バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第23話 感染源の正体

アンデッドとなった2人の男子生徒はのたりのたりとふらついた足取りで学園祭で賑わう声の方に向かっていく。そして、彼らがターゲットにしたのは既に目の前に広がる生徒たちだった。

女子生徒の肩を掴み、暫く固まるアンデッド。女子生徒や周りは血だらけで様子が明らかにおかしい2人に声をかけることすら躊躇させられた。だが、それは一瞬にして破られる。

女子生徒を押し倒し、彼女の首に嚙みつこうとしたのだ。

それを機に学園内は賑わっていたずの声が恐怖と悲鳴に変わった。

その悲鳴は屋上にいた玲奈やリッキーたちにもきちんと聞こえていた。

 

「何だ⁈学園祭の催しか?」

「違うわ!あれは…」

「くそったれ!」

 

カプールはそう言って、1人駆け出していく。

玲奈たちもカプールに続いて、駆け出す。でも3人とも分かっていた。こんなに人目のある場所でバイオハザードが起きてしまったことで、学園の威厳は保てるはずがない…と。

 

 

女子生徒に被さったままのアンデッドは口を大きく開いて、正に彼女の命を奪おうとした時、一本の矢がアンデッドの首を貫いた。頸動脈を裂かれたアンデッドの首からは血が噴き出し、辺りを朱に染め上げていった。

彼女が横を見ると、そこにはクロスボウを構えたビンディの姿があった。

 

「ひっ…!生徒…会長!」

「皆さん‼︎早く避難して!」

「会長!これは一体…⁈」

 

未だに状況が飲み込めていない生徒たちにビンディは急ぎ足で話す。

 

「これは祭りの催しなどではありません!見なさい!矢が首に刺さっているのに、まだ動いている…。あれは人ならざるものなんです‼︎」

 

ビンディの覇気のある声に生徒たちは更に悲鳴を上げてこの場から逃げ出す。

 

「これはバイオハザードです!全てはマザーが隠蔽し続けたこと!この事実を全生徒へ‼︎」

 

そう叫びと、ここから離れて行こうとするアンデッドの背中に矢を放った。二体のアンデッドは共にビンディを獲物として捉えた。

ビンディも背負っていたカバンを降ろして、中身を取り出す。なんとその中には何十個とあるクロスボウの矢が入っていた。

 

「あなたたちのことはよく知っています。生徒会のブラックリストに素行が悪いと書かれていることを…」

 

矢を装填し、ビンディは構えながらもこう言った。

 

「残念ですね。これでもう…」

 

それからビンディは矢を撃つのだった。だが、口元は僅かに笑っているようにも見えた。

 

 

カプールとは分かれて、玲奈たちもアンデッド二体がいる広場に到着した。だが、リッキーやダグは初めて渡された拳銃を使う必要は一切なかった。彼らの目の前には、身体中に矢が刺さって瀕死のアンデッドが二体…転がっていた。

その傍らには頭の天辺から足のつま先まで血で染まったビンディの姿があった。

 

「ビンディちゃん……だよな?」

 

リッキーは恐る恐る声を振り絞った。今、ビンディはリッキーたちに背を向けているが、その雰囲気は最初に出会った時のような明るく可憐なものではなかった。妖艶で…どこか恐ろしくも感じる雰囲気に3人とも息を飲んだ。

リッキーの問いかけにビンディはそっちに顔を向けて答えた。

 

「もう少しですよ…リッキーさん。マザーはもうすぐこの学園から居なくなる…」

 

それからすぐにビンディは着替えることもせずに、グラシアがいる講堂へと足を進めた。身体中血だらけの状態で講堂に行くなんて、玲奈からしたら少しおかしいとも思ったが、それほどまでにビンディがグラシアを嫌いであるということが分かった。

 

「ダグさんも玲奈さんも…これでマザーに文句は言いやすくなるでしょう?」

「しかし…あそこまでやると逆に混乱するかも…」

「あそこまでしなければマザーは隠蔽を続けて来たはずです。でもこれで終わりです。今頃、マザーは生徒たちの弁明に追われていることでしょう」

 

講堂の扉を開けたビンディだが、そこには全生徒とグラシアがおり、グラシアはビンディを指差してこう言った。

 

「来ましたね…学園の平和を乱した者が…。ビンディ・ベルガーラ、私を陥れようとした罪は重いですよ…」

 

ビンディは静かにマザーを見詰めるだけだった。

 

 

理事室に戻ったリッキーとダグ。玲奈はまだ完全に息の根を止めていないアンデッドの始末を行なっている。

リッキーは間髪入れずにバンと机を叩いた。

 

「一体どういうことだよ⁈ビンディは偽りのバイオハザードを起こして、学園を我が物にしようとした…その厳罰で生徒会長の職を解き、停学3ヶ月。罪の重さに比べればまだ軽い?ふざけんな‼︎」

 

我慢の限界を超えたリッキーはグラシアの修道服を無頓着に掴んだ。だが、それをダグが止めた。

 

「リッキー、今回はグラシアが正しい」

「⁈どうしてだよ、叔父さん!」

「もし今の状況でバイオハザードがあったと公言してみろ。逃げ場のないこの学園は忽ちパニックになる。そうならないためには…」

「マザーがこの学園に絶対的な位置に君臨する…それしかないのさ、ガキ」

「グラシアに吹き込んだな…」

 

ふうと息を吐き、グラシアはダグに話す。

 

「ビンディの話はここまでよ、ダグ…。あなたが知りたいことを話すわ」

「知りたいこと?」

「どうしてナナン・ヨシハラが犯人だと思うかよ…」

「是非知りたいね」

「この学園を恨むのも当然だわ…だって…彼女は私が殺したのですから…」

 

この事実に2人は動揺を隠せない。更に詳しく事情を聞こうとした時…理事室の窓ガラスが割れた。

 

「なんだ⁈」

 

肌色の触手が窓ガラスを突き破り、ダグの腹を貫いた。

 

「ごふっ…!」

「叔父さん‼︎」

 

リッキーは咄嗟に持っていた拳銃で撃つが、当たらない。触手はダグの腹から抜かれ、今度はリッキーの腹に突き刺さった。

 

「あがっ…!」

 

リッキーもダグと折り重なるように倒れる。

カプールはグラシアを守るように前に立つ。

そこに銃声を聞いた玲奈が漸く駆けつけた。

 

「どうしたの⁈…⁈これは…!」

 

窓ガラスから黒いフードを被った女が入ってきた。黒いコートの下にはうねうね動く触手がよく見えた。そして、風でフードが脱げる。

その顔は…グラシアから貰った写真のナナン・ヨシハラと同じだった。

…半分だけ…。

半分は吹き出物のように気色悪い物体で覆われていた。

明らかに人間でないナナンは再び触手を高速で出した。

 

「マザー‼︎」

 

グラシアを庇ったカプールの腕に取り付き、彼に近付く。そして…冷たい唇をカプールに付け、何かを口から入れた。

 

「ゴホッ‼︎ゲホッ‼︎」

 

カプールの口元には白い霧状のものが舞っている。

玲奈は構うことなく、ナナンに銃弾を浴びせていく。だが、彼女は怯むことなく虚ろな目をグラシアに一瞬向けてから、再び窓から外へと逃げていくのだった。

玲奈もすぐに後を追ったが、深い森の中に逃げられてしまい、追うにも追えなくなってしまった。

 

「……クソ…」

 

玲奈はそう小さく呟き、もう一度部屋に戻る。

中は悲惨なものだった。担架で急いで運ばれていくダグとリッキー。ダグの方はもう手遅れだった。

カプールの処理は玲奈がやった。アンデッドになる前に頭を撃ち抜き、殺した。

部屋に残ったのは玲奈とグラシアの2人だけ。

沈黙が続くが、玲奈はグラシアに向かって強い口調で言った。

 

「あなたは…まだこんなに犠牲者を増やしたいの⁈たかだか学園1つのために…!」

「………」

 

グラシアは完全に意気消沈で、今は話しても無駄そうだった。

 

「私は行くけど、あなたにその気がまだ残っているなら…外に連絡して」

「…どこに、行くのです?」

 

玲奈は拳銃をしまい、扉を開けて言った。

 

「この事件の首謀者に会ってくる」

 

 

停学処分となったビンディ。しかし、彼女にとってはこれしきの苦痛はどうとでもなかった。あの時の悲しみ、絶望からすれば…。

すると、窓から黒いコートが入ってきた。

ビンディは驚く様子も怯える様子も見せずに、満面の笑みで“彼女”を部屋へと迎えるのだった。

 

「おかえり、ナナン」

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