バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第41話 少女との出会い

暗い刑務所を出ると、既に外は夕陽で照らされており、夜の闇を迎えようとしていた。ただ、2人の視界の先には通信塔が聳えていて、薺はあそこの通信設備が使えれば誰かに助けを求められるかもしれないと考えた。

 

「やっと外に出れた…」

「安心しないで。アンデッドは明るかろうが暗かろうが…見通しが良くても悪くても襲って来る」

「…最悪だ…」

「とにかくあの通信塔に行って、助けを呼んでみましょう」

 

2人が歩みを始めたその瞬間、付けられた腕輪からキュイーンと音が鳴ると…。

 

『どう…?この恐怖…素晴らしくも恐ろしいものでしょう?』

「⁈何…今の……」

 

明らかに腕輪から女性の声が聞こえた。

この腕輪は通信機能でも付いているのか…。

 

『でも忘れないで。恐怖の夜は今から始まる…。真の恐怖が…ね…』

「あなたは誰⁈どうしてこんなことを…!」

 

薺が声を荒げると、一拍置いてから再び女性はこう告げた。

 

『名乗るなら…私は監視者…。または…あなたたちの命を生かすも奪うも決める決定者…かしらね…』

 

そう言ってから腕輪から女性の声は消えた。

モイラは少しビクつきながらも薺に聞く。

 

「何なの?今の……」

「分からないけど…私たちの敵であることは確かね…」

 

だが、薺はモイラ以上にこの腕輪から聞こえた女性の声に疑問を持っていた。聞いたことあるのだ。どこかでこの声を…。

そして彼女の記憶が確かなら…今の声は……。

 

「…そんなわけないか…」

「薺?」

「大丈夫よ。行きましょう」

 

モイラには言わなかったが、実際はこう思っていた。

今の声……どことなく玲奈に似ていた…と。

 

 

通信塔に到着し、すぐに助けを呼びたかったが、やはりと言うべきか電源が入っていない。だから薺はアンテナを作動させると同時に電源を復旧させようと、通信塔自体をハシゴで登っていく。

かなりの高さがあるため、登るだけでも風に煽られて落ちそうに何度もなる。どうにか頂上に辿り着き、少しだけ曲がったアンテナを電源に差し込む。

上から聞こえるか分からないが、薺はモイラに向かって叫んだ。

 

「モイラー‼︎やってみてー‼︎」

「分かった‼︎」

 

どうやら聞こえたようだ。

薺は降りて一緒に助けを求めようと思ったが、夕陽で照らされているこの場所を見て初めて分かった。

雲も風の影響でほとんどないからこの場所の全体像が良く見えた。

そして……絶句した。

 

「嘘……ここは……」

 

 

モイラはマイクに電源が入ったことを確認すると、マイク越しでも構わず大きな声を上げた。

 

「聞こえる⁈私はモイラ・バートン!何者かに捕まってどこかに閉じ込められているの‼︎本当にどこか分からない…それに仲間が化け物で殺されて……私や薺がいつ殺されるかも分からない!お願い‼︎誰か答えて‼︎お願い…‼︎」

 

しかし、無線からは沈黙だけが流れる。

折れかける心を必死に繋いで、モイラはもう一度声を出した。

 

「もう一度……私は、モイラ・…バートン…。化け物に襲われて…ここもどこか分からない…。お願い…!誰か……誰かあ……」

 

遂に心は折れてゆき、言葉も紡げなくなる。

無線機の上に上半身を乗せて、ずっと襲いかかってくる恐怖に負けて泣き出してしまう。

モイラだけでなく、薺も泣きそうだった。

電波塔から見えた景色を見たらモイラは完全に絶望するだろうと感じた薺は…思わず呟いてしまった…。

 

「こんなの…誰が助けに…」

 

薺たちは…絶海の孤島にいたのだ。

薺もガタンと膝を崩して、涙を一筋だけ流すのだった。

 

「来るっていうの……」

 

 

 

ー半年後ー

『聞こえる⁈私はモイラ・バートン!何者かに捕まってどこかに閉じ込められているの‼︎本当にどこか分からない…それに仲間が化け物で殺されて……私や薺がいつ殺されるかも分からない!お願い‼︎誰か答えて‼︎お願い…‼︎』

 

モイラの無線からの音声が海翔の携帯から寂しげに流れる。

海翔は行方不明のままの妹…薺を探すために単身調査を続けていた。

そして漸く…この無線の音声を入手して、今向かっている絶島の場所を突き止めることが出来たのだ。

だが、半分諦めかけてはいる。

あの時の玲奈の反応といい、薺が生きている可能性はかなり低い。

生きていてもあの場所にアンデッドやBOWがいることは明らかだ。

しかも…1人…。

1人で未知の島を生き抜くのは、海翔自身も無理だと言い切れる。

しかし、妹の骸もないままには出来ない…。

せめて、幼い頃に亡くなった両親の横に葬ってやりたいのが海翔のせめてもの願いだった。

絶島が見えてきた。

ボートの音が耳にずっと入っているが、何度聞いても…モイラの助けは実に悲痛そうだった。薺は一応気が強いように見せているが、実際はどうなっていたか分かったものではない。

 

「…待ってろよ、薺…。今助けに行くからな…」

 

生存の希望を捨てずに海翔はそう呟く。

間もなく絶島に到着する。

絶島は彼のことを静かに…そして荘厳に見下ろしていた。

船を港に付けて、流されないようにロープで繋ぐ。

海翔の見た限り、自分以外に人は居なさそうだが、万が一のためにボートは動かせないようにしておく。

だが、ボートを降りた途端、背後に何者かの気配を感じて、海翔は腰から拳銃を抜いてそちらに向けた。

振り向いたと同時に彼の視界に白いワンピースを着た幼い少女が驚いたような…怖がっているような表情で海翔を見詰めていた。のだが、すぐに目に涙が溜まっていき、大声を上げて泣き出してしまった。

 

「うわああああああああん‼︎」

「お、おい…。泣かないでくれよ…なっ?なっ?」

 

初めて会ったばかりの少女に泣かれてしまい、海翔はどうしようかと困惑するばかり。泣いた原因が海翔が拳銃を向けたことであることは明白であるため、海翔は拳銃をしまって少女を抱き締めた。

 

「よしよし…おじさんが悪かった。怖いもの向けてごめんな。お願いだから泣き止んでくれ…」

 

優しい口調で宥めていくと、少女は徐々に落ち着きを取り戻していった。

なんか昔、幼い薺を泣き止めさせるのと同じ方法だなと思いつつ、海翔は完全に泣き止むまで抱き締め続けた。

 

漸く落ち着いて、目元を擦る少女にちゃんとした会話が出来る状態にした海翔はまた泣かないように言葉をかけた。

 

「君…名前はなんて言うんだい?」

「…レナ」

「えっ…」

 

レナ。

確かに少女はそう名乗った。

だが、あの玲奈と関係は…。いや、まさかと海翔は思った。しかし、よく見るとこのレナという少女は、あの玲奈と似たような感じに見えた。

焦げ茶の長い髪、青い瞳、そして顔の形…。

似ているかと言われたら、似ているような気がした。

 

「…レナ…ちゃん。おじさんこれからこの島の奥に行かなきゃならないんだ。この船で…お留守番出来るかい?」

「………いやだ」

 

一拍置いてから、レナは小さく答えた。

はあと溜め息を吐いて、海翔は説得する。

 

「レナちゃん、この島は危険なんだ。不用意に動いたら…」

「いやだ!1人になりたくないぃ…!」

 

レナは海翔の胸に顔を押し付けてまた泣き出してしまった。

今度は恐怖ではなく、寂しいという感情からの涙だった。

普段の海翔なら一喝して、少女をここに置いていくことが出来ただろう。だが…レナの行動が、あまりに薺に酷似していて…。

 

『いやだ‼︎お兄ちゃんと一緒にいたいぃ‼︎』

「…っ……はあ、仕方ないなあ…。じゃあ、おじさんの傍から離れるんじゃないぞ?」

 

レナの言動に負けた海翔がそう言うと、レナは屈託のない笑顔で「うん‼︎」と答えた。

こんな笑顔も出せるじゃないかと、心の中で思った海翔。

だが、問題が1つ増えただけで根本的なところはまだだ。

このレナを連れつつ、この島を探索し、薺を見つけ、あわよくばその首謀者を『殺す』…。こんなことが出来るのだろうかと海翔は思ってしまう。

しかし止まってばかりいられない。

 

「レナ、手を繋ごう」

「うん…」

 

小さな手を繋いで、海翔は奥の建物に向かっていく。

死者とウィルスが混じり合った…この絶望の島に……ゆっくりと足を踏み入れていくのだった。

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