バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第52話 新たなウィルス

洋館に残っていたアンデッドの死骸は全て、BSAA専属の大学に送られた。そこでは毎日のようにウィルスに関する研究がされ、研究者は個々のウィルスに対応する抗ウィルス剤を作るのに必死になっている。

…のだが、今回送られてきた死体から採取したウィルスに研究員は全員悩んでいた。

その内の1人が薺。

何故ここにいるかと言えば、テラセイブは絶島の事件で甚大な被害を負ってしまい、再興は不能となってしまったのだ。無職になってしまった薺を気遣って、海翔がこの大学に連れて来たのだ。

薺は見た目に反して、意外にも理系で、こういった実験は何度となくしたことがあった。

 

「どうした?…またこれか…」

 

薺に声をかけたのは同僚のアーロン。

いつもコーヒーの入ったマグカップを片手に彷徨いている。

服のシワも多いから、また徹夜したのだろう。

 

「そうよ…。グレン・アリエスが言っている『敵と味方を区別する』ウィルス…。何度見ても実験しても、その特効薬も分からないし、発症原因も分からない」

「発症原因なら、単に噛まれただけじゃないのか?」

「それが違うの」

 

薺はパソコンをアーロンに向ける。

そこには1匹のマウスがいて、注射器で件のウィルスを注入される。

しかし、何時間経っても発症どころかその兆候も見られない。

 

「何かおかしい…。まだ何か足りないんだわ。発症までの段階で…」

「それが分からなきゃ、永遠に特効薬は作れない…か…。全く…面倒なウィルスを作ってくれたな、アリエスって奴も」

「それでも私は見つけ出すわ。兄さんの期待に応えたいから」

「相変わらずの兄さん想いで」

 

ビクッと身体を震わせて、「違う‼︎」と叫んだ時にはアーロンは薺の後ろにはいなかった。

 

 

アーロンはコーヒーを飲みながら、廊下を歩いていると、天井のダクトが外されているのに気付いた。ネズミか何かかなとも思ったが、それにしては外され方が乱暴だった。

注視していたら、不意に後ろから誰かがアーロンの首を掴んで地面に伏せた。アーロンの手からはマグカップが落ち、コーヒーが地面に広がる。

最後にアーロンの目に入ったのは片目が潰れた…金髪の女の姿だった。

 

 

ふと、薺は何かに気付いたのかウィルスの一部をズームする。

 

「これは……」

 

特徴的な長い因子…間違いなかった。

これはロス・イルミナドスの寄生体が持つ分子構造と同じだった。

だが、何故一部分だけ…。

そう考えていると、突然大学内にアラームが鳴り、赤いランプが点滅。

更には窓が分厚い鉄板で塞がれて、暗くなる。

そして…緑色のガスが構内に入ってくる。

 

「何⁈」

 

とにかくあの緑色のガスは絶対に良くないものだと直感した薺は、すぐに大学内の換気システムをオンにする。緑色のガスは今も地面を伝って充満しようとするが、薺の好判断で今いるこの教室だけはすぐにガスが無くなった。

 

「はあ…全く、何なのよ…」

 

溜め息を吐いて、教室の外に出る。

すると、クチャクチャと何とも嫌な音が廊下に小さく木霊していた。

そっちをよく見ると、誰かが倒れた研究員にのしかかっているように見える。

 

「ちょっと…何してるの⁈」

 

薺がのしかかっている男の肩を掴んで、自分の方に振り向かせると…血の臭いがプゥンと鼻を突いた。

 

「あ……」

 

薺の眼前には…さっきまで肉を貪っていたアーロンの哀れもない姿があった。

そして…アンデッドと化したアーロンは、生きた肉体を見つけると…口を開けて薺に襲いかかった。

 

「きゃ…!」

 

薺の両肩を掴み、薺に覆い被さるアーロンは…歯をカチカチ鳴らして、その喉元に噛みつこうとする。

必死に抵抗する薺は、胸ポケットからボールペンを取り出して、アーロンの額に突き刺した。それから腹を蹴って距離を取るが、アーロンも変則的な走りを見せて、薺の足に掴みかかる。

このままでは食われる、だが…同僚を殺すことに躊躇いを持ってしまう薺…。

既に手には置いてあった消火器を持っているが、振り下ろすことが中々出来ない。

 

「…アーロン、ごめん…‼︎」

 

一撃…アーロンの頭蓋骨を砕いた。

ピュッと血が飛び、薺の白衣を朱に染める。

アーロンを殺し、薺は脱力したのか、地面にゆっくりと崩れていった。

 

「どうしてここで…」

 

考える暇もなく、更なる悲鳴が構内に響く。

薺は消火器を捨てて、さっきの教室に身を隠す。

まず携帯で兄の海翔に連絡を取ろうとしたが、窓を塞いでいる鉄板の影響か圏外になっている。しかも固定電話も使えない。

それに薺は今、拳銃を持っていない。

一体だけなら良いのだが、何体も同時に襲ってきたら、もうどうしようもない。

 

「落ち着け……落ち着くのよ、私…」

 

そう呟き、机のペットボトルのミネラルウォーターを一気に飲み干す。

机の下に隠れながら、警戒しながら周囲を確認しようと頭を出した瞬間、腐った腕が伸びてきて薺の服に掴みかかった。

 

「やめて!」

 

『やめて』と言って、大人しくやめてくれたら如何に良いことか。

アンデッドは薺を力任せに机から引き摺り出し、机の上に叩きつける。

 

「あぐっ!」

 

血だらけの口が開き、薺に襲いかかる。

だが、その歯が薺の肌に食い込む前にアンデッドの頭が吹き飛び、顔に血がベットリと付いた。

目にも血が入り、ちょっと視界がボヤけるが、明らかに部屋の外には海翔を中心にしたBSAAの部隊がいた。もう一体アンデッドいたが、即座に頭を撃ち抜かれる。

 

「大丈夫か?言ったろ?今度は助けるってな」

「…またちょっと遅い気がするけどね…」

 

薺は泣き顔になりながらも、親指を上げてガッツポーズを作るのだった。

 

 

ウィルスに感染してないことを確認した薺はすぐに自宅に帰宅した。

帰宅と言っても、既に時間は深夜2時。

レナはすっかり寝息を立てている。シャワーを浴びて、風呂を出た時には海翔は家に戻って来ていた。

 

「はあ…散々な目に合った…」

「そうだろうな…。BSAA専属の研究所襲撃なんて…」

「でも襲われる前に分かったこともあるわ」

「何だそれは?」

 

濡れた髪を拭きながら、薺は説明する。

 

「例のウィルスにはロス・イルミナドスの寄生虫に似た構造を持った因子があった。敵味方の区別はそれが原因だと思うの」

「なるほどな…。それなら…奴らについてよく知っている奴に会うのが1番かもな」

「…玲奈のこと?」

「ああ…。今回のウィルスを特効薬を作るのも肝心だが、玲奈についても…どうにかしなきゃならんからな」

「…?」

 

海翔の言っている意味が薺には分からないが、とにかく明日は玲奈と会うことは確定だ。

そうやって話していると、目を擦りながらレナがリビングに入って来た。どうやら起こしてしまったようだ。

 

「あ…起こしちゃった?」

「パパ……ママ……また、どっか行っちゃうの?」

「…少しだけよ。すぐ戻ってくるわ」

「そうだぞ、レナ。安心しろ」

「さあ、寝ましょう」

 

薺はレナを連れて寝室に行き、一緒にベッドに入る。

頭を撫でて、寝かせようとするとレナがこう言った。

 

「もう……1人は…や、だ……」

 

これだけ言って、レナは眠りに就いた。

胸に突き刺さる言葉を言って寝てしまったレナに薺は、優しい眼差しを向けてこう言うのだった。

 

「私もよ、レナ…。おやすみ」

 

薺も一緒のベッドで目を閉じる薺。

大切なこの子を守るために…薺はまだ戦う…。

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