バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第72話 NYシーケンス

竜馬たちはエレベーターの奥の方で伏せていた。

アンブレラがこのエレベーターから竜馬たちがやって来ることくらい既にお見通しだろう。そこを急襲してくることも彼らには分かっている。なら…こっちから先に仕掛けてしまえばいいんだ。エレベーターはいよいよ地下の実験施設に到着しようとしている。

その瞬間、竜馬はジョッシュに指示を出した。ジョッシュはタイヤ状の形のものを外に向かって投げた。あれは全面にマシンガンが付属していて、目の前にあんなものが出てきたら避けれるはずがない。すぐに兵士の呻き声と壁にぶつかる音…そして当たらなかった弾丸がコンクリートにめり込む音が響いて、エレベーターは動きを止めた。

立ち上がり、周りを見ると武装していた傭兵が何人も物言わぬ死体となって転がっていた。

 

「潜水艦シェルターはこっちだ!」

 

竜馬はタイマーを確認した。残り1時間47分だ。

 

「ジョッシュ、俺が先導する」

 

5人で行動を共にし、シェルターに行くための階段を上がっていくと、上がり切ったところに一人の傭兵が背を向けて立っていた。竜馬は静かに近寄ると、大声を上げさせないために口を塞ぎ、刀剣で奴の頸動脈を切断した。首から血が噴き出し、傭兵は断末魔を上げることも出来ずに絶命した。

次にルーサー潜水艦の上で周囲を見張っている傭兵にライフルの弾丸を心臓にぶち込んだ。

 

「いいぞ、上がって来ても」

 

潜水艦シェルターに到着した一行は目の前にある巨大な潜水艦に息を飲んだ。

 

「ひゅぅ、最新式…いや、改造したものだな」

「ああ。こいつは旧ソ連が使っていた原子力潜水艦……恐らく、キューバ危機の奴かもな…。アンブレラはこれを使ってウィルスを全世界にウィルスを売り捌いていたんだ」

「解説も嬉しいけど……急いだ方がいいんじゃない?時間」

「悪い。熱くなっちまった」

 

その話の様子を監視カメラでレッドクイーンは見ていた。

そして、新たな指示を発令する。

 

『侵入者はモスクワエリアに向かっている。ジュアヴォアンデッドを出動させなさい』

 

 

 

 

玲奈たちは中央制御室から出て、新たなエリアに辿り着いた。そこはNYエリアだった。

 

「NYも再現してるのね」

「NYだけじゃなくて、色々な世界各地の都市があるわ。ここともう1つ実験エリアを通過しないといけない」

 

淡々と話し、さっさと歩き始めるエイダに玲奈は仕方なくついていく。

それにしても……エイダはすごい恰好の服を着ているのだが、ここに来るまで目立たなかったのだろうか…と玲奈は思った。片足はもう丸見えだし、そのスラリとした生足が見えて、危ない男なら襲い掛かってしまうだろう。

だが、襲われないくらいに身体能力は高い。さっき拳銃を突き付けられた時に分かったが、実力的には薺に勝るくらいの力を有している。流石、アンブレラのエージェントでナンバーワンと言われているだけある。

 

「ねえ、どうしてアンブレラはこんな実験を続けるの?」

「バイオハザードを繰り返して、コントロールが可能か試してるのよ。学習能力のない彼ららしいことよ」

「…それは賛成できるわ」

 

その時、またあの大阪エリアで聞いたような放送が入る。

 

『スタンバイ……スタンバイ……。NYシーケンスを、開始します』

「レッドクイーンの仕業よ。彼女は生物兵器を使って、私たちを殺すつもりよ。急がなきゃ…」

「ちょっと待って。……あれ、聞こえる?」

 

エイダは玲奈に言われて耳を澄ました。すると、何かを引き摺る金属音と…ゴツ、ゴツと足音がこっちに近付いてくるのが分かった。エイダには何の音なのか全く持ってさっぱりだった。

 

「何の音か分かる?」

「見当はつく」

 

玲奈は背中に収めていたマシンガンを2丁、エイダは足に付けていた拳銃を掴んだ。

そして暫くして、車のライトを背に照らされて、あの巨人が現れた。相変わらず…あの巨大な武器……斧とハンマーを合体させたようなものを持っていた。

玲奈とエイダはその姿を捉えると、それぞれの武器を構えるが、ゴトリと更なる足音が後方から聞こえてきた。その音に玲奈が振り向くと、あの巨人がもう1体、斧鎚の武器を構えてそこに立っていたのだ。

 

「……⁈ちょっと…!冗談キツイわよ‼」

 

玲奈は後ろの巨人の方に銃口を向けた。

2体の巨人は玲奈とエイダを静かに見詰めていたが、玲奈の頭から落ちた汗が一滴…地面に着いた瞬間、巨人たちは同時にその足を前へと動かした。玲奈とエイダは頭巾の上からでもお構いなしに銃弾を撃ち込んでいく。だが、2人の予想通り、奴らはそれだけでは全く怯むことはない。巨人と玲奈たちの距離は瞬く間に詰められていき、最終的に奴らの斧鎚が振り下ろされた。

それを2人は横に避け、斧は道路に深々と突き刺さった。エイダは距離を取ろうとするが、玲奈はむしろ近付く。突き刺さった斧鎚の上を通って、それぞれの頭に銃弾をお見舞いする。

1体ずつ、玲奈とエイダに接近してくる。エイダは銃を構えるが、この距離では殺されると思い、バスの中に逃げ込むが、すぐに奴の斧がバスの運転席辺りを激しく(えぐ)った。その威力にエイダは転んでしまう。

もう1体は玲奈に向かって、その巨大な斧鎚を勢いよく投げた。後ろを見ていなかった玲奈だったが、何となく風の吹き方が変わったような気がして、頭を下げた。予想通り、斧鎚は玲奈の頭上を通過して、ガソリンの詰まったトラックに刺さった。しかし…斧鎚を持たないまま、巨人は玲奈の身体を掴むと、車のフロントガラスに叩きつけてきた。

 

「ぐはっ……!」

 

更に指を絡ませて、拳を作り玲奈の顔面に向けて、思いっ切り振り下ろした。

 

「!」

 

玲奈は巨人の股の下を潜って避ける。

拳は車のボンネットにめり込み、前輪を吹き飛ばしてしまう程に大破する。玲奈を仕留め損ねた巨人は先程放っておいた斧鎚を取りに玲奈から離れる。

その間に玲奈はもう1体がバスを輪切りする感じで切り裂いている様子が見えた。玲奈でもあそこにエイダがいて、徐々に追い詰められていることくらい容易に想像がついた。玲奈はさっきの奴がまた来る前に、エイダに攻撃している奴もこちらに目を向けさせようと思い、マシンガンの弾を奴の背中に浴びせた。

それに怯んだ巨人は玲奈にターゲットを変える。更に斧鎚をタンクから取ったもう1体の巨人も玲奈にその巨大な武器を向ける。

二体とも玲奈に標的を絞り、牙を剥いて来たため、玲奈はすぐに前へと走り出した。あいつら2体を接近戦で勝てるはずなどない。玲奈は奴らは巨体の割にスピードがあるからどうも好きになれなかった。

すぐに距離を詰められ、横から斧鎚が飛んでくる。後ろを見ながら走っていたため、玲奈は再び頭を下げる。空ぶった斧鎚はタクシーを横に切り裂いた。その攻撃が2、3度続いたところで…玲奈は見誤った。

巨人は鎚の方で振ってきて、玲奈の横腹に当たり、吹き飛ばした。

 

「あぐ…っ!」

 

玲奈はタクシーの上にドガンとぶつかり、意識を手放しかける。更に巨人は追い打ちをかけて、2体とも斧で玲奈の身体を切り裂こうとする。玲奈は身体を後転させて避け、奴らにマシンガンの銃口を向ける。斧はタクシーの車体にめり込んでいた。しかも、その斧は思った以上にめり込んでいたのか、2体が同時に抜こうとすると、逆に車体が浮いてしまっていた。

 

「………ふっ…残念ね…」

 

2体は玲奈の声に反応した。エイダも玲奈の横に立って拳銃を奴らに向ける。

玲奈の狙い通りだった。先程玲奈に向かって投げてきた斧によって、開けられたトラックの荷台から漏れ出るガソリンが2体の足元に到達した途端に…2人は引き金を引いた。

 

「馬鹿ね」

 

玲奈たちは巨人を狙ってなんかいない。タクシーのガソリンタンクに向けて、いくつもの銃弾が放たれる。

そして、遂に引火して爆発したタクシーに巻き込まれた2体の巨人はガソリンに足元を取られて吹き飛び、焦げたタクシーの残骸の下敷きになり、2度と動くことはなかった。

玲奈は「はぁ」と溜め息を吐くと、燃え続けるタクシーの方を見た。残骸の隙間から奴らの手が見えた。もう死んでいるのは分かる。

ただ…この光景を見ていたら…嫌でも“あのこと”が脳裏に思い出されてしまう。

火、爆発、手……。竜也の死の瞬間の景色とほぼ同じだった。

 

「……行きましょう。予定より遅れている」

 

エイダはタイマーを見ながら言う。

玲奈はあの時の記憶を奥にしまい込んで再び歩き出す。すると、さっきまで黒一色で染まっていた天井が白く光り、辺りを明るくしていく。

 

「何が起きているの?」

「シーケンスが終わったのよ。大抵は1時間程度で終わる。さ、早く」

「急かさないで。それよりも大丈夫なの?」

「私は平気。そっちは大丈夫なの、あなた?腹にハンマーを食らっていたけど…」

「ちょっと痛いだけよ。……骨折はしてるだろうけどね」

 

玲奈はエイダがレッドクイーンに対してかなり警戒してるようだ。

警戒するに越したことはないだろうが…レッドクイーンが何かする前にここから逃げ出すのは、無理なように思えたのが、玲奈の率直な考えだった。

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