「敵じゃない…?玲奈、あんた惑わされているんじゃないのよね?」
「惑わされてなんかいない。本当のことよ」
他のメンバーはまるで信じられていないようだった。
今まで何度となくレッドクイーンのせいで、様々な危険な目にあったというのにだ。
「クイーン、いい加減全て教えて」
『……分かったわ。全ての始まりは要三氏と一緒に開発を行っていた森田氏という人物がきっかけよ』
森田……。玲奈も聞いたことがない名前だった。
『森田氏の娘は要三氏の律代と同じ病に侵されていた…。その娘を助けるのに作り出したウィルスが
玲奈でもそこから先の展開は予想できた。
「彼らの交渉は決別し…2人は森田氏を殺して、ウィルスを自分たちのものにして莫大な金を得ようとしたけど、
『違うわ』
クイーンは玲奈の予想を即座に否定し、話を続ける。
『そもそも、淳もジョンも毅が裏切って、事故に見せかけてウィルスを漏洩させようとしていたのも知っていた。けど、2人はそれを
「つまり……まさか…」
玲奈は最悪な仮説が思い浮かんでしまい、その仮設をクイーンが言った。
『そう…あの事故は仕組まれたも同じこと。世界が滅ぶことを…2人は
「どうして…」
『彼らは元々世界を滅ぼす方法を模索していた。アダムとイブの話と同じよ。世界を滅ぼして、次に抗ウィルスで全てのアンデッドを殺し、新たな新天地を手に入れるつもりなのよ』
「じゃあ…どうしてそれを早く俺たちに言わなかったんだ?」
竜馬は我慢出来ずに質問する。クイーンは竜馬の質問に淡々と答える。
『私は長らくの間、淳によって操られていた。勝手に訳が分からない情報が入ってきて、私の回路をオーバーロードさせて暴走を起こした。でも、それでも私の目を誤魔化すことは出来なかったようね』
「え?」
『私のこのホログラム、全て森田氏の亡くなった娘をモチーフに作られている。私を作ったのも森田氏…。彼はこうなることを予見していた。彼らにバレないように、機械の私に奴らの作戦を伝えてくれた』
「作戦?作戦って何よ…」
『世界を滅ぼす作戦よ。まあさっき伝えたものが全部だけどね』
世界を滅ぼす…。彼らは本気でそんなバカげたことを考えていたのかと、玲奈たちは阿鼻叫喚した。彼らは自らが生きるためだけに物事を動かしていこうとしている感じにしか見えなかった。
『これが私の知っている真実よ…。後は……あなたたちに託すわ。機械の私には何も出来ないからね…』
「分かった。任せなさい」
玲奈がそう言うと、クイーンは最後に玲奈の視線を真っ直ぐ見て、言葉を出した。
『私や森田氏の代わりに…復讐をお願い』
「…約束するわ」
レッドクイーンのホログラムが揺れて、消え始める。
消える直前のクイーンの表情が、どこか優しげな感じだったのは…玲奈の気のせいだったかもしれない。
クイーンの話に全員が圧倒されてしまっていた。
この世界が、アンブレラによって作られたものだと知ってしまったからだろう。
「…玲奈、知ってたのか?」
「なんとなく…ね。確信はなかった」
「でも、これで気にすることなく、あいつらを殺せるな…」
ジョッシュは笑いながら言った。玲奈も笑い返しながら言う。
「そうね。とにかく先に進みましょう」
一行は暗いトンネル内を進んでいく。
玲奈はまたタイマーを確認してしまう。時間が経つに連れて、見る頻度も上がっている気がする。残り三時間半…。
トンネルは深く同じ光景がずっと続いていた。だが、その途中で大きなファンが目の前に立ち塞がった。ファンには錆が付いていて、動きそうもなさそうだったが、念のために慎重に進んでいく。中はやっと人が1人が通れる程のものだったが、ここで…この錆び付いたファンが回り出したのだ。
玲奈が周りを見回すと、防犯カメラが玲奈たちを捉えていた。中にはまだ光子が残っていて、2つのファンに挟まれて動けずにいた。
「光子!私がタイミングを合わせてあげるからジャンプして!」
「む、無理よ……」
「大丈夫!行ける!」
玲奈は定期的に回るファンの動きを予測してから、光子がバラバラにならないようにタイミングを見計らった。
「今よ‼飛んで‼」
「キャアア!」
光子は玲奈のタイミングにきちんと合わせたお陰でミンチにされることなく、ファンから逃れることが出来た。腹を立てた光子は防犯カメラに向けて、中指を立てた。
それを見ていたジョンも腹を立て、クイーンに更なる命令を出す。
「ファンを逆回転させろ」
ジョンに操られるがままのクイーンは言われた通りに実行する。
玲奈たちの前のファンは一旦止まったかと思えば、ゆっくりと逆回転を開始する。
「まずい…。みんな!何かに掴まって‼吸い込まれてしまうわ‼」
前方にいるメンバーは既に掴まっていたが、玲奈と竜馬、光子は近くに掴むものがなく、前にゆっくりと歩いていき、漸く掴んだ時にはファンの吸引力は最大出力になっていた。
「玲奈‼」
竜馬は玲奈が吸い込まれそうになったところでその腕を掴んだ。
しかし、片手でこの吸引を耐えるのはかなり厳しかった。しかも玲奈も光子のリュックを掴み、光子もそのリュックを掴んでいて、竜馬は実質2人を片手で支えていることになる。
だが、状況は悪くなるばかりである。光子が掴んでいるリュックの肩掛けの一部が敗れる。このまま肩掛けが完全に破れれば、光子はファンの中に吸い込まれていくだろう。
「頑張れ‼」
「うあああああ‼」
玲奈は声を限界まで上げて、吸引力に耐えていた。引っ張られる両腕の力は既に限界を超えていた。絶対に死なせないと気持ちが前面に出ていた玲奈だったが、先に落ちたのは……光子だった。腕の力が無くなり、リュックから手を放してしまったのだ。
「ダメェ‼」
「イヤアアアアアアアアアァ‼‼」
光子はファンの中に消えて行った。
いや…厳密に言えば、ファンによって身体がミリ単位で粉々にされたと言った方が正しいだろう。ファンからは肉を切り刻む音が一瞬だけ聞こえた。
光子の身体をバラバラにし終えたところで…ファンはゆっくりと停止していくのだった。
ジョンは思わず舌打ちしてしまう。
これで玲奈たちを全員始末しようと考えていたのだが、殺せたのは光子ただ1人だけだった。このままではいずれ奴らの中の誰か…最有力候補は玲奈だが、ここに到達してしまう。スパイを送り込んでいるとはいえ、安心しきれない。
玲奈のことだから、既にスパイの存在に気付いていて、誰かも分かっているかもしれない。
「……“あの方”を出すしかないか……」
本当の緊急時にしか出すことは禁じられている。
だが、今は仕方ない。ジョンは棺の中で眠っている“あの方”を目覚めさせるのだった。