、玲奈は死ぬ。

そう思ったら、玲奈は気が楽になった。まだ伝えきれてない気もするが、玲奈の目的はこいつを殺すことだ。自分の命などそんなに大切なものではない、そう思った。

 

「……ゴメン、竜馬…」

 

玲奈は目を閉じて、ピンを抜いた。

その時、誰かが後ろから車に乗ってきた。目を閉じていた玲奈にはそれが誰なのか分かっていなかったが、目を開けると…信じられない人物がいた。

 

「バカ野郎!」

「竜馬…、ってバカはどっちよ!早く逃げて‼︎手榴弾が…!」

「お前を置いていけるかよ‼︎」

 

竜馬は必死になって、玲奈の肩に刺さる触手を抜き、グッタリした玲奈を抱えて車の外に出る。それでも竜馬足を止めることなく、急いで奴の側から離れる。

そして最後に…大きな爆発が奴の身体を吹き飛ばした。

肉片が周りに飛び散り、あの(おぞ)ましい姿の片鱗も残さないくらい…無残に消し飛んでいた。

竜馬は玲奈を抱えたまま、その死骸を見て、安堵の溜息を吐いた。

すると、玲奈が小声で言った。

 

「…ありがとう、竜馬……き」

「え?今何て……」

 

竜馬が再び聞きなおそうと思った時には、玲奈は疲れか痛みかそのままスヤスヤと寝息を立ててしまった。

竜馬はそんな玲奈を見て、溜息を吐きながらも優しい目を向けた。

 

「全く……無茶ばかり…」

 

そう…呟く竜馬であった。

 

 

 

 

その頃フレデリックは自身の会社の入り口辺りで、とある人物を待っていた。彼の持つケースにはJ-ウィルスの開発データにワクチンの生成方法が入っている。それをフレデリックは売ろうと考えていた。

 

「お、来たな」

 

黒い車がやって来て、そこから夜だというのにサングラスをかけた男が現れ、そのケースを掴んだ。

 

「さあ、約束の金を…」

「待て。すぐに渡してやるさ…」

 

男は車に戻ると思いきや、腰から拳銃を抜き、フレデリックの頭部を撃ち抜いた。

男は拳銃を捨て、無線で報告する。

 

「フレデリックは始末した。後片付けは任せるぞ」

 

そう言うと、どこからともなく大勢の傭兵が現れ、フレデリックの会社:ウィルファーマ社へと入っていく。

男は眉毛の上に付いている傷跡を撫でながら、この場を後にするのだった。

 

 

 

 

その翌日、玲奈の入院する病室の中には重苦しい雰囲気が流れていた。その原因は竜馬が買った今日の新聞に原因があった。

内容は『ウィルファーマ社、謎の大爆発‼︎危険ウィルスのサンプル、ワクチンが共に紛失!』と銘打たれていた。あの後、ウィルファーマ社は社長のフレデリックと共に爆発して、何もかも失ったのだ。一旦はフレデリックが黒幕だと分かったが、それも更にその上にいる何者かによって証拠ごと消されてしまった。

もどかしさが残る中、ガラガラと病室の扉が開いた。

 

「秊…!」

 

なんとやって来たのは昨日、地獄を共にし、兄を失った秊だった。表情から見てもそこまで辛そうな感じには見えなかった。

 

「玲奈、傷の具合は?」

(あばら)が折れただけで大丈夫よ。このくらいの傷は慣れてるし」

「そう。なら良かった」

「……そういえば、自衛隊…続けるの?」

 

玲奈がそう聞くと、秊はちょっと複雑な表情をした。

兄の他にも秊はたくさんの同僚を失い、辞めるのではないかというのが玲奈の憶測だった。聞いてはいけないことだったのかもと玲奈が思っていると、秊は高々と笑い出した。

 

「何言ってるの?続けるわよ!だって私には、人々を守ること以外何も出来ないもの…」

「秊、頑張ってね!」

 

秊はその後すぐに部屋を出て行った。

全く変わってないどころか、むしろ決意が強くなった気がした。

 

「私たちも…早く本当の黒幕を突き止めないと…」

 

玲奈の言葉に竜馬、紗枝、海翔はしっかり頷くのだった。

もう、あの惨劇を繰り返さないために…。




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