バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第11話 大統領からの頼み

飛行機に乗って降りてからも、玲奈たちが抱えた問題は竜馬の乗り物酔いだった。

飛行機の中では大体トイレに篭っていて、降りた後でも完全に死にかけ状態である。そんな彼を見る同僚の玲奈と紗枝はやれやれと溜息を吐きたくなった。

現在、竜馬はベンチに座って虚空を見つめている。

 

「それで?迎えはいつ来るの?」

「あと2分くらいよ。まあ先にこの荷物を預けるのが先かな?」

 

玲奈はふーんと言って、再び竜馬の方を見た。

口元を抑えて、今にも嘔吐しそうなところをどうにか堪えている…といった状態か…。息も荒く、とても辛そうに見えた。

心配そうに見つめる玲奈を見ている紗枝は、ちょっと冗談を入れてこう話し出した。

 

「気になるの?竜馬が」

「なっ⁈そ、そそそそんなこと……!」

「冗談よ。玲奈は竜馬よりも死んだ竜也の方が好きだったんだものね…」

「え……」

 

どうしてその事を…と思ってしまった玲奈は暫く間の抜けた表情をしてしまう。

 

「分かるわよ。東京事件の時に怪物になった時の玲奈の動揺を見れば……。あれは好きな女性がする行動だってすぐに分かった」

「あ………」

「玲奈の気持ちは分からなくないわ。私だって海翔に弟か兄がいて、本当に似てたら惚れちゃうかもしれない。でもね、玲奈…竜也はもう死んだの。いい加減忘れよう?そうしないと…自分が好きなんだと勘違いしてる竜馬に失礼よ」

 

玲奈は何も言えなかった。ここまで紗枝に見透かされていたなんて、想像していなかった。

そんな話をしていると、空港の前に黒一色でメタリックの車が玲奈と紗枝の前に止まった。運転席から男性が現れ、玲奈たちに車に乗るよう勧めてきた。

 

「竜馬を連れてくる。待ってて」

 

玲奈はグッタリしたままの竜馬の腕を自身の首の後ろに回して、右肩を貸して一緒に歩き出す。

 

「悪い……玲奈…。こんな様で…」

「良いのよ。乗り物酔いとか、苦手なことは誰にだってあるわ」

 

そう……私にも…、と玲奈は言いかけたが、喉の奥底にしまい込んだ。苦しそうな竜馬の表情は、ハイブで感染し始めて、もがき苦しんだ竜也の姿と瓜二つで、自然と見惚れてしまう。

玲奈は思い出したくない記憶をしまおうと彼の顔を視線から外した。

そして…改めて感じた。

やはり…竜也のことを忘れるなんて…無理だと…。

 

 

 

 

それから車はかなり早い速度で動き出した。背中がシートにずっと付いてしまう程の速度で、こんなに速度を上げて良いのかと思うほどだった。心配になったのか、紗枝が質問する。

 

「ねえ!そこまで速度上げて大丈夫なの⁈」

「ここはアウトバーンです」

「要するに?」

「制限速度がない道路なんです」

「なるほど」

 

これで納得した2人は安心した。だが、竜馬は未だに酔いが直っていないのか、数分に一回の割合で「うぷっ」と声を漏らしている。

 

「あんたねえ、そんなに乗り物苦手だったっけ?」

「ふ…普通の車なら…良いんですが、こういう…早い車だと……うえっ…」

 

玲奈と紗枝は再び大きな大きな溜息を吐くのだった。

それから3人はホテルではなく、とある場所に連れてこられた。

そこは誰しも知っている場所であり、今回玲奈たちを呼んだのが誰かも予想出来てしまった。

 

「ここは…」

「ホワイトハウス…ってことは、依頼人は…」

 

玲奈が運転手を見ると、頷いてから言った。

 

「アメリカ合衆国大統領でございます」

「えほっ…まさか、アメリカ1のお偉いさんから依頼だとはな…。面倒な依頼じゃなければいいが…」

「……そうね」

「こちらです」

 

玲奈たちは何の証明書も見せることなく、ホワイトハウスの中へと入ることが出来た。こんなことは人生で1回出来ただけでも滅多なことだろうと竜馬は思った。

玲奈と紗枝は自分たちをチラチラと見てくるスーツ姿の男たちを不快に感じていた。男たちが見るスタイルは2種類あった。

1つは完全に邪魔者…または怪しそうに見る…。

もう1つは完全にいやらしい考えで見てくる男たち…。

玲奈は慣れている…と言ったら聞こえが悪いかもしれないが、あまり気にはしていない。紗枝の方はまるで猛獣のような視線を向けて、男たちを威嚇していた。

そして、3人はとある部屋に通された。広さはBSAAのオペレーションルームの2倍くらいで、中央に何とも柔らかそうなソファが2つ、テーブルを挟んで置いてあり、そのソファに…大統領が座っていた。

 

「よく来てくれました!私は大統領のベン・グラハムです」

 

大統領から近付こうとして来ているのに、近くのSPが間に割り込み、玲奈が何か武器を隠し持っていないかチェックを開始した。だが、その触り方は明らかに下品さを持っていた。

SPの手が玲奈のお尻に触れかけた時、玲奈は我慢の限界を迎えた。

SPの腕を掴んで、そのまま逆方向に捻り上げると、地面に組み倒してしまった。この行動は流石にマズかったか、他のSPは玲奈に拳銃を向けた。

 

「やめんか‼︎」

 

だが、ベンの怒声により、SPはビクッとして思わず大統領の方を向いてしまう。

 

「彼らは私の客人だ!手荒な真似はするな‼︎それにお前、身体検査を装って、何をしようとしていた⁈おい!このクズ野郎をここからつまみ出して警察に送れ!」

 

そう怒鳴ると、玲奈が倒したSPは手錠をかけられ、そのまま連行されてしまった。

3人はベンの大胆な行動に舌を巻いてしまった。

普通、こういう不祥事は握り潰すものだと、玲奈は思っていたから尚更だった。

 

「すまない。彼らは自分たちがエリートだと思い込んでいるんだよ。だから何をされても許してもらえる…。アメリカも落ちてしまったものだ…」

「…そうね」

「話が逸れてしまった。本題に入ろう。座ってくれ」

 

3人は勧められるがままにふかふかのソファに座った。

 

「それで?私たちを呼んだ理由は?」

「…実は、私の一人娘が誘拐されてしまったんだ」

「誘拐…」

 

それを聞いた時点で玲奈は一瞬帰ろうかと思った。何故ならBSAAは人を探す部隊じゃなく、世界をバイオテロから救う部隊だ。役割が違う。

 

「その娘が連れ去られた場所なんだが…南部にある村で、そこはここ最近『怪物』が出てくると噂があるんだ」

「怪物?」

「それが何なのかは我々が行った調査でも分からなかった。だから最初はそこに人員を派遣した。だが、彼らは初日で全滅した。……顔がぐちゃぐちゃになる程に潰されてね…」

「なるほど…。怪物の噂に、無惨になった死体…だから俺らBSAAの仕事って訳ね」

「その通りだ。娘を助け出して欲しいんだ!頼む…!」

 

その必死さに玲奈は感銘を受けた。

 

「大統領、その娘さんの写真とかは?」

「ああ、これだ」

 

内ポケットから出した写真には金髪でショートカットの女性が写っていた。玲奈はそれを取って、ベンに言う。

 

「大統領の言いたいことは分かった。でも、条件があるの」

「何でも言ってくれ」

「報酬は要らない。…今まで色んな人と会ってきたけど、いつもお金をくれる。私たちはお金目的でこの仕事をしているわけじゃないから」

「分かった。手数をかけてすまない。それと、これがその村の調査結果だ」

 

何十枚とありそうな書類の束は竜馬が受け取ったが、げーと言いたそうな表情を作っていた。

 

「約束するわ、娘さんを必ず助け出すって」

「よろしくお願いします」

 

そう言って、玲奈たちはホワイトハウスを後にした。

 

 

 

 

ホテルで飛行機に乗った疲れと今日の話し合い?的なものでの疲れと2つの疲労をシャワーで洗い落とす玲奈。ホテルのバスローブを着て、濡れた髪を拭く。

テーブルでは、大統領から渡された書類と睨めっこしている竜馬と紗枝の姿があった。

 

「シャワー、空いたわよ」

「じゃあ私が先に入るわ。汗ベトベトで嫌なの」

 

紗枝がシャワーに行って、玲奈と竜馬だけになる。

ちょっと気まずい…と思ったが、竜馬は書類を見るのに夢中でそう思っていたのは玲奈だけだった。

 

「どう?」

「どうも何も……情報が全くない。その村の起源、発祥、人口、総面積…その他も曖昧な数値ばかり。これじゃあ、その村に行くしか確かめようがない」

「最初からそのつもりだけどね。私が行って…」

「おっと、玲奈。それはダメだ」

「えっ⁈」

 

竜馬の発言に玲奈は驚きの声を上げてしまった。

 

「どうして⁈」

「どうしてって…まだ傷が癒えてないだろ?お前。それに玲奈は目立つ」

「目立つって…」

「仮にこの村に娘さんが捕らえられているとしたら、俺らが探しに来たとバレないようにしなくちゃいけない。隠密行動が必須になる」

「でも…」

 

心配そうな表情をする玲奈を見た竜馬は、彼女の手を握って優しく言った。

 

「俺は死なない。約束だ」

「……分かった。でも約束破ったら許さないから」

 

そう玲奈が言うと、彼女の顔が徐々に近づいて来るのが分かった。

あとほんの数mmといったところで、紗枝がシャワーから出てきた。

 

「はあー!スッキリ!…って、どうして2人ともそんなに顔赤いの?」

 

その答えを竜馬も玲奈も返すことは出来なかった。




次回、竜馬が村へ
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