ダクトを進む玲奈たちの耳に、先ほどの地下通路の方から一発の銃声が轟いた。今の銃声がどういう意図で発射されたかは、誰にでも容易に想像出来た。恐らく…分かっていてもその答えを言う者は誰1人としていなかった。
竜也と玲奈は再び網戸を外して、別の通路に着く。
そこは玲奈たちが最初に通った道であった。
「列車はこっちだったな…。急ごう!」
竜也は促すが、玲奈はある部屋の前で足を止めた。
「玲奈?」
玲奈はこの部屋に見覚えがあった。玲奈の記憶は徐々に明るみになっていき、遂に全てを思い出した。
ー8時間前ー
玲奈と竜也の妹、千鶴は教会の前で会っていた。話の内容は…
「アンブレラから最高機密のウィルスを奪う。それが成功すれば、私たちは巨万の富を手に得られる」
千鶴は懐からハイブの見取り図と従業員用IDを差し出した。
「これで中に入れるわ。私がアンブレラのシステムに隙を作る。その間に地図に示された場所に行って」
「……分かった。でも、条件がある」
「条件?」
「分け前は半々で…」
「お安い御用よ」
そうして2人は別れたのだった。
ー現在ー
「ここよ…。ここにJ-ウィルスだけじゃなくて、抗ウィルスもあるはずよ!」
「抗…ウィルス?まさか、ウィルスを殺せるのか⁈」
竜也の問いを無視して玲奈は目の前の扉を勢いで開けた。そこは玲奈の腰辺りにまで水没していた。急いで中に入ろうとする玲奈を毅が止める。
「待て。中に何がいるのか分からない…」
毅は拳銃を辛うじて持っている葉子の手から拳銃を取り、奥の部屋まで一望する。一度見渡した限り、毅の目にはアンデッドも人もいなかった。
「よし、いいぞ」
「俺と葉子はここにいる」
竜也は言う。確かに今の葉子には誰かしらの保護が必要がだった。
葉子の表情に初めの頃の活発さは微塵も感じられない。顔からは血の気が失せ、いつの間にか目の下には隈が出来ている。J-ウィルスは着実に葉子の身体を蝕んでいるようだ。
玲奈はそんな葉子を助けたい気持ちで奥の部屋に入っていく。玲奈の記憶が正しいならば、格納庫の中にJ-ウィルスと、その進行を遅らせる抗ウィルスがあるはず…だった。だが格納庫の扉は開きっぱなしで、中は空だった。
「なんで……なんで無いのよ‼どうしてっ‼」
玲奈は格納庫をガンガン叩いて悔しさを滲み出した。でも無いということは、誰かが盗んでいったということだ。
しかし、それが分かったところで盗んだ犯人を見つけるなど出来っこないことは玲奈が一番よく分かっていた。玲奈は手を降ろして、ガックリと項垂れる。
だがその時、この部屋を眺めた毅の中でも、フラッシュバックが起きていた。
ー8時間前ー
毅は玲奈と千鶴が何かこそこそ話しているのに気づいて、集音機を使って彼女らの会話を盗聴した。その内容は毅にとってかなり有益なものだった。毅は元々アンブレラのIDを持っているし、今の話でウィルスの在処も分かった。
毅は準備に入った。その前段階として、毅は玲奈の飲み物の中に睡眠薬を入れ、昏睡させた。そして、メモを書き残し、例の電車で研究施設に向かった。あの部屋でJ-ウィルス、抗ウィルスをケースに詰め、誰が奪ったのか分からなくさせるためにウィルスを漏洩させ、混乱させるつもりだったのだが、ウィルスの中身が何なのか知らなかった毅には想定外の事態が起きてしまったのだ。急いで列車に飛び乗った毅だったが、ガスを僅かに少し知ってしまったために、ついさっきまで記憶を失っていたのだ。
ー現在ー
毅の様子がおかしいことに玲奈は気付いた。ある一点を見詰めたままその視線を外すことがない。その一点とは、毅自身が机に置いた拳銃だった。玲奈は咄嗟に身体を動かし、毅より先に拳銃を取ろうと飛んだが、毅に先に奪われてしまう。
「お前…!」
「悪いな…。今までエスコートありがとよ。全く…俺は神に召されているのかもな…」
玲奈は拳銃を自分たちに向けている毅をただ睨んでいた。
そんな毅は玲奈に話しかける。
「なぁ、玲奈…。俺と一緒に来ないか?お前は俺の妻だ。俺に従うの普通だし、何より莫大な金を受け取る権利もある」
毅は玲奈を連れて一生バカンスを楽しむつもりだと玲奈は分かった。しかし、気の強い玲奈がそんなことを承諾するはずもなく、毅を突き放す。
「馬鹿言わないで。私はあんたみたいなクズ野郎と一緒に行くつもりなんて毛頭ないわ!」
そう告げて玲奈は毅に唾をかけてやった。
毅は少し不機嫌な表情となり、はぁと溜め息を吐いた。
「残念だよ…玲奈…」
「………あんたがね…」
玲奈は臆することなく、小さく笑った。毅は拳銃を玲奈に向け、その引き金を引こうとした時だった。
「…っ⁈」
毅の肩に突然痛みが貫いたのだ。驚いて振り向くと、さっきまでいなかったはずのアンデッドが肩に歯を食い込ませていたのだ。そのアンデッドは水中に沈んでいたようだ。
「ぐあっ!」
無理矢理アンデッドを引き剥がし、頭を撃ち抜く毅。その隙に竜也は毅に掴みかかるが、腹を蹴られてしまい、拳銃を奪えなかった。
「くそっ!…まあいい…。俺には
毅は頑丈な扉を閉めて、玲奈たちが出れないようにした。竜也がどうにか開けようとするが徒労に終わる。
「くそ!あんな野郎だけが生き残るなんて…!」
竜也が悔しそうに唇を噛むと、唐突にモニターにレッドクイーンが写った。
「お前は…!」
『さっきあなたが言ったこと…それは間違いよ』
「何…?」
『逆に神に見捨てられたのかもね』
「どういうこと?」
玲奈が聞く。
『見れば分かるわ』
レッドクイーンは画面を切り替えて、列車が写る防犯カメラの映像を玲奈たちに見せる。そこには毅が列車に向かっている様子が写されていた。
毅はさっき噛まれた肩に手を置いた。そこから血が溢れ、出血が止まらない。列車に早歩きで向かい、ウィルスが入ったケースに手を伸ばした。ケースを開き、緑色の液体が入った方…抗ウィルスが入った試験管を取り、特殊な注射器にはめ込む。二の腕をハンカチで縛り、血管を一時的に止め、注入しようとした時…音がした。
時間が経つ度に音はどんどん近付いてくる。まるで壁を崩しながら近付いてきているような大きな音。その音の出所が分かり、上…天井を振り向くと、
「う、嘘だろ…?そんな……そんな……」
震える口で現実を受け止められない様子の毅に奴は毅の方に飛び出し、鋭利な鉤爪で毅の身体を切り裂き、血飛沫を上げ、辺り一面を血の海に染め上げたのだった。
書いてて思いました。今回の文章がかなり下手だと…