予定ではこれと次の章でIF Storyは終了します。
最後まで頑張るのでよろしくお願いします。
それと、最終章ではアンケートを実施する予定です。
第30話 噂のモンスター
とあるヨーロッパにある国では、国内での紛争が何年にも渡って続いていた。
独裁政権を行使していた大統領に反発した全国民が戦争を仕掛けたのだ。もちろん、政府はこの行為を黙って見過ごすはずもなく、武力行使でこの戦争を指揮している『長老』とその団体を捕縛しようとする。
だが、長老たちも頭は悪くなく、街の地下に迷路のような通路を作り上げて、長期戦に持ち込んだ。この作戦は見事に嵌って、戦争は長期になり、気付いてみればなんと五年も経っていたのだ。
そんな時、政府内でも問題が生じた。大統領の武力行使に反発する声が膨れ上がり、到頭大統領は弾圧され、新しい初の女性大統領スベトラーナ・ベリコバの宣言により、戦争は終わった。
しかし、そんな束の間の停戦は…すぐに終わりを告げた。
国の地下から大量の石油が噴き出てきたのだ。
これが引き金となり、長老たちを『テロリスト』と称して、徹底的な武力弾圧が再び開始された。
突然の攻撃に反発派は対処しきれず、次々と弾圧という名の殺戮を繰り返され、長老たちが捕まるのも時間の問題だと思われた。
ただ、その戦争の中で一つの噂が流れた。
『モンスターを見た』……と。
銃声と砲弾が火を噴く音が町中に木霊する。これはこの国にとっては日常茶飯事のことであった。
マシンガンを撃ちながら後退する反発派、そして彼らを追い詰める政府軍。
その様子を見ながらも、紗枝は入り組んだ街の小道を走っていた。飛び出ようと思った時、戦車が彼女のすぐ目の前を通り、ロケットランチャーによってホイールの片方を破壊されるところを目撃した。
そこで携帯に連絡が入った。
「…何?今、取込み中なんだけど」
『そのようだな。衛星からも今の状況がよーく分かるぜ、紗枝』
携帯から聞こえてくるのは海翔の声だ。
今回は紗枝一人での単独行動だ。
「それで…例の件について調査しているFBIとの落ち合う場所………!」
紗枝が連絡を取ってる間に横から戦車に命中しなかったロケットランチャーが紗枝のいるところに飛んできた。
海翔が見ている映像では建物の外壁にぶつかると同時に激しく爆発する瞬間が映っていた。
紗枝はミサイルが飛んでくる前に奥へと逃げ込んでいたために、直撃することはなかった。ただ、耳鳴りはどうしようもなかった。
「生憎、私は海翔と違って余裕がないのよ」
『紗枝、ここまで来てなんなんだが…上から帰って来るよう命令が入った』
「はあ⁈私、ここに来てまだ一日も経ってないのよ⁈説明して‼」
『モンスターがいるって噂……。噂だってのがあまり確信的じゃなくてな…。先に他の組織に調査してからBSAAは出番だってさ』
「納得いかないわ!」
『言うと思っていたよ。だけど、ここは一旦帰ってこい』
「……悪いけど、今回はその命令は無視させてもらうわ。私が気が済むまで調べて、噂が本当であることをきちんと確かめてから帰るわ」
『お、おい!』
海翔が止めるのも聞かずに、紗枝は携帯の連絡を一方的に切り、辺りを見回して独り言を呟いた。
「さあて…早く寝泊まり出来る場所を探さなくちゃ」
そう言うが、こんな戦争ばかりしている国に観光客もいないし、客を泊める旅館やホテルを経営している様子も見られない。道端で寝るわけにもいかない。どうしようかと思っていると、突然悲鳴が地下の駐車場から聞こえてきた。
紗枝は泊まる場所をここにしようかなと、暢気に考えながらそこに入っていく。
ライフルにライトを装着して、暗闇の中を捜索する。
駐車場だから当然だが、車が大量に放置されているから、中で車泊している放浪者か、反乱軍の一員が政府に見つかったのかとも考えた。自分も車泊しようかと警戒心を解き始めた時、彼女の前に血塗れの男が現れた。
「!」
男はどうにか立っているような状態であったが、瀕死であったためかすぐに地面に倒れた。
紗枝が駆け寄ってみると、彼は右手にFBIの証である手帳を持っていた。これが最初に落ち合うはずであったFBIの調査員であることは間違いなさそうだった。
「大丈夫⁈安心して。すぐにここから出すから」
情報を手に入れたのか聞きたいところであったが、先に人命救助が紗枝にとっては優先事項だった。
すると、男は震える唇から何かを言った。
「…………ぱ………」
「え?何言ったの?もう一度言って!」
「ビー………キー…パー…」
「ビーキーパー?何それ?」
詳しいことを聞こうと思った時、紗枝の側面にゾゾッと悪寒が走った。
原因が何なのか確認しようと思ったら、そこから何かが飛びかかってきた。
紗枝は横に飛んで突然の襲撃を避けたが、代わりに瀕死の調査員は首を裂かれて命を落とした。ライトで照らすと、いつぶりに見たなあと感慨に耽る生物がそこにいた。
四足歩行で体色は桃色、背中の内臓や骨、脳までも剥き出しで目はない。前足の爪は異常に長く鋭い生物…。
BSAAが設立される前から存在が確認されていたBOW…リッカーだ。
こいつを紗枝は約二年前くらいに見ている。
「ふうん…戦場に出没する噂のモンスターというのは……こいつのことだったのね」
紗枝が噂が事実であることを認識している間にも、リッカーはボトリと涎を一滴垂らして、紗枝の方に向かって来た。紗枝は構えているライフルの引き金を引き、奴に弾を浴びせようとする。
しかし、いつもの俊敏な動きで弾を避ける。近くの柱に飛び付いたのを見逃さずに紗枝も追って撃つが、それも躱される。更に車の後ろを走って逃げているものだと思えば、いつの間にか紗枝から見て、7m程離れた真正面の車の上に立っている。
紗枝は動きを止めて、変わらず引き金を引くのだが、どうも当たらない。
と、ここでライフルの弾が切れる。リッカーも迷うことなく紗枝の方に駆けてくる。
紗枝はライフルを地面に置き、ナイフを取った。
リッカーが紗枝の方に飛び込んで来たタイミングでスライディングして、紗枝は持っていたナイフを奴の顎から腹部にかけて、長く切り裂いた。
リッカーは地面に倒れ、瀕死の状態になる。
そこから無慈悲に紗枝は止めを刺すために、ナイフを頭に突き刺し、脳をグチャグチャに抉るのであった。
あまり良い気持ちはしないが、BOWを確実に殺すのならここまですべきだと紗枝は思っていた。
ナイフを抜き取り、ライフルを床から拾い上げた時、カチッと何かが外れる音が紗枝の近くからした。
「?」
振り向くと、なんとリッカーが時限式爆弾のスイッチを押し終えたところだった。
もちろんリッカーは巻き添えを食らう前に逃げた。
「…!」
避ける間もなく、その爆弾は破裂した。
爆発により、駐車場のど真ん中に大きな陥没穴が出来、そこに紗枝が倒れていた。
薄れゆく視界には、爆発で散った塵と瓦礫、そして…こちらにゆっくりと歩み寄るリッカーの姿が見えた。
「……くっ…」
身体を動かそうにも動かせない紗枝に距離を詰めていくリッカーは、止めを刺そうと前足を高々と上げた。
紗枝は目を閉じて、死を覚悟した。…のだが、紗枝の顔には風が僅かに通うだけで痛みは皆無だった。
恐る恐る目を開けると、リッカーの腕は紗枝の顔の前で止まっており、恨めしそうに吠えるとゆっくりと背中を見せて後退する。
すると、塵が立っている中で、男が胸に手を当てながらこちらにやって来た。
ルーク帽を被り、こんな夜なのにサングラスをした老人であることをどうにか確認出来たところで…紗枝は意識を手放してしまう。
リッカーは寝入った獲物を殺そうと腕を伸ばそうとしたが、老人が手を出すとその動作を止めるのだった。
今回の章では紗枝が主人公的な扱いです。
玲奈は出す予定ですが、あまり出ません。