バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第38話 くそったれ

床に続く血痕を辿って歩いていると、途中でさっき投げて刺したはずのナイフが床に落ちていた。

淳は近い…。直感的に分かった玲奈はそのまま進んでいく。

そして…出てきた場所に玲奈は驚愕した。

 

「何で…“ここ”に…」

 

地下にあるはずなのに、ここは…あのハイブへと通じる緊急用通路の入り口の教会だったのだ。彼らが何のためにここを作ったかは知らないが、ここは開けているし、窓からは日の光が漏れている。

恐らく、本物の太陽の光ではないだろうが…淳が襲ってくれば見逃すことはない。玲奈は警戒しながら、広場の中央に足を動かすと、またあの写真に目が行ってしまった。

玲奈の偽りの結婚式の様子を写した写真…。

だが、その写真には…毅とは違う別の人物が写っていた。驚きより好奇心が沸いた玲奈は写真立てごと手に取り、よく見ようとした矢先のことだった。

突然玲奈の後ろに何かの気配が現れ、玲奈は瞬時に横に避けた。飛んできた拳は木製の机を粉々に粉砕した。更にもう一撃飛んできて、それは玲奈の頭の位置目掛けてやって来た。それも避け、拳はコンクリートの壁に穴を空けた。

玲奈はナイフを抜き、臨戦態勢に入る。そこで玲奈は初めて変異した淳の姿を見た。

右腕は爪…いや、指全体が約1m近くにも伸び、心臓は露出している。顔の半分は得体の知れない皮膚で覆われて片目は眼球全体が真っ白に染まりきっていた。それに身長自体も平均男性の身長を優に超えている。

それでも、心臓が露出しているから玲奈は余裕かもしれないと思っていた。すると、淳が先に長くなった指を振って攻撃を仕掛けてくる。玲奈はそれを避け、心臓に斬撃を与え、背後に回り背中も裂いてやった。更に斬ろうとしたが、腕を掴まれて遠くに飛ばされてしまう。

 

「あぅ…!」

 

ナイフは玲奈の手から離れてしまい、床に突き刺さる。回収しようと前を向いた瞬間、玲奈は目を丸くして驚いてしまった。何故なら…先程斬ったはずの心臓と背中がみるみる内に再生していき、何事もなかったかのように元通りに戻ってしまったのだ。淳は笑いながら言う。

 

「これが…JJ-ウィルスと……J-ウィルスの、力、だ……。お前に、私を……殺すことは、出来ない…」

 

JJ-ウィルスが何のことかさっぱりな玲奈だったが、再生する身体となれば、ただ単純な攻撃ではダメだと認識した玲奈は、とにかく落としたナイフを拾いに前に走る。ナイフを取り、再生出来なくなるまで連続して攻撃しようと思っていたのだが、そうはさせないと淳は新たな手に出る。淳の指は瞬時に伸び、玲奈の首に絡みついたのだ。

 

「あがっ……!あ、あぁ……あ…」

 

玲奈の真横には、さっきのナイフがあるのだが、あと少しのところで柄が届かない。淳は残った二本の指を玲奈の頭に刺そうと照準を合わせている。ただ腕を伸ばしても届かないと思った玲奈は床を思いっ切り蹴った。すると、ナイフが刺さっていた床の材料である木板がてこの原理で空中へと舞い上がり、玲奈の元に戻って来た。

急いで掴んだ玲奈は絡みついた指を断ち切った。

 

「けほっ……えほっ……」

 

玲奈の食道に漸く新鮮な空気が流れてきた。だが、淳は玲奈が噎せている間も見逃さない。再び指が伸びてくる。今度は拘束する気はないらしく、凄まじい速度で玲奈に向かってくる。奴の指がすぐそこまで迫って来ているのだが、さっき首を絞められていたせいで酸素が循環しきっていない。回避は無理どと思った玲奈は、自らの身体の一部を失う覚悟で受け止めようと考えた。

奴の指が刺さる直前、玲奈の右側から衝撃が襲って来た。

 

「玲奈!」

 

唐突に飛び出した竜馬のお陰で、玲奈は右腕の服を軽く掠る程度で済んだ。

竜馬は目の前から玲奈を守るために、拳銃を構えて、当たるところならどこでもいいから撃っていた。だが、再生する身体には、そんな鉛弾はいくら受けても意味はなかった。淳は早歩きで竜馬に近付き、彼の身体を掴んで吹き飛ばす。

 

「ぐあぁ‼」

「お前に……用は、ない…!私は…玲奈に、用が…」

 

淳の指がまた伸びる。

その時、竜馬は玲奈と叫ぶ前に勝手に身体が動いていた。竜馬は玲奈の前に立ちはだかった。玲奈の顔に鮮血が飛ぶ。

 

「あ……」

 

竜馬の肩を貫いた淳の指…。

竜馬は「ぐっ」と小さく呻くと、刺さった指を掴み、グキッと折り曲げた。さすがに淳もこれには堪えたか、指を引き抜き態勢を立て直そうと後方へと下がる淳。

竜馬は荒い息を出しながら、淳の方に視線を向けたままだ。だが、彼の拳銃に弾は入っていない。近接戦闘用の武器も持っていない。それが分かった淳は竜馬に瞬時に迫り、胸ぐらを掴み上げる。

 

「竜馬!やめて‼」

「…ここで、俺は、御終い…らしいな…。玲奈、逃げろ…」

「何言ってるの⁈私は…私があなたを守るって…!」

「…ありがとう……。玲奈…。今更だけど…君のこと……」

 

その次の言葉を聞いて1秒後に、竜馬は壁に激突し、玲奈の視界から消えた。それは、淳が竜馬の腹を渾身の一撃で殴ったからであった。

 

「え………」

 

玲奈の耳では未だに、あの言葉が木霊していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きだ…」

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、玲奈の中で何かがガラガラと崩れた。

 

「うわあああああああああああああああああああああああ‼‼」

 

涙をボロボロと流しながら、無鉄砲に淳に突っ込んで行き、ナイフを心臓に何度も突き刺した。しかし、再生する力を得た淳は溜め息を吐き、玲奈の暴れる腕を抑えつけると、鋭利にした指で玲奈の腹部を切り裂いた。

 

「うぐっ……!かっ…」

 

腹を抑えて蹲る玲奈。そこから淳は玲奈の顎に蹴りをぶちこむ。その威力はとんでもなく、玲奈は軽々と吹き飛び、壁を突き抜けていった。

 

「があぁ…!」

 

全面ガラス張りの謎の通路をズザザと転がる玲奈。淳も吹き飛んだ玲奈を追う。意識が朦朧とする玲奈はどうにか淳から逃れようと身体を引き摺って逃げるが、淳は玲奈の身体を踏んで抑えつけた。

 

「…私は、ずっと、お前が、アンブレラを未来へと誘ってくれると思っていた…。もしくは…人類の、未来の……姿だとも、考えた…。だが、違った。この……不死身の肉体を……持つ私こそ…未来なのだ…!」

 

淳は肥大化した指を玲奈の側頭部に当てた。玲奈は腹部の傷で意識はもはやあるかも怪しい。

だが…この“通路”をよく見た途端意識が一時的に活性化した。そして、口角を上げ、最後の悪足掻きと言わんばかりに、淳の背中を蹴り、彼から離れた。

 

「…何を、笑っている…?あの男の下に行けて……嬉しいの、か…?」

「………ち、が……う…」

「じゃあ…何だ?」

「あな…たが、未来………って、言って………面白かっただけよ……」

 

淳は怪訝な表情をする。

 

「あなたは……未来…なんか、じゃ…ない……。単、なる…………くそったれ……よ……!」

 

淳の後方から突如、青白い光が漏れてきた。

 

「ねえ……あなた、は……ここの…主任、なの…よ…ね……。なら……ここがどこか、覚えてる…わよね?」

「!」

 

淳は今更ハッとした。彼は今の今まで忘れてしまっていたのだ。

ここが……レーザー室だということに…。

 

「私、たちは……ここで、お互い……死ぬ、のよ…!」

 

淳が後ろを振り向いた時、既に網の目のレーザーは築かれていた。

死を覚悟する暇もなく、淳の身体は無惨に焼き切られる。玲奈にもレーザーが迫って来て、彼女は身体を震わせて、レーザーが来るのを待っていた。

だが、突然玲奈の目の前で、レーザーは停止し、消えた。誰がやってくれたかは分からない。

しかし、玲奈の体力は限界でその場に自らも倒れた。

 

 

 

 

パソコンを使って、淳が切られた後に装置を切った。そのパソコンを使っていたのは、先程息絶えたはずのクローンの玲奈だった。被せられていたコートを裸に纏い、パソコンからの映像を見る。

淳が、網の目レーザーで細切れの肉片になっていく様子を…静かに見終えてから、彼女は呟いた。

 

「あなたが未来?笑わせないでよね、くそったれ」




次回、滅びの章、終了予定





竜馬は、死んでしまったんでしょうか?それは次回分かります。
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