バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第22話 崩れ落ちる均衡

玲奈とダグの帰りを待つリッキーはどうも落ち着いていられなかった。グラシアが仕向けたこの学園で起きているバイオハザードの隠滅…それに感染したアリサたちをアンデッドと分からせないために火で焼き尽くしたのだ。

あの後、リッキーたちはすぐに建物を出て、崩れ落ちる瓦礫から脱したが、アリサたちの遺体はもうほぼ骨だけとなっていた。それを見ていたリッキーは更なる怒りを覚えた。

その苛立ちから壁を思いっきり叩いた。

 

「くそッ‼︎」

「リッキー、今すぐ荷物をまとめるんだ」

 

そうやっていると不意に部屋に荷物を持ったダグと玲奈が立っていた。玲奈の表情は怒りで浸透していて、一触即発みたいな状況だった。ダグも額を蹴られて痛かったが、それを気にする余裕はない。

 

「出て行くのかよ、叔父さん!もし俺たちがいない間にまた奴らが出たら……!」

「その気持ちは分かるが、グラシアには何を言っても無駄だった。今はとにかくBSAAの増援を送るべきだ!」

「でも…」

「大丈夫よ。無線さえ繋がれば、すぐに来てくれる」

 

2人に押されてしまったリッキーは力なく頷くのだった。

 

 

理事室でグラシアは窓から見える学園をじっと眺めていた。

彼女の全てはこの学園だ。そのためならグラシアはどんな手を使ってでも、この学園の威厳を守ろうと思った。そうもう一度心が折れないよう、誓っていると、突然バタンと扉が乱暴に開く。

振り向くと、血だらけの男子生徒がグラシアに牙を剥いていたのだ。突然の出来事に固まってしまうグラシアだったが、そのアンデッドは口の後ろから燭台によって刺され、グラシアに襲って来たのは飛び散った血だけだった。

 

「マザー!ご無事ですか⁈」

「早く取り押さえろ‼︎」

 

グラシアは顔にかかった血を拭うと、机の引き出しを開いた。

その時、アンデッドはまだ絶命していなかったため、身体を暴れさせて、今度は周りにいる生徒に襲いかかろうとした。

しかし、1発の銃声がアンデッドの左目を貫いた。

 

「ここはマルハワ学園…。私の聖域を穢す者は…」

 

もう1発、拳銃から弾丸が発射され、今度はアンデッドの脳を貫き、確実な死をもたらした。

 

「誰であっても容赦はしない」

 

いつもと明らかに雰囲気が違うグラシアに生徒たちは戸惑いを隠せない。そして、静かな声でグラシアは言った。

 

「処分しなさい」

 

グラシアは息を吐き、この血の汚れを落とそうと自室に戻ろうとした時、窓の外にいる黒いフードを被った人物が見えた。

よく見ようと窓を開け、目を凝らすとフードが風で揺れ、顔の一部が見えた。

 

「‼︎」

 

それを見た途端、グラシアは驚愕した。

驚きのあまり声を上げれずにいると、“彼女”はそのままゆっくりとグラシアに背を向けて、森の中へと消えて行った。

 

「アレは…まさか…!」

 

グラシアはそう呟き、事態はいよいよ簡単には収拾出来ないと分かったのだった。

 

 

一方その頃玲奈たちは乗って来た車の前で固まっていた。

目の前の車は完全に壊され、修復は不可能な状態になっていた。

 

「向こうの方が一枚上手だったか…」

「歩いては出れないの?叔父さん」

「広大なジャングルだ。遭難がオチだ」

 

リッキーはため息を吐くのだった。

 

 

それから3日程は何も起きず、淡々と時間だけが過ぎていった。ダグや玲奈たちもウィルスの発生源の特定を急いだが、結局捕まえたネズミを調べても何も分からなかった。頭を抱えている3人は突然、校舎の屋上に呼び出されるのだった。

 

 

屋上には玲奈が腕を捻り上げた男…名前はカプールがタバコを吸っていた。

 

「おっ、来たか」

「何の用だよ、用がないなら俺は学園祭を回っているぞ?」

「まあそう言うなガキ。今回はお前らに渡すもんがあるんだよ」

 

そう言うとカプールは床に置いていたケースを開いた。中には拳銃が三丁入っていた。それを見たリッキーとダグは息を飲んだ。

 

「あんたは持ってるからいらないだろ?3つ目は俺のだ」

「…どうしてこれを?」

「マザーから頼まれたんだ。いざって時のために…。それに真っ先に感染者を始末出来るようにってな」

「あの女は学園を戦場にしたいらしいわね」

 

リッキーは恐る恐る拳銃を持つ。腕から伝わる圧倒的な重みに声を上げてしまいそうだった。

 

「使い方は後で教えてやるよ」

「その前に…カプール…と言ったな。グラシアが何故ここまで学園の威厳に拘るのかいい加減知りたいんだ」

「…俺もそこはたまに疑問に思う時があるよ…。でも、マザーは自分のためでやってるんじゃねえ…。マザーの父君が残してくれたこの学園を守りたいだけなんだ!」

「そのためにはバイオハザードや不祥事を次々に隠蔽していいと?」

 

玲奈がそう聞くと、カプールはフッと笑ってから言った。

 

「それは…正論だな…。あんたの言う通りさ。手放してしまえば…全て楽に出来るのに…」

 

感慨に耽っているカプールを見た3人は一方的にグラシアを責めるのはナンセンスだと思った。

 

「ということで、これからは銃の練習もするから覚悟しておけ!…あ!それとマザーからこいつを」

 

カプールが取り出したのは1枚の写真だった。

写っているのはピースをした1人の女性…。

 

「これが何だ?」

「マザー曰く、犯人かもしれない奴だとさ」

「じゃあ今すぐ彼女に聞きに行こうぜ、叔父さん!」

「おっと、そいつは無理だぜ?」

「無理?どういうことだね?」

「だって、その写真の子…ナナン・ヨシハラは3ヶ月前に死んでいるからな…」

 

その事実に驚かない者はいなかった。

 

 

学園では年に一度の学園祭の準備が行われていた。楽しみにしている生徒が大半ではあるが、中には全く楽しみにしていない生徒も疎らにいた。

校舎の陰で隠れてタバコを蒸している男子生徒2人は気だるそうに会話をする。

 

「なーにが学園祭だよ。外から人なんか来ないし、大体いつもとおんなじだし……」

「俺らからしたらいつもと変わらないからなあ…。どうしてあいつらはあんなに楽しむことが出来るのかねえ…」

「ん?」

 

すると、2人の視界に黒いフードを被った女性らしき人がじっと2人を見詰めていた。タバコの火を消し、男たちは近付く。

 

「どうしたんだ?迷子かあ?」

「にしても小せえなあ。一年生か?そんなにウカウカしてると、先生に怒られちゃうよ〜?」

 

不良2人が茶化してみるものの、彼女は動じることなくじっと見ていた。頭に来た1人が彼女の身体に掴みかかった。その反動でフードが脱げた。

彼女の顔を見た途端、男たちの表情は一変した。

 

「なっ、何だこいつは⁈」

「お前…学園転校したんじゃねえのか⁈それに何だよ、それ…」

「………」

 

狼狽えている間に彼女は男たちに襲いかかった。

男たちの甲高い悲鳴が轟いたが、それは学園祭の準備で賑わっている声で掻き消されてしまうのだった。

そして…男たちは頭から…口から…至るところから血を噴き出して、ゆっくりと学園の中心…中庭に向かっていくのだった。

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