バイオハザード リターンズ   作:GZL

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因みに玲奈たちのパートと紗枝たちのパートは時間軸で言えば、紗枝たちの方が先に進んでいます。


第55話 血濡れの晩餐会

「…………………………う……」

 

玲奈には、今いる寝転がっている感触が何なのか分からなかった。

温かくもあり…柔らかい…。手触りも非常に心地いい。そこで漸く、玲奈は自分が大きなダブルベッドの上にいることが分かった。目を開け、周囲を確かめようとするが、目覚めたばかりで頭はくらくらする。頭に手を置き、玲奈は何があったかを整理する。

 

「確か……竜馬と薺とこの船に乗り込んで…爆発音がして……それで……」

 

ぼやける記憶を頼りに漸く、どうしてこんなところにいるのかを思い出した。何者かに麻酔薬が染みこんだハンカチで気絶され、捕らえられてしまった…と思ったが、この部屋に軟禁されているだけだった。装備も奪われていなし、拘束もされていない。不思議に思いながらも、玲奈はふかふかのベッドの上から飛び降りて、早く竜馬たちと合流しようと動いた矢先……目の前のクローゼットの中から白濁の皮膚を持つアンデッドが出てきた。

一瞬、その異形の姿に驚く玲奈だが、即座に冷静さを取り戻す。奴は変形した腕で玲奈に掴みかかろうとしたが、玲奈はひょいっと避け、背中をトンと押した。押された拍子でアンデッドはその勢いのまま、テレビの画面に頭を突っ込んませていった。

玲奈はそんな奴を放って、この部屋から出た。

 

「………何これ……」

 

玲奈の視界の先には…今まだ幾度と凄惨な景色や腐りきった死体や動く死体どもを見てきた玲奈でさえ…目を逸らしたくなる景色が広がっていた。部屋のすぐ下はホールで、豪勢なテーブル、椅子、食器、グラス、シャンデリアが飾られ、置かれていた。しかし…それらは全て…血で赤々と染まり切っていた。床にはたくさんの血溜まり、壁には血飛沫、そして高い天井に設置されたシャンデリアにも血がべっとりと付着していた。

玲奈は鼻につく強烈な血の臭いを耐えながら、赤いカーペットが敷かれた階段を下りていく。下の階に着き、案の定…そこにもさっきのアンデッドがいた。頭から管状の口を出し、床に広がっている血を吸っていたのだ。玲奈は慎重に後ろから近付くと、奴の首を掴んで270度回転させ、絶命させた。

 

「ふぅ…」

 

と息を吐く玲奈だったが…突如後方からバシュンという音と共に何かが飛んで来て、テーブルをひっくり返した。

 

「!」

 

玲奈はその倒れたテーブルの後ろに隠れ、拳銃を取り出した。テーブルの間から顔を出し、敵を確認する。

上の階に、同じ白濁した皮膚のアンデッドがいるのだが、頭と片腕の形状が違っていた。奴は玲奈の姿を捉えたのか、異形の腕をこちらに向けると、そこから何かを発射した。スピードは拳銃程ではないが…。

だが…さっきまで上にいた時にはいなかったはずなのに、もう2体もあそこに陣取っている。

その分、近接戦は弱いと踏んだ玲奈がテーブルから飛び出した途端、地面に転がっていた白い塊が変形して、また別のタイプのアンデッドが生まれた。

今度のは両腕が鋭く伸びていて、無数の突起が出来ていて、遠距離の奴とは違い、殺傷能力を高めたものだった。玲奈は完全に複数のアンデッドに囲まれてしまっていた。だが、玲奈は焦るどころか…逆に楽しそうに口許に微笑を浮かべた。

 

「面白いじゃない……」

 

玲奈はすぐに行動に出る。

何かを飛ばしてくるアンデッドは少なくとも、こっちにはやって来ない。そう踏んだ玲奈はまず、あの棘だらけの腕のアンデッドに向かっていく。ナイフを抜き、そいつの首を飛ばしてやろうと、走っていくのだが、それを防ぐように援護射撃してくるアンデッド二体。何か……いや、骨が飛んで来て、玲奈の行く手を阻む。奴らは骨を槍状にして、飛ばしてくるのだ。当たったらただでは済まないだろう。

玲奈はそれらを空中で身体を捻って避け、奴の首元にナイフの刃を食い込ませた。そこから力を込め、頭を派手に切り落とした。それで奴は死んだが、上から降ってくる骨は鬱陶しくて堪らなかった。玲奈はすぐに階段を登ろうとしたが、そこにまたアンデッドが立ち塞がってくる。

奴の鋭利な腕が玲奈に振りかざしてくるが、玲奈はそれを楽々と避け、拳銃を構えた。

が……引き金にかけた指に力を込めた途端、玲奈の肩に痛みが走った。

 

「……‼」

 

遠距離タイプのアンデッドが飛ばしてきた骨が玲奈の肩に当たったのだ。骨の硬さは誰でも分かるだろうが、とんでもなく硬い。しかもそれがそれなりの速度で、槍状に飛んで来て肩に刺さったら……言うまでもないだろう。態勢を崩して隙を見せてしまった玲奈に目の前のアンデッドはその鋭い腕で抱きついた。

 

「うぐ…っ……。うぐぐぐ……!」

 

抵抗しようとしても、鋭い突起が玲奈の身体中に突き刺さり、玲奈を苦しめる。動けば動く程、玲奈の体力とスタミナを奪っていく。玲奈が大人しくなったところで、奴は管状の口を出すと、玲奈の首に当て、歯を食い込ませた。

 

「ああああぁぁっ!」

 

そして、ポンプで吸うように玲奈の血液を吸い始めた。

 

「ぐっ……ぐううぅぅぅ…!」

 

玲奈は再び身体に力を込めるが、どんなことをしても奴が離れることはない。

血を抜かれていき、玲奈の意識はとうとう朦朧としてきた。目前の景色がぼやけ、意識が保てなくなってきた。

 

「うっ……う、ぅぅぅ………」

 

遂に掴んでいた拳銃もストンと地面に落下した。玲奈の意識が暗くなってきた時、突然、血の吸収が止まった。

顔を上げると、奴の首は飛んでいた。玲奈の身体からも圧迫感が無くなり、自由になるが、言うことを聞いてくれない身体は地面へと倒れていく。

それを竜馬が受け止めた。

 

「玲奈!大丈夫か!?」

「竜……馬……」

「薺!上の奴らは任せた!」

「分かったわ!玲奈を早くここから出してあげなさい‼」

 

竜馬は玲奈をお姫様抱っこすると、ホールの扉を突き破っていくのだった。

 

 

 

 

薺は骨を飛ばしてくるタイプのアンデッドを見て、拳銃をしまい、腰から少し長めのナイフを取った。素早く近付き、一体目のアンデッドの頭を斬り飛ばした。首からは想像以上の血が噴き出したが、あまり気にしなかった。更に奥にいるもう一体は、このナイフを投げて、その頭に突き刺してやった。

 

「ふぅ…」

 

息を吐き、投げたナイフを回収する薺。

だが、後ろにまたアンデッドが来ていることに……気付いていた。そのナイフを掴むとすぐに逆手に持ち変え、後ろに刺す。そこから真上にナイフの刃を動かし、奴の頭を縦に真っ二つにした。

 

「これくらい、私が気付かないはずがないでしょ?」

 

そう吐き捨てると、薺はこんな臭いホールから出ていくのだった。

 

 

 

 

玲奈を地面に寝かせ、身体に残った傷を確認する竜馬。どれも致命傷ではないし、玲奈は何より…不本意ではあるが再生する身体を持っている。死ぬことはないだろうが…顔色は非常に悪かった。さっきのアンデッドに大量の血を吸われてしまい、頭に血が回らず、貧血を起こしているかもしれない。更に身体にも血が回らず、寒そうに震えている玲奈。

竜馬はその姿があまりに可哀そうで…強く抱き締めてやった。彼は、玲奈の震えを止めてやりたかった。

 

「大丈夫だ……。俺がついているから…」

「竜馬……」

 

竜馬に抱き締められたお陰か、玲奈はさっきまで感じていた死が無くなっていき、心が安らいでいく感じがした。頭にも漸く血が回り、意識もはっきりとしてくる。

玲奈も竜馬と同じように、自らの腕を竜馬の背中に回した。

 

「竜馬…ありがとう」

「い、いや……。さっきは、悪かった…。あの時、玲奈から目を離していなかったら…」

「ううん…。竜馬は何も悪くない。だって…こうやって助けてくれた…」

 

二人は暫しの見詰め合っていた、

すると…横から「コホン」と聞き慣れた声が2人の耳に入って来た。

 

「ねえ…。私がいること、忘れていないでしょうね?」

 

玲奈と竜馬はそう言われえ、即座に離れた。その様子を見た薺はやれやれと思うのだった。

 

 

 

 

実験は順調だった。今回使用した新型ウィルス……J-abyss(アビス)-ウィルスの検証に玲奈たち生存者を使うのは最適だった。ジョンはモニターでその様子を見ながら、赤い液体が入った注射器を首に当て、それを自らの体内へと注入していく。それを得ることが、ジョンにとって最高の快楽だった。

まだまだ三人がここに到達するには時間がかかるだろうが……気長に待つことで、このあと玲奈を手に入れられる興奮を抑えられるだろうと、ジョンは考えていたのだった。

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