グダグダですみません。
その後、簡単な自己紹介を終えた3人はすぐにダグが用意したプライベートジェット機に乗り、マルハワ学園へと向かった。
玲奈にはそんな学校の名前は全く聞いたことがなかったが、リッキーたちの大学…主に東南アジアでは一応噂される程の学校らしいのだが…その学校がある場所がまた曲者だった。
1番近くの空港に着いたら今度は悪路でも問題がないジープへと乗り換えて、ジャングルの中をひたすらに進んだ。最初は道らしき道もろくに無かったが、大体2日程経って漸く獣道らしき道に沿って進むことが出来た。
「ひょ~!人里離れた全寮制の高校!あるのは知ってたけど、遠すぎだろ!」
「…本当。もう悪路を走って2日くらいじゃないの、ダグ教授」
「そうだな…。ここまで遠いとは……」
そうやって話していると、リッキーは思い出したかのようにダグに聞いた。
「なあ!叔父さん!ここで頑張ったら細菌学の単位くれるってマジ?」
「ああ、大マジだ」
「単位?」
玲奈は訝しげな表情を浮かべた。今のリッキーの話で、リッキーはまだ何もダグから聞いていないんだなと分かった。
「ダグ教授、私を呼んだ理由は何?単に甥っ子と一緒に名門校に見学に来ました……って訳ではないですよね?」
「………」
ダグは黙ったままだ。
「そうだ!俺もまだその事聞いてないぞ?どうして?」
リッキーにまで聞かれてしまって、ダグは重い口を開いた。
「マルハワ学園の理事長から依頼があったんだよ。学園内で生物兵器かもしれん事件が発生したとな…」
ピクッと玲奈の身体は反応した。
「叔父さんに直通で?」
「そうだ」
「しっかし…どうしてそんな依頼を疑うことなく受けたの?」
ダグは少し戸惑いを持ちながらもリッキーの問いに答えた。
「そのマルハワ学園理事長のグラシアなのだが…実は…私の昔の恋人なんだ」
それを聞いた途端にリッキーは飲んでいた水をぶっと吐き出した。
咽せているリッキーを横目に、玲奈はこれで自分が呼ばれた理由が分かった。つまり…。
「もし…学園内でバイオハザードが起きていたら、この事をBSAAに伝えるのが私の役目?」
「いや…玲奈隊員…。グラシアは……」
ダグが話を続けている途中で、リッキーが向こうを指差した。
「おい叔父さん!アレじゃね?」
リッキーが指差す方向には、このジャングルには似つかわしくないコンクリート製の道路が現れ、目の前には立派な校舎と礼拝堂が姿を見せた。この学園の大きさには玲奈も舌を巻いた。
「これが全部学校の敷地?うひゃー、デカいなあ」
リッキーも今自分が通っている大学なんて、ちっぽけ過ぎるくらい大きい学園に圧倒されていた。
ダグは車を校舎の正面出入り口から入れて、校舎の来賓客用の駐車場に停止させた。玲奈とリッキーは車から降りて、2日も車に乗っていたせいでこっていた身体を思い切り伸ばした。
「へえ…ここが将来世界へ羽ばたく人材の園…か…。まるで別世界だな!」
「ああ…聡明な顔ぶればかりだ。うちの大学もこういう風にしてほしいよ」
「叔父さん、それ俺に言ってる?」
リッキーとダグの話には全く興味のない玲奈はこの学園をゆっくりと見ていた。白い制服を着た生徒たちが玲奈やリッキーたちを不思議そうに見ている。
だが、中には玲奈の身体や顔に欲望でギラギラしたような表情で見ている者は少ないが、いた。こんな人たちが聡明な者なのかと……エリートとは何なのか分からなかった。
すると……。
「ダグ教授に玲奈さん…ですね?」
3人の側に2人の女子高生が近付いてきた。
1人は黒髪の長髪でアジア系の女性、もう1人は金髪でウェーブがかかった白人女性。どちらも美女で、リッキーの目が鋭く光った。
「お⁈おっ!」
「私は生徒会長のビンディと申します」
「同じく副会長のアリサです。マザー・グラシアからお迎えに行くよう言われて参りました」
「それは有難い。何しろこの学園は広いからどこに行けばいいか分からなくて…。そうだ、こいつは…」
リッキーはまたダグが勝手に自己紹介を済ませる前にビンディの両手を掴んで、目を輝かせて話し出した。
「ダグ教授の助手のリッキーです。彼女いません。よろしく!」
「は、はあ…」
ビンディは困惑するばかりだが、その一方アリサは…。
「まあ!あの聡明なダグ教授の助手さんなんて…ご立派ですね!」
と、2人は対称的な感じに玲奈は見えた。
そして玲奈はデレデレしているリッキーを見て、ダグ教授に聞いた。
「甥っ子さんはいつもこんな感じなの?」
「…青春が出来ていないだけなんですよ、アイツは…」
ダグ教授は再び頭を抱えるのだった。
それから3人はビンディとアリサの案内で、この学園の理事長室に通された。校舎から少し離れたところに建物があり、その一階にあった。
そこにいたのは修道服を着た若い女性だった。右目の下にホクロがあり、茶髪の髪を持っていると修道服の隙間から伺えた。
対面した3人だが、それぞれ異なる反応をしていた。
ダグはグラシアとの久しい再開に懐かしさを向けている。
リッキーはどこかこういう女性は得意じゃないなと思ってしまい、髪を掻いてしまう。
玲奈はただ無言で彼女を見詰めているだけだった。
「それでは、私たちは失礼します」
「えー?もう居なくなっちゃうの?」
デリカシーのない発言をするリッキーにアリサは小さな声で付け加えるように言った。
「後で“外”の話を聞かせてくださいね!リッキーさん?」
頰を赤くさせて行ってくるアリサにリッキーの心は揺れる。
リッキーはまさか自分がモテているのかと、興奮していた。
そんなのは置いておいて、ダグは数秒見詰めた後に口を開いた。
「久しぶりだな、グラシア…」
「お互いに年を取りましたね、ダグ…」
「…そう、だな」
面倒くさそうな女性だと玲奈は直感した。グラシアはすぐに立ち上がり、部屋の外に出るよう指示してきた。
「ダグ教授、こちらです」
グラシアが案内したのは、この建物の地下室だった。真っ暗闇で底が見えない程の階段を降りていき、1番下に辿り着くと…そこには鎖で繋がれたアンデッドが1体…。
ダグと玲奈は見慣れているから問題ないが、リッキーは初めてアンデッドを見たために猛烈な吐き気に襲われた。
「うおっ…ぷっ…」
ダグ教授と玲奈はゆっくりと近付き、そのアンデッドをじっくり観察する。人間が近付いたためにアンデッドは新たな肉を欲しようと、鎖で身体中を拘束されていても構わずに暴れる。
「間違いない…J-ウィルスによるアンデッド化だ」
「やはり生物兵器ですか…」
「噛まれるなよ。感染するぞ!」
リッキーは未だに直視出来ない。暴れる度に血が溢れ、辺りを赤に染めていく。
「これは私1人で解決出来る問題ではない。玲奈、至急BSAAに連絡を…」
「…無理」
玲奈の口からは「無理」と出た。
「無線が使えない。1番近い基地からでも電波が届かないのよ」
「ここでは携帯電話や無線機は通じません。それにダグ…何故BSAAがここにいるのです?他言無用でと言ったでしょう?」
「…事件を公にしたくないから…だろう?」
「そうです。ここはマルハワ学園……あってはならないのです…。バイオハザードなど…」
「あなた何言ってるの⁈」
ここで玲奈が怒鳴り声を上げた。
「感染の原因も分からないのに、これ以上何の関係もない生徒たちがこんな化け物になっていくのを見過ごしていくって言うの⁈」
「原因究明はダグに任せるのですよ」
「玲奈隊員の言う通りだ!もしこの女生徒みたいなアンデッドが学園内で広がったら、あの事件のように地獄絵図に…!」
「だから専門であるあなたを呼んだのです」
何を言っても今は無理だと思ったダグは質問を変える。
「……この女生徒はどうするつもりだ?彼女はもう人間には戻らん」
「…それは後々決めます」
そこで会話は終わってしまうのだった。
リッキーはフラフラと校舎内を歩き、あのアンデッド化した女生徒の姿を思い出す度に吐き気を感じてしまうループに陥っていた。
ベンチで座って、今更だがどうして付いて来てしまったのかと後悔してしまう。
「あー!クソ‼︎来るんじゃなかった!」
そうやってボヤいていると……。
「あの~大丈夫ですか?」
「お水要ります?」
リッキーの心を揺らがさせる女子たちが心配そうに見詰めてきたのだ。リッキーは「は、はい!」と多少テンパりながらも、水を口に含む。
彼女たちの優しさを身を持って体験して、リッキーも原因究明に頑張ろうと思ったところで…ドスの効いた声が聞こえた。
「おいお前かあ?外から来たってのは?」
リッキーは校舎の裏の辺りに連れていかれた。
連れて来たのは、白い制服を乱雑に着たいかにも不良と言う言葉が似合いそうな奴らだった。
「なんか面白いもん持ってきてねえのかよ?」
「まずはアタシらに挨拶…よね?」
そう脅されてもリッキーは全く取り乱さなかった。
「へえ…こういう進学校でもお前たちみたいのがいるんだな…」
「何だと⁈テメエ俺たちがどういう人間か分かって……」
1人の男の拳がリッキーに向かってくる。
しかし、それは横から割って入ってきた玲奈によって止められた。
「やめなよ、いじめは」
「ああん?何だよ、このアマ?」
「…反省が見られないわね…。じゃあ…」
玲奈が腕に力を込めようと思った時、聞き覚えのある声によって止められた。
「やめなさい!貴方達!彼らはマザーのお客人よ!」
副会長アリサの一言で不良たちは苛立ちを見せながらも、リッキーたちの目の前から消えた。
「あ、ありがと!アリサちゃん」
「いえ、学園の風紀を守るのも副会長の使命です」
そう言ってリッキーとアリサは楽しげに話し込み出した。
そんな仲良さげな2人を見て、玲奈は無意識の内に竜馬の笑顔が思い浮かんでしまう。
涙が溢れる前に玲奈はすぐにリッキーたちから離れていくのだった。
その夜……リッキーは窓から溢れる月光が眩しくて目を覚ましてしまう。隣で寝ているはずのダグの姿はない。トイレにでも行ったのだろうと思ったリッキーはもう一度眠りに就こうと思ったら…突然目の前に金髪のウェーブがかかった女生徒が目の前に現れた。
「えっ?あ、アリサちゃん⁈」
驚きのあまり身体を動かせないリッキーはこれからアリサが何をしてくるのか、興奮しながらも緊張していた。
しかし、一向にアリサは動かない。不思議に感じたリッキーがアリサの名を呼ぼうとした時…。
「クッ…カアアアアアアアアアアア‼︎‼︎」
白目を剥き、口から血を流すアンデッド化したアリサを漸く直視することが出来た。リッキーは即座にベッドから起きて、アリサから離れようとする。
だが、ここまで距離を詰められてしまったリッキーには逃げる余裕はなかった。掴まり…歯を肩に食い込まれ…血飛沫が飛んだ。
この瞬間…彼らの戦いは始まったのだった。
次からは短く出来るよう努力します。