バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第65話 青白き稲妻

「なっ…何だあいつは⁈」

「……おいおい!あいつ…あの時の姉ちゃんじゃねえか⁈」

 

ジョッシュはその怪物の顔を見て一瞬で気付いた。海の中で5人を睨んでいるデカい怪物はあの中東でジョッシュや仲間にJJ-ウィルス入りの注射器を渡していたカーラであることを…。変異を遂げたカーラはジョッシュを視界に捉えると、防護壁に体当たりを開始した。

 

「このままじゃ持たない!逃げましょう!」

 

と、玲奈が言った矢先にカーラはこの深さでも耐えられる程に分厚かった外壁を破壊してきて、この施設に侵入した。カーラとは別にも海水の流入も始まり、面倒なことになった。

 

「……じょぉぉぉん………」

 

カーラの視界に映っているのはジョッシュではなく、自らを死に追いやり、こんな醜い姿にさせたジョンにしか見えていなかった。そして、その肥大化した腕を振り上げた。

 

「避けて‼」

 

カーラの攻撃を避けるために、ジョッシュと紗枝は右側に、玲奈、竜馬、薺は左側に飛んだ。カーラの腕はさっきまで彼らがいた足場を破壊し、カーラはそのまま縦穴に落ちていくが、壁に掴まり、最下層にまでは落ちていかなかった。玲奈は浸水の具合等から、早めに脱出する必要があると思った。

 

「紗枝!彼を連れて逃げて‼」

「玲奈たちは⁈」

 

玲奈は眼下にいるカーラを見ながら言う。

 

「…奴の相手をする」

「そんな…無茶よ!あんなのを…!」

「紗枝」

 

ジョッシュは紗枝の肩に手を置いた。そして、強い信念を青い瞳に込めた玲奈を暫く眺めた。

 

「行っていいんだよな?」

「ええ。早く行って!」

「……死ぬなよ!」

「…そっちも、紗枝を死なせたら許さないわよ!」

 

そう言い、ジョッシュは紗枝の手を握って、閉まりゆく扉の下をくぐって別の部屋に移った。そこで紗枝はジョッシュの腕を振り払い、彼に叫んだ。

 

「あんなのに勝てるはずがない!助けに行かないと!」

「紗枝‼」

 

紗枝はいつも以上に大きく呼ばれて身体を震わせた。

 

「それはあいつらが決めたことだ。俺たちがとやかく言うことじゃない。それに俺にはやるべきことがあるからな…。紗枝を戦闘に巻き込むわけにはいかないんだ!」

「…やるべきこと?」

 

ジョッシュがすべきこと……それは…。

 

「お前を無事に地上へ戻すことだ。海翔と…玲奈の分も預かっちまったからな…」

 

紗枝は暫く俯いてから、覚悟を決めたように頷いた。

 

「……そうね…。急ぎましょう!ここも長くは持たないわ」

 

2人は玲奈たちを信じて、先へと走り出すのだった。

 

 

 

 

玲奈はもう一度下を覗き込み、奴が着実に上へ上へ登ってきていることを確認した。

 

「ここでは戦えないわ。上へ逃げるわよ!」

 

3人はすぐに梯子を登り、エレベーターのところまで急ごうとする。

しかし、それを防ぐかのようにカーラの腕が邪魔をする。玲奈は弾の無駄使いとか気にせずに散弾銃を取り、カーラの腕に向かって撃った。そして、腕が離れた瞬間に一気に走り出す。

エレベーターに辿り着いたが、玲奈は上ではなく、下に向かうようにボタンを押した。

 

「玲奈⁈どこ押してるの⁈」

「上だと奴らがいる。下でけりを着けてやりましょう」

 

エレベーターは凄いスピードで降りていくが、そこからでもカーラがエレベーターを追って、凄まじい速度で水中を自由自在に泳いでいた。全く水中での抵抗を無にして泳いでいた。

3人がエレベーターを降りた途端、圧壁が砕け、カーラが侵入してくる。

 

「圧壁が…!」

「走って!」

 

玲奈たちを追うカーラの猛攻は留まることを知らない。浸水を防ぐための扉も意図も簡単に破壊していく。玲奈は最後に残った散弾銃を掴み、撃つ。しかし、海水が溢れ出るところに撃っても、コインのダメージはかなり消されてしまうため、大して効果はなかった。

 

「じょおおぉぉぉん………」

 

玲奈は追ってくるカーラはまるでギリシャ神話に出てくる海の神、ポセイドンに見え、その破壊神の如き力を余すことなく発揮している。スピードに攻撃力、自己防衛もかなりのものだった。

玲奈たちは再び閉じようとする圧壁の隙間に滑り込んだ。その隙間にはカーラの巨大な腕が割り込み、無理やりこじ開けようとしてきた。更にその腕は竜馬に向かっていく。それを見た玲奈は足をすかさず動かしていた。

 

「竜馬っ‼」

 

咄嗟に竜馬を突き飛ばした玲奈だったが、代わりにカーラによって、ただでさえまだ回復しきっていない左腕を掴まれてしまう。竜馬は突き飛ばされてから、玲奈の状況が分かり、的確に拳銃で奴の腕を狙い撃ちにして怯ませた。玲奈は悲鳴を上げながら、壁に吹き飛ばされ、そのままずり落ちた先にはシャッターが鋭く尖った形状になっていて、そこに玲奈の左腕が突き刺さった。

 

「ああああああああぁぁぁぁっ‼」

「玲奈ぁ‼」

 

竜馬と薺はすぐに助けに向かおうとするが、そこに追い打ちを駆けるように倒れたコンテナを玲奈に向けて投げた。そのコンテナは玲奈の左腕を潰し、血飛沫を撒き散らした。

 

「うあああああああああぁぁぁぁぁっ‼‼」

 

そこからカーラは扉の間に自らの身体を挟み込み、その強靭な手で竜馬と薺を捕まえる。カーラは二人を締め上げて圧死させる気だった。

その時……後ろから何かが降ってきた。それは赤く輝く注射器だった。玲奈が見上げると、黒髪のショートヘアの女性が暗闇の中へと消えていくのが見えた。彼女が何者にしろ、これを投げてきたということは…これを使えと言いたいんだろう。この注射器に入っているウィルスがどれほど危険なものかは全くの未知数だ。

もしかしたら……今度こそ死ぬかもしれない…。

それでも…玲奈はこれに賭けるしかなかった。

玲奈は突き刺さり、潰された左腕をどうにか引き抜いた。

 

「ああああっ‼」

 

引き抜くと同時に血が噴き出し、玲奈の顔にかかる。左腕は引き抜いたせいで無くなり、一気に意識が遠くなった。血が足りないのだろう。苦しく…地獄のような痛みを感じながら、這いつくばって例の注射器の方向にジリジリと向かう。

今にも消え入りそうな意識の中…玲奈は注射器を掴んだ。

やめるなら今が最後だ。だが…玲奈はここに来て怖気づいて竜馬と薺を殺してしまうのなら…と、滅茶苦茶になった切断面に注射器を差し込み、中身を体内に注入した。

すると…左腕は瞬く間に元通りに再生した。しかし…前とは異なったことが起きていた。再生した左腕からパチパチと放電していたのだ。

玲奈はその腕に力を込め、そこから膨大な電気を放出させた。それはカーラの両腕を焼き裂いた。更に浸水を防ぐための扉によって、カーラの身体を真っ二つにした。

 

「ギエエエエエエェェッ‼」

 

カーラは奇声を上げ、下半身を失ったせいか、激しく暴れてもがき苦しんだ。

カーラの拘束から抜け出せた竜馬は力を振り絞り、ナイフを片手に煌々と煌めく心臓にその刃を食い込ませた。ブシャアアと血が噴き出したが、カーラはそれでも息絶えることはなかった。3人を吹き飛ばし、更に反撃を加えようとした時、玲奈はナイフを出し、身体に突き刺して電流をカーラに流した。カーラは電撃に痺れて、身体をブルブルと痙攣させて、動きを止めた。

 

「竜馬‼今よっ!はや………くっ……」

 

先程投げ飛ばされた時に頭を強く打った竜馬は身体を引き摺りながら進んでいく。玲奈がカーラを抑え込んでいられる時間はそう長くない。竜馬はナイフを再び心臓に突き刺した。そこから噴き出す血を浴びながらも、ナイフを90度捻じ曲げてから、心臓を切り裂いた。玲奈も電気エネルギーを使い果たし、ぐったりと地面に伏した。

しかし…カーラは恐ろしい断末魔を上げ、絶命していったのだった。

玲奈は荒い息をしていた。竜馬は気絶してしまった薺を肩に担いで、閉じていた扉を開けた。

 

「玲奈……行こう……」

 

玲奈は再生した左腕を軽く一瞥(いちべつ)してから頷いた。

そこから崩壊していく海底油田を眺めながら、脱出しようと先へ進んでいくのだが…途中で玲奈が転んで左腕を抑えた。

 

「うぅ………あああぁ……!」

 

玲奈の身体にはJJ-ウィルスの抗体を有していないため、徐々にウィルスが玲奈の身体を蝕んでいたのだ。

 

「玲奈……!…くそっ!」

 

竜馬はもう片方の肩に玲奈を担ぎ、頑張って運ぶ。

そして、一つの空間に行き着いた。

 

「よし!脱出ポッドだ」

 

脱出ポッドとは、球体の乗り物で軽くエンジンが付属されている程度のものだ。だけど、これだけでも脱出できる。竜馬は二人を地面に置き、この脱出ポッドがまだ動くかを確認する。

その間、玲奈は自身の左腕を再び見た。今は何の変化は見られないが…この後どうなるか分からない。このあと…自らもあの仮面を付けたアンデッドになるのでは…と、悪寒を覚えた。そして…自らと薺を必死に助けようと奮闘している竜馬を見て…虚しく感じた。

そして、開いた脱出ポッドの中に薺を先に乗せ、玲奈にも手を伸ばした。

 

「玲奈、脱出しよう!」

 

玲奈は少し黙ってから竜馬の手をガッチリ掴んだ。苦しむ玲奈をポッドに入れようとした時、玲奈は掴んでいた手を振り払った。固まってしまった竜馬を玲奈は力強く押して、そのままポッドの扉は閉まった。

 

「玲奈!何しているんだ⁈扉を開けろ!」

 

玲奈は苦しい表情をしながら、竜馬の必死の叫びを無視し、脱出ポッドの発進装置をオンにする。

 

「やめろ‼玲奈、よせ‼」

 

しかし、玲奈によって発進準備態勢に入る。竜馬は消え入りそうな声で玲奈に呟いた。

 

「やめろ……。やめてくれ……」

 

ここまで無言だった玲奈は漸く言葉を発した。

 

 

 

「ごめんね…」

 

 

 

その瞬間、脱出ポッドは発進した。

竜馬は窓ガラスに貼りつき、出せる限りの声を上げた。

 

「玲奈アアアアアァァァァァ‼‼」

 

竜馬は小さくなっていく玲奈を見ているしかなかった。竜馬は膝をつき、一粒の涙を落とす。

だが……その時だった。竜馬の耳に…何かを突き破っていく音と甲高い声が聞こえたのだ。窓ガラスからよく見ると、さっき心臓を潰したはずのカーラが追って来ていたのだ。

そいつを見た竜馬は歯を噛み締める。今このポッドを攻撃されて、海の中に放り出されたら死は確定だ。

カーラはポッドに掴みかかり、ポッドの中の電気は切れる。

そして…カーラは竜馬に向かって咆哮するのだった…。

 

 

 

 

玲奈はそれを見越していた。

左腕に命の尽きる限りの電気エネルギーを溜めていく。ここまで溜めれば…どんなものでも破壊する程の威力へと成長するだろう。しかし…自らの命すら消えてしまう可能性があった。

でも…玲奈は竜馬さえ生きてくれれば…それで良かったのだ。そのためなら…彼女は命を捨てる覚悟も持っていた。

 

「…………さよなら、竜馬…」

 

玲奈は途端に伸ばした左腕から極太の極大電撃を放電した。

それはカーラの首に命中し、その頭を吹き飛ばした。カーラは断末魔を上げることも出来ずに、水中へと沈んで行った。

玲奈はそのまま…膝をついて意識を手放すのだった。

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