バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第69話 大阪シーケンス

何の前触れもなく、玲奈は目覚めた。

瞬時に寒いと感じたのはハイブと同じなのだが…今回も裸同然のような服を着させられていた。しかも、床は六角形で周りは壁だ。突き出た物も窓ガラスも見えない。どうやら…玲奈は監禁されているようだ。だが、玲奈は裸であることよりも、どうして生きて…ここにいるのかが頭を過った。玲奈の記憶が正しければ…。

 

「私は……あの海底油田で……」

 

玲奈は左腕を見た。特に変わった様子は見られない。全く普通の……端から見ればごくごく普通の左腕だった。しかし、あの時…この腕からは膨大な電気が溢れ出たのだ。

その時、突然周りの壁、床が光り、ここから5mの辺りに窓ガラスに一人の女性が見えた。

 

『オリジナル玲奈…。何故アンブレラを裏切った?』

「葉子?葉子なの⁈」

 

そこにいたのは間違いなく葉子だった。あのハイブから脱出する際にアンデッド化したはずなのに……。だが、葉子は玲奈の問いに答えることはない。

 

『もう一度聞く。オリジナル玲奈……何故裏切った?誰かの差し金か?』

「葉子?私よ、れ…」

 

まだ玲奈が話してるというのに、葉子が見える窓ガラスの電気が消え、彼女の姿も見えなくなる。その途端、玲奈の耳に強烈な音が響いた。いや……強烈を超えて、地獄のような音で、いつまでも聞いていたら気が狂いそうになった。玲奈は両耳に手を押し当てて、堪らず悲鳴を上げた。

 

「うあああああああああああっ‼‼」

 

耳をいくら塞いでもその音は嫌でも入ってくる。玲奈は耳を塞いで塞いで塞ぎ続けた。途中からは、この耳を切り落としたいとも思う程…酷い音だった。

暫く時間が経ってから、玲奈は耳から手を離した。もうあの音も消えていた。

しかし、玲奈の精神は限界まで消耗されていた。あの拷問をもう1分でも受け続けていたら…本当に気が狂っていたかもしれない。

こんな時…隣に竜馬がいたらどんなにすがり付いて泣けるかと玲奈は思った。

 

「……竜馬…」

 

彼の名を小さく呟いただけで胸が切なく締め付けられた。そして…遂に悲しさに耐えられずに涙を溢した。今更ながら…竜馬がどれほど大切な存在だったのかを改めて認識させられた玲奈…。玲奈はあの場所で死ぬと思っていた。だから…竜馬と薺を海底油田から脱出さえたのに、アンブレラは玲奈の予想を更に超えて先手を打っていたのだ。

どうして…自分だけがこんなに苦しく生きなければならないのか…。

 

「どうして……どうして、私は…」

 

そう……辛く…苦しく思い始めていた。

 

 

 

 

何時間経っただろうか…。ぼんやりして、拷問部屋の壁に背を預けていると…不意に今まで付いていた電気が上から順番に消え始めた。そして、横から何かがせり出てきた。それは服だった。黒色のラバースーツで、映画などに出てくるスパイみないな服だった。。気乗り出来ない玲奈だったが、裸で外に出るわけにもいかず、仕方なく着ることにした。

 

『セキュリティシステムが停止。1分後に再起動…』

 

服を着ている途中、今度は出入り口が現れる。

どうやら何者かが手引きして、玲奈を助けてくれているようだ。

 

「………」

 

部屋の外も真っ白なタイルだけが貼り付けられていた。相変わらずの景色に玲奈は呆れる。

 

『セキュリティシステム、再起動』

 

そう告げられてものの数秒で施設内に警報が鳴り響く。

 

『脱走者、オリジナル玲奈』

 

そう告げられると、後ろから赤い光線が迫ってきた。玲奈はそれがレーザーであると分かり、急いで前に走り出す。全力で走り続けると、玲奈の前方を塞いでいた扉がゆっくりと開きだした。眩しい光が玲奈の目を照らす。

開けた場所に出たが…その景色を見て玲奈は絶句した。

 

「何……これ…」

 

玲奈の目の前に広がっていたのは、大阪の道頓堀だった。グリコの看板が眼前にあり、いつも通りに明るい光がビルや建物から漏れ出ていた。ただ…人の気配はなく、少し不気味に見えた。

ここが大阪だろうとなかろうと、玲奈はまず武器になりそうな物を探さなくてはならなかった。アンブレラが玲奈を放っておくことはないだろう。

まず、自転車に付けられていた鉄製のチェーンを掴んだ。それで放置されていたパトカーのガラスを割り、ドアを開くと、中を漁った。ダッシュボードにあった拳銃と予備の弾倉を取り、ここから出ようと思った時…再び放送が入った。

 

『スタンバイ…スタンバイ……。大阪シーケンスを、開始します』

 

そう大阪の都市に響いた途端、雨が降り出した。あまりにタイミングが良すぎて、ちょっと不気味なくらいだった。それだけでなく…さっきまで全く人の気配がなかったのに、周りからは傘を差した人々が玲奈の周りを歩き始めた。玲奈は突然のことに状況を掴めずにいた。更にパトカーからは警官の怒声も聞こえてきた。

玲奈はそんな彼らを見ながら茫然と立ち尽くしていると、1人の女性と肩がぶつかった。この土砂降りなのに玲奈と同じく傘を差さずに歩いていた。女性は玲奈を一瞥(いちべつ)すると、今度は向こうから来た男性に目を向けた。

そして…女性は奇声を上げて男性の喉元に噛みついた。

 

「ぎゃああああああ‼」

 

そのアンデッドの奇襲をきっかけに雨の中、至る所からアンデッドが沸いて出てきた。

玲奈は後方の建物から白い光が漏れているのに気付き、そこに向かって走り出した。ジャラジャラとチェーンの音が鳴り、アンデッドを引き寄せる。扉の先はまたあの白いタイルの通路で、レーザーが来るかもしれないと思ったが、アンデッドがいるため殺すのなら、その必要はないと思った。

玲奈が一生懸命走っている中、さっきのアンデッドが玲奈の肩を掴んだ。身体を動かして振り払うと、チェーンで奴の顔面を攻撃する。そこから側頭部に蹴り上げ、後ろからやって来る2体のアンデッドに目を向ける。

1体はチェーンで頭をかち割り、もう1体は銃弾で撃ち抜いた。チェーンをぶつけたアンデッドの首にチェーンを巻き付け、そこから後ろから来るアンデッドの顎を蹴りながら、玲奈は身体を一回転させた。

飛びかかってきたアンデッドには後転しながら、奴の身体に銃弾を3発撃つ。

更に来るアンデッドの足にチェーンを巻き付け、膝蹴りをかまして引き金を引こうとするが、カチッと弾切れの音が響く。玲奈は胸元に入れていた予備の弾倉を取り出したが、アンデッドによって空中に打ち上げられてしまう。

 

「あっ!」

 

しかし玲奈は弾倉を打ち上げたアンデッドの腕を掴んで捻じ曲げ、空になった弾倉を抜いて別のアンデッドの鼻に目がけてその弾倉を蹴った。鼻を砕いた後、銃の持ち手で頭を殴り、1体は足で抑え込んだ。そして、打ち上げられた弾倉を掴んで銃に装填する。抑え込んでいたアンデッドの頭を捻り、拳銃で周りにいたアンデッドを2体殺した。前方を向くと、更に3体やって来ている。

玲奈は足に巻き付けたままのチェーンと取り、それで2体、顎を砕き、3体目は額を撃ち抜いた。

そこから撃ち抜いたアンデッドの死体を土台にして、2体のアンデッドの頭を蹴り、最後にやって来たアンデッドを押し潰すと、頭を撃ち抜いた。

だが、後ろにはまだしぶとく生きているアンデッドがいた。玲奈はそのアンデッドの腕にチェーンを巻き、腹に蹴りをぶち込むと、すぐに起き上がって脳を撃ち抜いた。

そして…最後に残ったアンデッドは、最初に玲奈とぶつかったあの女性だった。彼女はフラフラと玲奈に近付き、口から例の四又の寄生体を出した。玲奈は止めにその寄生体の中心辺りに銃弾をぶちこんだ。そのアンデッドは口から拳銃を受け、暫し固まっていたが、その後すぐに膝から崩れていった。

 

「ふぅ…」

 

息を吐く玲奈。

だが…後ろからざわざわした声が何重にも重なって聞こえてきたから、そっちを振り向くと前方からは数えきれない量のアンデッドが玲奈に向かって来ていた。いくら玲奈でもこれは無理だと思い、奥へと走る。

そして、また扉が開き、玲奈が入った途端にその扉はアンデッドが入って来る前に閉まっていくのだった。

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