バイオハザード リターンズ   作:GZL

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第91話 分断

光子がミンチにされてしまう光景を見てしまった一行はこれから先に進み気力を失ってしまった。奴らは至る所で玲奈たちの動きを監視して、いつでも殺しにいくタイミングを窺っている。そんな感じがしてならなかった。

 

「玲奈、こっちからなら行けるぞ」

 

ジョッシュがハッチを開けて、中を見て軽く偵察した。

そこも灯りは全く付いておらず、人が通った形跡を見られなかった。アンデッドもいなさそうだ。まあ、ここを通るしかないのだが…。

 

「行くしかない…」

 

玲奈を先頭に狭い通路に入っていく。

電源が落ちているのか、元々付いていないのか知らないが、電気は付いていない。ゆっくりと這って進んでいくが、ガタガタと金属板の上を進む音が通路全体に共鳴してしまう。これが迷路なのではないかという不安が…玲奈たちの中で募っていくのだった。

暫くして、突然周りの電気が前方から順々に付きだした。通路全体が銀色に近い色に染まり、目に眩しく照らされるが、その光はかなり前で這いつくばって玲奈たちに向かってくるアンデッドの姿も映し出した。どこから入って来たのか分からないが、とにかく殺さなければ先には進めない。

玲奈はなるべく拳銃を使いたくなかったため、どうしようかと考えていた矢先、そのアンデッドは玲奈の視界から消えた。床が抜けて、アンデッドが落下してからまた抜けた床は元通りになっていく。

 

「………」

 

そこは通ってはいけないようだ。しかし、後ろに下がろうと思った時には、後方の通路は壁で塞がれてしまっていた。

元には戻らせないという、奴らの計略だ。

仕方なく、玲奈が前に腕を置いた時、突然玲奈の上の金属板がせり上がり、新たに出てきた通路に滑り落ちてしまった。それは紗枝、薺、竜馬も間もなく、同じ目に逢うのだった。

 

「いてっ!」

 

紗枝が先に落ちると、その上に薺がドスッと派手に落ちてきた。

 

「うっ⁈」

「ごめん!」

 

頭を打って、更には腹にも一瞬であるが、急激な圧力がかかった紗枝は頭をぶんぶん振って、自分たちがどこに捕らえられてしまったのか、よく分かった。

 

「…最悪ね……」

「…同感…」

 

2人は巨大なガラスケースの中に入っていたのだ。しかも内側も外側も至る所に固まった血が大量にこびり付いていた。更には外には何かの肉片がゴミのように打ち捨てられてしていて、とてつもない匂いが2人の鼻を突いた。このガラスも恐らく防弾性であることくらい、用意に想像がついた。拳銃で破壊することは出来ない。

2人はお互いに目を合わせて、どうしようかと口に出したかったが、そんなのを聞いても簡単に案が思いつくはずがないだろうと思い、口をつぐんでしまうのだった。

 

 

 

 

玲奈はというと、そのまま滑り落ちて、酷く暗い場所に着いてしまった。そこは手術台のようなものに人間の死体が置かれていたり、鎖で吊り下げられた上半身だけのアンデッドなどがたくさんいた。

…嫌な感じ以外何も感じられなかった。

すると、玲奈の上に重い誰かが落ちてきた。

 

「きゃ…!」

 

落ちてきたのは竜馬だった。

彼の下敷きにされた玲奈は苦しそうに竜馬に早く退くように背中をバンバン叩いた。

 

「重いわよ!」

「わ、悪い…。って、玲奈か?」

 

竜馬は玲奈の腕を掴んで立たせて、頭をポリポリ掻いて謝罪する。

 

「ここは何なんだよ…。えらく不気味だけど」

「処刑場みたいなところよ…。アンブレラが大好きな…」

 

玲奈の言う通りで、奥には腐り始めたばかりの死体がわんさかと置かれていた。服装からしてアンブレラの社員か兵士であることには間違いないのだが…その死体には頭がなく、身体もほぼ胴体だけになっていて、足も腕も完全に欠損していた。普通のアンデッドが食ったようには見えない。

何かがこの暗闇に紛れて、玲奈たちを狙っているのは明らかだった。

 

「早く出る方が懸命かな…」

「そのようね……」

 

2人はライトを付け、出口を探すことにした。

しかし…出口などあるのだろうかと思ってしまう。今、アンブレラは玲奈たちをハイブの中心部に近付けさせまいと躍起になっている。ここにいる何かを殺さない限り、出られない……そんな嫌なことしか考えられない自分がいることに、玲奈は分かっていた。

 

 

 

 

ジョッシュと桐生は立て続けに四人も目の前から消え、どこかに移動されてしまったために、不用意に身動きが出来なかった。

しかし、それもそれで間違いだった。ジョッシュの横にあった緑色のランプが赤色に変わった途端に、ジョッシュのいる真下の床が抜けた。

 

「ジョッシュ!」

 

ジョッシュは間一髪で開いた床の縁を掴んだ。彼の下は真っ暗で何も見えないが、とんでもなく高いところにぶら下がっているんだなと、容易に想像がついた。

 

「大丈夫だ!先に行っててくれ‼」

「でも……」

「いいから行け‼」

 

少し時間が経ってから、桐生が先へと進んでいく音が聞こえだした。どうやらジョッシュの言う通りに動いてくれたようだが…。ジョッシュも早くこの状態から脱したいのだが、さっき抜けた床はゆっくりとだが徐々に元に戻り出していた。このままではジョッシュが掴んでいる縁も掴めなくなり、掴んだままでいたら、指が切断されて真っ逆さまになる。そのため、ジョッシュは縁から指を離して、網目になっている部分を掴んで、完全なぶら下がり上体になってしまった。

そして、床は元通りに閉じてしまう。

 

「……ついてねえな…」

 

ジョッシュはそう呟くと、そのまま片手を網目に掴んだまま、出来るだけ足が届くくらいまで頭を下にして、網戸を何度も蹴った。

意味は無いかもしれない。

もしかしたらいくら蹴っても網戸を破れず、そのまま下に落下して死ぬかもしれない。

そうだと分かっていても…ジョッシュは生きなくてはならなかった。

その理由は紗枝だ。紗枝を1人にして死んだら……紗枝はまた悲しみに撃ちのめされて、今度こそダメになると思っていた。それに…ジョッシュはいつかの時に約束したことを、破る訳にはいかなかった。

 

「俺が……あいつの代わりになったんだ…。死ぬには……いかないんだ!」

 

ジョッシュは紗枝を裏切らないためにも、網戸に蹴りを食らわせ続けるのだった。

 

 

 

 

「それで?俺を起こした理由は何なんだ?」

 

久しぶりの目覚めに淳は清々しい気分だった。何年も眠っていたお陰で、アンブレラでずっと徹夜で働いていた時のストレスは完全に抜けて、スッキリしていた。

のだが…そんな淳の目の前にジョンは申し訳なさそうな表情をして突っ立ていた。

 

「現在、ハイブ中心部に玲奈とその仲間が侵入してしまい、こちらに向かって来ています」

 

淳は紺色のスーツを身に纏い、椅子に座った。そして、机に置いてある小さな箱を開けた。中にはアンブレラが開発した高性能コンタクトレンズを装着した。

 

「ブラットショットはまだだろう?」

「玲奈は現在、その部屋にいます」

「……大丈夫。たとえ、ブラッドショットがやられたとしても……」

 

淳はジョンに不敵な笑みを浮かべて言った。

 

「俺には勝てない」

 

更に続ける。

 

「玲奈たちが出来るのはこの施設の中で死を待つだけだ。……だろ?玲奈…」

 

淳は玲奈が目の前にいるかのように言うのだった。

 

 

 

 

だが…その頃、ジョンは本物の淳を目覚めさせたと同時に、別の人物も棺の中から解放させていた。

中には女性がいた。彼女は棺の中から出ると、机に置かれた衣類を取り、不気味に笑った。

 

「やっと目覚められたわねえ……」

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