バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第21話 絶対王政

爆発し、燃え盛る建物がダグ、リッキー、玲奈や学園内の目に入った途端、学園内は凄まじい悲鳴で包まれた。静かだった学園は一瞬にして、逃げ惑う生徒とその悲鳴で埋め尽くされた。時にはリッキーや玲奈の肩にぶつかって転ぶ者もいた。

 

「みんな‼︎落ち着いて!」

 

ビンディの一言で全員は少しだけ落ち着きを取り戻したように見えた。

 

「生徒会長!」

「すぐに消防署に連絡するのよ!」

「で、ですがどうやって外に連絡を⁈」

 

ビンディはそう言われて唇を噛んだ。

確かにその通りだ。外への連絡が出来なければ、消防車を呼ぶどころか警察も何も呼べやしない。その事実を突き付けられてどうしようか考えていると、澄んだ声がリッキーたちのところに響いた。

 

「消防車は必要ありませんよ、ビンディ。それに…皆冷静に!」

 

グラシアの言葉1つで生徒たちは胸に手を当て、軽くお辞儀をした。その姿はとても異様で…玲奈やリッキーたちは何とも言えなかった。

そしてグラシアは表情を全く崩すことなく、あの燃えている建物について説明をする。

 

「燃えているのは元々取り壊し予定だった部室棟です。周りには燃え移る物もありませんし、放って置けばじきに燃え尽きます」

 

そう言われてもリッキーたちは納得出来るはずがなかった。

万が一のこともある。だが…他の生徒は……。

 

「マザーがそう言うなら安心ね」

「良かったわ。大事に至らなくて…」

 

何の疑いも見せなかった。誰もグラシアの言葉を何1つ疑おうとしていなかったのだ。これにはダグや玲奈も驚きで、この学園の異常性が垣間見れた気がした。

 

「大丈夫そうですね、生徒会長」

 

そう言われてもビンディは恨みがましい表情をグラシアに向けたまま動かすことはない。

その間、リッキーもグラシアに訝しげな表情を向けていた。

明らかにおかしい。誰も近付けないようにするために今出てきて、安心だと思わせたのでは…と考える。では、何を隠そうとしているのか…。

そんなものは…リッキーの中では1つしか思い浮かばなかった。

あのアンデッドになった女生徒とアリサだ。

そう分かった途端にリッキーは燃えている部室棟へと駆け出した。

 

「リッキー⁈」

 

玲奈の声が耳に入ったが、リッキーは止まることはない。

その後を急いでダグも追う。

 

「リッキー、どうした⁈」

「分からないのかよ、叔父さん‼︎あの女!全部無かったことにする気だ!」

 

リッキーたちが部室棟に着いた時でも、火は全く収まってなかった。その中に突っ込もうとリッキーはしたが、玲奈は彼の服を掴んでそれを止めた。

 

「何するんすか!行かせてください、玲奈さん‼︎」

「危険過ぎる!私が行くわ!」

「女の人にそんなこと頼めるか!」

 

玲奈の制止を振り切ってリッキーは炎の中に突っ込んで行った。

玲奈もはあと溜め息を吐きながらも、ダグにこう言ってから彼女も炎の中へと飛び込んだ。

 

「ダグ教授は外に‼︎」

 

リッキーと玲奈が中に入ると、燃えて炭化した木材や脆くなったコンクリートが2人の周りに落ちてくる。ガラスも割れ、破片がリッキーの頬を引っ掻くがそんなのは気にしない。

 

「チキショウ!こんなの許されてたまるかよお‼︎」

 

玲奈も髪や皮膚に傷が付かないように炎を防護しながらリッキーと共に部室棟の奥に進んでいく。その中であの地下室で言っていたグラシアの言葉が思い浮かんだ。

 

『そう…ここはマルハワ学園…。あってはならないのです、バイオハザードなど…』

 

そのためなら何でもやる……そういう意味だったんだと理解した玲奈はグラシアに更なる怒りが湧き上がってくる。

そう思っていると不意にリッキーの足が止まった。

何があったのか聞こうとしたが、それは聞くまでもなかった。

2人の前に転がっている“もの”…それは焼け焦げた女性の死体2つ…。

しかもどちらともリッキーと玲奈には見覚えがあった。

 

「あ、アリサ…ちゃん…」

 

リッキーの目から一粒の涙が溢れる。

そうやって2人が焦げた死体を傍観していると、後ろからビンディが…。

 

「お2人さん?何があったのですか?」

「!来ちゃダメ‼︎」

 

玲奈は来ないように呼びかけたが、時既に遅し…。

ビンディは死体を見て、目を大きくさせてそのまま気を失ってしまう。倒れる身体をリッキーは急いで支えた。

 

「これを無きものにするだと⁈ふざけんじゃねえよ…マザーグラシア‼︎」

 

リッキーは気絶したビンディを抱えたまま、そう怒りの言葉を呟くのだった。

 

 

 

 

その頃、紗枝たち一行はダグが居座っている大学に到着していた。

日程が同じように進んでいれば、今日玲奈やダグは帰って来ると思っていた。が…その肝心の2人は未だに帰ってきていなかった。

 

「ダグ教授が予定通りに帰ることなんて滅多にありませんよ。今回もいつも通りだから気にはしていませんが…」

 

彼の秘書はそう言う。

 

「でも…教授は今回はいつも通りに帰って来るって言ってたんだけど…」

「行き先は分からないのか?」

「あ、そういえば聞いてない…」

 

2人がどうしようか悩んでいると、ダグの部屋の外から暢気な声が聞こえてきた。

 

「じゃあな、姉ちゃんたち!」

「智之…大学の子でもナンパしてたの?」

「まさか!それより、彼らが向かった場所が分かったぜ?」

「どこ?」

「それより……腹減ったからここの食堂で何か食わないか?」

 

3人は車で約半日使ってここまで来たため、ろくな食事にありついていなかった。紗枝もそう言われると、お腹が切なく鳴った。

 

「…そ、そうね…。続きは学食で…」

 

3人はすぐに食堂に移動して、それぞれ選んだ。

海翔と智之はいつもの量の食事を頼んだが、紗枝は…余程お腹が空いていたのか普段の3倍の量があるチャンポンを頼んでいた。

 

「あれが痩せの大食いか?海翔さん」

「聞かれたら殺されるぞ?」

「2人とも、何か言った?」

「「いいえ‼︎何も⁈」」

 

殺されるのは勘弁なため、2人はほぼ同時に答えた。

紗枝は頭の上にハテナマークを浮かべながらも、チャンポンを口に含んだ。

 

「あっ!美味しい‼︎」

「そら良かったな」

「で、智之、彼らの行った場所は?」

「ああ、あのダグ教授の甥がペラペラ自慢してたんだ。行ったのはマルハワ学園だと」

「マルハワ学園?」

 

海翔は聞き返す。

 

「樹海の中にある全寮制の高校だと。そんなところに入学するのは俺はごめんだね」

「それで、連絡は取れるのか?」

「それも聞いたけど、樹海の中だからか無線も通じないんだと」

「そいつはお手上げだ」

「なら……行く?」

 

紗枝の一言に2人は溜息を吐きたくなったが、予定外なことが起きているから早めに探すことは先決だろう。

 

「決まりね」

 

マルハワ学園に行くことが決定すると同時に、さっきのチャンポンを作っていたシェフが急に出てきて紗枝たちに聞いた。

 

「おい!あんたらマルハワ学園に行くのか⁈」

「そうだが?」

「俺はここで働いているヨシハラってもんだけど…娘を探して欲しいんだ。ここ3ヶ月手紙の連絡がないんだ。名前は……ナナン」

 

 

「ナナン・ヨシハラだ」

 

 

 

 

玲奈とダグはグラシアがいる理事長室に足を踏み入れていた。

グラシアは玲奈の怒りの視線に怯むことはなかった。それは周りにいる教員や生徒も同じように睨んでいるから、平然としていられるかもしれないが…。

 

「別によろしいでしょう?彼らが公になればパニックになります。それに言っていましたよね、ダグ。彼らは元には戻らない…と」

「だからってあんなことが許されると思っているのか⁈どうしてそこまで学園の威厳に拘る⁈」

「あなた方はウィルスの発生源を探すだけでいいんです」

 

我慢の限界を迎えたダグはグラシアに詰め寄ろうとする。しかしそれを阻むように1人の生徒が立ち塞がったが、そいつは押し倒した。

だが、次に飛んできたのは蹴りだった。

見事な飛び蹴りをかましてきた足はダグの額にもろ直撃し、彼を地面に倒した。

 

「ぐうっ…!」

「ダグ教授!」

 

玲奈も我慢の限界だった。

頭に来た玲奈も詰め寄る。案の定、今度は巨漢警備の男が前に立ち、玲奈の服を掴んだ。

 

「これ以上近寄るな!」

 

玲奈は掴んでいる腕を掴むと、そのまま一気に捻り上げた。

 

「ぐおっ⁈」

 

巨漢の身体は一瞬にして玲奈の小さな身体に負けたのだ。

 

「やめなさい、皆さん」

「しかしマザー……」

「やめるのです」

 

そうグラシアが語気を強めると、全員が先程の火事騒ぎの時のように手を胸に当てて軽くお辞儀する。

 

「ダグ、それよりもあの甥は噛まれたのでしょう?彼が感染者になったらどうするのです?」

「…リッキーが感染した可能性は低い。何かあれば私が責任を取る。玲奈隊員、離してやれ」

 

玲奈は一瞬グラシアを見たが、すぐに放り投げるように男の手を離した。部屋を出る際に玲奈は警告とも言えるような言葉を露わにした。

 

「この学園は狂っているわね、マザー‼︎」

 

バタンと大きく扉が閉まり、グラシアはふうと溜息を吐くのだった。




この章、長くなりそうなので原作の一部分は端折っていきます。
申し訳ありません、グダグダにさせたくはないので…。
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