バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第34話 意志の違い

ジェット機の爆撃音は響く。

外に出てみると、爆撃はまだ教会から少し離れた場所で行われており、被害が及ぶまでにはまだ時間がかかりそうだ。その前にあの中にいる反政府軍を助けようと思った紗枝だったが、爆撃の揺れか、又は中で何が起きてるか分からないが、再び教会の鐘が鳴り響いて、アンデッドを引き寄せてしまう。

これでは教会の中に入るどころか、近付くこともままならなかった。

紗枝は辺りを見回して、中途半端なところで無くなっている錆びたハシゴを見つける。

 

「……やるっきゃないか…」

 

紗枝はそう呟いて、建物の屋根から屋根へと飛んで、最終的に錆びたハシゴに飛び乗った。だが足を踏み外してしまい、足だけ宙に浮いてしまう。

アンデッドも徐々に寄ってくるが、紗枝はそのアンデッドの頭に足を乗せてハシゴに足を乗っけた。しかし今度は錆びていたせいで乗せていた部分がポッキリと折れる。

辛うじて掴まっている紗枝は「やれやれ」と呟いて、さっさとハシゴを登って教会の中に入っていく。

入ろうとした矢先に紗枝の耳に数発の銃声が聞こえた。

急いで上から見てみると、4人の死体とその死体で顔を塞がれているJDの姿があった。

 

「大丈夫⁈」

 

紗枝が声を上げると、JDは重たい死体を退けて何度も深呼吸を行った。どうやらJDだけは生きてるようだ。

 

「ああ…ちょっと油断しただけだ…。だけど、他は全滅らしい」

 

JDはそう呟きながら、空になった拳銃に弾倉を充填した。

そして立ち上がって紗枝に聞く。

 

「そういえば…イリーナは⁈」

「私が言った時にはいなかった」

「クソ‼︎もう怪物になっちまったのか⁈」

「それは分からない。だけどまだ間に合うかもしれないから、彼女が生きそうな場所を教えて」

「ちょっと待て、俺もい……えほっ‼︎ゴホゴホ‼︎」

 

JDは突然咳をした。紗枝はかなり激しく咽せているJDに安否の声をかける。

 

「どうかしたの?」

「……何でもない…。それより……」

 

JDはここで今までずっと着ていた紗枝の防弾チョッキを脱いで彼女に渡した。返してくれるのは有り難いのだが、唯一紗枝が気になっていることがあって簡単には受け取れなかった。

 

「どうしたんだよ、お前のもんだろ?」

「あなたの汗で蒸れているんじゃないかって心配なのよ…」

「おい!それは失礼じゃねえか⁈…でも、綺麗好きだって言う日本人らしい物言いだな」

 

そう言って、JDが扉を開こうとした時、向こう側から開き、そこからイリーナが入ってきた。

彼女を見た途端にJDの様子は一変した。

 

「イリーナ‼︎良かった!まだ怪物じゃない……っ⁈ゴホッ‼︎エホッ‼︎」

 

再びの嘔吐…。

流石の紗枝もおかしいと思い、声をかけようとした時イリーナは持っていた銃を紗枝に向けた。

それもそのはずだ。アジトに帰って来れば、JD以外のメンバーは皆殺しになっていたのだから。更にそのJDも様子がおかしい。

 

「あなた!一体何をしたの‼︎」

「違う…!こいつは何もしてない…!これは……!」

 

咳をしながらも紗枝ではないと言い続けるJDだったが、激しい嘔吐が突然止まると、顔を俯かせたまま動かなくなる。

 

「JD?」

 

声をかけても返事はなく、徐々に変な声が聞こえるようになる。

そして、顔を上げたJDの目は…赤く血走っていた。

イリーナは驚いて後ろに下がるが、我を失ったJDは呻き声を上げながらイリーナに襲いかかろうとする。

ただそれは紗枝が彼の足を拳銃で撃ち抜いて、転倒させた。

 

「待って!殺さないで‼︎」

 

心の底から出た言葉はそれだった。

イリーナは銃を向けながらも側面へと回り、JDの様子を確かめる。

JDは泣きそうな顔でイリーナに話しかける。

 

「俺……本当は独立とかどうでも良かったんだ…。ただ、イリーナや…みんなと、ずっと一緒に居れたらって…そう、思って…」

 

彼が言い切る前に目からは血の涙が幾筋も流れ落ち、人間としての意識も無くなっていく。呻き声を更に大きくし、首がイかれた方向に捻じ曲がる。

そして、最後には頭が吹き飛んで寄生体が姿を現し、JDは完全なる怪物へと変貌を遂げた。

イリーナはその姿に茫然としたままだ。

せめて止めはイリーナに任せようとも思っていた紗枝だったが、これではどうしようもないだろう。

拳銃をもう一度構えて、もう二度と対話の出来ないJDに言った。

 

「別段嫌いではなかったわ、JD」

 

そして銃弾を4発、寄生体に撃ち、JDの肉体を永久に葬った。

茫然としていたイリーナも死んだJDを見て、壁にトンと軽く背中を付けて地面にズルズルと倒れていく。

 

「……幼馴染みや親友が目の前で死んでいくのを…私も何度か見た」

「………」

 

紗枝はイリーナが今からしようとしていることを止めさせようと説得する。これは自らの意志でもあったが、何より…怪物になって欲しくないと願ったJDのためでもあった。

 

「BOWを使って、独立を果たす…。別に私は戦争して…独立を勝ち取ることを全否定するわけじゃあない。だけど、BOWは見境いなく人を殺す悪魔の兵器…。操ることが出来たとして、戦争が終わった後はそれらをどう処分する気?殺すの?奴らは私たちと同じ生物……抵抗して、逆に操っているあなたやその仲間を皆殺しにして…最後にはこの国そのものを破滅させるかもしれない…。そんな悲劇をもう生まないためにも…プラーガを渡して!今すぐ!」

 

これが紗枝の必死の訴えだった。

これでイリーナも目を覚ましてくれる…そう思った。

目の前で仲間を失い、BOWの恐ろしさを何より知っている彼女なら……と。

だが…俯いていた彼女が出した答えは、紗枝の想像とは違った。

 

「…そう言うなら、あなたもその銃を置きなさい。今ここで独立を断念したら…アダマンや、私を信用してくれた仲間に面目が立たない。もう、分かっているでしょう?私とあなたは…お互いに理解出来ない。戦っている意志の強さが、桁違いなのよ」

「…イリーナ……」

 

その時、ジェット機の爆撃が教会周辺にまで広がった。

その震動で元々脆かった教会の天井は崩落する。その間にイリーナは先に教会から逃げ出そうと走っていった。

紗枝は瓦礫を避けながら、イリーナを追う。だがすぐに彼女を見失ってしまい、途方に暮れるが、まだ諦めた訳ではなかった。

仲間を失い、潜伏先も破壊されてしまった以上、彼女は行動せざるを得ない状況に持ち込まれた。

明日の朝…イリーナが動くことは間違いないと思った紗枝は彼女を追うことを一旦止め、明日の朝に向けて準備を始めるのだった。

 

 

玲奈はフードを被って、国境近くにまで来ていた。

もちろん国境には銃を持った兵士がいる。

どうしようかと思えば、突然兵士たちは何か連絡を受けて、見張りから離れていく。

それはそれで玲奈は有り難かったが、見張りを放置してまでの集合だったのか…。

何かが起きる。そう思った玲奈は、フードを脱ぎ、さっさと街に入っていく。紗枝を助けるため、そして……自らが求める物を見つけるために……。

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