バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第15話 ロス・イルミナドス

「全く……世話のかかる男ね…」

 

短い黒髪に蝶柄の入った優美な赤いドレスを着ているエイダは、岸で食われそうになっていた竜馬を助け、更には彼の足首辺りに付けられた深い切り傷を治療した。

今回のミッションと竜馬は全く関係性がないが、放っておくことが出来ず、助けてしまった。でもこれで借りが出来たと思えばいい、とエイダは考えていた。

取り敢えず、岸に建っていた建物の中に竜馬は移して、自分はさっさと目的を達成しようと思っていると、おもむろに彼の腕が赤く血走ったかのように、血管が一瞬だけ浮き彫りになる。

 

「…あなた…サドラーに種を埋め込まれたのね…」

 

色々とここに来る前にあの寄生虫については調べていたため、竜馬の身体がどのくらい蝕まれているかも分かる。

現在の竜馬は、あと少ししたらもう手遅れの状態になっていた。

しかし、エイダにはどうすることも出来ない。

エイダは悲壮な目を竜馬に向け、先に教会へと向かっていくのだった。

 

 

 

 

深い眠りから目覚めた竜馬は、足にチクっと痛みが走った。

が、その傷は何者かによってきちんと手当されていた。

誰が…いや、竜馬はその人物に心当たりがあった。あの魚の化け物に食われそうになった時、留めを刺したあの赤いドレスの女性…。

彼女しかいない。しかし…どうして助けておきながら俺はこの建物に残されたままなのだろうか、と竜馬は思ってしまう。

 

「…考えても仕方ない。早く教会に……うっ⁈ゲホッ‼︎」

 

竜馬は突然吐血をした。しかも何度も咳をし、その度に血が地面に落ちていく。苦しそうに机に手を置いて、ゆっくり深呼吸する。

 

「はあ……はあ……」

 

突然の吐血に竜馬はしばし呆然としてしまう。

原因が何なのか分からないが、とにかく急いだ方が良さそうだ。

竜馬はそう思い、口の中がまだ血の味がする状態のまま、建物を出ていくのだった。

…エイダからこんな置き手紙があるのも知らずに…。

 

『あなたはもう手遅れね』

 

……と。

 

 

 

 

竜馬は再び教会へと駆けて行く。

漸く教会の近くへと到着したが、その周りには異形の犬を首輪に繋いで待機している村人たちが集まっていた。

待ち伏せだ。このまま突っ込んだところであの犬に喉元を食い千切られてあの世へ真っ直ぐだろう。

竜馬はまず教会の側面に行き、村人たちの背後を取る。そして、残り少ない銃弾で教会の上にある十字架…みたいな形をしたオブジェを撃ち、それを落下させた。

銃声に反応した村人たちが犬に指示を出そうとした瞬間、オブジェは村人たちに落ち、下敷きにした。犬も下半身を潰され、苦しそうに呻いていたがすぐにその声も消えていった。

見張りを片付けた竜馬は教会の中に入る。中も廃れていて、十字架もなく、先程と同じオブジェがステンドグラスとなって飾られていた。

早速竜馬は1つの扉を開く。

すると、竜馬の目の前を金髪の少女が駆けていった。

 

「アシュリー⁈」

「いや‼来ないで‼」

 

アシュリーは竜馬に向かって、朽ちた木など色々なものを投げてきた。

明らかに竜馬を敵視している証拠だ。

 

「大丈夫だ、アシュリー」

「来ないでって…!」

 

終いには泣き出してしまう始末で、竜馬は溜め息を吐きたくなった。

 

「アシュリー、俺は竜馬。君のお父さんから頼まれて助けに来たんだ」

「…え?パパが?」

 

そう言った途端に彼女の表情が少しだけ明るくなった。

竜馬は全く…と言いたげな感じになったが、それは今は無しにしよう。

 

「よし、さっさとこんな陰気くさい村から逃げよう」

「うん!」

 

竜馬は彼女の手を取り、教会から出ようとした時、大きな拳が左側から飛んできた。

 

「⁈」

 

その拳は竜馬の左頬を直撃し、竜馬の身体を教会の扉へと吹き飛ばした。

 

「ぐあっ‼」

「竜馬!」

 

竜馬は身体を扉にぶつけ、口の中で切れた血を吐き出した。

左目の視界が全く効いていない状態で、教会の祭壇を見ると、村長とアシュリーを腕の中に抱えた紫色のローブを被った男が立っていた。

ふらふらしながらも立ち上がる竜馬だが、それを村長が足で踏みつけて抑えつける。

 

「があっ……」

「大人しくしてろと俺は言ったはずだ?」

「誰が……そんな、こと…」

「再起不能になるまで痛めつけてはならぬぞ?こいつはいずれ我々の仲間になるのだからな…」

 

紫色のローブ男はそう言う。男は片手に奇妙な形をした杖をついている。

それは形からしても村民の頭から飛び出てくる寄生虫と同じように見えた。

 

「自己紹介がまだだったね。私はオズムンド・サドラー。ロス・イルミナドス教のカリスマだ」

「ロス……イルミナドス…?」

「私が開いた究極の宗教だ。キリストなど比にならないレベルだ」

「それと……アシュリーに、何の…関係が……あるんだ⁈」

「我々もいい加減、この宗教を広めたくてね…。そこでアメリカに売り込むのは一番手っ取り早い。大統領の娘を拉致し、我々の力を授け…そして、返す…」

「何を……言ってやがる…」

「この娘には種を植え付けた。それが孵れば、アメリカだけでなく世界中で良いニュースの話題が出来るだろう…」

「それが…狙い、か…。テメエ…他の国にも…」

「その通りだ。…おお、忘れてた。君にもその種を授けてやったんだ。感謝してほしいね」

「!」

 

吐血はその予兆なのか……と、竜馬は考えた。だが、まだ吐血しただけで他には何も問題はない。

そこで竜馬は抑えられながらも、腰のナイフに手を置いた。

 

「余計な…お世話だ…!」

 

竜馬は抑えつける村長の足をナイフで刺し、退かした。そこから立ち上がり、サドラーに拳銃を向ける。

弾は残り1発しかないが、それでもサドラーの頭を吹き飛ばすなら1発で充分だ。

その最後の弾を竜馬は使った。

教会内に銃声が木霊し、血が飛び散る音が響く。だが、それはサドラーの物ではない。

竜馬の肩を撃ち抜いたものだった。

彼は自分でも知らず知らずのうちに自らの肩を撃っていたのだ。

ガクッと膝を付き、竜馬は撃たれた肩を抑えた。

 

「どうだ?これが我が力だ」

「なん…だと…?」

「もうお前の中で種は(かえ)っている。君は私の操り人形同然だ。さて…このまま君には本城へと来てもらおう。しかし暴れられると困るのでね…。…やれ」

 

サドラーの指示で村長は竜馬の胸ぐらを掴むと、膝で竜馬の腹を蹴り上げた。

 

「ぐふっ…‼」

 

竜馬は血を吐き、意識を遠ざけていく。しかし、まだ意識は残っていた。

 

「俺の蹴りを受けて気絶しないとは…。中々頑丈だな…。だが……」

 

もう1撃…竜馬の腹に膝が飛んでくる。

 

「れ………な………」

 

最後に竜馬の頭の中で玲奈の笑顔が思い出される。

だが、今度こそ……竜馬の意識は完全に吹き飛ぶのであった。

 

 

 

 

サドラーは身体の中から太い触手を出し、気絶した竜馬と暴れるアシュリーを抑えつけて本城に赴こうとした時。

車のエンジン音がこちらに聞こえてくる。

サドラーと村長がそちらを向くと、この教会に迫ってくるハンビーが視界に映った。

その運転席と助手席には、2人の若い女性が見えた。

それは…竜馬を心配してやって来た玲奈と紗枝で、漸く到着した瞬間だった。

 

「竜馬‼」

 

玲奈の叫ぶ声が、夜の怪村に響くのだった。

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