バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第30話 遭遇

「行け!行け行け‼」

 

竜馬は車のドアを閉めて先に車を発進するように促した。

すると、火炎放射器を使っていた薺がカラスの集団突進を受ける。横から突かれた薺はバランスを崩して、砂漠に倒れる。

 

「薺!」

 

竜馬は素早く反応し、三羽のカラスを撃ち殺す。

 

「大丈夫か!?」

「え、えぇ…」

「乗れ!」

 

薺を車に乗せて自身も乗ろうとした時、一人の悲鳴が聞こえた。

バスの下から生存者が飛び出してきて、この車のあるところとはまた別の方向に右往左往していたのだ。竜馬は見捨てられる訳もなく、その生存者を追う。カラスが生存者を追っていたというのもあるが、何よりもう目の前で死んでいく姿を見たくなかった。

竜馬は生存者の腕を掴んで車に戻ろうとする。だが、そこにさっき薺が使っていた火炎放射器が火を噴いたまま回転し続けていて、もう数秒後に竜馬たちの方に当たろうとしていた。

 

「竜馬!危ない‼」

「‼」

 

竜馬はせめてこの生存者だけでもと思い、庇おうとする。

しかしその時、乾いた銃声と共に火炎放射器が動きを止めた。銃声の聞こえた方に視線を向けると…“彼女”が、立っていた。

 

「…玲、奈…?」

 

そう呟いた竜馬の声が玲奈に聞こえたかは分からない。

玲奈は片手に拳銃、もう一方には肉の周りにいくつもの手榴弾を取り付けたものを持っていた。玲奈は素早く手榴弾のピンを抜くと、カラスたちが飛んでいるところに向けて投げ、誰よりも大きい声で叫んだ。

 

「伏せてっ‼」

 

竜馬は玲奈がこれから何をするつもりなのか分かり、伏せるのではなく急いでここから離れた。投げられた肉にカラスは目を奪われ、ほぼ全てのカラスがまとわりつき、肉を食い千切っていく。だが、間もなく何個か連結して繋がった手榴弾は爆発し、とんでもない規模の爆破を起こした。肉を食らっていたカラスはほとんど塵と化し、僅かに残ったカラスはこの場から急いで逃げて行った。

玲奈はその光景を見てから、竜馬たちに背を向けた。

 

「お、おい!」

 

竜馬の呼び止める声が玲奈の耳に聞こえてくる。玲奈は自分でも信じられないくらい冷めた目で彼らを見た。

 

「…何?」

「どうして一人で行こうとするんだ?一人じゃ危険だ」

「大丈夫、よ……。これくらい…、大、丈…夫、なん、だから…」

 

徐々に玲奈の呂律が回らなくなる。

足腰に力が入らず、視界もぐるぐる回転する。自分が倒れたと気付いた時には、竜馬の胸の中で気を失っていた。

 

 

 

 

淳はいつもの時間、いつもと同じように実験を繰り返していた。

しかし、何度やってもジュアヴォは変異を遂げてしまい、彼は溜め息を吐く。しかし、この溜め息は実験の失敗に関しての溜め息ではない。どうやったらこの課題を無くせるか分かっているのに実行出来ない自分に対する溜め息だ。

そうしていると、彼の横に黒いワンピースを着た10歳前後の少女のホログラムが現れる。あれは“ブラッククイーン”。ハイブにいたレッドクイーンとは対の存在である。

 

『淳博士、私のセンサーが大きな爆発音を感知したわ』

「爆発音?…君はそんなことを伝えるためだけに出てきたのかい?」

 

淳は呆れ気味に言う。

 

『いいえ。重要だから言っているのよ』

「ほう…。では、何故その爆発音が重要なのか聞かせてくれ」

『実はその爆発の周波がデトロイトで製造されていた手榴弾と同じなのよ。どう思う?』

 

淳はブラッククイーンを凝視した。もし彼女が生身の人間だったら、肩を掴んで念を押して聞く程に衝撃を受けていた。デトロイトにいた部隊は即時撤退、並びにその装備は回収されて使われているはずがない。

淳は万に一の可能性を感じた。

 

「爆発音がした位置は特定してるな?」

『当り前よ』

 

彼女がパソコンに表示した位置は砂漠地帯のど真ん中だった。

 

「衛星の位置を変えろ。その手榴弾が仮に玲奈が使ったとすれば、本人か確認する必要がある」

『今から42分後に衛星が真上を通過するわ』

 

淳は椅子に背中を預ける。

 

「本当に…オリジナルの玲奈なら…問題は全て解決だ…。くくっ…」

 

淳は高揚する気持ちを抑えるのが大変だった。

 

 

 

 

玲奈は寝返りを打つ。それを見ていた生存者…主に子供たちは車から離れる。そして、何十分か寝て、玲奈は目を開けてみると、彼女の右手には包帯が巻かれていた。よく見れば血が滲んでいた。こんなことしなくても、傷なんか勝手に塞いでいくのに…と思いながらも上体を起こす。そこは車の中で、ケーシャが玲奈を見詰めていた。

 

「よく眠れた…?」

「…まぁね。安心して眠れる場所なんて、ないから…」

「私、ケーシャっていうの。よろしく」

「よろしく。薺たちは、外?」

 

玲奈はすぐに車の中から出ようとした時、ケーシャは慌てるように言った。

 

「ねえ!さっきは……ありがとう…」

「………」

 

玲奈は無視して車から降りるのだった。

降りてすぐ視界には、さっきの盗賊とカラスの襲撃で死んだ仲間を葬っている準備をしていた。中には薺がいたが、その表情は辛そうに見えた。彼らは丁寧に埋める前に、動き出しても大丈夫なように手足を縛っている。そして、掘った穴の中に彼らを入れる。

 

「誰か……弔いの言葉を」

 

智之が前に出る。ルッティーのペンダントを木製の汚い十字架にかけ、手で十字架を切って言葉を呟いていく。その様子を見ていると、竜馬がこちらに歩み寄ってきた。

 

「この半年で半分以上が死んだんだ。薺もさぞ辛いだろうな…」

 

玲奈は竜馬と共に歩きながら話す。玲奈はいつも竜馬といると、死んだ竜也と話しているような感覚に陥る。そんな玲奈の心境に気付かない竜馬は構わず質問する。

 

「あれからどうしてたんだ?デトロイトから姿を消してから…」

「…それしかなかったの。私はあそこで明らかに監視されていた。一緒にいたら…どうなっていたか…」

「それで逃げ出した…ってわけか…」

「アンブレラのコンピューターに侵入して衛星の軌道ルートを盗んで、監視地域から逃げていたの。この七か月間、ずっとね…」

「世界が滅んでからは?どうして、あの時俺たちと一緒にいようとしなかったんだ?俺は、お前が……」

 

竜馬はここで言葉を濁した。

彼はまだこの先を言う度胸は持っていなかった。

玲奈は気にせず言う。

 

「安全だからよ…。私と一緒にいても良いことはない。誰かが死ぬだけよ」

 

竜馬は玲奈の考え方が以前よりもかなりネガティブな方向になっていることが分かった。どんな時でも諦めずに戦っていた玲奈はもう何処かに消えていた。目の前にいる玲奈はアンブレラから逃げ、みんなを巻き込みたくない気持ちが前に前に出ていた。それを払拭させたくて…竜馬は大胆なことを言ってしまう。

 

「俺は玲奈といれて……う、嬉しいぞ?」

「…えっ?」

「だって、仲間に会えるのって、誰だって嬉しくないか?」

 

竜馬は目線を逸らし、顔がどんどん熱くなっていくのが分かった。

だが、そう言われた当の本人は、危うく涙を落としかける。彼女は自分がこの世にいちゃいけない人間だと…この逃亡生活で分かってきていた。だから…玲奈は誰とも一緒に行動することなく、孤独に、一人で生きていた。

でも…こんな嬉しいことを言ってくれる人がいるなんて思わなかったのだ。玲奈は無意識の内に、彼を抱き寄せていた。

 

「お…おいっ…」

 

竜馬も流石にこの玲奈の行動には戸惑いを隠せなかった。更に彼女の潤んだ瞳を見て、身体がピクリとも動かなくなる。彼女の顔が徐々に近付いてくる。そして、もう数cmでお互いの唇が触れ合いそうになった時、玲奈の時計のアラームが鳴った。

 

「え?まさか…」

 

玲奈は竜馬との抱擁を解き、時計に付属された衛星の軌道位置を調べる。すると、間もなくこの北アメリカ大陸かつこの近くを通過することが分かった。

 

「ねえ、今何時?」

 

竜馬は時計を持っていないため、近くにいたチェイスに時間を尋ねた。

 

「チェイス、今何時だ?」

「12時13分だ。…そこの姉ちゃんとどこかデートにでも行くのか?」

 

茶化しながら言う玲奈も軽く笑いを溢したが、竜馬にとっては冗談では済まされなかった。さっきの甘い目で見られた時には、彼の心臓は激しく鼓動を繰り返していた。そして、玲奈は笑いながら呟いた。

 

「考えすぎたかな…」

 

そう言って離れていく玲奈を見て、竜馬は顔に手を当て、呟いた。

 

「ヤバい…。俺、絶対玲奈のこと……」

 

 

 

だが、玲奈の考えは甘かった。アンブレラの衛星は玲奈の姿を確実に撮られていた。画質が多少ひどくても、顔認証くらいは容易に出来る。淳はすぐに以前撮った玲奈の顔と照合を開始する。

そして、オリジナルの玲奈である確率は85%。

淳はにやりと笑い、画面の玲奈に静かに呟くのだった。

 

「漸く、見つけたぞ…玲奈…」

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