バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第33話 分かり合えない者

紗枝はJDの案内で唯一安全な場所と言える、教会に辿り着いた。

中に入っても誰もいないから紗枝は少しだけ辺りを見回すと、カチャッと銃を構える音が聞こえた。

もちろん構えたのはJDだ。どうしてか彼の身体は恐怖か怒りで震えていた。

 

「アレは一体何なんだ⁈お前たちが町の連中を…‼︎」

「…決めつけるのは早計だと思うし、そもそもあいつらを放ったのはあなたたちじゃないの?」

「何言ってやがるんだ‼︎」

「アレはプラーガ。人間に寄生してその肉体を操り、最後には化け物に変える…」

 

それを聞いたJDの表情は徐々に絶望した色に変わっていった。

 

「そ、それじゃあ…町の奴らは……」

「…二度と元に戻らないと考えていいわね」

「嘘だ…。そんなんデタラメだ!」

「戻したいなら脊髄もろとも引っこ抜けばいいけど、脊髄を抜いてどうなるかは言わなくても分かるでしょ?」

「他にも方法が……」

 

喚くJDに痺れを切らした紗枝は一喝した。

 

「そうと思うのなら…どうしてさっきあの老人を撃ち殺したの?」

 

一番聞かれたくないことを言われてしまったJDは言葉に詰まる。

 

「本当は理解していたんでしょ?もう戻らないって」

「その通りよ」

 

突然紗枝の側面にあった扉が開き、イリーナを中央に2人、マシンガンを構えている。それだけなら切り抜けられたのだが、二階にはライフルを構えた者も…。

逃げることを諦めて紗枝は両腕を上げた。

 

「…漸くまともな話が出来そうね」

 

イリーナは紗枝の余裕そうな表情が気に入らなかったのか、ズカズカと足音を立てて近付くとその頰を力強くビンタした。

 

「縛って見張っておきなさい」

「…歓迎ありがとう」

 

紗枝は叩かれた頰を摩りながらそう言うのだった。

 

夕焼けが町を覆う。

この光景をイリーナは数年間と見続けた。しかし今はそれに加えて、プラーガによって支配された町の住人が教会の鐘の音を聞いて、金属製の柵をガンガンと叩く様子が見える。

 

「イリーナ、これからどうすんだ?」

「…アレを取ってくる」

「取ってくる?使う気なのか⁈」

「アダマンの後継者が必要よ」

「そんなのどうでもいい!イリーナも化け物になりたいのかよ⁈」

 

JDは必死になって、イリーナを止めようと説得する。

しかしイリーナはふうと一息吐いて、JDに真正面から言った。

 

「JD、この独立戦争に参加した時から死ぬ覚悟は出来ていた。それにアダマンがくれた力を使わないと私たちは殺される。そのためにも…私は、あの力を受け継ぐ」

 

そう言い残して彼女はJDの元から離れた。

JDは掌から血が出るほど強く拳を握り、1つの決心をするのだった。

 

縛られた紗枝の元にJDがそそくさとやって来て、彼は見張っている部下にこう言った。

 

「少し話をさせてくれ」

 

そうして、彼は教会から出て少し離れた住宅街に紗枝を連れてきた。背中にはナイフを当てられ、抵抗したら殺すと言いたげに…。

だが紗枝にはナイフを当てられていても、JDには全く殺意がないということに気付き、話しかけた。

 

「私をどうする気?まさかイリーナに黙って私を脱走させるつもり?」

「…くそっ、何でもかんでもお見通しかよ…。イリーナが、アレを取りに行った」

「プラーガのこと?」

「名前なんか知るか!俺たちはただ…長老たちからアレを使えと言われて使っただけだ!そこだけは知っとけ」

 

そう毒付きながらも、JDは紗枝を縛っているロープを切ってくれた。

拘束が無くなった瞬間、紗枝は容赦しなかった。

瞬時に振り向いて、ナイフを奪ってJDの首に当てて脅すように聞く。

 

「つまり……プラーガを使ってリッカーを操れ…そうすれば戦争に勝てる……なんてことを言われたわけ?随分とバカな長老と間抜けな部下たちね」

「じゃあ…お前ならどうした!世界中が敵で誰も助けてくれない‼︎黙って殺されろって言うのか⁈」

「……そうだったとしても、もっと他に方法があった。まだ引き返せる方法がね…。とにかく、あなたたちと私は分かり合えない。逃してくれるのは幸いだけどね」

 

紗枝はそう吐き捨ててJDの前から消えようとする。

だが、ここで彼の口から悲痛な叫びが静かな街に木霊した。

 

 

「助けてくれ‼︎‼︎」

 

 

この叫びには流石の紗枝も足を止めてしまう。

今まで果敢にやっていたJDからは信じられない声だったからだ。

振り向くと、目に涙を溜めて地面を見詰めるJDがいた。

 

「もう……一生の親友を失いたくないんだ…。バディみたいに…」

「……聞かせて」

 

JDは驚いたような表情を一瞬して、すぐに話を始めた。

 

「バディってのはイリーナの婚約者だった奴だ。俺とイリーナ、バディは幼馴染で…。あいつらの幸せを俺は心から喜んだ。だけど…戦争中に反政府軍のアジトが学校だと間違った情報を言われて、爆撃されたんだ。そこでバディは……」

 

その時の心情を紗枝には想像も付かなかった。

最愛の人を失う気持ちを…。

 

「それからだ。イリーナが、反政府軍に入ったのは…。今まで銃すら握ったこともなかった彼女が……今はリーダーに…」

 

するとJDは突然持っていたライフルを紗枝に返し、こう言った。

 

「イリーナを止めてくれ!…あいつは多分、例の駐車場にいるはずだ」

「私を信用するの?敵かもしれないのに」

「敵なら殺されている。でも助けてくれた。確かに分かり合えない同士なのは認めるが、俺はお前を信じる」

「そう…ありがとう」

 

紗枝はそう言い残して、1人あの駐車場へと駆けて行った。

残されたJDは落ちているナイフを拾い、教会へと戻っていくのだった。

 

 

一番最初にリッカーと出会った場所にイリーナがいると言われた紗枝はすぐにその場に辿り着いた。爆破されていたため、駐車場の三分の一は床が吹き飛んでいたが、残っている三分の二の地面に注射器とそれを入れていたと思われるアタッシュケースが放置されていた。

 

「…遅かったか…」

「本当…あんたらはいつも遅いよなあ」

 

その声を聞いた途端、紗枝の身体がゾゾゾと寒気が走った。

声のした方に銃口を向けると、車のボンネットに男が座っていた。

暗闇で顔が見えないが、誰かは知っている。

 

「どうしてあなたがここに…?竜馬!」

「ほお…今回はあの女じゃないのか…」

 

ボンネットに乗ったまま、余裕そうにこちらを見詰めている竜馬。

 

「質問に答えて!」

「あの女よりも弱いあんたがそんなデカイ口叩くのか?まあいいぜ。俺はあの人からプラーガの回収を命じられたんだよ。でも、性能が不明だったからな…。だからあのジジイと女に渡したのさ。リッカーを操るプラーガを」

「まさか…あなたが街にプラーガを…!」

「おっと、それは違う。俺が来た時には街は滅んでた。だからプラーガを広めたのは別の奴だ」

 

竜馬はシュッとライターに火を付けて、タバコを吸う。

紗枝が知る限り、竜馬はタバコを吸わないのを知っている。こんなにまで堕落したのか…と思ってしまう。

 

「まあ見た感じ、性能は五分五分。あのプラーガは要らねえな。処理はあんたに任せるぜ。それと…早く逃げた方がいいぜ?」

「何を………」

 

紗枝が更に問い詰めようとした時にジェット機のエンジン音が響いた。空を見上げた途端、竜馬は信じられないくらいに跳躍して穴が空いた天井に着地していた。

 

「竜馬!」

「もうここに用はない。後は…勝手に自滅するのを傍観してるぜ。それと……」

 

竜馬は一拍置いてからこう言った。

 

「玲奈によろしくな」

 

そう言い残して消えてしまった竜馬に紗枝は唇を噛んでいることしか出来なかった。

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