バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第60話 グレール・ジョン(前編)

玲奈たちは1つの巨大な扉の前に辿り着いていた。古臭く、錆び付いた扉は古いという形容詞がとても似合いそうなものだった。だが…その扉に刻まれたマークを見て、3人は身体を固めてしまった。それは…彼らには忘れることも出来ない、赤と白の交互に三角形が置かれ、まるで傘のように見えた。そう…アンブレラ社のロゴだ。

それを見た薺が漸くハッとして今まであったことを思い出し、思わず口を開いた。

 

「そうだわ…。思い出した!あの時…」

 

 

 

 

ー1年半前ー

薺が操縦するヘリはどうにか無事にアラスカの海岸に到着した。着いたはいいのだが…生存者をヘリから降ろした薺はこれからどうしたらいいのか分からなかった。すると、霧が立ち込める海に巨大な船が浮かび、その方面から小型のボートが近付いてきた。それは明らかに別の生存者で、薺たちは助かったと大いに喜んだ。だが…海岸に到着した途端、やって来た奴らは正体を見せた。突然全員を拘束し、胸にデバイスを付けてきたのだ。

 

『いや!何するの!?』

 

薺にも付けられたが、彼女は必死にもがいて彼らから逃げ出し、飛行機の溜まり場へと逃げていったのだった。

 

 

 

 

ー現在ー

「じゃあ…あの放送も…この船も……」

「ええ……。《奴ら》の住処(アジト)よ!」

 

薺はそう叫んだ瞬間、堅く閉ざされていた頑丈な扉のロックが解除され、ゆっくりと重苦しく開いていく。中から何が出てきて襲ってくるか分からないため、3人は拳銃を構えて警戒する。完全に開ききり、闇が広がる広大な部屋の中に侵入していくが、この暗闇が続いたのもほんの数秒だけだった。すぐに天井に設置されたLEDが眩しく光り、白い壁と床を照らした。だが…中にはPadがポツンと置かれているだけで、その他には何もなかった。正に殺風景と呼ぶに相応しかった。

 

「どうなっているんだ?俺には何も分からなくなってきたよ…」

「生存者は、どこなの?」

 

2人はそう呟くが、玲奈にだけは分かっていた。床に膝を着き、手を置く玲奈。そして…生存者がどこにいるのか呟いた。

 

「みんな……ここに…」

 

玲奈は立ち上がり、不自然に置かれているPadを取り、その中に表示されているものを確認して、予想は確信に変わった。薺にもPadを渡し、彼女も納得した。

 

「……酷い……。生存者を捕まえて、ウィルスの実験台にしているんだ!…あっ!ケーシャもいる!」

 

Padの中にはケーシャの他に薺が知っている生存者がたくさん載っていた。それが分かり、薺は少しホッとした。喜びのあまり、生存者を全てこの狭い部屋から解放してあげようとしたが、それは玲奈に止められた。

 

「今はダメよ。そんなことをすれば、この船にいる白濁肌のアンデッドに殺されてしまう。出すなら……」

 

玲奈は単身一人奥の方に行き、別の扉を蹴って開けた。

 

「こいつを始末してからにしましょう」

 

玲奈が開けた部屋にはミイラ化し、既に息絶えたアンデッドの死体が台座の上にズラリと並んでいた。そのアンデッドを分析し、データを表示しているだろうガラスの板が前方から1枚ずつ、順番に上がっていく。そのガラスで曇っているが、明らかに見覚えのある人物が鎮座していた。そして、最後のガラス板が上がりきったところで、その姿を現した。

 

「久しぶり、元気で何よりね、ジョン!」

 

あの富士山でオスプレイごと墜落して死んだはずのジョンだが、何故か傷一つせずに悠々と生きている。恐らく、彼に打ったJ-ウィルスの力によるものだと容易に想像がついた。

 

「お前を見つけるのは簡単だったよ…。衛星を使えば一発でヒットしたよ。近頃、空を飛んでいる人間は大していないからな…。それに真っ先に友人のところに向かうと踏んでいたよ。友情は……あまり評価出来ないでどな…」

 

そう言い終えると、後方から血だらけの犬が歩み寄って来た。玲奈は即座に背中の散弾銃を掴み、犬2匹に向けた。

 

「待て待て。おすわり」

 

犬はジョンの言う通りに完璧に座った。身体を強固にするだけでなく、アンデッドと主従関係を作ることも可能になったのだろう。しかし、玲奈は然程驚いていない。

 

「ペットは家族だからな…」

「…そう、じゃあ従者のあなたはどうかしら?」

 

玲奈は冷徹な眼差しをジョンに向けながらも、散弾銃の銃口も彼に向けた。

しかし……。

 

「ぐっ…!」

 

突如後ろから竜馬と薺の呻き声が聞こえたかと思い、振り向くと小さな男が玲奈に拳銃を向けていた。その横では2人が倒れている。

 

「ベルモント…」

 

やはりと思っていたが、ベルモントはジョンの部下だったようだ。姑息な手だけは好きなようだ。

 

「動くなよ?お嬢ちゃん…。さて、その物騒なものを俺に渡すんだ、床に落としてから…」

 

玲奈はこんな野郎の言う通りにするのも嫌だったが、仕方なく、散弾銃を床に投げ捨ててベルモントに渡してやった。ベルモントはふんと偉そうに息を吐いた。

 

「で?私をここまで連れてきた理由は?」

「お前は理解しているだろうが…このウィルスは素晴らしい力を与えてくれる。お前はその力をフルで使えるが、俺の場合は一時的に新鮮な肉を食わなくてはならない。それに……っ…こいつはお前を欲している。玲奈…君を摂取出来れば、俺は君を超える力を手に出来る」

 

それを聞いた玲奈は小さく頷きながら軽く右に歩き始める。

 

「なるほど…。確かにいい作戦ではあったわ。けど…見落としてることがあるんじゃない?」

「止まれ。そこから動くな」

 

ジョンは怪訝な表情で玲奈に聞く。

 

「見落としていること?何だ?言ってみろ」

「私はまだ殺せていない」

 

玲奈がそう言った瞬間、彼女の近くにあった小さな台を蹴り上げて、そこに置いてあった何本もの手術用メスをジョンに向けて投げた。ジョンは軽く頭を右に動かして避けるが、頬を掠る。それから玲奈は身体を半回転させ、ベルモントの拳銃を弾き、奴の腹に蹴りを与えて、吹き飛ばしてやった。

そして、落とした散弾銃に手を伸ばそうとしたが、その上にさっきの犬が1匹、足を置く。更には犬の頭は割れ、新たな口が現れた。大きさは犬の胴体の半分辺りにまで及び、食いつかれたら一溜まりもなさそうだった。ジョンを見ると、彼は少々不機嫌そうな表情を作っていた。拳を作り、玲奈をすぐに殺してやろうと思ったジョンだったが…彼の後ろに誰かいることに気付く。さっき気を失ったと思われた竜馬と薺だ。

 

「…あれくらいで意識は持っていかれねえよ…」

「その通りよ」

 

そう玲奈に伝えると、2人とも拳銃をジョンに向けた。

 

「こいつはおめでたいな…。この俺に勝てると思っているのか?佐々木竜馬、それと薺…と言ったかな?貴様らは俺からしたら実に面倒極まりない人間だ」

 

玲奈は笑いながら言う。

 

()()()()()()()()って…最初に言わなかったかしら?」

 

すると…ジョンは邪魔になった前髪をたくし上げ、ふふふと小さく笑う。その時、彼の目は…不気味に赤く発光していた…。

 

「………もっと、連れてくるべきだったな、玲奈…」

 

そう言った瞬間、ジョンは竜馬と薺の間合いに入っていた。2人はいつの間にここまで移動してきたのか…その姿さえ目視出来なかった。引き金を引く間もなく、竜馬は肘で腹を殴られ、薺は腕を掴まれて床に背中から叩きつけられた。

玲奈はその様子を見て、竜馬と薺の2人ではジョンには敵わないと分かった。すぐに助けに動きたかったが、犬共のせいで動きは制限されて、行きたくても行けない状況を作らされていた。

竜馬はすぐさま立ち上がり、拳銃を撃つが、ジョンは銃弾を難なく避けた。竜馬は奴が銃弾を避けたことに驚愕したが、ここで止まっていられずジョンに向かって渾身の体当たりをぶつけた。ジョンはそれをきちんと受け止め、10cmくらい後退したがすぐに止まってしまう。

 

「ふっ…」

 

微笑を洩らし、ジョンは腹を蹴り上げて投げ飛ばした。

 

「うごっ‼」

 

投げ飛ばされたが、受け身を取り、竜馬は再び拳銃を発砲する。ジョンはステップを踏んでバック転する。銃弾はジョンの目前を通過し、その先の壁にめり込んでいく。薺も果敢に攻めようと、至近距離から撃とうとするが、銃を持っている腕を捻られ、竜馬が迂闊に撃てないように彼女を盾にする。そこで薺はナイフを抜き…。

 

「これなら……どう⁈」

「っ‼」

 

薺のナイフはジョンの足に見事に刺さる。ジョンは若干の悲鳴を上げたが、大して効いていなさそうだった。薺を放り出し、ナイフを抜くとそれを竜馬に投げた。

 

「!」

 

凄まじいスピードで飛んできたナイフは竜馬の頬を掠り、その隙に近付いたジョンは竜馬の腹に渾身の拳をぶち込んだ。

 

「ぐ…⁈ぐ、ぐぅ…!」

 

唾と血を大量に吐き、竜馬は地面に伏してしまった。

 

「竜馬!」

 

薺が叫ぶが、拳銃を構える暇がない程の速度で距離を詰め、彼女の首を掴み、地面に叩きつけた。

 

「あがぁ‼」

 

薺もそのまま動かなくなる。その光景を玲奈は今にも泣きそうな表情で見ていた。

そして…ジョンはこう言った。

 

「次はお前だ、玲奈…」

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