小雪ちらつく中で、2台の装甲車両が雪原を横断していた。竜馬は温かいコートを身に纏っていた。目的地点に到着するまで暇なため、竜馬は背中に担いでいる刀剣を取り、切れ味を増すために研いでいた。研ぎながらも…今も玲奈が生きていると分かった竜馬は早く会いたくて堪らなくて、思わずその名を漏らした。
「……玲奈……待ってろよ…」
すると、運転しているジョッシュがからかうように話しかけてきた。
「何だ?あの姉ちゃんが好きなのか?」
「“姉ちゃん”じゃない。玲奈だ。ちゃんと名前がある。……好きで何か問題あるか?」
「いいや。俺も同じだからさ…。何とも言えないよ…」
竜馬とジョッシュは先頭を走るもう1つの装甲車を見た。
あの中にはルーサー、紗枝、薺が乗っている。ルーサーと紗枝は別に問題はないが…薺に関しては…酷いものだった。南極の中に向かうヘリの中で紗枝から海翔の死を聞き、精神的にズタズタに切り裂かれてしまった。そのせいもあってか、今はアンブレラに対する復讐心が以前より格段と増していた。
「薺が心配だよ…。あいつ…何するか分からないしな…」
「俺はそれよりも紗枝が心配だ」
「………そうなら、守れよ…。じゃなきゃ……」
「言われなくても、分かってるよ…」
その後、2人は目的地点に着くまで口を開くことはなかった。
漸く車両の窓ガラスから馬鹿みたいに大きな換気扇が見えてきた。その近くに車両を止めて、竜馬は外に出る。
「よし、作業に入ろう」
外に出た竜馬を最初に襲ったのは極寒の寒さだった。南極だから当然かもしれないが、こんなに寒い経験を今になってするとは、竜馬だけでなく、全員がしていた。竜馬はルーサーに時限式爆弾を投げ渡した。
「ルーサー、こいつをそこに仕掛けてくれ。俺たちは中に入る準備をする」
「分かった。薺!手伝ってくれ!」
薺はコートを首のまでかけて、寒さに耐える。そして…冷めきった目のまま、ルーサーと共に巨大な換気扇の方に向かっていった。この時…竜馬は初めて会った時の優しい印象があった薺はどこかに消えてしまっていることに気付いてしまった。
ルーサーと共に時限式爆弾を設置し始めた薺だったが、ルーサーはその彼女がどうしてか震えていることに気付いた。
「?平気か?寒いのか?」
「……違う…。なんだか分からないけど……何か…嫌な感じがして、怖い…」
「薺が怖いなんて言うなんて…らしくないな…」
ルーサーはそのまま爆弾を設置し終える。
だが…薺が『怖い』と言っていた理由は…いずれ嫌という程分かってしまうことを、彼女は知らなかった…。
入り口の制御盤の前に竜馬とジョッシュが待機していると、お待ちかねの連絡が漸く入ってきた。
「待ちわびたよ、エイダ。俺たちは今、入り口前で待機中だ。これから扉を開いて中に潜入する」
『了解。じゃあ、中に入ったらすぐにタイマーを合わせて。2時間でね』
「分かった」
アンブレラの端末には紗枝が作業に担当している。竜馬たちの中にコンピューターをまともに扱える人間が紗枝しかいないため、紗枝に頼んでここの扉を開いてもらう。だが…今紗枝の手は止まってしまっている。原因は、ここのパスワードが分からなくて困っていた躰。そこに竜馬はエイダから貰ったアクセスコードを渡した。
「……ねえ、今でも感じるんだけど…あの女の人、信用できるの?」
「確かにそう思うかもしれないが…玲奈を助けるには彼女の助けが不可欠だ。今は信じるしかない」
紗枝は溜め息を吐きつつ、端末にそのアクセスコードを挿入して、パスコードを自動的に入力させていく。
すると、巨大な換気扇の近くの雪が円形になって無くなっていく。そこからは6つの円形のエレベーターがせり上がってきて、竜馬たちをお出迎えしてくれていた。
「……本当に開くとはね…」
「やっぱり信用していなかったのか、紗枝」
「当たり前でしょ?いきなり現れて、玲奈を助けろとか言われても…。あんたもそうでしょ?ジョッシュ」
「…まあね」
「……行くぞ」
竜馬は小さく言って先にエレベーターに乗る。
それから彼の後を追うように紗枝、ジョッシュ、薺、ルーサーの合計5名は持てるだけの武器を持ってエレベーターに乗る。
「よし!お前ら!腹くくったよな?」
ジョッシュがレバーを動かし、エレベーターを下に降ろす。
それから全員は防寒で着ていた服を脱いで、銃の安全装置を外す。
「エイダからの伝達だ。時計のタイマーをぴったり合わせろだってさ。今から2時間だ」
竜馬がそう言うと、全員同時にタイマーを作動させる。それにより、換気扇に仕掛けた爆弾も連動してタイマーが動き出した。
「なぁ、竜馬……何で遠隔操作で爆破させないんだ?」
ルーサーは不思議に思っていることを竜馬に聞く。
「それは私も思った。どうして?」
「ここはアンブレラの根城だ。電波を妨害してくる可能性がある。それに…俺たちが仮に玲奈を助けられなかったり…死んだりしてもこの施設だけは破壊するつもりだからな…」
「……救出に2時間以上かかったらどうすんだ?」
「その時は極寒の氷の下で永遠に腐らずに眠り続けるだけさ…」
その光景を3人は頭の中で膨らますが、そんなのはきっぱりお断りしたいと思う。
「まあ…失敗なんてさせないがな…」
そう…竜馬に失敗するなんて考えは一握りも持っていなかった。
エレベーターは彼らの運命をさも知っているのか、ひたすらゆっくり降り続けるのだった。
玲奈は移動しながらもエイダに質問を繰り返していた。気になることが多すぎるからだ。
「救助部隊を迎えに行かせるって、ジョンは言っていたけど…誰なの?」
「安心して。いつもメンバーよ」
そう言われて分かった。恐らく…あの4人だ。
「あ、でも4人だけじゃないわ。彼もいる。ルーサー・ウェストがね」
「ルーサー⁈生きていたの⁈」
玲奈はてっきりルーサーはあの通路でアンデッドに襲われて死んだ者だと思っていた。やはり…スターのパワーは伊達じゃなさそうだ。
「今はそんなことを暢気に話している場合じゃないわ。早く合流地点に急がないと…。レッドクイーンが何かしてくる前に」
エイダははっきり言うが…玲奈はどうも納得しきれない。
近頃レッドクイーンは敵なのか…味方なのか…分からなくなりつつあった。
そう思う玲奈とは裏腹に…レッドクイーンはエレベーターに竜馬たちが侵入してきていることくらいすぐに見抜いていた。
『エレベーターの周りを固めなさい!それにオリジナル玲奈とエイダももう要らない。さっさと殺してしまいなさい!』
最近…長く書けなくなってきた…。