バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第70話 立場逆転

玲奈は得体の知れない部屋に飛び込んでしまってからも拳銃を構えることは忘れなかった。暗かった部屋は床から徐々にアンブレラのロゴマーク状に明るくなっていく。天井の電気が付き、更に周りから何かがせり上がってきたため、玲奈は警戒する。

 

『ようこそ。アンブレラ中央制御室へ』

 

と、放送で言っているもののせり上がった部屋の中には頭を撃ち抜かれ、絶命したアンブレラの社員が無惨に放置されていた。何者かが玲奈がここに到達する前に始末してくれたようだ。更におまけなのか、武器までせり上がってくる。

 

「あら?気が利くじゃない?」

 

玲奈は今持っている拳銃を投げ捨て、その武器を取りに行く。まずマグネットにくっ付いたナイフを足元に差し込み、弾数の多いサブマシンガンに手が触れた瞬間だった。何者かが玲奈の背中に拳銃を突き付けていたのだ。

玲奈も最初は驚いて固まったが、すぐに身体を反転させて拳銃を奪い取った。そこから襲撃者…女性なのだが、彼女に撃とうとするが、女性は足で拳銃を空中に蹴り上げて、玲奈に拳銃を取らせないようにしてきた。

これでは拳銃を取れそうにないと思った玲奈は足元に差し込んだナイフを取り出して、一気に距離を詰めようとする。そして女性は落ちてきた拳銃を掴んで玲奈に構えようとしたが、玲奈は既に女性の首にナイフの刃先を当てていた。

 

「…!」

「よしなさい。首を切り裂かれたい?」

「…私の名前は……」

「よーく知ってるわ。エイダ・ウォン」

 

玲奈はエイダが話し出す前に切り出す。

 

「アンブレラの社員、そしてあのクズで最低で馬鹿なジョンの直属のスパイで一二を争うエージェント。あなたが誰で、何者かなんてよく知ってる。つまり残る問題は……ここで殺して良いか悪いかということよ」

 

玲奈はナイフを握る手に力を込めた。

だが、ここでエイダから予想外の言葉が飛び出してきた。

 

「私はアンブレラでもう働いていない。それはジョンも同じ。私はジョンの命であなたを助けるように言われてきたのよ、玲奈」

「……そう。でもそれを信じる根拠がない」

『根拠ならあるぞ?俺だ』

 

その時、横のモニターからあの憎い男が表示された。

 

『それでも信じられないなら、殺しても構わないぞ?ただし…ここから出れなくなるがな…』

「ジョン…!」

 

玲奈は鋭い眼差しを向けた。やっぱり殺せていなかったと思い、悔しく感じる玲奈。

 

『いいから…ナイフを降ろせ』

 

玲奈はそう言われ、即座にナイフをエイダの首から離したが、そのナイフをジョンの映るモニターに向けて投げた。ガシャンとモニターが割れ、少しだけスッキリする…はずがなかった。すぐに上のモニターにあの憎たらしい顔が再び映った。

 

『相変わらずのその闘争心には負けるよ、玲奈。でもまた会えて嬉しいよ』

「そう…。それは良かったわね。で、私をどうする気?また食べたいのかしら?」

「いいえ。逆よ」

 

エイダがそう言う。

 

「逆?」

「私はジョンのお陰でここに侵入出来た。それからセキュリティシステムを1分間停止させて、あなたをあの拷問室から解放した」

『君をここから救うためにね』

 

玲奈は画面上のジョンを睨みながら聞く。

 

「そんなことする意味は?」

『簡単な話だ。人類は絶滅寸前だ。我々が協力し合わない限り……生き延びるのは不可能だ』

「…世界を滅ぼした張本人の割には勝手なこと言うのね。でも私はここがどこの何の施設なのか…分かってからじゃないと動く気はないわ」

『ここはアンブレラの主要実験施設の1つだ』

 

玲奈はそこで疑問を叩きこむ。

 

「外は大阪の道頓堀だった。間違いない」

『あれは違う。数ブロック先までしか作っていない。単なる作り物だ』

 

それもあり得ないと玲奈は首を振った。

 

「そんなはずないわ。だって……」

『玲奈、勘違いしないで欲しい。ここはまず地上じゃなくて地下だ。高さが約90m近くある実験フロアがここにはいくつもある』

「屋外だった」

 

そこに釘を刺すエイダが聞いてくる。

 

「本当に?」

「ええ」

「星や月は見えた?」

「………」

 

言われてみれば…どこかおかしい雰囲気がした気はしていた玲奈。夜にしてはやたら明るい気がしたのだ。しかしそれは道頓堀のLEDが照らしているだけだと、自分に言い聞かせていた。

 

『まあ玲奈が気付かないのも無理はない。実験施設の天井の色は黒で統一されている。いつも夜の設定なのさ。だって、ホラー映画でも怪物や怪獣の登場は夜と決まっているだろう?』

「何のためにそんなものを?」

『簡単なことだ。アンブレラは世界が滅ぶまでその財力をずっとウィルス関連商品の売買などで得ていた。しかし…そのウィルスの効力を示すのに現実世界で行うのは不可能だ。だからこの施設でシュミレーションの形で行っていたのだ』

 

全てを納得した玲奈は先程取り損ねたマシンガンを2丁取った。最後にジョンは付け加えるように言った。

 

『正に悪の根源だ』

「もう充分。早くここから出ましょう?」

 

玲奈はマシンガンを大きな窓ガラスに向けて、引き金を引こうとした瞬間……。

 

「待って!」

 

エイダが引き止めた。

 

「あと数十秒で夜が明ける。自分の目でここがどこなのか確かめてみたら?撃ったら大変なことになるわよ?」

 

玲奈は目を細くしてエイダを見た。

 

『この施設は南極に位置している。年中氷に閉ざされているから、そこを撃って破壊しても無駄だな…。それに……ここから脱出した者はいない…』

 

玲奈は目の前に広がる光景に思わず息を飲んでしまう。

徐々に氷の上は明るくなり、その隙間からは眩しい太陽が光線となって漏れ出ていたのだ。まるで木漏れ日だ。だがこの事実は…最悪以外思いつかない程のことだった。

 

「まさか……ここは…氷の、下…」

「正解」

『あらゆる支援が必要になる。救助部隊をそちらに送っている。地上から迎えに来てくれるよ…』

 

その時…さっきの扉から銃声が聞こえてきた。どうやら追手はすぐそこにまで来ているようだ。

 

『クローン葉子率いる部隊が大阪エリアに到着したようだ』

 

監視カメラの映像で葉子は真っ直ぐこっちに向かって来ているのが分かった。それに彼女の顔は狼と間違えそうな程に恐ろしく、獰猛だった。

 

『…可能ならもう一度捕獲しろと命令されているようだ』

 

玲奈は()()()()()という言い方に疑問を感じた。自らの意志ではないのかと…。

 

「誰が命令を?」

『レッドクイーンだ』

「レッドクイーン?」

 

また…いや、いつもだが、玲奈の中で更なる矛盾が生じる。

レッドクイーンはクイーン・ゼノビアの一件で玲奈たちを助けていた。それなのに今更になって再び敵になるなんて……。

…何かあると玲奈は直感的に思った。

ジョンからもっと情報を得ようとしたが、ここでジョンのモニターにノイズが走り始め、レッドクイーンが登場した。

 

『何を勝手に裏切り者の話を暢気に聞いているわけ?私がこの施設……いや、この世界の支配者よ』

 

そして遂に後ろの扉が撃たれ始めた。ここも長くは持たない。

 

「行きましょう!」

 

玲奈は頷き、エイダの後を追おうとした時、『オリジナル玲奈』と呼び止められた。

 

『逃げても構わないわ。安心なさい。どうせ……ここで皆死ぬことになるから…』

「………聞き飽きたわ。それに…誰も死なせないから大丈夫よ!」

 

玲奈とエイダは中央制御室から出る。

追手を振り切るため……そして、ここから生きて脱出するため……。

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