泣き叫んで暴れる玲奈を竜馬1人でヘリまで連れて行くのは無理だと考えた紗枝は自身も玲奈の元に走っていく。
彼女が泣く理由は分からなくなかった。目の前でタイラントを倒すために我が身を犠牲にした竜也…。同僚の紗枝、海翔も胸を締め付けられたが、今はワンワンと赤子のように泣いている暇はない。
核ミサイルも向かってきているし、アンデッドも屋上にぞろぞろと集まってきた。
「玲奈‼泣いてないで急ぐわよ‼」
「いや…!いやぁっ‼」
引き摺ってヘリまで戻ると、海翔がいつも以上に大きな怒号を上げていた。
「立ちやがれ!クソ野郎!」
海翔は鼻血を出して無様な恰好の佳祐の首元に拳銃を突き付けてヘリの後ろのハッチにまで連れて行く。
「クソ野郎は貴様らだ‼俺が誰だか分かってんのか⁈立場を
仲間もいないくせに佳祐は気丈だった。
その様子を見ていた玲奈は泣き顔のまま、佳祐の胸ぐらを掴む。
「この……ゲスがっ…!」
玲奈は佳祐の顔面を殴る。ウィルスと怒りによって、玲奈のパンチは佳祐からしたらかなり痛かったことだろう。それでも佳祐は口を閉じない。
「命乞いなどしないぞ!甘く見るな!」
「しなくて結構よ!」
玲奈は佳祐をハッチから落とすような体勢を作る。玲奈の頭の中では、どうやって佳祐を殺してやろうかとしか考えていなかった。
既にヘリは離陸している。もう少し高度を上げてから落としてもいい。だが玲奈は、今までの戦闘で響いた銃声に引き寄せられた大量のアンデッドを見て、薄笑いを浮かべた。それを見た佳祐は唐突に慌て始め、玲奈に説得する。
「ま、待て‼私を殺したところで…な、何も変わらないぞ⁈俺はアンブレラの末端でしかない!」
「……そうね…。あなたは末端に過ぎない…。殺しても無意味……」
「だ、だろ?だからこの手をはな…」
「なんて…言うと思った⁈あんたが…アンブレラの末端だろうが、そうじゃなかろうが関係ない!私はもう決めているのよ‼あんたに死を与えるって…ねっ‼︎」
「ああっ!」
玲奈は勢いよく佳祐を地面へと突き落とした。佳祐は地面に着地した弾みで足を挫いたか、捻ったかは分からないが、まともに歩けなくなってしまった。更に地面にぶつかった音に反応したアンデッドも佳祐をさも旨そうな目で見た。
佳祐は身体を引き摺りながらも落ちていた拳銃を拾い、近付いてくるアンデッドたちに撃っていく。だが、一発も頭には命中しない。手が恐怖で震えてしまっているからだ。絶望した佳祐はせめて…食われずに死にたい一心でこめかみに銃口を当て…引き金を引いた。
カチン…と乾いた金属音が悲しく耳に響いた…。弾切れの合図だった。
「そ…そん……な……」
絶望は深みを増していき、遂にアンデッドの一体が首に歯を食い込ませ、頸動脈を裂き、血の噴水を作り上げた。
「アアアアアアアアアァァァ‼‼」
凄まじい絶叫を上げた佳祐は間もなく絶命した。
そして、その
「竜也の…仇よ…」
竜馬にもその呟きは聞こえていたが、彼は何も言わなかった。
そしてヘリはすぐに東京から離れていくのだった。
暫く飛行してから、東京に向かっていく一つの飛行物体が見えた。何かはすぐに検討についた。
「来たわね…」
「…あぁ…」
ミサイルは東京の中心辺りに向かい、そこで起爆した。一瞬の光に包まれ、その後、写真や白黒映像でしか見たことがなかったキノコ雲がもくもくと立ち上がっていくのが見えた。それを見ていた紗枝がポツリと言葉を漏らした。
「私たちは……結局何も何も出来なかった…」
その言葉は、全員の耳に聞こえたが、反論する者は誰一人としていなかった。
しかし、ここで爆発の衝撃波がヘリを襲った。ヘリは大きく揺れる。
「ダメだ!コントロール出来ない!」
「みんな‼伏せて!伏せ……」
紗枝の声は途中で、凄まじい轟音と共に消えていった…。
「!」
玲奈は掛け布団を振り払い、唐突に目覚めた。身体の至るところを見るが、どこにも傷は残っていない。既に完治しきっていた。
「起きたか…」
竜馬は玲奈が寝ていたベッドから見て左側にいて、窓からの景色を眺めていた。
「竜馬!?ここは…。だって、私たち……」
「聞きたいことは山のようにあるだろうが…順を追って説明するよ…」
玲奈は一旦少し落ち着き、竜馬の話に耳を傾けた。
「まず…ここがどこかだが……ここは…アメリカのミシガン州の大都市…デトロイトだ」
「デトロイト⁈」
玲奈には全く意味が分からなかった。
あの時、確かに玲奈たちは日本にいたのだ。
「それと、紗枝さんたちは別の部屋にいるよ…。後で会いに行くといい。そしてここは、東京が核で吹き飛んだため、流出した日本人を一時的に住むための仮設住宅だ。俺も……あのヘリの墜落から目覚めた時には、既にあのベッドで眠っていた…」
竜馬が指差した先には玲奈と同じ白いベッドが
玲奈もベッドから降り、窓から景色を眺めた。竜馬の言う通り、光り輝くビル群が玲奈の目に飛び込んだ。ここがデトロイトかは分からないが、アメリカなどの先進国であることは間違いなかった。
「因みに、ここはアンブレラが資金を援助して作ったそうだ…。ここの職員から聞いたよ…」
「嘘…。でも、どうして私たち……」
「そこは丸っきり謎さ。俺たち全員目を開けたらここだし…混乱するよ…。本当に……」
それから竜馬は何一つ喋ることはなかった。玲奈は窓から見える広い広い仮設住宅を静かに眺め続けるのだった。
それから玲奈たちはアンブレラに追われることがない安全な生活を送っていた。ここにやって来た
自分を見るここの職員たちの嫌な視線に…。明らかに玲奈が美しいだ、美人だとかのものではなかった。まるで籠の中にいるネズミのように監視されているような感覚だった。それに気付いた玲奈は、早々にここから離れたいと思うようになっていた。だが……2か月後…最悪の展開を迎えた……。
ー2か月後ー
「くそっ!どうして、ここに“あいつら”がいるんだよ!」
竜馬は燃え上がる住宅の中で叫んだ。目の前には、2か月ぶりに現れたアンデッドが廊下からこっちに向かってきていた。しかも最悪なことに、玲奈、紗枝、海翔とははぐれてしまったのだ。
「薺!玲奈たちがどこにいるか分からないか⁈」
「分からないわ!今は早く逃げた方がいいわ!ここにいた人…もうあいつらになっているから…」
「それなら早くずらかろうぜ⁈」
智之が声を上げる。竜馬は歯を噛み締めて廊下を走り出すのだった。
一方の玲奈はハーレーの後ろに食料、物資、武器を詰め込んだバックパックを置いて発進する準備を始めていた。そこに1体のアンデッドがやって来るが、髪の毛を鷲掴みにして炎の中に投げ込んだ。アンデッドは頭を破壊しない限り死なないが、炎で燃やしたら動きが緩慢になることが分かった。
「………」
玲奈たちが2か月間…住んでいた住まいが炎上しているのを軽く眺めてから、バイクに跨る。そして…エンジンをかけて単独でこの場から逃げ出した。
孤独は嫌だったが、アンブレラに監視されているなら…竜馬たちを迷惑、危険に晒すのだけは避けたかった。本当ならもっと早くに出るべきだったのかもしれない。この騒動も…自分が原因かもしれないと思ってしまう。
これからは1人で生きるんだと決意した玲奈…。
彼女の乗るハーレーは、後方で激しい音を立てて崩れるビル群の背景とアンデッドが放つ不気味なBGMを奏でて真っ暗な道路を駆け抜けていくのだった。
次回からは新たな章に突入です。
日本ではなく、アメリカが舞台となります。これからは海外が主です。
原作と違って、主人公は超能力は使う予定はありません。ややこしいので。