最凶の敵との戦いが始まる!
第51話 洋館
一機のヘリが樹海の上空を突っ切って進んでいく…。
中には海翔が指揮する数名の隊員が乗っており、全員に緊張感が流れている。誰も緊張を和らげるための話…ストレッチ…一切しなかった。
それもそうだった。
今回、BSAAが入手した情報を元に辿ると、今までで最悪の敵との戦いになるからだ。
問題の場所に到着するまであと数分、海翔は今回のターゲットについて説明と作戦を開始する。実際…これが最初にまともに言葉を交わす瞬間だった。
「みんなの機器にも送ったように、この男…グレン・アリエス…を確保または殺害する。奴は裏の世界では武器商人として金を得ている。そんな野郎が…遂にBOWにも手を出した。必ずアリエスを止めるぞ‼︎」
「「「「「了解‼︎」」」」」
ヘリは間もなく樹海の中にある洋館に辿り着く。
ヘリの音に気付いたアリエスは…窓から景色を眺め、フッと笑みを溢すのだった。
着陸した海翔たちは3、3で分かれて、一階、二階と向かった。
中は不気味な程静かで誰がしたか分からないが、蝋燭の灯りがゆらゆらと揺れていた。
一階の隊員は一つ一つ…部屋を確認していくが、人っ子1人、誰も見つからない。アリエスが潜伏しているというのは嘘だったのだろうかと、思った時、暖炉から「うぅぅ…」と苦しみ、呻く声が聞こえた。
ライフルを構えて、ゆっくりと近付く隊員たち。
そして…暖炉の中をライトで照らした瞬間、何かが飛び出して1人の隊員に襲いかかった。
それは下半身のないアンデッドで、襲われた隊員の首を引き千切ると、まだ生きている隊員たちに白い目を向けた。
「に、逃げろ!一旦退くぞ‼︎」
そう叫んで、通路に戻ろうとした時…彼らの身体に異変が起きた。
とある場所を通過してから、暫く身体が硬直したかと思えば、上半身はバラバラと肉塊となって落ちていった。
実はそこの通路には見えないワイヤーが張り巡らせていたのだ。
襲ったアンデッドは笑いを浮かべる。
それを真正面から見詰めるアリエス。
また微笑を溢して、アリエスは何処かへと消えていく。
一方、海翔たち3人は二階である一室で1つのおもちゃの車に興味を惹かれていた。何故かというと、ベッドに置いてあるのだが…不意に動き出したからだ。横転していて、もちろんベッドの上では走り回らないが、タイヤだけがカラカラと空回りして、その音は部屋に小さく響いている。
1人の隊員が、ゆっくりとそのベッドに近付くと、おもちゃの車は動作をやめた。暫く呆然としていたら、突然、ベッドの下から腐った腕が伸びて隊員の足を掴んで、引き摺り込んだ。
「うわああああ!」
「くそっ!」
下を覗く海翔だが、既に遅く隊員はアンデッドに蝕まれていた。
しかも横にいたもう1人の隊員も襲われている。しかも…その片手にはさっきのおもちゃを動かしていたと見られるリモコンも…。
「まさかこいつ…俺たちの気を引くために…」
何にせよ、早く逃げなければ海翔も餌食だ。
海翔は手榴弾のピンを抜き、部屋に投げて扉を閉めた。
数秒後、扉を吹き飛ばしながらも部屋は吹っ飛び、海翔の足元には隊員の頭がゴロゴロと転がってきた。
「…すまない…」
とにかくここから逃げ出さなくてはと思い、すぐに玄関に向かう海翔だが、そこには最初は見る影も見せなかったアンデッドがウヨウヨいた。ライフルを構えて、一体一体殺していくが、これではキリがない。
もう一回二階に行き、目の前の窓から身を投げ出して洋館から脱出する。着地と同時に弾を再装填し、向かってくる奴らに向けようとしたが、銃口を誰かに掴まれる。
目の上にあるキズ、白い髪…そして何より…不適な笑み…。
「アリエス…!」
ライフルを掴まれてしまっては意味がない。
海翔はこの状態から膝蹴りをかまし、更に拳を突き出したがどちらも避けられて、ライフルを奪われる。しかもその際には弾倉も中に残った銃弾も抜かれて…。
「くそ…」
「ふん…」
海翔はナイフを抜き、相手の様子を伺う。
アリエスは奪ったライフルで勝負をかけてくるようだ。
海翔はどこでもいいからアリエスの身体の一部にナイフを突き刺し、その隙に腰にある拳銃でぶっ殺してやろうと考えていた。
が…海翔の想像通りにはいかず、ナイフは刺さるどころか擦りもしない。しかも、合間合間にライフルで腹を突いてきたり、攻撃にも隙がない。そして、アリエスは海翔の背後に回って、ライフルで喉を抑えつけると腰の拳銃を奪い、三発…海翔の背中に命中させた。
「ぐあっ‼︎」
防弾しているから傷はないが…それでも衝撃だけで身体は動かなくなる。ゴホッと口から血を吐き、痛みに耐える。
アリエスはその拳銃も捨てて、話を始める。
「私の仕事を邪魔しないでもらえるかな?BSAAのエリート、Mr 海翔?」
「うるせえ…っ‼︎クソ野郎が…!」
「もう完成している商品にキズを付けるのもやめてもらいたいね。そう…こいつらとかね…」
アリエスが指差すところには、金髪の女性と…明らかに人間ではない巨体を持った奴が現れた。その後ろには数多のアンデッドもいるのだが…アリエスたちには襲いもしない。
「これが私の商品だ。敵と…味方を区別出来る…究極のアンデッドが…ね」
アリエスはそのまま2人の元に行こうとした。
しかし、カチャ…と銃を構える音がして足を止めた。
海翔もその音に気付いて、振り向くと…そこには何と玲奈がいた。
「玲奈⁈どうやって……ここに⁈」
「……あんたね…漸く見つけたわ…」
海翔の質問を無視して、玲奈は拳銃を向けたまま、アリエスに歩み寄る。しかし、アリエスに焦りの顔は見えない。
「君が来るとはね…。“彼”も会いたいだろうね…」
「竜馬はどこ?答えないと、そのムカつく頭吹っ飛ばすわよ?」
「…そう言ってるよ?竜馬…」
アリエスがそう言った瞬間に、木々の間から黒いスーツを着た竜馬が飛び出してきて、玲奈の拳銃を弾いた。
「…!」
「ふっ…」
完全に虚を突かれた玲奈。そこに漬け込む竜馬はガラ空きになった腹に強烈な蹴りをかまして、吹っ飛ばす。
「あぐっ!」
立ち上がる玲奈だが、顎を蹴られ…腹に足を乗せられる始末。
「ぐっ……この…ぉ…!」
「相変わらず甘いな、玲奈」
「竜馬……お前…まさか…」
「感動の再会か…良いものだ。私も出来たら良かったのに…。さて…玲奈、君には来てもらうよ?」
「⁈」
「私の計画のフィナーレを飾るのは君だからね」
「ふざけないで‼︎誰があんたみたいな奴と…!」
ゴキっ‼︎
「ぐぅう⁈」
「言葉に気を付けな?さもないと、今度は首を折るぞ?」
竜馬の蹴りが肋骨に響き、二本程折れた。
「とにかくだ。早く行く……」
アリエスはそこで口を閉じる。
耳を澄ますと、数機の新たなヘリが向かって来る音が聞こえてきた。
溜め息がちにアリエスは海翔を見る。
「何もかもお前の思い通りになると思うなよ、アリエス…!」
「…仕方ない。竜馬、ここは退くとしよう…。まあ…君らが生き残ってるかは分からないがね…」
そう告げると、竜馬は玲奈の背中から足を退けた。
だが、玲奈はわらにもすがる思いで竜馬の足を掴んだ。
絶対に逃がさないと言いたげに…。
「ここまで来て……逃がさない…」
「うるせえな。さっさと失せろ」
今度は頬を蹴り、玲奈を突き放す竜馬。
そのままアリエスと竜馬、金髪の女と巨体の奴は霧の中に消えていった。
しかし、玲奈と海翔の前には数多のアンデッドが肉を求めて、ゆっくりと歩み寄ってくる。玲奈は肋骨を折られて、身体は起こせず、海翔も防弾越しに受けた銃弾で立つことも出来ない。
ヘリが来ても…その前にやられる可能性も出て来た。
そして…一体のアンデッドが玲奈に覆い被さる。
「くっ…この…!」
胴体を蹴って、距離を取る。
海翔も後退りでアンデッドと距離を取っていくが、アンデッドの追跡は止まらない。
ここまでかと思われた時、ヘリのローター音が大きくなって来た。
そして、眩しい光で辺りを照らし、上空から弾丸が飛んでくる。
アンデッドの頭部を狙うとか関係なしに撃っていき、最終的に洋館を半壊させたところで…ヘリからの攻撃は終了した。
海翔は拳を地面に叩きつけて、悔しくて…大きな声を上げるのだった。
「くっ……そおおおおおおおおおおおおおおお‼︎」
玲奈はそんな姿を、悲しそうに見詰めていた…。
ここまで長かったような短かったような…。