バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第18話 邂逅

玲奈は三人が自分から離れていったのを確認してから、橋から飛び立ち、ネメシスと同じ地面に降り立った。奴は咆哮して玲奈を威嚇するが、玲奈は腰から二丁拳銃を抜いて走り、あまり撃つ場所に拘らずに撃っていく。

だが、ネメシスの着る服はタイラントと同じように防弾性で皮膚にまで銃弾は届かず、火花を散らすだけだった。玲奈は舌打ちして、ネメシスの頭上を飛び越えようとしたが、ロケットランチャーを棍棒のように器用に使い、玲奈を柱に吹き飛ばした。

 

「ぐぅ…!」

 

ネメシスは一瞬の隙も与えずにミニガンを撃つ。玲奈は柱に叩きつけられた衝撃から立ち上がり、柱の影に隠れた。しかし、隠れてばかりもいられないため、すぐに柱から飛び出し、フェンスに向かって走り出す。それを追撃するようにネメシスもミニガンを撃ってくる。

玲奈は一発でも弾に当たらないようにジグザグに走って、フェンス前に到着する。後ろを向くと、ネメシスはロケットランチャーを構えていた。よじ登る時間はない。

玲奈は足腰に力を込めて、一気に跳躍した。車の上に到着した後、ミサイルが玲奈の方に飛んできた。玲奈は再び高々と跳躍したが、その瞬間、ミサイルは車を粉々に吹き飛ばした。玲奈も爆風を受けて、目の前の建物の窓ガラスに突っ込んで行った。

 

「くぅ‼」

 

ガラスが肌を裂き、血が垂れる。そして、ネメシスも巨体に似合わない素早い動きで一気に玲奈との距離を詰める。玲奈が飛び越えたフェンスも意図も簡単に飛び越えて見せた。玲奈はフラフラな足取りで廊下を走っていると、突然壁が崩れ、そこからネメシスが現れた。

奴には“道”という概念は無いようだ。玲奈は手榴弾のピンを抜き、後ろに投げる。数秒後、爆発を起こすが、ネメシスは身体にかかった埃を払っていた。

今現在の状況では、ネメシスには勝てないと判断した玲奈はマシンガンを構えて、ゴミを外に出すための小さな通風孔の下をマシンガンで撃ち、即席の穴を空けた。銃声を聞いたネメシスも玲奈の方に向かい、ミニガンを撃つ。ネメシスの指がミニガンに触れた瞬間、玲奈はスライディングして、速射をやり過ごし、即席で作った穴の中に入っていった。もちろん、マシンガンは持っていられるはずもなく捨てた。だが、通風孔の中は針金や尖ったものだらけで、ザクザクと玲奈の身体を傷つけていく。

 

「ぐはっ…!」

 

ボロボロに近い状態でゴミの集積場に到着した玲奈。だが、ネメシスは無茶苦茶なことに、通風孔にロケットランチャーを突っ込み、そこから玲奈を狙い撃ちにしたのだ。玲奈は咄嗟に背中にあった鉄の板を目の前に立て掛けた。しかし、衝撃や爆風をいくらか抑えきれても…爆音は防げなかった。耳にキィーーンとした耳鳴りが響いた玲奈は聴覚を一時失う。

 

「あ……あぁぁ…!」

 

ネメシスは玲奈を視界から外してしまったため、追跡不可能と判断して、戦闘態勢を解いた。

ネメシスの重い足音が遠ざかるのが耳鳴りした耳でも聞こえた玲奈は、壁に背中を預けて安堵に着く。が、玲奈の身体に蓄積されたダメージは相当なものだった。至る所が傷つき、血が流れる。意識はぼんやりで、今にも気を失いそうになる。

 

「うっ……はぁ、はぁ…」

 

玲奈は今回の戦闘で体力をかなり消耗してしまい、暫くは身体を満足に動かせないだろうと思った。

 

 

竜馬は紗枝、薺と共に早く逃げろと玲奈から言われ、走り続けていたが不意にあんなイカれた化け物を女性一人に任せていいのだろうかという不安が押し寄せた。

徐々に竜馬の足はゆっくりになっていき、遂に止まった。

 

「竜馬?」

「……やっぱり、置いていけない…。紗枝さん、薺…先に学校に行ってください!」

「竜馬はどこに行くのよ?」

「…玲奈のところに…」

「ダメよ!危険すぎる!」

 

竜馬の肩に手を置いて止めようとする薺を振り払って彼は叫んだ。

 

「玲奈はあの時…俺たちを助けてくれた…。置いてなんかいけない!」

 

竜馬はそう言い告げ、元来た道を再び走り出した。

薺も追って止めようとしたが、紗枝に止められた。

 

「無駄よ。あれじゃ…止まりそうにないわ」

「でも…」

「大丈夫よ。竜馬だって馬鹿じゃない。それに……」

 

紗枝は走り去っていく竜馬を見て、兄の竜也の姿が重なっているように思えた。

 

「彼…竜也にそっくり」

 

 

竜馬があの橋にまで戻ると、重い足音が静寂に木霊した。ネメシスが向こうの建物からゆっくりと歩いてきたのだ。竜馬は気配を無くし、建物の影に潜めた。

だが、同時に彼は不安になった。あの建物から出てきたということは……玲奈を既に殺してしまったのでは……と。ネメシスが見えなくなってからすぐに竜馬は駆け出し、建物に入る。銃弾の跡に爆発の跡もあった。激しくやりあったのだろう。そして、廊下に続く血痕が見え、それを追っていく。ゴミを出す通風孔の方から荒い息が聞こえた竜馬は中に潜り込む。通風孔を滑り切ると、目の前には衰弱しきった玲奈の姿があった。

 

「玲奈…!」

「…竜…馬?」

 

竜馬はまず玲奈の身体に付いた傷を確認する。身体中に切り傷は出来ているが、どれも命に支障を来すものではない。

だが、体力は限界そうだった。先ほどから、タイラント、リッカー、そしてネメシス…と連戦している。少しでここで休んでいくのが妥当だと竜馬は考えた。

 

「怪我は大丈夫そうだ。少し休んでいこう…」

 

竜馬は玲奈の頭を自身の胸の上に置き、落ち着かせる。玲奈はすぐに落ち着き、気が楽になっていったが、竜馬に至っては緊張が止まらなかった。竜馬からしたら、こんな美しい女性に胸を貸すなど、初めての体験だったからだ。

 

「………っ」

 

しかも静かだからより気まずい。何か声でもかけようとした時、玲奈は竜馬を見上げた。それも上目遣いだ。

 

「っ!」

「竜馬……あなた、どこかで、会った?」

 

唐突な質問に竜馬は戸惑ってしまう。竜馬がどういうことか聞き出そうと口を開く前に、甘えた子供のおうに淡々と話し出す。

 

「この温もり……初めてじゃない…。でも、竜馬じゃ…ない…。竜馬に似た…誰か……。誰?誰なの…?…思い出せない…。一緒に、あの時…戦ったはずなのに…、どうして……」

 

竜馬は言葉を失った。自分と似ている……。

そんなの…兄の竜也しか思いつけなかった。竜馬はこの玲奈が竜也と何らかの接点を持っていることに気付いたが、今の自分にはどうすることも出来ないと竜馬は思った。

 

「…今は…脱出を優先しよう…。薺と紗枝さんはもう学校に向かっているはずだ。行けるか?」

「…ええ…」

 

玲奈も、今の話を無意識にしていたことに、玲奈自身が気付いていなかった。けど、竜馬は気を利かせて何も言わなかった。竜馬は玲奈の身体を持ち上げて、立ち上がらせようとした時…カチャッ…と何かの金属音が響いた。そして、暗闇の中から…マシンガンを竜馬たちに向けた海翔が怒りの形相で現れた。

 

「お前…っ、今…“薺”って…」

 

竜馬も玲奈も突然現れた海翔に対応しきれずにいた。しかも、相当怒った様子でマシンガンを構えている。下手なことを言えば、殺される…。

 

「薺を知ってるのか!?答えろ…‼薺は今どこだ⁈」

「…学校…つっても分かるはずねえか…。とにかく落ち着け…‼今ここで争っても…」

 

竜馬が必死に説得している中でも海翔は竜馬のすぐ足元に弾をぶち込んだ。

 

「質問に答えろ…」

「……学校だ…。直ぐ近くの…」

「案内しろ…」

 

海翔の顔を凝視して、竜馬は気付いた。顔形がどことなく薺に似ていたのだ。

 

「あんた……まさか、薺の…お兄さん、か?」

 

海翔はそれを聞き、目を丸くした。

そして、震える唇で呟くのだった。

 

「ど、どうして…それを…」

 

 

一方その頃何も知らない薺は紗枝が車のエンジンに直結しているところを見学していた。将来役に立つかもしれないと思ったからだ。紗枝の細い銅線を弄るが、中々エンジンがかからない。

やり方は知っていたが、実際やるのは初めてだった。

 

「どう?」

「……気長に待ってて」

 

薺はふうと息を吐く。エンジン直結を試しながらも、紗枝はこの薺という女性…誰かに似ている気がした。紗枝の所属するSATの同僚並びに恋人の彼に似ている気がした。

 

「……まさかね」

 

そんな訳ないと、頭を振って今のことを忘れてエンジンを直結する。そして、バチッと火花が散った途端、車のエンジンが動いた。

 

「よし」

 

紗枝は薺にやったと言いたげな表情を見せる。

しかしその時…薺は叫んだ。

 

「紗枝‼後ろ‼」

 

振り向くと、アンデッドが紗枝に掴みかかってきた。もの凄い力で紗枝を運転席から引き摺り出し、吹き飛ばす。

 

「このっ…!」

 

拳銃を向け、引き金を引こうとしたが…そのアンデッドは、紗枝もよく知っている人だった。

 

「い……一輝…」

 

教会で命を絶たれた一輝はウィルスの力でアンデッドとして蘇り、紗枝に襲い掛かって来たのだ。つい1、2時間前生きていた同僚に中々引き金を引けない紗枝。しかし、躊躇っている時間もなかった。紗枝は目を閉じて、拳銃を強く握った。

 

「……許し…て」

 

紗枝は引き金を引き、一輝の頭に風穴を開けたのだった。これが紗枝が初めて知り合い…仲間を殺した瞬間だった。




今回の題名はネメシスと玲奈、海翔と竜馬、紗枝とアンデッド化した一輝が『出会った』ことから、“邂逅”という名にしました。
因みに邂逅とは、『思いがけない出逢い』を意味します。
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