バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第63話 海底油田

3人は建物の屋上で服の汚れを落とし、着地したときに打った身体の部分を擦っていた。オスプレイがまさか、燃料切れ寸前だったなんて、誰1人として予測出来なかった。もしかしたら、ジョンはここまで想定していたのかもしれない。

玲奈は竜馬に左腕の傷を応急手当してもらいながら、オスプレイが落ちていった海を見ている薺に聞いてみた。

 

「どう?海からは何か見える?」

「全く。あのアンデッドも、死体も…何も上がってこない」

「そう……」

「まあ、それはそれでいいがな…」

 

竜馬はそう言いながら、玲奈の左腕に包帯をキツく縛り、出血を止めた。玲奈はその瞬間、少し顔を苦しそうに歪めた。

 

「大丈夫か?」

「ええ…。ありがとう…」

 

玲奈は腕を少しだけ動かして、どれくらい耐えれそうなのか確かめた。ただ、玲奈はここ最近…傷の修復する時間がいつも以上にかかっている気がしていた。どうしてなのかは玲奈にも分からないが、今はなるべく無理をしない方がいいと思った。

薺は暗い海を覗くのをやめ、未だに沈んでいるクイーン・ゼノビアを眺めた。

そして、3人はポツンと公海に(そび)え立つ建物の屋上に取り残されてしまった。

 

「で……どうする?これから…」

「助けを待つ……なんて、こんな海のど真ん中に誰か来るわけないしな…」

「……先に進むしか…ないの?」

 

薺がそう呟く。3人の前方には重そうな扉がズンと立ち塞いでいる。その扉の横には英語で『Sabmarine oil field』…日本語で『海底油田』と書かれていた。

 

「海底油田か…」

「どうしてこんなところに……」

「……不思議に思っていても仕方ないわ。とにかく中に入って、この大海原から逃げ出せるものがないか探しましょう。ここで待っていても、何も始まらないし…」

 

玲奈はそう言って、レバーを降ろした。扉はエレベーターの扉らしく、中に入ってすぐに地面が下へと下がり出した。すると、また赤いホログラムが現れ、玲奈は溜め息を吐いた。

 

「……毎度毎度登場してくるわね、クイーン」

『あなたたち…ここが何なのか分かって入っているのかしら?』

 

レッドクイーンはコンピューターのくせに溜め息を吐いていた。

 

「そんなもの…知る訳ないでしょ…」

『ここはアンブレラが一番最初に開発した研究所…。JJ-ウィルスとJ-abyss-ウィルスの実験場よ』

「J-abyss-ウィルス?」

『白い肌を持ったアンデッドを見たでしょ?』

「ああ…あいつらか…」

「でも、これで納得したわ。道理であの船がぶつかったわけね。私たちを殺すにしても、生かすにしてもここに連れてくるつもりだったのね」

『それとついでに言うけど、この中には警備としてジュアヴォ、そして人間は2人しかいない』

「2人?」

 

竜馬はクイーンに問う。

 

『行って会ってみれば分かるわ。玲奈、気を付けなさい』

「あ………」

 

玲奈がまだ聞きたいことがあったのに、クイーンのホログラムはすぅと消えていった。玲奈はまた不思議に思っていた。初期の頃…玲奈が初めてハイブで会ったクイーンとは明らかに性格が正反対だった。殺戮とアンブレラの地位を優先し、危険な玲奈たちはいつも排除しようとしてきたクイーンとは全く異なった。何故、そこまで玲奈たちを異様なまでに気遣い、助けてくれるのか…。

彼女は言っていた。

『いずれ分かる』………と…。

そんなことを考えているうちにエレベーターは順調に海底深くへと降下していく。途中で全面ガラス張りのエレベーターの周りの景色は変わり、海底に設えられた人工的なパイプや通路、その他に色々なものが張り巡らされたものが三人の視界に入った。しかも、パイプなどではLEDのライトがチカチカ点滅していて、世界が滅んでもなお動き続けていた。

 

「…システムが生きている…」

「こんな真っ暗にも等しい海底に研究所か…。アンブレラは地下に秘密の場所を作るのが好きだな…」

 

竜馬がそう呟くと同時にエレベーターはどうやら最下層に到着した。3人は降りようとしたが、その途端に何十発もの銃弾が3人を襲った。銀色の謎の仮面を付けたジュアヴォたちが玲奈たちに向けて、マシンガンを乱射してきたのだ。陰に身を潜めた玲奈は2人に叫んだ。

 

「気を付けて!そいつらは頭に銃弾を1発撃ち込んだくらいじゃ死なないわ!傷が即座に再生するから、再生しきる前にそこに更なる弾丸をぶち込んで‼」

 

2人は頷き、言われた通りにいつも通り頭を狙う。仮面が砕け、肉が露出した顔面に弾丸を撃ち込んで殺していく。

 

「行くわよ!きりがない‼」

 

玲奈は先程拳銃を撃ってみて気付いたが、撃つ度に左腕に鈍い痛みが突き抜けた。あまり使わない方がいいと思った。

 

「けど…というかいつものことだけど広いな…」

「広くても脱出するための出口くらいはあるわ」

「それにしても…臭いわね。やっぱり…原油の臭いかしら?」

 

海底油田なのだから当然だろう。表向きは普通に油田を発掘するためだけだろうが、裏では危険な生物兵器の開発…。アンブレラが長年してきたことだ。

それから3人はジュアヴォの追撃から逃れるためにとある部屋の中に隠れ、やり過ごした。その部屋はモニターがたくさんある部屋で、ここなら脱出くらい楽に見つけられると玲奈は思った。

 

「おい!あれ見ろよ!」

 

すると竜馬が叫んだ。彼の指差したモニターの先には、一組の男女がイエスが(はりつけ)にされたように拘束されていた。男に至っては全く見覚えがなかったが、“誰か”に似ていた。それもついさっき会ってきたような顔だった。しかし、女に関してはこの三人なら知らないはずがなかった。あの地獄から生き延びてきた仲間…。

 

「「「紗枝……」」」

 

3人は思わず、同時に呟いてしまうのだった。

 

 

 

 

あの魔物はかなり離れたそこからでも、太平洋から響いて来た大きな爆音に反応して、その爆心地に向かって高速で泳いでいた。奴の頭の中には、ある人物に対する復讐心だけが燃え尽きることなく、腹の奥で燃え続けていた。底冷えするほどの海底に身を潜らせても、その怒りの(ほのお)は消えることはなかった。

“彼女”は悪魔の形相で既に見えている海底油田に向かって泳いでいく。玲奈たちのいる海底油田に…“彼女”はもうすぐそこにまで迫っていた…。

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