バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第76話 『パパ』と呼ばれる戸惑い

「2人とも!出てきてもいいわよ!戻ってきたわ‼」

 

玲奈がそう叫ぶと、柱の影から佑奈と葉子が出てきた。

佑奈は涙目で玲奈に抱きつく。

 

「ママ…っ!戻ってきた…!」

「佑奈、大丈夫だった?」

「うん!あのお姉さんが守ってくれていたから」

 

5人は玲奈と佑奈のじゃれあいに暫し茫然となる。玲奈は5人の視線が気になってしまい、そっちを見た。

 

「な、何?」

「その子……誰?」

 

薺に言われて、玲奈が紹介しようと口を開こうとした時には佑奈が先に自己紹介をしてしまっていた。

 

「私の名前、佑奈っていうの」

 

ルーサーは馴染みやすくするために優しい言葉をかける。

 

「やぁ、佑奈。俺はルーサーだ」

「私のママのお友達?」

 

佑奈が玲奈に指差して、玲奈が『ママ』であると示す。玲奈は皆に苦笑いをするが、竜馬は驚きのあまり口がパクパク空いたまま閉じられずにいた。すると、竜馬の姿を見た佑奈は彼の傍にトコトコと駆け寄っていく。

 

「パパっ!」

「…⁈」

 

佑奈は竜馬のお腹に顔を埋めてすりすりと顔を擦った。

竜馬はどうなっているのか全く見当が付かないでいる。玲奈を焦って見るが、彼女は

首を横に振る。抵抗したり拒絶したりしてはいけないと言いたいのだろう。

 

「玲奈、どういうことだ?」

「“玲奈”じゃないよ!パパ‼」

「「えっ?」」

 

今の佑奈の言葉には玲奈も竜馬も同時に驚きの声を出してしまった。

 

「ママの名前は“美奈”だよ!間違えないで!」

「美奈?……分かった、佑奈」

 

余りややこしくしたくない竜馬は大人しく佑奈の言う通りにこれからは佑奈の前では『美奈』と呼ぶことにした。ただ…何故名前が『美奈』と別のものなのか分からないが…今は置いておこう。

その時、ジョッシュは場の雰囲気を考えずに発言する。

 

「おい、家族ごっこやってないで、早く行かねえと時間的にやばいぞ?」

 

竜馬はジョッシュにそう言われて一気に現実に戻された。時計に目をやると、残り時間は約51分…。元のエレベーターに戻ろうにも、さっきの道を逆に行くのは無謀と言えるだろう。第一、例の道は玲奈が車を使って、瓦礫で埋もれさせてしまったため、戻ることも出来ない。

 

「大丈夫よ、任せて」

 

玲奈はエイダから受け取った眼鏡を装着する。

すると、眼鏡のレンズにこのモスクワ駅から潜水艦シェルターに行く方法が表示される。

 

「この地下鉄の線路に沿って進んでいくと、潜水艦シェルターに繋がる配水管に出られる」

「よし、それなら行こう!」

 

玲奈が先頭にそこに歩んでいくのだが、本来なら竜馬が先頭に出たい気分だったが、佑奈は竜馬の手をしっかり握ったまま、離してくれそうもなかった。全く知らない女の子だから、これだけでも竜馬は本当に戸惑ってしまっていた。幼いころの彼の妹…千鶴と同じだと思えばそれで楽なのだが…それとはまた別の話になってくる。

その様子を見ていた紗枝が竜馬に言う。

 

「玲奈とよく話したら?」

「えっ…」

「…その佑奈って子のこととか…色々聞きたいことがあるんじゃないの?」

 

薺の言う通りだった。聞きたいことなら山のようにある。

何故、竜馬が『パパ』と呼ばれているのか…。そして、この佑奈はどういう子なのか…。

そう思った竜馬は手を握ったまま離さない佑奈と目線の高さを合わせて、膝を曲げて話す。

 

「佑奈、ママとこれから大事な話をするから……このお姉さんと一緒にいて」

「何のお話?……喧嘩でもするの?」

「……違うよ。とっても大事な話だけさ」

 

佑奈は竜馬の言葉を信じたのか、にっこり笑って紗枝のところに駆け寄っていく。更に薺は玲奈と竜馬を気遣って、少し距離を取ってくれた。竜馬は先頭を歩く玲奈のところに赴き、話し始める。

 

「……玲奈、あの時お前は何をしたかったんだ?」

 

竜馬が突然怒りを隠すことなく話しかけてきて、玲奈は驚いた。“あの時”とは、海底油田でのことだろう。玲奈はどうとも言えず、ただ前を向いたまま何も言えなかった。

 

「そうかよ…。何も言わないのかよ?」

「ち、違う…。それは……」

「それは…?なんだよ?言いたいことがあるならはっきり言えよ!」

 

本気で怒っている竜馬に玲奈は肩を震わせた。

いつも、アンデッドや怪物と戦っている玲奈でも、こういう時には自信を無くしてしまう。竜馬の前だからでなのかと、自問する玲奈。

 

「……もういい。で、あの佑奈って子は、何者なんだ?」

 

いつまで経っても何も言わない玲奈に嫌気が差した竜馬はそう言ったが、逆にその発言は玲奈に深い傷を負わせる。玲奈は胸が締め付けられる感覚に陥ったが、どうにか涙はだけは耐えた。

 

「佑奈は……クローンよ。佑奈は私のことを母親であると記憶を刷り込まれている」

「……実際は玲奈が母親なわけではないんだな…。でも、どうして俺が父親なんだ?」

「アンブレラが設定した家族構成で竜馬が父親になるようにやっただけよ…。たったそれだけ…。偽りの家族でしかない」

「そう……か…」

 

竜馬はそれでどこかホッとしたような…がっかりしたような表情を作った。玲奈が竜馬の方を向くと、彼の目尻からは少しだけ涙が溢れていた。

 

「え……」

 

竜馬が…泣いている…。竜馬は玲奈の視線に気付き、慌てて目を擦って涙を拭くと、歩きながらであるが、今度は優しい口調で話し始める。

 

「はっきり言えてないのは、俺の方だな…。玲奈、生きてて良かった…」

 

それは竜馬の心の底からの言葉だった。先程の酷い言葉で傷付いた玲奈の心が塞がっていく感じがした。

 

「さっきは、酷いこと言ってごめん。玲奈が何にも言わないし、伝えてもくれないし……俺って、信用がないのかなぁ…って、思った」

「竜馬…」

「あの佑奈って子のことでも…。佑奈にはあんだけ笑顔を向けておいて、久しぶりに再会した俺にはほとんど顔を振り向かせなかった。…要するに……少し妬いていたというか…」

 

そのことを黙って聞いていた玲奈だったが、涙を出す程に思いっ切り笑い出してしまう。

 

「お……おま…!玲奈!何笑っているんだ⁈」

「だって…!竜馬らしくなくて……面白かったんだもの!でも…」

 

玲奈は腹の底から笑いあげ終えると、彼の頬に手を置いて軽い口づけをする。

 

「ふふ……。泣きそうになった私がバカだったわ。私はこれだけ愛されているんだもの…」

「玲奈…そうだな……」

 

それからもう1回、チュッというリップ音がトンネル内に響き、4人の視線を集める。暗いトンネルでも何をしているかくらい分かる。紗枝が溜め息を吐いていると、隣にいたジョッシュがこう小さくぼやいていた。

 

「はぁ……俺もいつか………」

「…?」

 

何を言っていたか聞こえなかった紗枝だったが、あの2人が相思相愛であることが改めて分かる。

 

「ねえ、お姉さん…パパとママは何をしているの?」

 

佑奈は紗枝に聞く。紗枝も笑顔を向けて優しく言った。

 

「パパとママはね……愛し合っているんだよ…。佑奈ちゃんのために…」

「本当?良かった!」

 

無邪気な笑顔を振りまく佑奈の姿は、とても可愛らしく見えるのだった。




最後の〆、いまいちな気がするけど……これでいいかな?
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