バイオハザード リターンズ   作:GZL

58 / 157
今回は、エイダのストーリーです。


第58話 裏切り

エイダは露出させた片方の生足に拳銃を装着して、いつでも掴めるようにしていた。ジョンからの命令があったのは、今から約2時間前だ。ジョンの姉…カーラが開発及び研究しているJJ-ウィルスの情報とその成果を奪取することと……暗殺…。

エイダは今まで……世界が滅ぶ前でもジョンの命令は確実に遂行していた。ミッションの成功確率は100%。アンブレラが育ててきたスパイの中では一二を争う程の者であり、ジョンの周りの人間は彼女をアンブレラ史上最高のスパイだと評価していた。

そして、今、エイダはカーラがこの場から離れるのを退屈に待っていた。その間、エイダは考えていた。何故…今になってジョンが実の姉を殺すように命令してきたのかを…。エイダはいつもそんな理由を考えずに様々な人を殺してきたが、流石に今回ばかりは不思議に思っていた。エイダには親も兄弟姉妹もいなかったが、どういう感情を彼が思っているのか…何となく気になった。

そんな考えに耽っているうちにカーラが動き出した。彼女の椅子の横に置いているアタッシュケースを掴み、部屋から出ていった。

カーラが出て行ってからすぐにエイダはジョンから差し出されていたUSBメモリを使い、パソコンに残る全てのデータをバックアップを開始した。もちろん、カーラがここに戻ってくる可能性もあるから早めに終わらせたい。だが、今しかデータを奪取するチャンスがないと踏んだのだ。

それからカーラは戻ってくることはなく、楽にバックアップを完了したエイダはもう一つの仕事に取りかかった。この研究所の始末…。タイマー式のC4爆弾を設置して、エイダは部屋を後にした。

 

 

 

 

カーラはエレベーターで屋上に上がっていったようだ。エイダは特製の自身のワイヤー付き…しかも巻き戻しが可能なフック銃を使って、鉄骨に引っ掻けて建物の上へと向かっていく。しかし、登っている途中でエイダの前方がヘリのライトで照らされた。どうやら監視をしているようだ。

 

「カーラ……気付いていたのかしら?」

 

カーラも中々に頭が働くようだ。流石、ジョンの姉と言うべきだろうか…。エイダはヘリに見つからないようにするのが懸命だと考えたが、そんな慎重に、ゆっくり進んでいるとカーラを見失ってしまうかもしれないと思ってしまった。

しかし、そんなことで焦燥してしまう程の女ではないのがエイダだ。

ヘリのライトが向こうに言ったのを確認した後に、一気に走り出してエアダクトの入り口にスライディングして、入り口をぶち破ってヘリの監視から逃れた。ダクトの中を進むと、網戸からとある部屋の中の景色が見えた。不気味な仮面を被ったジュアヴォがその部屋の見張りとして3体もいたのだ。

しかし、エイダにとっては何の苦労もいらなかった。皮肉なことに部屋の中にガス管が通っていて、エイダはそのガス管を撃ち抜いた。ガス管からは爆炎が噴き出し、ジュアヴォたちは物言わぬ肉塊と化した。

そして、ダクトから出て、部屋の扉を開くと、その先は屋上でカーラは突然現れたエイダを見て驚愕した。

 

「あ……あなたは……!」

「カーラ……あなたには死んでもらうわ」

 

カーラはすぐに腰にあった拳銃に手を伸ばしたが、エイダの反射速度の方が凄まじく、カーラの拳銃を弾き、更にはその腕を銃弾で撃ち抜いた。

 

「うくっ…‼」

 

カーラは腕を抑えてしまったため、握っていたアタッシュケースを地面に落とした。

エイダが止めを刺そうと引き金に力を込めた時、携帯が鳴った。この音は……どうやらジョンのようだ。エイダは携帯を取り、耳に当てた。

 

「はい、エイダです」

『エイダ、カーラはもう殺したか?』

「いいえ。片腕を撃ち抜いて使い物にさせなくしてやっただけです」

『そうか…。なら、最後に彼女と話せるようにしてくれ』

 

エイダは携帯をスピーカーモードにして、カーラにもジョンの声が聞こえるようにした。

 

『カーラ、今の気分はどうだい?』

「ジョン⁈これはどういうこと⁈あなたの命令なの⁈」

 

カーラはいつもの冷静さを失い、ジョンに大声を上げた。彼女は今までジョンを利用するだけ利用していたのだが、まさか…自分が逆に利用され続けていたなんて夢にも思っていなかった。ジョンは笑っているような声で話を続けた。

 

『カーラ…随分君には世話になったよ…。JJ-ウィルスの研究成果はとても興味深かったよ。ただ…それが手に入ったら……もう“姉さん”には用はないんだよ…』

 

カーラの顔が見る見るうちに青ざめていく。カーラは自らの運命を悟ってしまったのだ。ジリジリと後ろに下がっていくカーラとそれを追うエイダ。腕からはポタポタと血が落ち、そんな状態のカーラをエイダは昆虫の足を一本一本千切っていくように追い詰めていく。

そして…携帯から残酷な宣言がジョンによって述べられた。

 

『殺せ…』

 

エイダの耳にそれが入った途端に彼女は拳銃の引き金を引いた。銃弾はカーラの左胸を貫き、撃たれた反動で後退ったことで屋上から落下していった。屋上から身を乗り出し、カーラが死んだことを確認したエイダはジョンに報告する。

 

「ミッション完了しました」

『ご苦労。カーラが持っていたアタッシュケースを持って本部に戻れ』

「了解しました」

 

エイダは地面に落ちたアタッシュケースを掴み、自らがここに来るために乗って来たヘリに乗り込み、離陸させる。離陸させていくと、昔は100万ドルの夜景とも言われた中国の都市部は漆黒の闇か燃え上がる赤に染まっていた。正にこれこそ…地獄の町と言うべきだろう。

そんな中で、国道を走る白い光が1つ……無数の薄い黄色いライトと巨大な黒い鋼鉄のヘリに追われる姿が見えた。恐らく…あれがジョンの息子…ジョッシュだろう。彼らが無事に生き残れるのかということは、気になったが…エイダはそのまま闇に堕ちた中国からヘリを遠ざけていくのだった。

 

 

 

 

 

「はぁ…………はぁ…………」

 

カーラはまだ僅かであるが、息をしていた。

カーラは昔からとあることを隠していた。自身の心臓が一般人と違い、左側ではなく右側にあることを…。実の弟のジョンにも隠していたが、まさかここで役に立つとは思っていなかった。

だが…心臓を貫かれていないとはいえ、腕、胸を撃たれ、さっき落ちた衝撃で身体はグチャグチャになってしまい、この状態であと数分生きていられば良い方だ。

 

「………こんな……とこ、ろ………で……」

 

カーラはポケットに入れていたJJ-ウィルスの強化版を取り出した。何かあった時のために、アタッシュケースの中の一本を抜いていたのだ。それを自らの首に宛がう。これを注入したら…自らの身体にどのようなことが起こるのかは全くの未知数だ。もしかしたら…人間としての自我を失うどころでは済まず、ただ彷徨うだけのアンデッド以上に酷い生物に成り果ててしまうかもしれない。

だが……ジョンに散々利用され、ゴミのように殺されると考えてしまうと…彼女は絶対に最後の最後くらい奴の思い通りにさせたくないと思った。

 

「ジョ……………ン………を…こ…………ろ、す……!」

 

プシュと中の液体がカーラの中に流れていった。

この時……存在してはならない悪魔が、誕生してしまったのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。