バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第89話 ハイブへ

玲奈は元のビルに戻り、紗枝から渡された熱探知双眼鏡で遥か彼方を見ると、確かに熱を持った何かの大群がこっちに向かって来ているのが分かった。

 

「まさか、もう一陣用意していたとはね……」

「そんなの誰が予想出来るんだよ…」

 

桐生は空になったドラム缶を捨てて言った。

 

「ガソリンがほとんどない。さっきみたいな作戦を展開するのは不可能だ」

 

ここに来て、玲奈たちは選択を強いられた。あの量のアンデッドと装甲車を再び相手にするか…それともここから急いで逃げ出すか…はたまた……。

 

「……ハイブに行く」

「正気か?」

 

竜馬は信じられないと言った表情で玲奈をじっと見詰めた。

玲奈も竜馬を見つめ返して、自らの覚悟が本物であると、見せつけた。

 

「……ハイブに行けば、みんな助かるのか?」

 

竜馬の発言で、みんなにもどよめきが広がる。

 

「ええ。あそこには空気感染型の抗ウィルスがある。それさえ手に入れば…」

「それなら俺も行く」

 

竜馬がそう言うと、玲奈は必死になってその同行を止めようとし始めた。

 

「ダメ。竜馬はここに残って。危険なところに行くのは私の仕事なの」

「…そんなのお前が勝手に決めただけだろ?俺は危険だと分かっている場所に玲奈一人で行かせるつもりはない」

「竜馬…」

「大丈夫さ。今まで何度も修羅場を潜り抜けて来たんだ。今回もどうにかなるさ。さおれに……付き合うのは俺だけじゃないぜ?」

「え…」

 

竜馬が指差すと、そこには複数の生存者が集まって来ていた。

紗枝、ジョッシュ、薺、桐生に光子……一番意外だったのが高田までいたことだった。

玲奈が意外だと言いたげな表情をしているのに気付いたのか、高田は申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「さっきは悪かった。あんたなら信用できるよ、今さっき気付いた」

 

それを聞いて、玲奈は信頼できる仲間が増えたと嬉しくて涙が溢れそうだったが、どうにか堪えて皆に最後の警告をする。

 

「今から行くところは……多分、一番危険で地獄のような場所に違いないわ。…死ぬ覚悟は出来ている?」

「「「「「「当り前‼」」」」」」

 

残り時間は4時間足らず…。それなら…。

 

「準備して。時間がないから」

 

 

 

 

淳は必死に後ろからしつこく追いかけてくるアンデッドたちから逃げていた。

想定外なことが立て続けに起きて、淳のイラつきは最大にまで上がり切っていた。あの数のアンデッドを殺し、挙句には装甲車2台をその場にあったものだけで破壊されたのだ。悔しくて堪らなかった。

そのため、彼の頭にはイラつきの他には復讐心も募っていた。その復讐を果たすためにも、淳は死んでたまるかと限界に痛んでいる足を必死に動かす。

すると、前方から明かりが迫ってきた。それはアンデッド軍団の第2陣を連れて来た別の装甲車から出されているLEDの光だった。

 

「乗せろ!早く‼」

 

すぐに淳の姿を確認した兵士たちは装甲車を動かしながらも、淳を中に入れた。

淳は喉が渇いていて、1人の兵士には水を持ってくるように言い、もう1人には別の指示を出した。

 

「今すぐハイブに向かうんだ」

「いえ、ジョン議会長の命令がなくてはそれは出来ません」

「………もう一度言うぞ?今すぐ、ハイブに、向かえ!」

「しかし……」

 

イラつきが元々溜まっていた淳は目の前の兵士の逆らいだけでも、怒りが爆発し、持っていたナイフで彼の腹を抉った。抉るだけでは収まることはなく、何度も何度も突き刺した。

その光景を目の当たりにした兵士は恐怖と驚愕で身体を固めてしまっていた。

 

「水だな?ありがとう」

 

淳は何事もなかったかのように水を飲み始めた。淳は水が身体の中に浸透していくのを、ゆっくりと感じているのだった。

そして、淳の命令通り、装甲車はハイブへと全速先進するのだった。

 

 

 

 

玲奈を筆頭に竜馬たちはアンデッドがいない荒野をひたすら走っていた。

タイムリミットまで4時間を切ってしまっているため、急がざるを得ない。しかし、その行動は全部ハイブにいるジョンに見られている。そして、ジョンはクイーンに指令を出す。

 

「ケルベロスを投入だ」

『はい。ケルベロス、投入開始』

 

その瞬間、玲奈は忙しく動かしていた足を突然止めた。

 

「どうした?」

「……聞こえる?」

 

竜馬たちも耳を澄ませてみると、何かが近付いてきているのが分かった。アンデッドではない。

もっと小さくて…俊敏で、獰猛な奴がこっちに来ている。

そして、玲奈たちの前に現れたのは…犬だった。口は裂け、血が垂れ、身体に毛は無くて、色は黒ずんでいる。しかもそれが1匹や2匹なんて数ではない。どこから出てくるのか、至る所から先程のアンデッド軍団よりかはいないが、かなりの数…彼女たちの前に出てきたのだ。

 

「……走って………」

 

玲奈は小さく呟いた。

全員が息を飲んでいて、誰も動こうともしなかったため、玲奈は自分の声が聞こえなかったのかと思って、もう1度、今度は大きな声で叫んだ。

 

「走って‼」

 

その瞬間、大量の犬どもが玲奈たちに吠えて、一斉に襲い掛かってくる。玲奈は前方の1体に散弾をぶち込んでから、彼らと一緒に逃げ出した。犬どもは恐るべきスピードで迫ってくる。時折飛びかかってくる犬はそれぞれが避けるが、横から飛んできた犬に高田は捕まってしまった。

 

「うわっ‼うわああああああ‼」

 

高田は肉を食い千切られ、頭にかぶりつかれ、犬どもの餌と化していった。

早くここから離れなければ、玲奈たちも高田と同じ運命を辿ってしまうことになる。

 

「湖⁈……飛べぇ‼」

 

竜馬の声に全員が従った。

高さはかなりあり、水面にぶつかった衝撃で死ぬ可能性もあったが、犬どもに食われて死ぬよりかは断然よかった。一行は断崖から湖に飛び込んでいき、一部の犬も追って飛び込む。バシャァンと大きな水音が暗闇に響く。

玲奈たちはすぐに岸へと上がり、水の冷たさを味わった。

 

「…あいつら、水は苦手なようだな…」

 

確かにほとんどの犬は飛び込むことはなく、ぐるっと遠回りをしてこちらに向かって来ているようだ。

 

「!あれ!」

 

薺が指差す先にはトンネルのようなものがあった。

あれがハイブに繋がる秘密の通路なのか、玲奈たちは考えた。

ハイブに繋がる道だろうがなかろうが、犬どもは玲奈たちを食らうことを諦めていないため、襲われる前にそのトンネルに向かうことにした。

既に犬はこの近くにまで来ているのだが…玲奈たちがトンネルに入った途端に足を止めた。

 

「何だ?」

 

犬たちは恨めしそうに玲奈たちを睨んでいた。折角旨そうな肉がたくさんあるというのに、何かによってここに近付けないような雰囲気だった。

あの犬でさえ、恐怖で震えあがる奴が、この先にいるというのだろうか…。

 

「…ここが……ハイブ…」

 

玲奈はもう確信していた。

あの4年前とは明らかに違う雰囲気を醸し出していた。

一行が研究所の入り口に差し掛かろうとした時、突如入り口の防護壁が閉まり出した。

 

「⁈早くみんな中に!」

 

恐らく閉め出されたら、犬の餌となるのだろう。竜馬を先頭に急いで中に入っていき、残りは玲奈だけになったところで、アクシデントが発生する。玲奈の腕を何かが掴んだのだ。

 

「……!こんな時に…!」

 

掴んで来たのは、先程犬に食われていたはずの高田だった。犬に噛まれ、殺されたせいでアンデッドと化していたのだ。玲奈はアンデッド化した高田に首を噛みつかれそうになるが、どうにか防御する。

しかし、しぶとく玲奈からその腕を離さないため、中々閉まりゆく防護壁を通過できない。そこで玲奈は高田の足を蹴って骨を折り、そこから顔面に拳をぶち込んで怯ませた。もう防護壁が閉まり切るのもギリギリで、今からジャンプしても間に合いそうにない。

そこに竜馬が腕を伸ばして、玲奈を引き寄せた。

 

「竜馬…!」

「玲奈っ!」

 

玲奈も漸く防壁の内側に到達し、アンデッド化した高田は防壁に挟まり、肉が潰れる音がし始めた。遂には目玉も飛び出し、高田の身体も綺麗に潰されて防壁は完全に閉じた。

 

「ありがとう」

「どうも」

 

玲奈たちが礼を言い合っていると、目の前の台からレッドクイーンのホログラムが出てきた。

ジョッシュや紗枝は拳銃を即座に構えるが、玲奈は何も警戒しない。

 

「私たちに話があるんでしょ?レッドクイーン」

『……もう、分かっているようね…』

「『分かっている』って……どういうこと?玲奈!」

 

紗枝が聞くと、玲奈は息をすぅと吸ってから、全員を驚愕させる衝撃的な発言をするのだった。

 

「レッドクイーンは敵じゃない」

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