バイオハザード リターンズ   作:GZL

31 / 157
第31話 安心を求めて

玲奈はトラックの荷台で集まっていた薺たちにあのガソリンスタンドで見つけた日記を見せ、概要を説明した。そこには無線の記録も記してあったから、エッジに見せると彼は喜々した表情で言う。

 

「こいつはすごい!この無線の記録…この半年間の中で一番まともで確かだ!」

「へえ……。だから今からアラスカに行きましょう…って?馬鹿げてるわ‼」

 

薺は信じきれなかった。

チェイスもうんうんと頷いた。

 

「確かにな。仮に本当だとして…ここからアラスカ……か…。とんでもない旅になりそうだ」

 

エッジ、玲奈は薺を必死に説得する。

 

「薺、この無線の記録からして……」

「その日記よく見た?書かれたのは今から三か月も前。今までそういう無線や知らせを信じて何度当たった?」

「俺の記憶が正しければ……ゼロだな」

「黙って」

 

玲奈はチェイスに言う。

 

「いつもいつもそういうのはどこも手遅れな時が多いのよ。玲奈、あなたが言いたいことも分かるけど…」

「でも…この日記からは感染者…アンデッドはいないとある。隔離された土地よ?そこなら奴らの恐怖に震えて生きる必要もなくなる」

 

薺は周りにいる生存者を見て言った。

 

「私はここのリーダー…。みんなの命を預かっているわ。そんな空想や夢物語に縋っていられないわ。現実を見ないと」

「そいつは…どうかな?」

 

その意見に竜馬は反論する。

 

「今は現実よりも、夢物語が必要かもしれないぜ?みんなの雰囲気、見てみろよ…」

 

竜馬の言う通り、生存者のほとんどは暗い影を落としている。

 

「半年前は50人近くいた生存者の数も今では半分もいない。みんな、諦め始めている。玲奈の言うような希望があってもいいんじゃないかな…」

 

竜馬のこの言葉が薺の固まっていた信念を打ち砕いた。

しかし、薺一人で決められることではないため、彼女は生存者を急遽集めて聞いてみることにした。

 

「みんなを集めたのは…これから重大な決断を決めるからよ。重大すぎて…私一人で決めることは出来ない。単刀直入に言うわ。…生存者がいるかもしれない」

 

みんな騒めく。

特に「どこに」と言った言葉が飛び交った。

 

「アラスカよ。分からないけど…一握りの可能性があるの。私たちは決めなければならない。どっちかに手を上げて」

 

玲奈は生存者のみんなを見たが、希望が現れた分不安も募ったように見えた。

 

「アラスカに行くか……ここに残って旅を続けるか…。アラスカに賛成の人!」

 

薺が叫ぶと、ゆっくりと…ぽつりぽつりとだが手が上がっていき、最終的には全員が手を上げた。結果が分かり、薺は呟いた。

 

「…アラスカね」

 

生存者から歓喜の声が上がった。

玲奈は結果がそっちに傾いて良かったと思った。仮に彼らが今の旅を続けるのだとしたら、いずれ死ぬのは目に見えていたからだ。

薺は玲奈に近寄って口を開く。

 

「さっきは……強く否定してごめんなさい」

「いいのよ。あなたも、大変だろうし…。それより……私も、居ていいの?」

「当り前よ。あの東京で出会ってから、仲間じゃない」

「仲間……」

「そうよ。まあ、後は…祈るだけよ」

 

薺は車の方に戻っていく。その後ろ姿を玲奈はじっと見ていた。

 

 

 

 

淳は緊急でジョン議会長を呼び出した。…呼び出したと言うが、実際はホログラムのジョンが出てくるだけで本人ではない。淳は呼んだ理由を説明すると、ジョンは驚いた表情を作った。

 

『…その話は、本当なのか?』

「85%一致です。これは無視できない数値です」

『仮にオリジナルの玲奈なら…何か月も我々の監視を逃れていた、ということか…』

「残りの衛星の軌道は全て変更しました。彼女が我々の監視に気付くこともありません。今すぐ彼女を捕獲する許可を降ろしてください」

 

淳はそう言うが、迷っていた。オリジナルの玲奈なら嬉しいことに変わりないが、もし…人違いだったら関係ない人物に無駄な労力と時間を費やしてしまったことになる。だからジョンは厳しいことを言う。

 

『ダメだ。本人であることを確かめるのが先だ。彼女が本物であることを先に調べてからだ』

 

その発言を聞いた淳は語気を強めた。

 

「彼女が玲奈であることは間違いないんです!今、共にしている仲間も玲奈との知り合いであることも確認出来ています。元来、オリジナルの玲奈は私の研究に必要不可欠な存在なんです!彼女の血液……遺伝子情報が、ジュアヴォを制御する鍵なんです!ぐずぐずしていると、また取り逃がす可能性が上がります!そんなリスクを負うなんて……」

『君が決めることではない』

 

ジョンは淳の意見を完全に無視した。

 

『この件は次の議会まで内密だ。博士、これは命令だ。分かったな?』

 

ジョンのホログラムが消えていく。淳は歯を噛み締めながら会議室から出ていく。その胸の内を秘めたまま…。

 

 

 

 

夜になり、車の中で玲奈たちは作戦会議を始める。灯りはランプだけで非常に地図が見えにくいがそこは仕方ない。

 

「タンクローリーにはガソリンはないし、個々の車のガソリンも残り少ない。プラス、食糧もだ」

 

それに合わせるようにエッジが発言する。

 

「俺の車のはあと半分」

「チェイスは?」

「俺のはもうほとんどない。走れても精々100kmが妥当だな…」

「この長い旅を成功するにはガソリン、食糧の補給が必要だな」

 

竜馬は灯りを地図に近付けながら指で追う。

 

「ここは…どうだ?」

 

玲奈も地図を覗く。そこはつい先日玲奈が行ってしまった場所だった。

 

「そこはもう空っぽ。もう行って来たわ」

「……なら……」

 

みんなでどこで安全に、確実に補給出来そうな場所を言うが、どこも行って来たばかりであったり、あまりに遠いかのいずれかだった。

その時、薺はポツリと言う。

 

「ラスベガスよ」

 

みんなその単語を聞き、ギョッと薺を見た。

 

「ガソリン、食糧が大量にあるのは、ここからならベガスが一番近いわ」

「そいつは知ってる。だが、あそこは…」

 

竜馬は言葉を濁す。みんな、ベガスになら何でもあることくらい理解していた。しかし、滅んだとはいえ、元大都市。アンデッドがウヨウヨ湧いてくる場所に誰も近付きたくもなかったのだ。

 

「危険?そんなの私でも分かってる。でも私たちは小さい町もガソリンスタンドも食べ尽くした。もう、大都市を狙うしかないわ」

「…そうね。今更危険だなんだ言ってる場合でもないしね。私も薺の案に賛成よ」

 

玲奈も賛同してしまい、彼らは沈黙してしまう。もはや暗黙の了解…ということだろう。

最後に智之はこう呟いた。

 

「ギャンブルの街だからな…。まあ楽しんで行くか…」

 

 

 

 

淳は次の日、朝早く起きて、昨日録音していたジョンの声を編集する。もちろん、そんなことはやってはいけないことなど当の本人がよく理解している。淳の探求心がこれを抑えられなくなり、『これは研究のために必要だからやっているんだ』と自身に言い聞かせる。

たとえバレても、オリジナルの玲奈を連れてくれば問題ないと踏んでいる。

 

『博士、これは命令だ。……玲奈を捕獲せよ』

 

淳はにやりと笑い、更にこれをスピーカーに録音する。

これで準備は整った。奴らの動きは衛星が追っている。後は…彼らが向かう場所に…“奴ら”を放つだけだ。

淳の微笑みは、止まることがなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。