バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第7話 J-ウィルス

葉子、憲之、毅の三人はクイーンの制御室に続く三又の部屋に逃げ込んでいた。ここの扉は電力がなくても、鍵を締められるから()()()()には絶好の場所だ。

もう一度言う。()()()()には、だ。仮に逃げ込めたとしても、次に出ることは途轍もない困難を極めてしまった。何故かと言えば、扉の外からは奴らが叩く音が絶え間なく響いてくる…と言えば、3人が置かれている状況が分かることだろう。

葉子は噛まれた左手がジワジワ傷んできてイライラしていた。更に持っていたライフルも先程の銃撃戦で弾を使い切ってしまったため、もう使い物にならなかった。

それで葉子はライフルを地面に叩きつけた。

 

「チクショウ!何なんだよ、あいつらは‼」

 

毅も怯えたように言う。

 

「あれが何なのか…あんたら知らないのか⁈」

 

その答えを憲之が答える。

 

「ハイブの社員たちだよ…。見覚えがある。電力を落としたから、扉のロックが全て解除されて雪崩れ込んで来たんだ…。けど…イカれてやがる!」

「でも最初、あんたらは社員は全員死亡したって……」

 

憲之は言葉を失ってしまう。確かに憲之たちは本社…アンブレラ社からそのように情報が入ってきた。本社がそんな間違いを犯すとは考えにくい。

だが、あれらは間違いなくハイブの社員…しかも憲之たち人間を食べようとしてきている。普通の人間の恐怖の域を完璧に超えてしまっている。何がどうなっているのか…憲之たちは分からなくなってきた。それと同時に部屋の中は静寂に支配される。

と、その時一つの扉が開いた。葉子はすぐにそちらに拳銃を向けた。

 

「待って!私たちよ‼後ろに奴らがたくさんいる!」

 

玲奈の声に三人は安心したが、玲奈の言う通り後ろからは奴らの呻き声が聞こえてきた。玲奈と竜也は中に逃げ込むが、奴らも入ってこようとする。扉を抑えていた毅の腕に奴らの手が握ってくる。冷たい感触が毅の腕に広がっていく。

 

「うわっ⁈くそっ!」

 

毅はその手を引き剥がそうとする。

だが、思った以上に力が強く、中々引き剥がせない。

イカれていると分かっていても、人間だからか力を出し切れない毅。

 

「放して!」

 

玲奈がそいつの手を殴ると、毅の腕を放し、扉はガチャンと閉まった。

 

「あぁ…くそ…」

 

腕を掴まれた腕を擦りながら毅は毒づいた。

これで漸く生き残った5人が再集結出来た。

玲奈は確認するように別の扉を開けようとする。

 

「早く逃げないと……。こっちの扉は?」

「奴らでいっぱいさ!」

 

悔しそうに憲之が怒鳴る。

 

「ここで救助を待つべきだ!君たちみたいば部隊がまた送られてくるだろ⁈」

 

毅はそう言うが、葉子と憲之は顔を見合わせ、厳しい表情を作った。二人はこの施設がこれからどうなるか…その末路を知っている。

 

「…時間がないんだ…」

「ど、どういうことだ?」

 

毅の問いに葉子が答える。

 

 

「私たちが入ってきたあの秘密の通路…。あと一時間したら外界と完全遮断される」

「何だと⁈生きている俺たちを置き去りにするつもりなのか⁈」

「もし、緊急事態があった場合、この施設自体が無かったことにしないといけないからね。バレたら会社そのものが命取りになる。…上の連中が私たち5人の命よりも自分の利益を優先するでしょうしね…」

 

毅は壁に背中を預けてズルズルと崩れていった。

 

「嘘だろ…」

 

絶望する毅だったが、玲奈の目に諦めの感じは見られなかった。

クイーンの部屋の方をじっと見詰め、何を考えたのか憲之の黒い鞄を掴んで、さっきの光線が流れた通路に足を踏み入れた。

 

「おい!何をする気だ⁈」

「クイーンを再起動させる。彼女ならこの施設の図式を全て把握しているから脱出方法も知っているはず」

「ダメだ!奴はここの社員を皆殺しにした悪魔だ!奴を再起動なんて絶対に…」

 

必死になってクイーンの再起動を止めようとしてくる憲之に苛立ちを覚えた玲奈は、憲之の襟首をぐいっと掴んで壁に叩きつけ、自身の顔を近づけた。

 

「任務だから止めたいの?…馬鹿じゃないの?今、私たちは生きるか死ぬかの境にいるのよ!死にたくないならあなたも手伝って!」

 

憲之からしたら、あまり喋らないイメージが強かった玲奈からは想像も出来ないくらいに恐ろしい表情をしていて、逆らうことなど出来なかった。

そして、玲奈を先頭にクイーンの制御室に入り、再起動させるための機械を樹立させる。

 

「なぁ…玲奈。一度シャットダウンさせた俺たちに助かる方法を教えてくれるなんて……そんな都合のいい話があると思ってるのか?」

「そうだとしても、私たちは彼女に聞くしか生き残る道はないわ」

 

玲奈もクイーンが危険だってことくらい分かっている。

だから、こちらも何かしらの手を打たなくてはならない。コンピューターにアクセスしながら、玲奈は憲之に聞く。

 

「クイーンの保護回路…外せる?」

「出来るが…」

「ならやって」

 

憲之はシステム中の回路の一画を切断し、新たな回路を組み込んだ。

 

「保護回路は外した。それとは別に高圧電流を流せるようにした。このボタンを押せば…クイーンは消滅する」

 

その時、バシュンと甲高い音が鳴り、一瞬レッドクイーンのホログラムが写るがすぐに消えた。恐らく保護回路を外したためだろう。

 

『…生きてたようね』

 

ホログラムの代わりにスピーカーからクイーンの声が聞こえてきた。それを聞いた葉子は感化し、憲之の持つスイッチを奪おうとする。

 

「そのスイッチよこせ!このくそAI吹っ飛ばしてやる‼」

「落ち着け、葉子!脱出するまでの辛抱だ!」

 

暴れる葉子を憲之がどうにか寝かしつける。

竜也は早速質問に入った。

 

「あいつらは何なんだ!それにここで一体何をしていたんだ⁈」

『ここは新薬の研究、開発するアンブレラ社の秘密研究所よ。そして、つい最近、アンブレラは新たなウィルスを開発した。それは医学の大発見でもあり、生物の全ての常識を覆すものでもある』

「ウィルス…」

『開発されたウィルスは日本が開発したウィルスからJ()-()()()()()と名付けられた。ついでに彼らが何なのかも説明してあげるわ。彼らはそのJ-ウィルスに感染した人たちよ。アンブレラは彼らを()()()()()と称していた』

「アンデッド…」

 

玲奈は無意識に呟いた。

 

『J-ウィルスは人間の脳髄に特殊な電気信号で刺激することで、肉体を蘇生させる悪魔のウィルス…。まあ、簡単に言うと…死者を蘇らせるのよ』

「し…死者を…?」

 

玲奈たちには信じ難い話だった。

クイーンの言う通り、医学の常識を覆す大発見ではあるが…。

 

『彼ら、アンデッドは人間みたいに髪も爪も伸びるし、皮膚も剥がれる。けど、もう彼らを見ただろうけどアンデッドには知能と思考は皆無に等しい。ただ一つ…増幅され続ける欲求だけを満たそうと動くだけ…』

「欲求…?」

『食欲よ』

 

それを聞き、全員背筋がゾッとした。

だから、奴ら…アンデッドは玲奈たち人間を食らおうと襲ってくるのかと納得した。

 

「けど…いくら蘇るって言っても不死じゃないんだろ?」

 

今度は葉子が質問する。

 

『ええ。脊柱の天辺…または脳髄を破壊または損傷すれば二度と生き返らないわ』

「頭ね…」

 

葉子は薄笑いを浮かべる。

すると、竜也は今まで腹の中で燻ぶっていた疑問をクイーンに聞いた。

 

「何故社員を皆殺しにした⁈ウィルスとは関係ないだろ!」

『…あれは止むを得ずだったのよ。J-ウィルスが何らかの原因で施設内で漏洩した…。液体から気化した時点でこの施設から人間を出すわけにはいかなくなったの。だから…上層部を誤魔化すために、全員殺したの』

「何……だと?」

 

竜也は今にも爆発しそうになる怒りを抑え込む。

 

『分からないの?現時点でウィルスを死滅させることは出来ない。そして、ウィルスを外部に漏らさないようにするのが私が下した最善策なの。感染者を、ここから出すわけにはいかない』

「ちょっと待て!俺たちの中に感染してる奴はなんて…」

 

毅はそう反駁するが…。

 

「感染者に噛まれる、または引っ掻かれるだけでその者も感染する。

 

葉子は顔を強張らせる。他の者も葉子の噛まれた左手をよく見ていた。

 

「……どれくらいで…奴らになるの?」

『初期の実験データによると、噛まれてから3時間から2日…。ただし、これは一度噛まれた場合。2度以上噛まれると3時間以内に確実にアンデッドになる』

 

 

葉子ははぁと溜め息を吐いた。葉子は既に噛まれてから2時間は経過しているだろう。つまり、葉子がアンデッドになるまで、残り1時間ということだ。

 

『それよりも…私の保護回路、外してるわよね?こんなに教えてあげたんだから、理由くらい教えてくれない?』

 

それには玲奈が答えた。

 

「保険よ。あなたが私たちの味方かは分からないから。それと、最後の質問よ。この部屋からの脱出方法を教えて。さもないと、電流であなたを吹き飛ばす。…分かった⁈」

『…分かったわ。この部屋の左端に地下に続く通路がある。そこから行きなさい』

 

クイーンの言う通り、そこには通路があった。

中は暗く、何がいるのかも分からない。もしかしたら、クイーンが玲奈たちを殺すために、ここに誘き寄せているのかもしれない。

それでも玲奈たちに選択肢なんてなかった。




よいお年を
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