バイオハザード リターンズ   作:GZL

6 / 157
ワンちゃん出ます。
…可愛くないけど


第6話 竜也の目的

意識を失った玲奈を背中におぶって、竜也はあの銃撃戦の場から離れた。あんな無鉄砲に撃っていては、こちらが巻き添えを食らってもおかしくないと思ったからだ。

だけど、同時に竜也は二つのことに焦っていた。一つ目は、全くこの施設の地理に長けていないため、道が分からないこと。これは竜也にとって非常に問題だった。下手にこの中を彷徨い続けたら、彼らの元に戻れなくなる可能性がある。

そして、もう一つは…背中に玲奈を背負っていることだ。動きも鈍くなるし、何より……すごい美人で彼の心臓は今もバクバクしている。こんな大切な時だというのに、緊張感ないなと竜也は自分の情けなさに呆れる。

 

「……」

 

そう思っても…この寝顔…には悶絶しそうになる自分もいることに竜也は気付かざるを得なかった。これじゃまともに行動出来ない。

そう思った竜也は、まず玲奈を目覚めさせることに決めた。だが、この機械類が立ち並んでいるここではまた奴らが来てもおかしくはなかった。竜也は角を曲がり、とある部屋の前まで来る。周りには何か、動物を入れていたであろう檻は全て破られていた。床に玲奈を寝かせ、身体を揺さぶろうとした時、グルると唸り声が耳に入った。竜也は唸り声が聞こえた方面を凝視した。

もし…さっきの奴らだとしたら、銃もナイフも無い今の状況は最悪と呼べるだろう。しかし、やってきた()()を見た竜也は愕然とした。

 

「…嘘だろ…、勘弁してくれよ…」

 

思わず愚痴を溢した。ヒタヒタと濡れた足を踏みしめ、竜也の視界に映ったのは犬だった。あの檻の中にいた個体だろうが、普通の犬のままであって欲しかったと竜也は思った。内臓や骨、肉が露出し、口は裂け、全身血塗れの犬が竜也と玲奈を見詰めていた。竜也も一秒だけ、犬を見詰めたが、すぐに玲奈を抱き起しにかかる。

途端、犬はスタートダッシュを切り、竜也たちに向かってきた。玲奈を再び背負って、竜也は小部屋の中に逃げ込んだ。犬は扉に飛びつき、ガリガリと爪痕を残していく。竜也は安堵したが、小部屋の中には奴もいた。警備員の服装をした奴に掴まれた竜也は構うことなく、そいつの身体を蹴り上げ、薬品が置いてある棚にぶつけさせた。棚から落下する薬品の音が部屋に響く。警備員はその後、ピクリとも動かなくなった。竜也はここで警備員のポケットに拳銃があることに気付いた。すぐに竜也はそれを抜き取り、残弾を調べる。

 

「残り七発…か…」

 

予備の弾はなさそうだ。

これであの犬をやるしかなさそうだ。その前に…。

 

「玲奈、起きろ」

 

先に玲奈を起こす、それが先決だった。

 

「う…りゅ、竜也…?どうして…私…」

「事情は後で話す。いいか?今この部屋の外に狂った犬がいる。そいつを今から殺しに…」

 

が、その犬は頭がいいのか、窓ガラスを突き破り、小部屋に侵入してきた。目覚めたばかりの玲奈もこの犬のインパクトはすごく、目を丸くさせた。

 

「なに…あれ⁈」

「いいから出るぞ!」

 

竜也は玲奈の手を引っ張り、小部屋の外へと逆戻りする。

が、そこには…。

 

「ひっ!」

 

玲奈は思わず小さく狼狽えてしまう。目の前には、さっきと同じような犬が何匹も玲奈と竜也を眺めていた。

玲奈は自然に背中をガンと扉にぶつけてしまう程に衝撃を受ける。

竜也は握っている拳銃を犬どもに向けた。犬たちは既に竜也たちに向かってきていたが、竜也は的確に犬の頭を狙って拳銃の引き金を引く。恐怖で震えそうになる手を必死に抑えて、竜也は一発も外すことなく、全部で7匹いた犬の頭は無惨に吹っ飛んで、死んでいた。

 

「…ふぅ…」

 

竜也は安堵の息を吐く。

が…安心するには早すぎた。小部屋に入った犬は三度こちらに戻ってきたのだ。竜也は拳銃を向けるが、スライドが降り切っていた。弾切れだ。犬は間髪入れずに突っ込んで来る。竜也は自身の腕を前に出し、噛みつきに対抗しようとする。

だが、その間に玲奈が入り込んできた。

その目は真剣そのもので、身体を反転させる。

 

「せええぇぇい‼」

 

玲奈の渾身の蹴りは犬の顔面を捉え、首の折れる音を響かせてから、壁に叩きつけた。

竜也は今玲奈が行った格闘を見て、なんて強いんだ…と思った。

飛びかかってくる犬の顔面を蹴り上げるなど、いくら訓練していても無理だろうと思った。実際、玲奈も今の蹴りを自分でやっておきながら、すごい…と感じていた。

記憶は失っても、身体は覚えている…そういうことなのだろう。

 

「……とにかく、早くここから離れよう。犬がまた来たら大変だ」

 

その案に玲奈が頷くまで、一秒とかからなかった。

 

 

 

 

玲奈と竜也はそれからこの施設の表側の出入り口だろう場所に着いていた。あちこちに書類が落ちていて、所々に指や血があった。恐らく奴らのだろう。竜也は書類を手に取り、中身を見るが、専門用語が多すぎて何の役にも立ちそうになかった。

竜也は舌打ちをしたくなるが、近くに玲奈がいるために出来ない。

 

「何か…ないのか…」

 

その時、ドンと大きな音が竜也の左側から響く。驚いて振り向くと、ガラス越しに奴が赤い歯を剥き出しにして竜也を睨んでいた。しかし、こいつだけならガラスが割れることはない。竜也はふうと息を吐く。

 

「竜也…!あれ…!」

 

今度は玲奈が声を上げた。震える指はある一点を指していた。

その先には女性がいた。ショートヘアの黒髪の女性…。竜也はその女性を見た途端竜也は目を疑った。ふらふらしているが、近寄れずにはいなかった。そんな竜也を玲奈は止めようとする。

 

「待って!彼女…どこか変…」

「千鶴!無事だったか!」

 

玲奈の警告も無視して、竜也は彼女を抱きしめた。

だが返事がない。

 

「千鶴?どうし…」

「グアアアアァ‼」

 

千鶴はこの世とは思えない咆哮を放って、竜也に掴みかかった。

完全に油断していた竜也は千鶴に馬乗りにされる。噛みつこうとしてくる千鶴に、必死に抵抗する竜也だが、彼に千鶴を殺すことは出来なかった。

 

「千鶴……お前…っ」

 

竜也は昔のあの優しさの面影など微塵もない千鶴に小さく呟いた。

しかし、突然千鶴は呻き声を上げて固まると、竜也にのしかかる形で倒れた。千鶴を退かし、見上げると鈍器を持った玲奈が立っていた。

 

「………」

 

竜也は自身の周りが朱に染まるのを眺めながら、見開いたままの千鶴の目を閉ざした。そして、ポツリと呟く。

 

「彼女は…俺の妹だ」

「え?」

「千鶴はアンブレラで働いていた。でも、この施設に関しては何にも言ってくれなかったよ…」

「じゃあ…何故…」

「数時間前…千鶴から電話があったんだよ…。助けを求める声だったよ…」

 

 

竜也はその時のことを思い出す。

約三時間前、竜也の携帯に着信がかかってきた。手に取ると、それは妹の千鶴からのものではぁと溜め息を吐いた。平日は絶対電話してくるなとキツく言ってるのに…と思いながら、竜也は電話に出た。

 

「おい、千鶴!電話するなって…」

『はぁ…はぁ…。た、助けて……』

「ち、千鶴?どうした?おい!?」

『助け……て………た、す……け……………』

「千鶴!返事しろ!おいっ‼」

 

そこから先、竜也が何度も呼び掛けても、千鶴からの返事はなかった。

 

 

 

 

「そんなことが…」

「…あの教会で、明日から警視庁勤務だって言ったよな?あれ…嘘なんだ。本当は俺は公安で、アンブレラ社が極秘裏に何か実験を行っているのは薄々感づいていたんだ。だけど…証拠がなかった。けど、千鶴の電話からほんの数分でアンブレラが動いたんだ。だから俺はアンブレラの悪事を暴くと同時に、千鶴を……助けたかったのに…俺はっ…」

 

悔しそうに嗚咽を漏らす竜也に玲奈は強気に言った。

 

「…全て終わったような言い方しないで…。竜也にはまだやることがあるでしょ?この事実を世界に暴露するのよ!私たちで!それが……彼女のために唯一出来ることよ…」

「玲奈…。…そう、だよな…。警察は真実を明らかにするのが仕事だもんな…」

「そのためにもまずは脱出しないとね!」

「ああ、行こう!」

 

二人はここから駆け出す。ここから離れる前に玲奈は改めて千鶴を見た。その時、頭の中でフラッシュバックが起きる。

 

『私が……アンブレラのハイブに穴を開けるから、あなたはその隙に……』

『…分かった。でも条件……』

 

玲奈は記憶を失う前に千鶴と話していることを思い出す。

玲奈は千鶴に頼まれたのだ。何かを盗むように…。

何を盗もうとしていたのか…そこまではまだ思い出せなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。