バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第59話 鼓動する刃

ヘリをどうにか撃ち落とし、バイクを国道から飛んで着地しようとしたジョッシュだったが、着地が上手くいかずに転倒してしまった。

 

「ぐうっ‼」

「あうっ…!」

 

2人はバイクから落ちて転がり、バイクも火花を散らしながら地面を転がっていき、柱に衝突する。そして、それでガソリンが漏れたのか激しく爆発した。

 

「ああっ……くそ!」

「本当に…最悪ね…。でも…ナイスドライブだったわよ、ジョッシュ」

「…ありがとよ」

「でも!二度と高い場所から飛ばないでね⁈」

「へいへい…」

 

紗枝は口うるさく言うが、ジョッシュは面倒臭そうに頭を掻いた。

それからジョッシュは紗枝を立たせて、辺りを見回した。ほぼ真っ暗な街の中で2人は立ち尽くしてしまう。それにバイクも炎上した今、下手に動いてもまたジュアヴォに掴まる可能性が高くなる。

 

「ったく……中国のどこだか、ここは……」

「でも…アンデッドがいないから、まだ良い方だわ」

 

紗枝の言う通り…辺りにはいつもどこかしらにはいるはずのアンデッドが1体もいなかった。やはり、あのウィルスから逃れた国の1つではあるようだが…遠くでは止めどなく、爆発音が響いている。

 

「…あいつらが襲撃しているみたいだな…」

「中東の時と同じパターンね」

「ま、とにかくここから離れようぜ?奴らがまた来たら相手が面倒だしな…」

「……ちょっと待って」

 

突然紗枝がそう言い、ジョッシュは聞き返す。

 

「どうした?」

「何か……聞こえない?」

 

紗枝の言う通りだった。

どこかからかヴォンヴォンという機械のような音が耳に入って来た。その音の出所は2人の前にある人型の物体だった。色は……黄土色か…輝きを失った金色か…どっちの色でもいいが、人が固まったようなオブジェがそこに飾られていた。

 

「……何だ?」

 

さっきの機械音が徐々に大きくなっていく。それは間違いなくあのサナギのような物体から聞こえ、次第に小刻みに震え始めた。そして…そのサナギから震える突起物が出たかと思えば、サナギを一刀両断し、自身を封印していたサナギを破壊した。

現れたのは、半ば人間に見えなくもないアンデッドだった。ただ…右腕は完全に変異し、震える刃…所謂チェーンソー状の武器を作り上げていた。そして…ソプラノ声レベルの高い声を上げて、チェーンソーを振り上げた。

 

「おいおい…!こいつは何なんだ⁈」

「何だっていいわよ!あのチェーンソーを受けたら一溜まりもないわよ!」

 

奴は重そうなチェーンソーを振り上げて、あの身体にしては驚くくらいの速度で2人に迫って来て、攻撃を仕掛けてきた。一撃目を避けた2人だが…運にも見放されたか、その時地面にチェーンソーが当たり、火花が散って撒かれていたガソリンに引火して、辺りを火の海へと変えてしまった。

 

「もう!悪い状況が更に悪くなったじゃない!」

 

紗枝はそう叫んで愚痴を漏らしたが…逆にジョッシュは少しだけ笑っていた。

 

「面白そうじゃねえか…。俺を切り裂いてみやがれよ、クソ野郎!」

 

ジョッシュの言葉を理解しているのか、奴は咆哮を上げた。

奴は軽やかにジャンプし、言った通りにジョッシュを切り刻もうとしてくるが、ジョッシュはそれを避けた。一撃一撃が致命傷になりかねないので、今回はいつも以上に気を付けなければならない。

奴はチェーンソーを地面で抉りながら攻撃してきて、その時に地面の土がばら撒かれ、ジョッシュの目に入ってしまい、視界を一時奪われる。

 

「く……!」

 

それでも、僅かに見える奴の姿を捉え、ジョッシュはチェーンソーの付け根辺りを掴んで地面に叩きつけた。そこに紗枝がやって来て、スタンロッドを逆手に持ち変えて、奴の首の後ろから突き刺して電気を流した。だが、怯むのはほんの一瞬でそこまでダメージは期待できそうもなかった。紗枝はヒットアンドアウェイを繰り返して攻撃を繰り返すのが最善だろうと踏み、再び後退した。

一方、ジョッシュは弾切れになることを全く気にすることなく、エレファントキラーを撃ち続けた。ここで弾切れを心配しながら戦っていたら、奴に逆襲されてもおかしくないとジョッシュは考えていた。さっきからこの高威力の弾丸を頭や身体に撃ち込む。奴は時折怯みはするが、倒れる気配が全く見られない。弱点も分からないため、どちらが先に倒れるのかの持久戦に持ち込むしかないと思った。

しかし、ジョッシュも紗枝も長時間戦い続けるのだけは避けたかった。もし…このアンデッドがアンブレラが配置したものなら…仮に倒せたとしても安心しきったところで捕まってしまうのがオチだろう。

 

「ああ!くそ!」

 

堪らずジョッシュは銃をしまい、落ちていた短い鉄パイプを掴み、無謀とも言えるくらいに奴に向かって走り出す。奴はジョッシュを視界に捉えると、チェーンソーを激しく振り回してくるが、彼は鉄パイプで防ぎ、後方に回り込むと、その鉄パイプを人間でいう心臓辺りに深々と突き刺した。

 

「今だ!紗枝!やれ‼」

「分かったわ!」

 

紗枝はスタンロッドを電気が流れた状態で奴の頭頂部から突き刺し、グリッと捻った。そして最後に電流を最大に上げて、身体中に電気を流してやった。

重い2撃を受けたチェーンソーアンデッドは流石に耐えられなかったのか、そのままダラリと地面へと倒れていった。

絶命した後でも苦戦を強いられた原因であるチェーンソーは回転を続けていて、少しだけ不気味に見えた。ジョッシュと紗枝の息は絶え絶えになっていて、地面に座り込んで、疲労が身体中から滲み出ていた。

 

「……はあ……はあ……。さぁ、早く行こうぜ…」

「ええ………そうね……」

 

紗枝もやっとの状態で立ち上がった。

しかしその時…。

 

「グワアアァァァァァ‼‼」

 

さっきのアンデッドが雄叫びを上げて立ち上がり、紗枝に向かってそのチェーンソーを振り上げたのだ。紗枝は疲れ切って逃げるどころか、足元がおぼつかず、地面に尻もちを着いてしまった。

無慈悲なチェーンソーが紗枝に迫る。紗枝は今までに感じたことのない恐怖に…女としてか人間としての悲鳴を上げた。

 

「キャアアアアアアア‼‼」

「紗枝ぇ‼」

 

ジョッシュは紗枝の悲鳴が聞こえた瞬間、奴と紗枝の間に入り込み、自らの左腕を差し出してやった。彼からしたら腕の1本や2本、または足をあげてもいいくらいだった。

奴のチェーンソーは左手首を切断した。

 

「ぐあああああああああぁっ‼」

 

肉を裂かれ、骨をゴリゴリと削られていく感覚は……ジョッシュにとっては感じたこともない痛みだった。切断面からは勢いよく血が噴き出した。

しかし…その痛みのせいか分からないが、ジョッシュの意識はいつも以上にはっきりしていた。

ジョッシュは奴の身体に突き刺さったままの鉄パイプを引き抜くと、まず顔面に突き刺した。そこから縦に無理矢理動かして、頭を半分に割ると、もう一度抜く。そして今度はチェーンソー内でどくどくと赤く輝き、鼓動する心臓らしき場所に渾身の勢いで突き刺した。チェーンソーに当たって、鉄パイプはグニャリと曲がる。それでも確実に心臓に突き刺さっていて、奴は息苦しそうに呻いていると、今度こそ…その命は燃え尽きた。

だが…ジョッシュも限界…というより、死にそうだった。左手首を失ったせいで血が止まらず、血が足りなくなったのだろう。腕を抑えて、膝を着くジョッシュに駆け寄る紗枝の目には涙が溜まっていた。

 

「ジョッシュ!どうして…」

 

完全に力を使い切ったジョッシュは苦しそうな表情を作りながらも、薄笑いを浮かべた。

 

「あい、つ……海翔の、約束を破ったら……殺されると…思ってな……」

「!」

 

紗枝の涙は更に溢れる。

しかし、ゆっくりしていられず、紗枝はすぐにハンカチを取り出して切断面に巻き付けた。応急処置…とも言い難いが、何もしないよりかはかなりマシだろう。それから傷付いていない右腕を彼女の肩に置いて、彼を立たせた。そして、ゆっくり過ぎるくらいに歩き始めた。

 

「置いて………いけよ…。俺は、邪魔……なんだろ?…こんな、面倒…臭い、奴……」

「そんなことない!それに置いてなんかいかない‼絶対に…死なせない‼」

 

紗枝にしてはいつも以上に感情的だった。

だが…何故そこまでしてくれるのかと聞きたいところで…彼の意識は途絶えた。

そして、ジョッシュや奴の大きな声に反応したジュアヴォたちがこちらにやって来た。徐々に囲まれていき、襲われ…2人は引き離されてしまう。

 

「ジョッシュ!ジョッシュぅ‼」

 

既にジョッシュに意識が失っていることを知らない紗枝はひたすらに叫び続けていた。

理由なんて…あったのだろうか…。他に理由があるとするなら…彼が………。

そう思った時、紗枝も意識を奪われたのだった。

キャラ人気投票。IF Story編終了まで実施。

  • 玲奈
  • 竜馬
  • 紗枝
  • 海翔

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