バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第48話 シベリア鉄道

食堂車で赤身がキラキラと宝石のように輝くローストビーフを頬張る玲奈。今出している表情は普段の玲奈からは想像出来ないくらい惚気ていることだろう。

一応玲奈も人間だ。美味しいものは美味しいと思うし、綺麗だと思うものは綺麗だと思える感情がある。

しかし、誰が何故…玲奈宛てにこんな招待状を寄越したのだろうか…。

遡ること4日前、傷も完全に癒え、漸く現場復帰かと思ったら、ポストの中にこの鉄道の招待状があったのだ。

往復代が入ったチケット…誰がくれたかは玲奈も分からなかったが、はっきり身体の中に残った疲れは完全に取れ切れていない。

どうしたものかと紗枝に相談すると、彼女は「ちょっと怪しいけど、行ってくれば?」とだけ言われた玲奈はこの招待状に甘えたのだ。

最初は列車だけで旅行なんて…更に疲れるだけだと思っていたけど、今は食堂車で美味しいものを毎日食い続ける日々だ。

周りの客も「あの人…食べ過ぎじゃ…」や…「あれが痩せの大食いか?」などなど、色々な話が飛び交っていた。

もちろん玲奈は食事に夢中で周りの言葉など聞く気もなく、ただひたすら…自らの腹を満たすためにナイフとフォークを動かすのだった。

 

 

 

玲奈を始め、他の客も寝静まり、列車の中で未だに起きている人物はほとんどいない。その列車の真上に一機のヘリコプターが通過すると同時に何かを落とす。

封印された箱…中から現れたものは…この快適な列車を…地獄に変える代物だった。

 

 

 

キキーーーーーーーィッ‼︎‼︎

列車が急ブレーキをかける音で目が覚めた玲奈が状態を起こすと、勢いよく止まった反動でベッドから転げ落ちる。

 

「痛…何?」

 

頭を抑えながら、自身の部屋の扉を開けると、クチュクチュと聞き覚えのある音が耳に入った。ゆっくりと首を横に動かすと、身体の大半を何かで覆われたアンデッドが人間を貪っていた。

しかも…アンデッドは玲奈を見ても無視して、ひたすら食事にありつく。武器を持っていない玲奈は一旦部屋に戻り、どうするか考える。

今、列車は完全に止まっている。それなら窓から出て助けを呼ぶという手がある……が、外は夜で視界は効かない。仮に見えたとしても、こんな辺境では助けなど呼べることも出来ないだろう。

 

「…また、この事案か…」

 

もうウンザリと言いたい玲奈は、とにかく部屋から出て先頭車両へ向かう。肉を食い続けているアンデッド横をゆっくりと通過し、気休め程度にしかならないが、消火器を片手に列車の中を歩いていく。

ところが列車が止まっていると思いきや、再び運行を開始したのだ。

誰が運転してるかは想像もしたくなかったが。それに、電車の動く音の合間に時折誰かの悲鳴が列車全体に響く。

人々を助けるのが自分の役目なのに…と、胸が締め付けられる玲奈。

そして…自身のお気に入りの食堂車に到着する。

中はすっかり荒れきり、窓ガラスも割れている。恐らくここが一番最初に襲撃された場所なんだろうと玲奈は思った。

そんな中、地面に落ちているものに目が行った。

大きさは手で掴める程度のもの。表面はネチャネチャしていて、触り心地は最悪だった。明らかに生物なのだろうが、一体…。

そうやってこの謎の生物が何かと考えていると、後ろに人の気配がした。

振り向き様に思い切り、消火器をぶつけた。良い音がした。

アンデッドの頭を砕いた音が…。不意打ちを防いだと思われたが、よく見るとアンデッドは確かに目の前にいるのだが、頭だけは人間のものではなく別のものだった。

 

「⁈」

 

消化器を手許に戻そうと思ったが、接着剤のように貼りついた消化器はピクリとも動かず、目の前にいるアンデッドの腕が玲奈の胸を小突いて突き飛ばす。

 

「ぐふっ⁈」

 

机と椅子を次々と薙ぎ倒しながら転がる玲奈。

 

「何よ…アンデッドに、こんな力は…」

 

椅子などを蹴飛ばして立ち上がると、アンデッドの身体に変化が起きていた。腐った肉体がブチブチと甲殻類の殻のように外れていき、全身ネチャネチャの謎の生物へと成り下がった。

しかも歩き方もはっきりせず、やりにくい。

 

「…こいつはやばいかも…」

 

急いでここから出ようとした時、そいつは腕を伸ばして来て玲奈の足を掴んだ。

 

「嘘!まっ…」

 

待ってくれるわけがない。アンデッドはゆっくりと玲奈を自分側に引っ張っていき、頭と思しきところから巨大な口を露わにする。

あんなので身体の一箇所でも噛まれたら溜まったものではない。

引き摺られながらも玲奈は何かないのかと必死に手を伸ばす。

そして…つい先日まで食事の際使っていたナイフを取って、奴の口の中に突っ込んで刺した。

化け物は奇声を上げて、苦しむ。

ナイフを抜くと、そこにはさっき床で死んでいた生物が1匹、刺さったまま息絶えていた。

 

「…まさかこいつ…この……ヒル?の集合体?」

 

そうと分かれば…と思った玲奈は、ヒルの集合体の上に馬乗りになり、その食べる用のナイフで何度も…何度も突き刺して、全てのヒルを殺そうとする。

かなり無謀であることは玲奈も分かっているが、こいつに追われ続けるのは嫌だから確実に仕留めたいのだ。

だが、そんなことをしていると人の形を作っていたヒルはバラバラになり、玲奈の身体にまとわりつく。

 

「しまっ…!」

 

このままヒルの餌食にされるだけだと思われたが、突然ヒルは玲奈の身体から離れていく。どうやら玲奈の体内のウィルスに反応したらしい。

こんなところで役立っても意味はないだろうと思いながらも、玲奈は机の上にあった酒を投げ、それを浴びせる。

そしてライターを付け、火を付けた。

あっという間に食堂車は火の海になり、ヒルは床の上で暴れ回るが、全て焼け死んでいった。

玲奈は食堂車から出て、連結部分を外す。

このまま火がこちらにまで移ってしまっては大変だからだ。

ガチャンと音が響き、玲奈の乗る車両と食堂車が離れていく。

これで逃げ場は少し無くなったが、敵もかなり減る。

燃える食堂車にはヒル以外にもアンデッドがどんどん寄って来ているのが遠目に見える。

 

「…はあ」

 

一息吐き、早く列車を止めようと先頭車両に向かおうとした時。

離れていく食堂車の方から何か飛んで来るのが見えた。

それはロケット。

なんと燃え上がる食堂車からロケットがこちらに向かって来ていたのだ。

 

「嘘でしょ⁈」

 

玲奈はすぐに物陰に隠れたが、爆発と同時に衝撃と爆音が玲奈を襲った。それ以降ロケットは飛んで来なかったが、あの車両に何か居たことだけは間違いなかった。

 

 

 

止まった食堂車から出て来たのは機械の装甲を付け、自らの身長とほぼ同じ長さを持つロケットランチャーを持ったタイラントだった。

ターゲットを見失ったことを確認し、新たなロケットを装填する。

そして…タイラントの口からは…意外な言葉が漏れるのだった。

 

「玲奈ぁ……」

 

と…。

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