バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第36話 蘇る記憶

底知れない縦穴をひたすらに降りていった紗枝は、とある地下の施設に到着した。大きな金属製の扉を開けて、中に入る。

銃を構えてゆっくりと侵入する紗枝。

周りはコンテナが立ち並び、見る限りコンテナ置き場にしか見えないが、それだけのためにこんな巨大な地下施設を作ったとは考えられなかった。

そう思った紗枝の前に巨大な建造物が立っていた。

コンテナが並んでいる中、とても浮いているこの建造物の中に入ってみると、青いハニカム構造をした壁が見えた。

 

「……ただのシェルターなんかじゃ無さそうね…」

「そうだな…。こいつは凄いな…」

 

また…紗枝の耳に竜馬の声が聞こえて、反射で銃を構えて撃とうとしてしまうが、寸でのところで抑える。

 

「俺を見ただけで撃とうとするな。俺は前も言ったが、あんたに用はない。俺の狙いは…こいつらさ」

 

竜馬は颯爽と紗枝の横を通って、中央にあるパソコンに真っ直ぐ向かう。竜馬は懐からUSBメモリを取り、コンピュータに刺してデータをコピーする。

 

「これは何なの?竜馬、知ってるんでしょう?」

「ああ。こいつらはリッカーを操るプラーガだ。そこらにいる従属種とは格が違う」

「……そのデータを盗むのがあなたの任務ってわけね」

「ああ、だから邪魔は…」

 

竜馬が言い切る前に紗枝は銃口から弾丸を放ち、コンピュータを破壊する。

 

「……何するんだ?」

 

竜馬は腰の拳銃に手を置き、今まで出していなかった紗枝に敵対心を向ける。その威圧に紗枝は極度の恐怖を感じたが、負けじと銃を構えたままこう言う。

 

「あなたが言う『あの人』が誰か分からない…。だけど、良からぬことをしようとしていることに変わりない。だから…このデータは渡せない」

「それを言うのは私の方よ」

 

すると突然、女性の声が聞こえたかと思えば周りから完全武装した兵士達が雪崩れ込んできた。その中に一人、高貴な服を着た若い女性が混じっている。

 

「やはりこれが狙いね。それにしても…きちんと縛って見張っていたのに…意図も簡単に破るとはね。甘く見ていたわ」

「…人間じゃないからな」

「!」

 

紗枝は今の竜馬の発言に紗枝はピクッと反応した。

だが、考える間もなくスベトラーナは紗枝に視線を向けて、横にいる秘書に確認する。

 

「そこの女は?」

「分かりません」

「日本のBSAAだ。俺の同僚と言ったところかな?」

 

スベトラーナは「ふうん」と言って、興味無さげに竜馬に視線を戻す。

 

「さて、コンピュータも壊されたことだし、ここに用は無くなったな…。あとはあんた…いや、紗枝さんに任せるか」

 

そう独り言みたいに言うと、突然照明が消えた。

紗枝とスベトラーナたちは驚き戸惑うが、紗枝からすれば逃げるための絶好のチャンスだった。

一人一人を狙うことなくライフルを撃ち、相手を撹乱させる。

その作戦にまんまと嵌まった奴らは無鉄砲に撃つが、当然紗枝にも竜馬にも当たらない。そして電気が復旧した時には、紗枝はスベトラーナの背後に回って銃口を背中に付けていた。

 

「動かないで!ボスの心臓が吹っ飛ぶわよ?」

 

紗枝はスベトラーナの肩をがっちり掴んでゆっくりと後退していく。

 

「あなた…誰に銃を向けているか理解してる?」

「ええ。このプラーガを入れている容器に彼の最後の言葉から推測してあなたが……ビーキーパー!」

「ビーキーパー?」

「プラーガを放ったのはあなたね?」

 

確信を突いたのか、スベトラーナはフンと鼻を鳴らす。

 

「…やっぱり分かっていない。私はこの国の…大統領なのよ?」

 

そう言い終えると、彼女は紗枝が背中に当てていた拳銃を弾き、平手で紗枝の頬を殴り、更に高いヒールで紗枝の腹を蹴り上げた。

 

「かはっ…!」

 

吹き飛ばされながらも紗枝は態勢を直そうとしたが、その時にはスベトラーナは目の前にいて落としたはずの拳銃を拾って紗枝の額に当てていた。

 

「……くっ…」

「この国の敵になる者は生かしておかないのよ。悪く思わないで」

 

引き金に力が入りかける。

逃げる術はほぼない。じっと身体を固めたまま、死を待っていると…『奴ら』が現れた。

紗枝のスベトラーナの間にリッカーが割り込み、スベトラーナの腕を切り裂いたのだ。

 

「何⁈」

 

横を向くと、巨大なエレベーターから大量のリッカーが侵入して、兵士たちに襲いかかっていたのだ。リッカーの素早い動きに兵士たちの撃つ弾丸はちっとも当たらず、一人…また一人と食われていく。

紗枝がふと上を見上げると、そこには2体のリッカーを傍に置いて見ているイリーナの姿があった。

コンテナに上がり、紗枝は声を上げた。

 

「使ったの⁈プラーガを…!」

「…見れば分かるでしょ?」

 

目を赤くさせて、イリーナはリッカーに指示をした。

リッカーは紗枝の両肩を掴んで地面に叩き落とすと、その頭を喰らおうと口を開けた。紗枝は右に避けてやり過ごす。

何度もしつこく食らいつくが捉えきれないリッカーは、次に左腕を上げて地面と平行に引っ掻く。

紗枝の服を一部切り裂いたが、左腕をを上げてしまったため銃を取る隙が与えられる。

紗枝はその瞬間に素早く銃を取って、リッカーの頸動脈を貫いた。

絶命したリッカーは紗枝にもたれかかりながら死ぬ。

死骸を退けて、紗枝はポツリと呟いた。

 

「…ごめんなさい、JD…。遅かったよ…」

 

亡きJDに謝罪し終えたら、紗枝は改めてライフルを構えてイリーナに撃とうとする。が、既にイリーナの姿はない。

もう一度コンテナに上がると、イリーナがスベトラーナの逃げた方向に走っているのが見えた。

狙い撃ちにしようと思ったが、側面からリッカーが飛びかかってくる。身体を低くして避けると、紗枝はコンテナの上を走り出す。

リッカーに追われながらも、目的の人物を探す…。

こんなこと二度と出来ないだろうと思いながら走る紗枝の目の前にリッカーが飛びついてきたが、ライフルで口の中を撃ち抜いて殺す。

最後に地面に降り立ち、イリーナの姿を改めて確認するともうすぐ近くだった。

だが、その進行を拒むかのようにリッカーが配置される。

向かってくるリッカーに容赦なく銃弾を撃ち込もうと思った途端、リッカーは紗枝に背中を向けて明後日の方向へと駆けていく。それは他のリッカーも同じで、全個体が同じ方向へと向かっている。

紗枝のそのリッカーを追う。

 

その頃、腕を負傷したスベトラーナとその部隊の前には大量のリッカーとイリーナが立っていた。しかし、奥にいるスベトラーナは腕の痛みに苦悶に表情を浮かべながらも、余裕の笑みを浮かべていた。

一人、一人とリッカーにやられていき、遂にスベトラーナも討ち取ったと思われたが、飛びかかったリッカーは直前で透明なガラスにぶつかってしまう。

イリーナは更にそこからライフルを乱射して、ガラスを破ろうとしたが、防弾ガラスでは歯が立たなかった。悔しそうにイリーナはガラスを叩く。

 

「私を殺す気?それでどうやってこの国を保たせようって言うの?」

「説得しても無駄よ‼︎あなたは国民を騙して破壊に導いている偽善者よ‼︎罪のない人を何千人と殺して…!」

「言っておくけど、反政府軍の大体は私側についていたのよ?あなた達以外ね…」

 

そう言った途端、イリーナの勢いが衰える。

 

「殺されたくなければ助けてあげるとか…いかにも嘘っぽいことで降伏したわ。笑ったわね、あの時は…」

「黙りなさい‼︎‼︎うぐっ……うう!」

 

イリーナは突然心臓に手を当てて、苦しみに悶えた。

原因は言うまでもない。しかもかなりリッカーに指示を与えているため、プラーガの侵食も早いのだ。

 

「あなたも限界に近いようね。私からの最後のプレゼントよ…。じっくりと…味わってね…」

 

スベトラーナは防弾ガラスの奥のエレベーターに乗ると、ここから消えた。

そして、地下施設に赤ランプが点滅し、1つの円筒が突き出た。

そこから出てきた者を見て、紗枝のトラウマを蘇らせた。

 

「あれは……!」

 

忘れたくても…忘れられない怪物…。

円筒に刻まれたJT-1000の文字。

煙と共に現れたタイラントに…紗枝は身体を震わせた。

 

「…二度と見たくなかったわ…」

 

だが、イリーナは果敢にもリッカーに奴を排除しろと指示する。

一体のリッカーが飛びついたが、タイラントの顔に齧り付く前に頭を巨大な手で掴まれて、底知れぬ握力でリッカーの頭部を握り潰した。

 

「……逃げるわよ‼︎こっち!」

 

紗枝は噎せているイリーナを抱えて、先程リッカーたちが入ってきたエレベーターに乗り込んで逃げようとする。しかし、扉の閉まりが遅いため、その間奴を足止めしなければならない。

紗枝は無駄と分かりつつ、ライフルを撃つ。

弾はタイラントの防弾服に当たって跳ね返るばかりだ。もう少しでエレベーターごと破壊しそうなタックルが直撃するかと思われた時、リッカーがタイラントに飛びついた。

リッカーのお陰でエレベーターはきちんと閉まり、上昇を開始する。

その時にも、イリーナは咳をしている。

 

「…どうして…助けたりしたの?」

「助けた?勘違いしないで。私が助けたのは、JDに頼まれたから……ただそれだけよ」

 

そうやって話していると、突然エレベーターの扉がひしゃげてタイラントの巨体の半分が侵入して来た。

あの金属製の扉を破壊する力には恐れ入る二人。

 

「上よ‼︎ハシゴがある!」

 

二人は急いでよじ登る。タイラントの体重でいつまでエレベーターが持つか分からない。

 

「急いで‼︎」

 

イリーナが手をかけようとした時、再びエレベーターは激しく揺れた。下を見ると、なんともう一体侵入してきたのだ。

 

「2体なんて…冗談も程々にしてよね‼︎」

 

エレベーターとワイヤーを繋ぐ金具はもう限界だ。

苦しそうに噎せるイリーナは力を振り絞って、紗枝の手に掴まろうとジャンプした。その瞬間、エレベーターは更に下…奈落の底へと落下していった。

イリーナの手をギリギリのところで掴んだ紗枝は、彼女をハシゴに掴まらせて、先へと促した。

イリーナはもう一度下を覗いたが、何一つ…彼女の目には見えなかった。




アンケート実施開始。
合計30名アンケート参加で即終了にします。それで上位2つ(選ばれたものによっては3つ)を新たに執筆します。
本来はこの章と次の章で終わりにする予定だったんですが…自分が書きたくてこういう形に取らせて頂きました。
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