バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第51話 捕縛者

2人はそれからどうにか迷路のように入り組んだ建物から抜け出し、外に出た。

眩しい太陽が2人を照らす。だが後ろからは、まだジュアヴォたちが追って来ている。急いで離れようとしたとき、不意に後方からジュアボォの悲鳴が聞こえ、振り向き様に通路から2、3体のジュアボォが吹き飛んできた。2体は火花となり、肉体が消滅したが、もう1体はまだ死に絶えていなかった。

すると…その奥から姿を現した巨大な人間…いや、怪物に2人は背筋を凍らせた。顔は人間のようにまともな形状をしておらず、半分はグチャグチャに潰れていた。左腕に機械を装着し、紗枝とジョッシュをじっと見詰める。同じジュアヴォかと思ったが、顔面に目は増殖していない。ということは…また別種のアンデッドだということだ。ジョッシュは奴がこちらを向いて、反応を変えたことが分かったが、臆することなく奴の身体に弾丸を撃ち込むが、いつも通り防弾性で、(ことごと)く弾かれてしまう。

それを見た紗枝はジョッシュに叫ぶ。

 

「走って!」

「……」

 

紗枝が走り出し、ジョッシュも無言で共に走る。車の上を飛び越えた紗枝は続けて走り続けようとするが、ジョッシュは車の影に隠れて、奴に拳銃を向けていた。

 

「な、何して…」

「吹き飛べ」

 

ジョッシュは引き金を引き、ガスボンベに弾をぶち込んだ。

ガスボンベは即座に引火し、甚大な爆発を引き起こした。2人のところにも爆風が吹いてくるが、そこまで酷いものではなかった。爆風が落ち着いてから2人は先程の通路を見るが、そこは炎に包まれていて奴が生きているとは思えなかった。紗枝はそれを確認すると、ジョッシュに怒鳴った。

 

「危ないじゃない!」

「だって…丁度いい爆発物あったし………な……」

 

どんどんジョッシュの言葉が固まっていくのが分かった紗枝が再び通路を見ると、炎の中でも全く無傷な捕縛者の姿があった。それはジュアヴォも同じだが、そいつを機械の腕で掴み上げると、鋭い爪状の金属鎌でジュアヴォの腹部を切り裂いた。その時流れる鮮血を身体に浴び、その姿は断罪を下す悪魔にも見えた。

 

「なるほど……。こいつは逃げるが勝ちだな…」

 

漸く状況がかなり悪いと理解したジョッシュは紗枝に(なら)って走り出す。更にそれを追撃するように捕縛者も追ってくる。奴の力は馬鹿馬鹿しいという言葉が一番似合っていた。先程隠れていた廃車を意図も簡単に宙に浮かせ、前方を阻む障害物は(ことごと)く破壊されていった。

 

「あいつ何なんだよ⁈馬鹿力かよ‼」

「いいから黙って走って!」

 

そうは言うが、捕縛者のスピードは凄まじく、今にも追いつかれてそうだった。

そこでジョッシュは紗枝を抱えて、曲がり角に滑り込んだ。捕縛者は暴走したまま直進し、壁に突っ込んで行った。ジョッシュは顔を青くして、紗枝に呼び掛ける。

 

「早く立て!来るぞ!」

 

紗枝は自らが茫然としていることに気付き、奴から逃げるために再び走り出す。

だが、前方は建物の屋上。このまま飛ぶしかなく、ジョッシュは叫んだ。

 

「飛べぇ!」

 

2人は勢い任せて空中に飛び出した。不安定な足場に着地したが、その後を捕縛者も追ってきて、ジョッシュの目の前にまでその剛腕が振られてくる。それをどうにか…いや、偶然的に避けたジョッシュは棒にぶら下がって、宙づり状態の紗枝を見て、頭を掻いた。

 

「ジョッシュ!」

「くそっ!本当に世話の焼ける女だ!」

 

ジョッシュは紗枝を抱え、窓ガラスに突っ込んだ。そこに捕縛者も入ってこようとするが、その巨体故にこんな小さな窓から入ってくるのは無理なようだった。捕縛者は2人を暫し見てから、この建物の上へとよじ登っていった。

 

「何なんだよ、あいつは…」

「私が聞きたいわよ…。全く…時間が経つごとに状況が悪くなっている気がするわ」

 

ジョッシュは立ち上がろうとした時、肩にチクリと小さな痛みが走った。見ると、肩にはさっき窓ガラスに突っ込んだせいで破片が突き刺さっていた。それを確認した紗枝が心配して駆け寄る。

 

「大丈夫⁈」

「こんなの、平気さ…」

 

ジョッシュはさも平気そうに破片を引き抜くが、実際はちょっとだけきつかった。だが、そんな気丈な態度にも紗枝は気付いていて、傷の辺りを触った。

 

「…!」

「深いじゃない!早く手当しないと、化膿するわよ…」

「………大丈夫だって…」

 

彼は紗枝の手を退ける。その態度に少しだけイラつきを覚えた。

 

「大丈夫じゃない。一旦手当するからじっと………」

「大丈夫だって言ってんだろ‼‼」

 

ジョッシュが想像以上の大声で怒鳴ったことに紗枝は驚き、身体を一瞬震わせてから数歩後退した。ジョッシュの顔は暗がりのせいで、どのような表情をしているかは分からない。ただ…苦悩の顔をしている。そんな感じがした。

紗枝も突っかかりすぎたと思い、謝罪する。

 

「……ご、ゴメン、なさい…」

「いや、いい…。さっさと行くぞ…」

 

ジョッシュはそのまま建物の中を歩いていく。紗枝は小さく頷いて、その後をついていくのだった。

 

 

 

 

彼はここまで激情的になったのは…母親が死んで以来だった。

さっきの紗枝が、どこかジョッシュの母親の雰囲気に似ていて……嫌だったのだ。それを彼女に何も言わず、ただ単に怒鳴り散らした自分が恥ずかしくなる。そのせいで後ろにいる紗枝は更に暗い感じになってしまった。

 

「…さっきから襲ってくるあいつら……どこから入って来たんだろうな…」

「さあね…。でも、ただのアンデッドではなかったから、誰かにウィルスを注入されたのかもね。……あっ!」

 

と、ここで紗枝は何か思い出したかのように声を上げた。

 

「ジョッシュ!あの時の注射器よ!あれにウィルスが…」

「そいつは変だな。俺も射したぜ?首にな…」

「あ………。まさか…あなた……ウィルスに対する耐性が…玲奈と、同じ…」

「何さっきからぶつぶつ呟いているんだ?」

「ジョッシュ!あなたには抗体があるのよ!あのアンデッドにならない抗体が!」

 

紗枝に言われてもジョッシュにはちんぷんかんだった。いきなり抗体があるやらないやら言われても理解できるはずがなかった。

 

「まぁ…細かい話は置いておいて……さっさとこの建物から出て暖かい飲み物を飲んで、ヘリでも盗もうぜ?」

「……そうね。早く脱出しましょう。いつあのデカぶつが来るか分からないしね」

 

ジョッシュは頷き、彼女の隣に位置付ける。

どうやら…少しはさっきの雰囲気を無くせたようだな…と彼は思うのだった。

 

 

 

 

移動中にもジュアヴォが何体か待ち構えていた。奴らの再生能力にはかなり驚いた2人だったが、いくら再生しても素早くて重い攻撃を続ければ何の脅威でもなかった。漸く半ば廃墟みたいな場所に着いて、出口である扉を見つけることが出来た。

 

「ここは……より一層寒いわね…」

 

半ば廃墟なので、吹きさらしの建物。冷たい風が紗枝の身体に当たる。寒そうな服装の紗枝を見たジョッシュは自らのコートを脱ぎ、紗枝に渡した。

 

「こいつを着ろよ…」

「え、でもジョッシュは……」

「あんたみたいにノロノロ動かないから、ちゃんと身体は温まっているよ…」

「……。一言余計」

 

紗枝は乱暴に彼から上着を取り、単独で階段を下っていく。彼はやれやれとしながらも、彼女の後を追う。

が、ここまで順調そうに見えた矢先のことだった…。

ガラガラと脆くなったコンクリートと共に巨大な人影が降りてきたのが2人の視界に写った。それは間違いなく、捕縛者だった。紗枝は目を鋭くさせ、ジョッシュは面倒臭いと言いたげな表情を作り、奴に向かって叫んだ。

 

「…ああ!もう面倒くせえ!鬼ごっこは終わりだ!ここで終わらせてやる!」

「ちょっ…!何挑発して…!」

 

だが、今更どう奴に謝罪をしたところで遅いことだろう。何故なら…既に捕縛者は機械の腕を振り上げて、こちらに疾走して来ているからだった。

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