バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第77話 玲奈にとっての価値

薺はいつまで経ってもイチャイチャしている姿に呆れてしまい、2人に向かって大きく叫んだ。

 

「玲奈、竜馬‼いつまでもラブラブしてないで早く先に進んで!時間もないし、会話も駄々洩れよ!」

「「‼」」

 

からかって言った薺の言葉に玲奈はすぐさま竜馬から離れ、顔を一気に赤くしていった。比喩するなら、完全に茹で上がったタコ。

すると、ルーサーが叫んだ。

 

「おい!あれじゃないか?」

 

ルーサーが見つけたのは、トンネルの左側に現れた枝分かれしたトンネルだった。その途中で階段があり、更には上へと行くための梯子まで置いてある。どうやらエイダが渡してくれた眼鏡による案内は正しいようだ。玲奈は恥ずかしさを消し飛ばすために相槌を打った。

 

「そうね。この梯子を登り切ったら潜水艦シェルターに着くはずよ」

 

ルーサー、ジョッシュを先頭に警戒しながら梯子を登っていく。ジョッシュがマンホールの蓋を開けて、周りを確認する。そこはつい一時間くらい前に通った場所で、アンブレラの兵士の死体もそのままになっている。全員が無事に梯子を登ったところで紗枝が時計を確認した。

 

「あと20分…。時間的にどう?」

「間に合いそうだ」

 

玲奈たちは漸く地上に繋がるエレベーターに到着する。

これで漸くこの地獄みたいな研究施設から脱出できる……なんて生優しいことは誰も考えてなんかない。ここでレッドクイーンが何か仕掛けてくる可能性もあり得る。

そして、全員がエレベーターに乗り込んで、ジョッシュがレバーに手をかけた。

 

「お待ちください。次の階は…氷点下40度の世界です」

 

あながちシャレになっておらず、紗枝と竜馬は苦笑した。まあ、この施設が南極大陸の永久氷河の真下に作られている訳なんだから当然だが…。ジョッシュがレバーを回し、エレベーターは順調に上昇して、玲奈たちを地上に送り届けてくれる……はずだった。エレベーターは突如、途中で止まってしまい、赤い警報ランプも作動する。どうやら…皆が考えていたことが現実となってしまったようだ。

 

「ジョッシュ、原因は?」

「さあな…。ただ、今の状況は非常にヤバイのは明らかだぜ?」

 

ルーサーはここで一旦エレベーターから降りて、向こうにある制御盤に近付く。

 

「ルーサー!」

「遠隔操作で電源を落とされた!早く復旧しないと、何かやって来る!」

 

玲奈は佑奈に指示を出す。

 

「伏せてて!」

 

佑奈は大人しく姿勢を低くした。またさっきのジュアヴォ軍団かあの部隊が来てもおかしくない。玲奈も制御盤のところに行き、どういう状況か確認する。竜馬は時計を見て、ボソリと呟いた。

 

「こいつは…Bプランで行くしかないかもな…」

「Bプラン?どういうこと?」

「爆弾を仕掛けたのはもう1つ狙いがあってな…」

 

竜馬がそのもう1つの狙いを言おうとした時、突然ジョッシュの悲鳴が聞こえた。

 

「ぐあっ!」

 

見ると、ジョッシュがエレベーターの方から吹き飛んでいて、その射線上にいた薺にもぶつかって2人はエレベーターから離れた場所に飛ばされた。

 

「あうっ!」

 

ジョッシュを吹き飛ばしたのは、さっき瓦礫に埋もれたはずのあの怪物だった。奴は狙いを佑奈に定めると、その剛腕で佑奈を掴んで逃げようとする。

 

「キャアアアアア‼」

「やめろおおおお!こんの化け物がああ!」

 

葉子は玲奈に渡されたマシンガンを思う存分乱射するが、全く効いておらず、奴はもう一方の腕で葉子の身体を切り裂き、身体を真っ二つにして殺した。

 

「ママァ‼ママァッ‼」

 

佑奈の助けを求める声がエレベーターの通路内に木霊する。玲奈は唇を噛んで、自らの愚かさを罵倒した。

ジョッシュは鉤爪で身体を吹き飛ばされたにしては、傷はあまりなく軽傷だった。薺もジョッシュとぶつかって頭を軽くぶつけたくらいで、大きな傷ではなかった。だが……身体を真っ二つにされた葉子の死体は…無惨なものだった。玲奈は無言で彼女に近付き、見開いた目を閉ざしてやると、落ちていたマシンガンを掴んで歩いていく。

しかし、そこにさっき傷を負ったジョッシュが玲奈の前に立ち塞がった。

 

「どこに行く気だ?」

「佑奈を助けに行く」

「やめろ。あんなガキを助けに行くのは…」

 

玲奈はジョッシュに対して嫌悪感を感じて、無意識の内に表情を悪くしていく。

 

「…あなたに何でそんなことを言われなきゃいけないの?」

「お前は何も分かっていない。今ここで助けに行ってみろ。死ぬぞ」

「構わないわ」

 

玲奈はすっとジョッシュの横を通り過ぎていく。ジョッシュはその飄々(ひょうひょう)とした態度の玲奈に怒りを覚えた。彼女の肩を乱暴に掴み、振り向かせると、白い頬にその手で思いっ切り叩いた。

 

「っ!」

 

じ~んと頬全体に広がっっていく痛みに玲奈は思わず頬を抑えた。しかし、彼女は怒りも何も湧いてこなかった。

 

「ジョッシュ…!テメエ…‼」

 

竜馬はジョッシュの胸ぐらを掴み上げると、拳を作った。

 

「……お前も何か忘れてないか?」

「何をだ?」

 

ギリギリとジョッシュの首を締め上げていく竜馬。紗枝と薺も流石にこれ以上はマズいと思い、彼らを引き剥がそうとするが、竜馬の力は半端なく、全く離れようともしない。

 

「俺たちは玲奈を助けに来たんだぞ?なのに……あいつはあんなクローンの子供一人のために命を張りやがって……。もし、ここで玲奈が死んじまったら…俺らがここに来た目的が無くなっちまうだろ‼それくらい考えろ!馬鹿女‼」

 

正論だ。ジョッシュの言っていることは…明らかに正論だった。

 

「俺はな……あんなガキを助けるよりも、玲奈の命を助ける方が優先順位は高いんだよ…!」

「この……くそ野郎……」

 

竜馬の力は更に上がっていくが、その拳をジョッシュに振りかざすことはなかった。あまりの正論に竜馬は歯軋りして、反論することが出来なかったのだ。すると……。

 

「竜馬、やめて」

 

玲奈は竜馬の肩を叩いてやめるように言って来た。竜馬からしたら、まだ一撃も殴っていないジョッシュを開放するのは…全く納得できることではないが、玲奈がそう言うなら……仕方ないと思った。彼はゆっくりとジョッシュから手を放した。

 

「ジョッシュ…確かにあなたの言うことは正しい。でも…私は佑奈を赤の他人だなんて思っていない。ジョッシュが私を優先するのは、単なるあなたの価値観の違い。でも…私は佑奈が大切なの。この命を無くしてでも…守りたい存在なの」

 

玲奈の優しい……棘のない話し方にジョッシュはやれやれといった表情で、塞いでいた道を解放した。

 

「ありがとう…」

 

玲奈がそう述べて、縦穴を登るために梯子に手をかけると…。

 

「玲奈!」

 

ルーサーが声を上げた。

 

「俺も行く。1人じゃ危険だ」

「でも…」

「危ないのはもう慣れっこだし……」

 

その時、ルーサーの左腕を弾丸が貫通した。ルーサーは軽くよろめき、玲奈は即座にそこから撃ってきた兵士を殺した。ルーサーは左腕を抑えて出血を止めていた。

 

「ルーサー…!」

「大丈夫…さ……。連れ戻してこい…お前の大切な娘とやらを……」

 

玲奈はしっかり頷いて梯子を登って行った。

葉子や海翔、智之たちの部隊はここまで追いかけてきていたのだ。紗枝や竜馬たちは柱や荷物の影に隠れて、ここを死守することにした。

 

「玲奈が戻ってくるまでここを抑えるんだ‼」

 

数も弾も相手の方が多い。

だが、竜馬たちには爆弾という最後の切り札がある。玲奈が来るまでと言ったが、彼女がもし爆発までに戻って来なかったら、その時にはエレベーターには乗っていないといけない。これから始まる時間の勝負に彼らはかけているのだ。

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