バイオハザード リターンズ   作:GZL

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白濁でバイオハザードと言えば…アイツしかいませんよね?


第53話 白濁したアンデッド

アルカディア…その名の豪華客船に乗り込んだ玲奈、竜馬、薺の三人はこの船に危険な奴がいないかと捜索することを先決に船内を歩いていた。しかし、どんなに歩き回っても人の気配なし。そのせいか、いつも以上に不気味さを醸し出していた。

そして、またいくつもの腐った死体が無惨に放置された部屋に入った途端、玲奈の視界に人影が写った。フラフラとした足取りで灯りの前を通過していく。

 

「誰⁈」

 

玲奈の問いかけを無視して、そいつはこの部屋から消えていった。

 

「どうしたの?」

「人影が見えた。でも人間だったかどうかは判別出来なかった」

「人間だったらいいけどな……」

 

玲奈は拳銃を構えて、さっきの人みたいな影が見えた場所に足を踏み込んだ。そこには人ではなく、ダクトの中から垂れてきている白い粘液が地面に広がっていた。玲奈がそれに触れてみると、感触はベトベトしていて気持ち悪いという言葉が最も似合っていた。

 

「水じゃない…。何かの体液みたい…」

「体液?」

 

仮にこの体液を出す何かがダクトを通じて船内を行き来しているのだとしたら、敵の正体を暴くのは容易なことではない。ただ、これではっきりしたこともあった。

 

「でも、これでこの船の中に生存者がいる可能性は消えたわね」

「ああ…。こんな体液を出す人間がいるなら是非とも会いたいもんだ…」

「じゃあ…あの放送は……」

「生存者を誘き寄せる罠よ」

 

その時、船外から甲高い爆発が2度、3人の耳に響いた。

玲奈たちはすぐに爆発音がしたところに向かおうとするが、その時突然背後から何者かが玲奈の口にハンカチを当てられた。鼻に麻酔薬の臭いが入ってくる。

 

「んぐっ……⁈んぐぅぅぅ……‼」

 

気絶する前に竜馬たちに気付いてもらおうと、玲奈はハンカチ越しでも必死に叫んだ。だが、暗い部屋の奥に竜馬と薺は行ってしまい、玲奈の悲痛の叫びが聞こえることはなかった。それで身体も暴れさせるが、力が徐々に抜けていき…竜馬が開けた扉がバタンと閉まった瞬間、玲奈の意識は消えていった。

 

 

 

 

竜馬と薺がデッキに出た途端、外はやけに明るかった。原因は2つあがる炎の柱。それは竜馬たちが乗って来たゴムボート、そしてもう1つは船体にめり込んでいたプロペラ機だった。煌々と燃え上がる2つの乗り物はもうもうと黒煙を上空へと上げていた。

 

「あれ……ベルモントとイが奪ったプロペラ機じゃない?」

「確かに…。行ってみよう!」

 

二人がその着陸に失敗したのであろうプロペラ機に寄ると、燃え上がる機体の中に黒焦げの一つの焼死体があった。体格と身長から推測するに…。

 

「イだ…」

「ベルモント……自分だけ助かってこの船の中に…」

「そういうことだな…」

 

飛行機の爆発は偶然だろうが、ゴムボートの爆発は明らかに意図してやられたに違いない。どうやら竜馬と薺はアンブレラが仕掛けた罠にまんまと引っ掛かってしまったようだ。気付くのが遅すぎた。だが…竜馬はもう1つ…気付かなくてはならないことに気付いていなかった。

 

「玲奈、ボートが燃えちまった。どうする……」

 

竜馬は話しながら後ろを向くが、その視界に玲奈の姿は全く見受けられなかった。

 

「玲奈…?」

 

もう一度呼んでみるが返事はない。数秒固まった後に、竜馬は元いた場所へと駆け出した。

 

「竜馬⁈どうしたの⁈」

 

薺の問いかけに答えず、ひたすら戻っていく。

さっきの爆発が竜馬と薺を誘き寄せる伏線だとしたら……この船にいる奴らは本当の狙いは玲奈だと今更気付く竜馬。バシン、バシン…と重い鉄の扉を開けて、さっきの場所に戻って来た2人だが、そこには既に玲奈の姿はなかった。恐らく、もう何者かに連れ去られてしまったのだろう。

悔しさのあまり、竜馬は拳を壁にぶつけ、怒りを露わにする。

 

「くそぉ‼」

「竜馬…」

「……薺、玲奈が浚われた。しかもボートは爆発され、完全に相手のペースだ。それに……この船…かなりの速度で動いているの…気付いているか?」

「えっ⁈」

 

薺は驚愕の声を漏らした。竜馬の言う通り、この豪華客船はそれなりのスピードで沖へと出航していたのだ。

 

「どうするの?この船…得体の知れない何かがいるのに、玲奈もいないし……。まさか…探すとか言わないわよね?」

「探すに決まってるさ。玲奈を置いていけるか!」

 

竜馬は単独で奥の扉に手をかけるが、薺はそれを止めた。

 

「……離せよ、薺…」

「落ち着いて。探すのは賛成だけど、単独で行くのは危険すぎる。それに玲奈のしぶとさは竜馬がよく知っているでしょ?今はこの船から脱出できるように準備をするべきだわ」

「…じゃあ何か?それまで玲奈を放っておくっていうのか!?」

 

竜馬は薺の肩を掴んで、壁に叩きつけた。薺はここまで感情的な竜馬を初めて見たが、負けじと反論する。

 

「竜馬!とにかく、落ち着いて!今下手に動くのは危険なことくらいあなたなら分かるでしょ?」

「分かっている!分かっているさ!でも……俺は……玲奈を、敵の手中に置いておくのは…」

 

竜馬が玲奈のことになると、ここまで盲目になってしまうと思っていなかった薺は普段以上に言葉の使い方に注意する。

だが…実際、薺も…あの東京の街に行って兄の海翔を探しに行った時も軽く盲目になりかけたことがあったから…竜馬の気持ちが分からないわけではなかった。だから薺は…優しい口調で話す。

 

「竜馬……私も、あなたの気持ちは分かるわ…。私もあの東京で兄が死んでいたらと思ったら…胸が切なく締め付けられた…。今だってそう…。兄が生きてるか分からない…。だけど、相手を信じなくちゃ、前に進めないの」

「………」

「だから…竜馬…。今は落ち着いて。お願い…」

 

乱暴に掴んでいた薺の肩から竜馬はゆっくりと腕を離した。肩にかかっていた圧迫感がなくなり、薺はふうと息を吐く。

 

「…取り乱して…悪かった…。そうだよな…。今ここで言い争っている場合じゃなかったな…。こんなことしてる内に奴らが来るかもしれないしな…」

 

そう竜馬が言った瞬間、ベチャッと何かがダクトの中から落ちてきた。2人は恐る恐るそちらに首を動かすと、そこには白濁の肌の生物がいた。二足歩行だが、顔には人間らしさはほとんど残っていなく、腕は完全に刃物のような形状に変化していた。

2人はその(おぞ)ましい姿にブルッと震えたが、すぐに拳銃を取り、身体中に弾丸を撃ち込んでいく。見た目に反してかなり強固な体表だが、頭に3発、弾が当たれば粉々に吹き飛んで死んだ。

 

「こいつは……」

「見たこともないアンデッド…。玲奈を探す方が…先の方がいいわね…」

「……そう、だな…」

 

竜馬も相槌を打った。この白濁としたアンデッドから流れる血を見て、薺もそう思うのだった。

 

 

 

 

気を失った玲奈を抱えて、客船のスイートルームのダブルベッドに寝かせる。その美しい姿に、一瞬邪な欲望が勝ってしまいそうになるが、それをどうにか抑えつける。次にスマホの電源を付け、この客船の自動操縦のスイッチを押す。この客船はアンブレラが作った豪華客船に見せかけたバリバリのエンジンが付いた船だ。ロサンゼルスからこの船で例の海底油田まで1時間とかからないだろう。

 

「……くくっ…」

 

ジョンは小さく微笑むと、スイートルームから出ていくのだった。

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