バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第73話 『ママ』と呼ぶ者

竜馬たち一行はモスクワの街並みを見ながら、エイダと玲奈と落ち合う場所…郊外エリアに向かっていた。気にしていたら中々進めないのは山々だったが、もうこのロシアの美しい光景を見ることは出来ないだろうから、どうしても足が止まってしまうのだ。

 

『スタンバイ……スタンバイ……。モスクワシーケンスを、開始します』

「今のは…?」

「レッドクイーンの指示だろうな…。来るぞ……」

 

既にモスクワは夜になっていた。作り物の夜に……。

あまりに静かでそれで逆に竜馬たちの神経を張り詰めさせていく。竜馬を先頭に進んでいたが、竜馬は手を上げて、突如動きを止めた。

 

「どうしたの?竜馬」

「……何か聞こえないか?」

 

言われてみれば…何か、足音と金属がカチャリカチャリ擦れるような音が5人の耳に入ってくる。その音の出所と正体はすぐに判明した。突然、前方が明るくなり、たくさんの人影が形成されていく。

 

「あそこだ!」

 

5人は車の影に隠れて、それぞれの武器を構えた。人影は最初、ぼやけた感じだったが、だんだんときちんとした形になっていった。

 

「何だ、あいつら?」

 

それはマシンガンを持ったジュアヴォの軍団だった。それが少しずつ…こちらに近付いてきていたのだ。

 

「あの仮面野郎か!」

「退却だ‼後ろの店にまで下がれ!殺されるぞ‼」

 

5人は店の中で籠城戦を行うことにした。

そして、中に入った途端にジュアヴォたちはマシンガンの乱射を開始した。マシンガンだけでなく、車に乗り込んだジュアヴォは搭載された高威力のガトリングガンを飛ばしてくる。竜馬たちはそれらをどうにか避けながらも、的確にジュアヴォたちの頭を撃ち抜く。あいつらは頭を何度も撃ち抜かないと、死なないことはよく知っているが、それを拒み…させないように弾はあちこちに飛んで来て、竜馬たちを邪魔する。

 

「くそっ!こんなに数を相手にしていたら…弾が持たないぞ‼」

 

ジョッシュはそう叫ぶ。

 

「今は耐えろ!」

 

5人は籠城戦に持ち込み、奴らを全滅させるしかここを突破する方法はなかったのだった。

 

 

 

 

玲奈たちはNYエリアを抜け、新たなエリアに到着する。そこに入ると、まず目に入ったのは真っ白な雲にその隙間から見える青空だった。

 

「雲……⁈」

 

思わず声を上げてしまう玲奈。

 

「本物じゃないわ。これらはただのホログラミング…。星空を見るプラネタリウムと何ら変わらない。シュミレーションの現場では、誰も、空なんて見てないのよ」

 

玲奈とエイダは歩く。そこは至って普通の郊外だった。

ただ…この郊外は何かの襲撃を受けたかのようにあちこちで車は横転し、窓ガラスや扉は壊され、おまけにはヘリが墜落している始末だった。まあ…家や道路に残っている血溜まりに血の手跡を見れば、何が起きたのかなんてすぐに分かる。ここも…ついさっきまで実験が行われていたんだ。

 

「一応ここが合流地点になっているわ。……救出チーム、やけに遅いわね」

 

エイダはタイマーを確認する。残り1時間12分なのだが…竜馬たちはまだここには到着していなかった。

 

「どこかしら…」

 

その時、玲奈はエイダの後ろの家の窓で何かを捉えた。

 

「あなたの後ろの家に何かいる。2階の窓から見えたわ」

 

エイダはその家を一瞥し、玲奈は何がいるのか確かめるためにその家に赴く。

その家の中も当然血だらけでアンデッドがどれだけ押し寄せてきたのか、簡単に想像できた。そして…近くのテーブルの上に…息絶えた玲奈のクローンが横たわっていた。

 

「……私のクローンも使ってるのね」

 

エイダはさもそれが当然かのように淡々と述べる。

 

「当り前よ。基本モデル50体のうちの1つよ、これは」

 

玲奈は溜め息を吐く。

 

「はっ……基本モデル、か……」

「実験用の人間をどうやって調達してると思ってたの?シュミレーションの度に数百人と死ぬのよ?アンブレラはそのクローンたちがきちんとした反応を示すために必要最低限の記憶を刷り込ませている。ある時は郊外に住む平凡な専業主婦、ある時はNYでタクシーを回す運転手、またある時は……アンブレラで働く兵士…」

 

玲奈はもう1度溜め息を吐いた。

自分でも嫌になってきた。玲奈1人のためだけにわざわざこんな施設を作り、法律で禁止されていたクローンを使って、実験を繰り返す…。自分はそんなもののために生きてきたわけではないと奴らに言ってやりたいのが玲奈の気持ちだった。

その時、2階の方から物音が聞こえてきた。玲奈とエイダは声を静めて2階に進めていく。所々に四又の寄生体を口から出したままのアンデッドが死体となって転がっていた。額には小さな赤い点が付いていて、誰かに頭を撃ち抜かれたことがすぐに分かった。玲奈はそれからエイダと二手に分かれて、壁紙がピンク一色で統一された部屋に入っていく。どうやら、子供部屋のようだ。

そして、再び音はクローゼットの中から聞こえてくるのが玲奈に分かった。

玲奈はゆっくりとクローゼットの取っ手に手をかける。中にいるのは果たして、シーケンスで始末しきれなかったアンデッドか……それとも生き延びたクローンか……。

玲奈が開けようと思った瞬間、中からクローゼットが開き、ものすごい奇声を上げながらアンデッドは玲奈に掴みかかった。すぐに撃とうと思ったが、マシンガンの銃口を天井に向けられ、そこに撃たされる。しかし、力はそこまで強くはない。すぐに奴の腹に弾を貫通させて、身体を吹き飛ばしてやると、今度は頭に風穴を開けてやった。玲奈はそのまま倒れていくアンデッドを静かに見ていると……不意に…。

 

「………ママ!」

「!」

 

玲奈はその幼い声を聞いても、癖で銃口をそちらに向けた。

だが……『ママ』と呼ぶその幼い少女を見て、玲奈は警戒心を解いた。子供部屋の入口には小学1、2年生くらいの少女がリュックを担いで立っていた。ただ…銃を向けたからなのか、ちょっとだけ恐怖に震えたが、すぐに玲奈に歩み寄っていく。

 

「言われた通りに隠れてたよ!ママ!」

 

佑奈は構わず玲奈に抱きついた。その佑奈のあまりの突然の行動に、玲奈は茫然と固まってしまう。

 

「………私が……ママ…?」

「…ねえ、ママ……。どうしてお洋服も目の色も髪の色も違うの?」

 

玲奈はその質問には答えられずに、ただ……玲奈を『ママ』と呼ぶ佑奈を抱き締めるのだった。

 

 

 

 

竜馬たちは本当に苦戦を強いられていた。ジュアヴォ軍団は歩きながらマシンガンを撃ってきているため、徐々に竜馬たちが陣取るスペースが減ってきているのだ。竜馬は店の中に入ってきたジュアヴォの首を刀剣で切断する。

 

「おい!本当にヤバイんじゃないか⁈」

「……くそ!」

 

まだまだジュアヴォは山のようにいる。

…一旦、退くしかないかもしれないと竜馬は思い始めていた。

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