3人は建物の屋上で服の汚れを落とし、着地したときに打った身体の部分を擦っていた。オスプレイがまさか、燃料切れ寸前だったなんて、誰1人として予測出来なかった。もしかしたら、ジョンはここまで想定していたのかもしれない。
玲奈は竜馬に左腕の傷を応急手当してもらいながら、オスプレイが落ちていった海を見ている薺に聞いてみた。
「どう?海からは何か見える?」
「全く。あのアンデッドも、死体も…何も上がってこない」
「そう……」
「まあ、それはそれでいいがな…」
竜馬はそう言いながら、玲奈の左腕に包帯をキツく縛り、出血を止めた。玲奈はその瞬間、少し顔を苦しそうに歪めた。
「大丈夫か?」
「ええ…。ありがとう…」
玲奈は腕を少しだけ動かして、どれくらい耐えれそうなのか確かめた。ただ、玲奈はここ最近…傷の修復する時間がいつも以上にかかっている気がしていた。どうしてなのかは玲奈にも分からないが、今はなるべく無理をしない方がいいと思った。
薺は暗い海を覗くのをやめ、未だに沈んでいるクイーン・ゼノビアを眺めた。
そして、3人はポツンと公海に
「で……どうする?これから…」
「助けを待つ……なんて、こんな海のど真ん中に誰か来るわけないしな…」
「……先に進むしか…ないの?」
薺がそう呟く。3人の前方には重そうな扉がズンと立ち塞いでいる。その扉の横には英語で『Sabmarine oil field』…日本語で『海底油田』と書かれていた。
「海底油田か…」
「どうしてこんなところに……」
「……不思議に思っていても仕方ないわ。とにかく中に入って、この大海原から逃げ出せるものがないか探しましょう。ここで待っていても、何も始まらないし…」
玲奈はそう言って、レバーを降ろした。扉はエレベーターの扉らしく、中に入ってすぐに地面が下へと下がり出した。すると、また赤いホログラムが現れ、玲奈は溜め息を吐いた。
「……毎度毎度登場してくるわね、クイーン」
『あなたたち…ここが何なのか分かって入っているのかしら?』
レッドクイーンはコンピューターのくせに溜め息を吐いていた。
「そんなもの…知る訳ないでしょ…」
『ここはアンブレラが一番最初に開発した研究所…。JJ-ウィルスとJ-abyss-ウィルスの実験場よ』
「J-abyss-ウィルス?」
『白い肌を持ったアンデッドを見たでしょ?』
「ああ…あいつらか…」
「でも、これで納得したわ。道理であの船がぶつかったわけね。私たちを殺すにしても、生かすにしてもここに連れてくるつもりだったのね」
『それとついでに言うけど、この中には警備としてジュアヴォ、そして人間は2人しかいない』
「2人?」
竜馬はクイーンに問う。
『行って会ってみれば分かるわ。玲奈、気を付けなさい』
「あ………」
玲奈がまだ聞きたいことがあったのに、クイーンのホログラムはすぅと消えていった。玲奈はまた不思議に思っていた。初期の頃…玲奈が初めてハイブで会ったクイーンとは明らかに性格が正反対だった。殺戮とアンブレラの地位を優先し、危険な玲奈たちはいつも排除しようとしてきたクイーンとは全く異なった。何故、そこまで玲奈たちを異様なまでに気遣い、助けてくれるのか…。
彼女は言っていた。
『いずれ分かる』………と…。
そんなことを考えているうちにエレベーターは順調に海底深くへと降下していく。途中で全面ガラス張りのエレベーターの周りの景色は変わり、海底に設えられた人工的なパイプや通路、その他に色々なものが張り巡らされたものが三人の視界に入った。しかも、パイプなどではLEDのライトがチカチカ点滅していて、世界が滅んでもなお動き続けていた。
「…システムが生きている…」
「こんな真っ暗にも等しい海底に研究所か…。アンブレラは地下に秘密の場所を作るのが好きだな…」
竜馬がそう呟くと同時にエレベーターはどうやら最下層に到着した。3人は降りようとしたが、その途端に何十発もの銃弾が3人を襲った。銀色の謎の仮面を付けたジュアヴォたちが玲奈たちに向けて、マシンガンを乱射してきたのだ。陰に身を潜めた玲奈は2人に叫んだ。
「気を付けて!そいつらは頭に銃弾を1発撃ち込んだくらいじゃ死なないわ!傷が即座に再生するから、再生しきる前にそこに更なる弾丸をぶち込んで‼」
2人は頷き、言われた通りにいつも通り頭を狙う。仮面が砕け、肉が露出した顔面に弾丸を撃ち込んで殺していく。
「行くわよ!きりがない‼」
玲奈は先程拳銃を撃ってみて気付いたが、撃つ度に左腕に鈍い痛みが突き抜けた。あまり使わない方がいいと思った。
「けど…というかいつものことだけど広いな…」
「広くても脱出するための出口くらいはあるわ」
「それにしても…臭いわね。やっぱり…原油の臭いかしら?」
海底油田なのだから当然だろう。表向きは普通に油田を発掘するためだけだろうが、裏では危険な生物兵器の開発…。アンブレラが長年してきたことだ。
それから3人はジュアヴォの追撃から逃れるためにとある部屋の中に隠れ、やり過ごした。その部屋はモニターがたくさんある部屋で、ここなら脱出くらい楽に見つけられると玲奈は思った。
「おい!あれ見ろよ!」
すると竜馬が叫んだ。彼の指差したモニターの先には、一組の男女がイエスが
「「「紗枝……」」」
3人は思わず、同時に呟いてしまうのだった。
あの魔物はかなり離れたそこからでも、太平洋から響いて来た大きな爆音に反応して、その爆心地に向かって高速で泳いでいた。奴の頭の中には、ある人物に対する復讐心だけが燃え尽きることなく、腹の奥で燃え続けていた。底冷えするほどの海底に身を潜らせても、その怒りの
“彼女”は悪魔の形相で既に見えている海底油田に向かって泳いでいく。玲奈たちのいる海底油田に…“彼女”はもうすぐそこにまで迫っていた…。