今回は竜馬たちと並行して玲奈の状況を書きました。
では、どうぞ。
とある道に車が乗り捨てられていた。
その近くには、その車の運転手がアンデッドに食べられている光景があった。エンコしたかガス欠したかは不明だが、うっかり外に出たのが運転手の運の尽きだろう。アンデッドは自分が食べたい欲求が無くなるまで、こいつを食い尽くそうと思ったが、後方から聞こえてきたエンジン音に食事を止めて、振り向いた。
その瞬間、アンデッドは車に轢かれた。吹き飛ばされるが、頭は潰されていなかったため、死んではいない。しかし更に前方から来たスクールバスの前輪がアンデッドの頭をグチャグチャに潰して、血飛沫を飛ばした。
それを見たバスの乗客…主には子供たちは、顔を不快そうに歪めた。
「さっきのは良い飛び散り方だったなぁ!」
オルトは陽気な声を上げた誰も反応せず、ガックリとした。
この車の集団はガソリンスタンドや何かしらの建物を見つけ、食料、物資、武器を手に入れ、ひたすら放浪するという…酷い旅を続ける者たちだった。
だが、これしかない出来ることがないと思っているこの集団のリーダー、薺は一応生存者全員の意見を聞いてやっている。とは言うが、薺の案を反論する者はいない。
薺は窓から差し込む太陽を右手で遮りながら、無線機で別の車に乗る竜馬に連絡する。と言っても、この会話は無線を持っているメンバー全員に聞かれる。
「竜馬、ちょっといい?」
『何だ?』
「…タバコ、ある?」
『なぁ、毎回言うようだが…俺は生憎様、タバコは吸わない主義なんだ。誰かさんとは違って』
『あ?それは俺のこと言ってんのか?』
別の無線から苛立った智之の声が聞こえる。薺は彼にも聞く。
「タバコ、ない?」
『薺殿、ある……わけない』
「他のも?」
『すっからかんさ』
『嘘でしょ⁈オルトは持ってるよね⁈』
焦った様子で話すルッティーは希望を持とうとする。だが、オルトから帰ってきた返事は…。
『悪いが……さっきのガソリンスタンドで吸ったよ。最後の一本を』
無線からはルッティーの舌打ちする声が聞こえた。
要するに、結論としてはもうタバコはもう一本もないということだ。
「…ちくしょう…」
薺はそう毒づき、タバコの箱を外に投げ捨てた。つい七ヶ月前はタバコを吸わなかった薺だったが、こんな世界になってしまい、タバコを吸わないとやっていられなかったのだ。
智之は嘆くように呟いた。
『まさに…この世の終わりだ』
薺たちは新たなガソリンスタンドに到着した。前から二台目の車に搭載しているスピーカーからエッジが呼び掛ける。
「生存者、いたら応答してくれ。……生存者、いるなら早く応答しろ」
最後はどこか投げやりだが、エッジはもう何度と同じ呼びかけを様々な場所でしてきたから飽き飽きとしていたのだ。
それでも、生存者はまだいると信じて、また声を出す。
「……動きはない」
「いつものことだろ?」
竜馬は薺に聞く。
「薺、行くか?」
『当たり前よ。竜馬と智之に任せるわ』
「俺もかよ。仕方ねえな…」
二人は車の上から降り、それぞれの武器を構えながら建物に入っていく。竜馬が先頭で、智之は後ろからついてくる。竜馬の見た感じ、誰かが住んでいる様子はなさそうだった。暫く進んでいくと、T字路に当たった。
「どっちがいい?」
「俺はいつも賭け事では、左を差すんだ」
「どうして?」
「勝率が高いから」
「…なら、その勝率を期待して左に行くんだな…奴らに会わないと願って…」
竜馬は右に、智之は左へと分かれて進んで行った。
竜馬はゆっくりと進み、でかいダブルベッドが置かれた部屋があった。恐らく、このガソリンスタンドを経営していた夫婦が寝ていたベッドだろうが、赤黒く変色した血がベットリ貼り付いていた。
ここには何もなさそうだったから、竜馬は持っていたサブマシンガンを手から放した。しかし、これが間違いだった。突如アンデッドがクローゼットの中から飛び出てきて、竜馬に飛び付いて来たのだ。立ちながら取っ組み合いをする竜馬は、アンデッドの足を蹴り体勢を崩させると、背後に回り込み、頭を掴んで首の骨を折った。
「ふぅ…。こんなところから、出んなよ…」
竜馬はベッドに腰かけ、一息吐くが、まだ安心するのは早かった。実は後ろにもアンデッドがいるのだ。だが、竜馬は気付いていない。
「シャアアアアアア!」
襲いかかる時、アンデッドはお得意の呻き声を口から出した。後ろを急いで振り向き、拳銃を向けようとするが、間に合いそうにない。だが、一発の銃弾がアンデッドの側頭部を撃ち抜いた。その時飛び散った血が竜馬の顔にかかる。
撃ったのは左に向かった智之で、こう言った。
「だから左の方が良いだろ?」
「…改めてそう思ったよ…」
竜馬は顔に付いた血を拭き、外に出て行った。
竜馬から建物の安全を聞いた薺は皆に呼び掛けた。
「さぁ、みんな探して!いつもと同じ、食料、ガソリン、弾薬諸々…。頼んだわ!」
彼らはこのように旅を続けている。
だが、こんなことではいずれ食料も尽きるだろうとは誰でも予見できた。
玲奈は薺たちがいるガソリンスタンドとは別のところに到着しようとしていた。約500m程離れた場所から双眼鏡で監視していると、トラックの真ん前にアンデッドとなった元従業員が立っていた。玲奈は荷物の中から組み立て式クロスボウを取って、組み立てる。
「…悪く思わないでね」
引き金を引く。矢は見事にアンデッドの眉間を貫通し、トラックの荷台に矢が突き刺さり、アンデッドは力なく倒れた。安全を確認し終えたところで玲奈はハーレーをガソリンスタンドにつけた。まず、ガソリンの有無を確認したが、中身は既に空っぽ。
恐らく別の生き残りがもう取って行ってしまったのだろう。
次に建物の中を調べる。奴らアンデッドはただ肉を食うためだけに動くのではない。“どうやって”獲物を捕らえようかも考えているため、どこかに隠れているかもしれない。
玲奈は慎重に中に入っていく。
拳銃を構えていても、安心感はこの七か月間、玲奈は感じたことなどない。玲奈は軽い気持ちでクローゼットを開けた。
「…!うぐっ…!」
玲奈はその中に入っていた“もの”を見て強烈な吐き気に襲われた。
中には…首吊り自殺した死体がぶら下がっていて、完全に腐ってしまい、夥しい量のハエが飛び交っていた。玲奈は耐え切れずにそこから出ようとしたが、その死体の足元に落ちていた日記のようなものが目に入って、それを取って急いでここから出た。
「はぁ……」
いくつもの修羅場、そして死体を見てきた玲奈でもあそこまでひどく腐乱した死体は初めてだったので、吐き気を催してしまった。深呼吸を何度も繰り返して、漸く気持ちが落ち着いたので。嘔吐に至らずに済んだ。
すると、さっき殺したアンデッドの死体を貪り食うカラスが見えた。カラスは玲奈の気配に気付くと、カァと鳴いて大空へと羽ばたいて行ったが、何とも言えない嫌な感じがした。
玲奈はハーレーに座り、日記を見る。
「『見つけた』…」
ページを捲って一番最初に書かれた言葉だ。
「『安全な場所』…」
玲奈は一回日記を閉じて、ひとまずはここから離れて別の場所でこの日記を詳しく読む必要があると考え、ハーレーを動かすのだった。
日が傾き、徐々に寒さを感じ始めた薺。
砂漠は寒暖差が激しいため、薺たちは車の中で雑魚寝するしかなかった。しかし、アンデッドには体温を感じる神経の機能は停止している。だから、痛覚もない。それゆえ…奴らは徐々に群がってくる。奥でオルトが食料を渡している間に薺はガソリンの状況についてガソリンタンク車を運転するチェイスに聞く。
「ガソリンタンクの中はどうだった?」
「いいや。全くもって空」
「そう……。じゃあ状況は?」
「どうだろうな…。赤錆が出て車が動くなら…最高だろうな…」
チェイスは遠回しに相当マズいと言ってるも同じだった。
薺は「はぁ」と溜め息を吐く。
次にエッジの車のところに向かう。
「やあ、薺。今、竜馬が監視システムを置きに行っている」
「それにしては遅くない?」
「…言われてみれば……」
薺はすぐに無線を取る。
「竜馬⁈のんびりしてないでやって!」
『へいへい』
竜馬はバギーに乗り、地面に突き刺せるタイプの監視カメラをこのガソリンスタンド全体を見渡せるように設置していく。それを確認した薺は、自らの車に乗り、眠るのだった。
玲奈は火を起こして、いつものようにキャンプをする。濡らしたタオルで汗を拭き、さっきの日記に書かれている文字を火で照らす。
そこにはボールペンでグルグル囲まれた世界地図の一部があった。いくつか囲まれていたが、一番アメリカから近いのは…。
「アラスカ…」
下に追記してある。
「『アラスカからの受信を確認』…」
玲奈は独り言で読み続ける。
「『飛んでいけ』…。『アラスカに、飛んでいけ』…」
そして、最後のページには家族の写真が貼られていた。自殺した人の家族写真に違いない。
玲奈は日記を閉じ、自分もここに行くしかないと思いながら、眠りに就くのだった。
原作に出てきた登場人物の名前をモジったキャラを出しています。