前半少しだけ、ショッキングな表現あります。(本当に少しだけです)
第50話 中東戦線での出会い
紗枝は途中まで海翔と共にデトロイトから逃げ出した。それからワシントンに行き、中東のとある国へと逃げ込んだ。
そこまでは…紗枝も良かった。
だが、つい半年近く前……海翔は、命を落としたのだった……。
ー半年前ー
紗枝は茫然としていた。海翔が死んでからもう3日が経とうとしていた。彼女の目には生気は見られず、常に絶望しているような感じがした。そこに男たちがやって来た。彼らはここの首相にアンデッドを倒したら、住まいと食事を保証するということで雇った男たちだ。
それがこの小さな国には数百人近くいる。
「よお……まだ塞ぎ込んでいるのか?姉ちゃん…」
「…………」
紗枝は何も言わない。
「そんなんだと、次お偉いさんから頼まれた時に身体が動かないぜ?ろくに飯食っていねえだろう?」
そう…。紗枝はあまりのショックで食事もあまり口にしておらず、何のやる気も起きなかった。特に反応を示さない紗枝にイラつきを覚えた男は彼女の頬を叩いた。紗枝の顔が少しだけ右に動くが、これでも何も反応しなかった。
「てめえ……ふざけんなよ!」
逆上しだした男4人は紗枝の身体をがっちり拘束した。そこで初めて、紗枝は抵抗を始め出すが、今更遅かった。
「な、何するの?」
「へへへ……」
不気味な笑いが紗枝の耳に入ってくる。更に男たちは上着を脱ぎ、ズボンのベルトを外した。紗枝は男たちがこれから自分の身体に何をしようと考えてるのか、漸く分かった。
「いやあ‼やめて!離してぇ‼」
いくら叫んでも、助けてくれる人などいない。ここにいる人間の大半は自らが生きること以外には興味を示すものなどない。紗枝がいくら喚いても暴れても、無駄だった。目尻から溢れる涙も、男たちに舐め取られて、更に涙腺を崩壊させていく。
「はぁ…はぁ……。諦めな…!お前は今からここで俺たちに滅茶苦茶にされるんだよ…」
遂に紗枝の服も剥がされ始め、本当の恐怖を味わう紗枝は再び絶叫した。
「いやあああああああああああああ‼‼」
もう少しで紗枝の身体が男たちに汚されようとした時、1人の男が、紗枝を犯そうとする男の襟首を掴んだ。
「やめとけ…。そんなことして無駄だろ?」
「何だよ、ジョッシュ…。お前もやりたくて堪らないんだろ…」
紗枝は涙目でジョッシュという男を見た。しかし、彼からはあの3人から注がれる欲望は全く感じられなかった。
「…んなわけねえだろ…。やるくらいなら…アンデッド殺す方がマシだな…」
「じゃあ……さっさとここから消えろ!」
男が拳を振ってくる。溜め息を吐きながらもジョッシュはその拳を掴んでそのまま壁へと吹き飛ばした。後頭部から直撃した男は頭を抑えて苦しむ。紗枝を拘束している2人の男は目を丸くして固まっている。
「まだやるか…?」
「いや……やめておくよ…」
男たち2人も逃げるように走り去っていく。
紗枝は乱れた服を直してここから自らも去ろうとすると、ジョッシュが引き止めた。
「待てよ…。こいつを持っていけ」
ジョッシュは上着のポケットから赤い物体を投げ渡した。
「……リンゴ?」
「食っとけよ。お前が何も食っていないのは知っているからな…」
「………」
紗枝は無言のまま、部屋から出ていった。
ジョッシュは溜め息を吐き、頭を掻いた。
「全く…世話の焼ける女だ…」
ー更に2日後ー
ジョッシュは鼻唄を歌いながら、疲れた身体を休めるために壁に背中を預けて地面に座った。片手にはリンゴ、もう片方には注射器を持っている。すると、右側に同じくリンゴを持った黒髪の女性が視界に入った。
「……あんたか、ビックリした」
「そう…。それよりもあんた…じゃなくて、ジョッシュ、リンゴ好きなのね?」
「…まあね。あんた…」
「紗枝よ」
「……紗枝、あれから大丈夫なのか?」
「ええ。私のボディーガードがあなただと思い込んでいる人が多いらしいからね」
「そうかい…」
紗枝はそれからジョッシュから視線を逸らし、リンゴを
ジョッシュはリンゴを床に置き、注射器を首に当てて中身を注入した。しかし、身体が楽になったとかそういう感じは全くしない。ジョッシュは再び鼻唄を歌い続ける。
すると、紗枝は不意に話し始めた。
「どうしてあの時、助けてくれたの?」
「ん?そんなの気分だ」
「気分?あれで気分?そう…」
紗枝は立ち上がり、ジョッシュの胸ぐらを掴むと、壁にドンと押し付けた。
「なら…助けて欲しくなかった!私は……もう、生きる意味を失って…あのままやられてた方が良かった!」
「……生き地獄の方がいや……というわけか…。でも、それで君が自暴自棄になったら…死んだ恋人はどう思うかな?」
「…!どうして…知って……」
紗枝がそのことを聞こうとした時、不意に奥から扉が勢いよく開いて誰かが入って来た。それを見たジョッシュは胸ぐらを掴んでいた紗枝の手を離してやると、そいつにさっきの注射器について聞いてみる。
「なぁ……あんたこれ効いたかい?栄養剤と聞いて貰ったけど…」
注射器を投げ捨て、リンゴを再び掴んで立ち上がる。
「俺には効いた気はしないけどな…。全く………アンデッド狩りも楽じゃねえんだから………」
「ウラァ‼」
聞いたこともない奇声と共にナイフの金切り音が耳に入ると、持っていたリンゴを半分に切断した。ナイフは壁に突き刺さり、抜けなくなる。
「………」
よく見ると、奴の顔は血だらけで肉は抉れ、大小様々な目が増殖していた。
ジョッシュは半分に切れたリンゴを握り潰すと、静かな声で呟いた。
「…この代償、かなりつくぜ?」
ジュアヴォはナイフの刃先を向けてきたが、ジョッシュは腕をへし折って、ナイフを落とすと奴の顔を掴んだ。
「俺ら仲間だったよな…。まあ、生き残るためだけの仮の仲間だけどな…」
そこから抵抗してくるジュアヴォにジョッシュは頭と肩を掴んでぐるぐる回転させて、壁に激突させると、腹に強烈な蹴りを決めた。心臓の鼓動が止まったことを足から感じられなかったが、ジョッシュは足を降ろした。紗枝はジョッシュの戦闘の様子を初めて目の当たりにしたが、かなり強いということが分かった。そして…怒ると、かなり怖いということも…。
「……何なの、こいつ…」
「さあな…」
暫くしていると、その死体は火花となって跡形もなく消えてしまった。
「…ただのアンデッドではなさそうだな…」
「なら、ここから逃げるのが懸命ね…」
そう話していると、そこに更なるジュアヴォが複数こちらにやって来る。
「そこのダストボックスから行って!」
「…俺はゴミじゃないんだけどな!」
ジョッシュは愚痴を溢しながらも、その中に入っていく。紗枝は拳銃を出して一番前にいるジュアヴォの足を撃って転ばせると、他のジュアヴォも引っ掛かって転んでいく。その隙に彼女もダストボックスに入っていく。
出た場所は生ごみがたくさん溜まって臭すぎる下水路だった。
「さっさと行こうぜ…。臭すぎて堪らないぜ…」
「それには賛成…」
臭い下水管から地上に出ると、そこは正に戦場と化していた。JJ-ウィルスに感染してジュアヴォになった奴らとそうでない人間との戦闘が繰り広げられていた。このまま外に出たら、彼らの戦闘に巻き込まれてただでは済みそうもないと思った二人は、ひとまず建物の中を通ってここから離れようとするが、その度にジュアヴォがマシンガンを撃ってきて、退路を塞いでくる。
「多すぎだ!」
「逃げるわよ!」
「…くそ……」
二人は再び走り出すのだった。
「助けて‼助けてくれ!」
一人の男は捕縛者によって捕まっていた。身長は2m半近く。髪は少しだけ残り、口は開きっぱなし。身体付きは筋骨隆々だが、片腕…左腕は機械の腕で、様々な武器を取り付けることが出来る。
暴れる男を暫し眺めていた捕縛者は、その機械の腕から無数の針を射出する。無慈悲に……針は男の脳、心臓…あらゆる臓器を突き刺し、自らの身体を朱に染めたのだった。
捕縛者=ウスタナクです。
ここから暫くは紗枝とジョッシュの話が続きます。
それと、これからは土日合わせて三話投稿しようと思います。