バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第56話 動き出す思惑

「……で、どうやって逃げ出す?」

 

この更衣室で服も装備も取り戻した訳だが、ここから脱出する方法は未だに分かっていない。たとえ出れても、追手がやって来るに違いない。だといってこの建物に残って、中でやり過ごす……は無理に等しいし、何より二人はもう実験台になるのはゴメンだった。

 

「ジョッシュ、さっきあなたが銃を操作していた部屋は?」

「このダクトの先だ」

「じゃあ、そこに案内して。監視室なら、脱出経路も確保出来るはずよ」

「…簡単にはやらせて貰えないだろうがな…」

 

そう言った途端、更衣室の中に何体ものジュアヴォが侵入して、弾を浴びせてくる。

あんなのをいつまでも相手にしていられないジョッシュは紗枝の手を取って、部屋から逃げ出す。だが、紗枝はすぐにジョッシュの手を振りほどき、勝手に走り出した。

 

「おい!勝手も分からない建物の中を無暗に逃げ回るのか⁈」

「そんなこと言うなら、他の案でもあるの⁈」

 

もちろんジョッシュに案などない。

 

「あったら、お前と一緒に走っているわけないだろ‼」

「なら黙って走って!」

 

後方からマシンガン、ライフルの弾が嫌という程飛んでくる。紗枝たちはそれを避ける……のではなく、当たらないことを願いながら左右に軽く動いていた。

だが、その時…ジュアヴォたちよりも後ろ…壁なのだが、そこから爆発音がし、吹き飛んだ。壁だけでなく、何体かのジュアヴォも身体をバラバラにして、ジョッシュたちのところに吹き飛んでくる。ぼんやりとそこをジュアヴォたちと同じように見ていると、煙の中から、黒い装甲を煌めかせながら、戦車がこちらに向かって来たのだ。

 

「おいおい!マジかよ⁈」

「走って‼」

 

戦車は敵味方関係なく、全てを薙ぎ倒して二人のところに突っ込んで来る。砲弾は紗枝やジョッシュたちの真横を通り過ぎて、奥の壁か床に大穴を開けていく。

 

「紗枝!あそこに入れ!」

「…また、ゴミ集積所?」

「文句言うな!」

 

2人はそこに突っ込んで、戦車の追撃から一時逃れる。

 

「…相変わらず……臭いわね…」

「…だな」

 

2人はそこから広い空間に出るが、その景色に一瞬息を飲んだ。地面は浅い池で、色鮮やかな鯉が何匹も泳いでいる。そして前方には中国ならではの朱色で染められた派手な建物が建っていた。こんな豪勢な場所であったと知らなかった2人が茫然としていると、後ろからまた戦車の走る音が聞こえてきた。そしてすぐに戦車は壁を突き破ってここにまでやって来る。

 

「くそ!無茶苦茶やりやがる!」

 

その戦車に続いてか、ジュアヴォたちも集結してきて2人を確保してくる。遂にジョッシュと紗枝は拳銃を抜き、態勢を整える。すると、紗枝が指差して叫んだ。

 

「ジョッシュ!あれ!」

 

紗枝が指差す先には、窓ガラスの先に置かれている赤色のバイクがあった。ジョッシュは頷いて、先へと走り出す。

 

「待ってろ!バイクを取ってくる!」

「……早くしてよ!」

 

紗枝はこれから目の前にいる無数のジュアヴォとあの戦車を相手にしなければならないのかと思うと、溜め息を吐きたくなるのであった。

 

 

 

 

ジョッシュは行く道々でジュアヴォが立ち塞がってくるため、全く前に進めずにいた。

彼はいちいち相手にするのが面倒だから、足や腕を撃って怯んだ隙に行こうと思ったが、それはすぐに間違いであると思い知らされた。

 

「………?」

 

突然、撃たれた部位が痙攣し始めたかと思えば、そこから中途半端な変異が始まり、自身の腕や足を昆虫などに似た特徴的な部位へと変化させた。目の前にいる奴の腕はまるで芋虫みたいな形となり、それを伸ばしてジョッシュの身体を掴んで来た。だが、ジョッシュは逆に掴まれた腕を振り回して、壁に叩きつけてやった。

 

「だから……邪魔なんだよ!」

 

ジョッシュはジュアヴォたちを蹴散らしていき、漸くバイクのあるところに着いた。直ぐ様、奴らが来ない内にエンジンを直結させ、ガラスを突き破って紗枝のいる場所までバイクを持って行かせてやった。

 

「待たせた!」

「遅いわ!私を見殺しにする気!?」

 

愚痴を言いながらも、紗枝はジョッシュの後ろに跨る。

だが、バイクを手に入れたとはいえ、目の前に鎮座している戦車をどうにかしなければここからの脱出は不可能だ。紗枝は拳銃を抜く。すると、ジョッシュはポケットから手榴弾を取り出し、紗枝に渡した。

 

「こいつを使え。ドカンとやっちまいな」

「…ええ、ありがたく使わせてもらうわ!」

「よーし…。しっかり掴まれ!」

 

戦車の砲台はバイクに照準を合わせて、殺す気満々だった。放射口からいつ火が吹くか分からない。独特の緊張感が広がる。

が…ジョッシュはいつ砲弾が飛んでくるのか分かっていたのか、バイクをその場で旋回させて、砲弾を避けた。そのまま戦車の横につけると、紗枝はバイクから降りて、戦車の上に飛び乗った。ハッチが開きその中に手榴弾を投げ込もうとしたが、出てきたジュアヴォが紗枝の腕を掴んで、顔面に拳を当てた。

 

「うっ…!」

 

紗枝はよろめいて、戦車の上に倒れてしまう。ジュアヴォもハッチから出て、自分の腕をわざと銃で撃ち抜き、変異させた。リーチが伸びた腕で紗枝の方に振り回してきたジュアヴォ。紗枝はそれを寸での所で避け、一旦手榴弾をポケットにしまう。それからスタンロッドを取り、ジュアヴォの口の中に突っ込んで電流を流した。

ジュアヴォが苦しそうにそこで呻くと、紗枝は今度こそ手榴弾のピンを抜き、ハッチの中に投げ込んだ。紗枝もすぐに戦車から飛び降りて、戦車の爆発から逃れた。

爆発には逃れたのだが、爆風は避けれず、流れて飛んでしまう。

それをジョッシュは見事に腕の中で受け止めた。

 

「!」

 

その途端、紗枝の顔が急激に熱くなり、恥ずかしくなってジョッシュから素早く降りた。ジョッシュはやれやれと言いたげだったが、すぐにバイクを発進させる。

銃弾が飛び交う中、ジョッシュはバイクの速度をどんどん上げていき、朱色の建物に繋がる階段を利用して、この施設の外壁を飛び越えた。

こうして、ジョッシュと紗枝は半年ぶりに外の空気を吸うと共に、見事施設から脱出するのだった。

 

 

 

 

バイクに乗り、国道に沿って研究所から離れていく2人を監視カメラ越しで見ていた女は無線機を取って、指示を出す。

 

「彼らの現在地から約10km離れた地点に例の実験アンデッドを…。それと念のため、彼らを見失わないように高性能ヘリと数十体のジュアヴォを出動させなさい」

 

連絡を終えた女はここから……どれくらいだろうか…太平洋のど真ん中にいるだろうジョンと連絡を取った。スマホの画面にジョンの顔が表示される。

 

『JJ-ウィルスの研究は順調か?』

「ええ。そちらこそ…J-abyss(アビス)-ウィルスの研究はどうなのかしら?」

『ああ……玲奈たちが上手くやってくれて想像以上の成果だよ』

 

ジョンの笑顔は彼女からしたら、とても恐ろしく見えた。

それでも彼女にとっては胸のときめきを与えてくれる人物であった。

 

「私はまだあなたの息子さんを実験に使わせてもらうわ」

『構わん。ただ…くれぐれも油断するなよ…』

 

そこで会話が終わり、女は椅子に背を預ける。

机の上に置かれたアタッシュケースに入れた新型のJJ-ウィルスを取り出し、光に当てた。普通のJJ-ウィルスよりも赤色の輝きが増し、更に美しく見えた。

 

「…………ふふふふふっ……。これさえあれば……私はあなたを超えられるわ…ジョン……」

 

女はさっき画面の中で笑っていたジョンよりも不気味に…妖艶な笑みを浮かべた。

それは…悪魔とも見間違う程…醜かった。

 

 

 

 

今の話は……部屋の角から聞かれていた。黒髪のショートヘア、赤いドレスを身に纏ったジョンの直属部下であるエイダはそろそろ動くべきかと思っていた。だが、肝心のジョンからの連絡はないため、行動するのはまだだ。

エイダは、自分が任務に失敗するなんてこれっぽっちも思っていなかった。

何故かは……エイダ自身にも分からなかった。

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