バイオハザード リターンズ   作:GZL

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個々の章、完結。



第67話 それぞれの結末

崩壊寸前の海底油田で意識を失った玲奈を必死に脱出ポッドに運んでいる人影があった。それは黒髪のショートカットで赤いドレスのような服を着た女性…。エイダだ。

目的地に帰還中に突如、ジョンから新たな命令を請け負ったのだ。

……そう…ジョンはまだ死んでなんかいない。

玲奈たちはジョンを殺したと勘違いしていたのだ。

ぐったりした玲奈を脱出ポッドに乗せたエイダも急いで乗り込む。と、そこで通信が入る。

 

「はい」

『ジョンだ。エイダ、玲奈の様子はどうだ?』

「気を失っていますが、命に別状は無さそうです。それに…あの強化型JJ-ウィルスの副作用はもう起きていません」

『…ということは、玲奈は遂にJJ-ウィルスの抗体をも手に入れたのか…』

 

エイダは再び玲奈を見た。最初に見た時には左腕から僅かだがピリピリと張りつめた電気が

発生していたが、今はそれも見られない。恐らく、JJ-ウィルスの一時的な能力を全て使い果たしてしまったのだろう。

 

『まあいい…。すぐに玲奈を回収に行かせるよう、他の者を派遣する。それから例のあの施設に彼女を送る』

「あの施設?……まさか!」

 

エイダはジョンが言う『あの施設』がどういうものなのか瞬時に分かった。エイダにも…ジョンが何をしようと企んでいるのかが見えてきた。

 

『海上に浮上したら…すぐに連絡しろ。迎えをよこしてやる』

「分かりました」

 

そこで通信は切れた。

エイダは玲奈を可哀想に思った。あそこに連れていかれたら…2度と地上を拝めることは出来なくなるだろう。エイダは脱出ポッドの後ろで激しく爆発する海底油田を見ながら…そう思っていたのだった。

 

 

 

 

ジョッシュ、紗枝は北アメリカ大陸に続いているかもしれない横向きに移動する高速エレベーターに乗り込んだ。紗枝とジョッシュは2人同時にレバーを引いて、このエレベーターを起動させたが…2人はこれが高速であることを知らずにいた。

引いた途端にエレベーターはとんでもないスピードで動き出した。

2人は立つことがキツイ……どころではなかった。もはや立つことすらままならなかった。

 

「な、なんてスピードなの……⁈」

 

だが、この速度で申し分なかった。何故なら、もう後方からは爆発の炎が迫って来ていたからだ。しかし…その炎の中に…燃え上がる“何か”がいた。

 

「おいおい‼いい加減にくたばってろよ‼」

 

捕縛者がいた。

身体は焼け焦げるを通り越して、肉は抉れ、焼け落ち、心臓や脳、目…ほとんどの臓器が露出していた。それでも…奴は生きていたのだ。生命力だけに関しては舌を巻く程だ。奴はジョッシュたちの乗るエレベーターとは別ので追って来ていたのだ。そこから捕縛者はジョッシュたちの乗るエレベーターに乗り込んで来た。

 

「なんてしつこい奴なんだ‼」

「進んで!ジョッシュ!」

 

あんなに燃え上がる捕縛者から逃げるには…とにかく前に前に進むしかなかった。

そこでジョッシュは前方にある積み荷に目を着けた。

 

「これでも食らいやがれ‼」

 

ジョッシュは荷物を固定していた支えを外すボタンを押す。荷物は摩擦に耐えきれずにそのまま後ろに飛んでいき、捕縛者に命中する。ちょっとだけ後ろに吹き飛ぶが、奴がここから落ちることはなかった。

次に紗枝がピラミッドのように積まれた円筒状の荷物の一番上の部分がスルリと落ちていくが、捕縛者は機械の腕で受け止めた。そこからジョッシュは下を支えているレバーを降ろした。その途端に円筒状の荷物は全て落ちて、次々と捕縛者に当たるが、奴は機械の腕から残っている鎖を出して、エレベーターに引っ掻けた。

 

「くそ!本当にしつこいな!」

 

これでもダメであった2人は更に奴から離れようと前に進む。

しかし、捕縛者は空中で反動をつけて、一気にジョッシュたちを追い越して目の前にまで進んで行った。その時に木箱に身体が当たり、中からはたくさんの拳銃が出てきて、その内の1つが網目に引っ掛かった。

 

「……あれ!」

「あぁ…!」

 

紗枝とジョッシュは必死に拳銃のところに向かおうとする。が、捕縛者の腕が振り上げられた。咄嗟にジョッシュは紗枝の上に覆いかぶさって、彼女を守ろうとする。

 

「ジョッシュ⁈嘘……やめて‼」

「ウオォォォォ‼」

 

咆哮と共に振り下ろされた機械の腕は……ジョッシュの背中を直撃した。

 

「っ‼」

 

鮮血が背中から溢れ、ジョッシュは吐血した。

その光景を目の当たりにした紗枝は絶叫した。

 

「イヤアアアァァァァ‼‼」

 

ジョッシュはそのまま紗枝を覆ったまま動かなくなる。涙が溢れても…紗枝はジョッシュの身体を退かし、網目に引っ掛かった銃をしっかりと掴んだ。それで照準を合わせようとしたが、激しく…それも相当な速度で動いているエレベーターの上では奴に合わせるのが、かなり困難だった。そんなことをしてる間にも捕縛者の腕はまた高々と上がり始める。紗枝はここまでかと、悔しさから再び雫を目尻から溢れさせた。

 

 

その時…ガシッと紗枝の掴む手を優しく………でも力強く握ってくる手があった。

 

 

「⁈…ジョッシュ…」

「ごほっ……。き、決める……ぜ…。ここで……!」

 

紗枝は頷く。

そして…2人は捕縛者の赤く輝く心臓に目がけて…引き金を引いた。見事に銃弾は命中し、捕縛者は苦しそうに呻いたが、また機械の腕を振り上げた。2人は再び拳銃を握る柄に力を込める。

しかし…突如捕縛者は口や身体中からぶわっと血を溢れ出して、そのまま倒れた。そしてエレベーターの速度によって、後方から迫ってくる炎の中に飲み込まれていった。そのすぐ後…捕縛者が爆発したのか破裂したのか分からないが、爆風が2人を襲った。

 

「うう……漸く……やった、ようだな……げほっ…」

「ジョッシュ……喋ったらダメ!血が…」

 

紗枝の手が彼の身体に触れた。しかし、その掌は血濡れで真っ赤だった。

 

「嘘……」

「大……丈夫、だ…。俺は……海翔の…ためにも、今…死ぬわけには、いかないんだ…!」

「ジョッシュ…!どうして…そこまで…!」

「生きて……海翔の、仇を…取るため、さ…!」

 

紗枝はそこで目を大きく見開き、彼を優しく抱き締めた。彼が生きていられるかは……紗枝でも分からない。ジョッシュの意志の強さによるだろう。でも…紗枝は彼を助けるつもり…いや、助けると決めている。

光が見える。そこは出口なのか…それとも…アンデッドが(うごめ)いている場所なのか…。

どちらにせよ…紗枝はジョッシュを引き摺ってでもそこに立ち向かっていくつもりだった。

そして…紗枝は彼の耳元で小さく呟くのだった。

 

「ジョッシュ…あなたを……愛してる……」

 

 

 

 

眩しい…。それが最初に竜馬が感じた言葉だった。

朝日が竜馬と薺の目に当たる。この1日…2人は全く寝ていないがちっとも眠いとは思わなかった。

その理由は…まだアドレナリンが切れていないからなのか、それとも……大切な人を失った気持ちが大きすぎるからなのか…。

竜馬はあの玲奈の悲しげな表情が目に焼き付いていた。

それでも……彼女が決めたことなら仕方ない…。そう自分に言い聞かせる竜馬。

暫く穏やかな海面で漂流していると、明るくなった空からアンブレラのマークが付いたヘリが竜馬たちの乗るポッドに向かって来たのだ。竜馬は咄嗟に拳銃を握るが、なんとヘリから降りてきたのはあのルーサーだった。

 

「ルーサー⁈無事だったのか!」

「俺を舐めんじゃねえぞ?簡単にくたばるわけねえだろ?それよりも早く乗れ!玲奈がアンブレラに連れていかれた!」

 

『玲奈』という単語に竜馬は思わず反応してしまう竜馬。そのせいでルーサーの肩を掴んで、ぐらぐら揺らしてしまうくらいに動揺しながらも聞く。

 

「玲奈が…⁈死んでいない?本当か⁈」

「本当だ‼本当だ‼だからそんなに揺らすな!」

「わ、悪い…」

「全く…。ほら、乗れ!」

 

竜馬と薺はすぐにヘリに乗り込む。

すると中には疲れ切って眠っていた紗枝とジョッシュの姿があった。ジョッシュは背中に真っ白な包帯を巻いているが…。

 

「大丈夫だ。男の方は背中にデカい切り傷があったが…なんとか生きてるよ…」

「そうか…良かった…」

 

ルーサーはヘリを操作して、何処に向かわせる。

 

「で、玲奈はどこに?」

「南極に向かっている」

「「な、南極⁈」」

 

竜馬と薺は同時に声を漏らすのだった。




次回から最新章突入。



新たな小説の執筆を開始しましたけど…これを書くのに必死で書く時間が全くない…。

キャラ人気投票。IF Story編終了まで実施。

  • 玲奈
  • 竜馬
  • 紗枝
  • 海翔

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