バイオハザード リターンズ   作:GZL

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ここで、実験の章に出てきた“美奈”という名前が重要になります。


第93話 2人の玲奈

玲奈は、今歩いているこの通路を見て、懐かしく思っていた。

今思えば、ここが悪夢の始まりだったのかもしれない。

レーザーにより焼き切られていった仲間の姿がフラッシュバックのように脳内を駆け巡った。そして、そのレーザーを制御する部屋に到着するると、そこには黒い鞄が置かれていた。中には手榴弾が2つにC4、マシンガンが3丁入っていた。

玲奈は手榴弾を持ち、マシンガンを竜馬と桐生に渡して、パソコンのとあるキーを押した。

すると、玲奈たちが立っている場所だけがエレベーターのように更に下へと降りていき、広大な広場に出る。そこには棺のような箱が何千何万とズラリと並んでいた。

 

「何だ、これ?」

()()よ…。多くの命を犠牲にして、ここで生き延びていたのよ」

 

この棺の中にはアンブレラ社員が冷凍冬眠を4年近くもの間していたのだ。あの散布型抗ウィルスを世界に撒き散らして、アンデッドが消えたら、この世界に舞い戻って自分たちの理想郷を築く気なのだ。

そんなことを玲奈は許すはずがない。

一番下に降り切る前に一旦エレベーターを止めて、C4爆弾を設置する。この広さでも、この爆弾を1つ爆発させれば、ここで眠っている奴らを全員殺すことが出来る。

 

「行くわよ」

 

再びエレベーターは降りていき、とある部屋で勝手に停止した。

ずっと奥の机に…“あいつ”が座っているのが見えた。

“彼”を見た玲奈は至って冷静そのものだったが、竜馬に関しては驚愕の表情を浮かべていた。

 

「お帰り、玲奈」

「お前……!死んだはずじゃ…!」

「あれはクローンだ。そして、装甲車に乗っていたのもクローン。私が……オリジナルだ」

 

淳の言う通りだった。玲奈が切断したはずの右手首が残っていたからだ。

しかし、玲奈は彼がクローンだろうとなかろうと気にすることなく、マシンガンの銃口を向けて、引き金に指を掛けた。

 

「おっと、これが分かるよな?」

 

淳は懐から緑色の液体が入った試験管を取り出した。

玲奈はそれが何なのか…分からないはずがなかった。それはこの世界を救う唯一の方法である空気感染型抗ウィルスだった。

 

「因みにこれ1本しかない。これを暖炉に入れてしまえば全てオジャンだ。そうさせないためにも、君たちはその危ないものを降ろすしかない」

 

玲奈と竜馬は降ろしたくなかったが、それではここまで来た苦労が全て水の泡になってしまう。すぐに2人はマシンガンを捨てた。が、桐生だけは一向に降ろさなかった。

竜馬が不審に見ていると、玲奈が口を開いた。

 

「そろそろ本性を現したら?」

「……どうして俺だと気付いた?」

「お前……!」

 

そう…桐生こそがアンブレラのスパイだったのだ。

玲奈は桐生の問いに淡々と答えた。

 

「簡単よ。生き残っているからよ」

 

桐生は思わず苦笑してしまう。そんな理由で見抜かれていたなんて思いもしなかったからだ。

 

「淳社長、C4は後に回収しておきます」

「ご苦労、よくやってくれた」

 

淳と桐生の会話が終わったところで玲奈は淳に向けて口を開いた。

 

「私をどうする気?」

 

どうするかなんて…聞かなくても分かっている。

殺すかペットとして飼い慣らすかだ。だが、淳が口に出した発言はそのどっちでもなかった。

 

「漸く……帰ってきてくれたね」

「……さっきから何を言ってるの?私はあんたらのものじゃない」

「まさか……自分が何者か分かっているのか?」

「それは……」

 

はっきり言って、分からないのが玲奈の心情だった。

どういう経緯(いきさつ)で生まれてきたのも…幼少時代の記憶もない。自分が誰なのか…はっきりとは分かっていないのだ。

 

「誰だとしても、人間よ」

「人間?馬鹿げたこと言わないでよ、作り物が…」

 

不意に隣の扉が開いて、女性の声が聞こえてきた。

そこから出てきた人物を見て…玲奈も竜馬も目を丸くした。

それは間違いなく…玲奈だった。いや、瓜二つだったのだ。だが、玲奈と違うところもある。髪は綺麗な白色、瞳の色は青ではなく、赤い色であった。

 

「久しぶり、姉さん?」

「姉さん?」

「知らないのも無理はない。彼女の名前は“美奈”。南極で聞いたことあるだろう?」

 

“美奈”。

あの実験場で何度となく、佑奈に呼ばれた名だ。どうしてそう呼んでいるのか気にしていなかったのだが…。

 

「美奈は君の妹だ」

「まあ…作り物に妹なんて言われたくないけどね」

「作り物って……玲奈はちゃんとした人間だ!」

 

作り物と言われ続ける玲奈を庇おうと、竜馬は2人に叫んだ。

すると、美奈は冷めた目を竜馬に向けた。

 

「何言ってるの?玲奈は作られた人間なのよ?」

()()()()…?」

「その通りだ。彼女は……我々が作り出した人間だ」

 

玲奈の表情に焦りが出てきた。冷汗が勝手に噴き出し、心臓の鼓動が急激に速くなっていく。

玲奈は頭を横に振って否定する。

 

「嘘よ…。そんなの…」

 

美奈はクスクスと笑って、玲奈に近付き、話を続ける。

 

「嘘じゃないわ。じゃあ何であなたには子供の時の記憶がないの?何でウィルスに適応したの?」

「それは……」

「いい?あなたの本当の名前は…森田玲奈。病で死んだ人間よ」

 

森田……。その名字はレッドクイーンに聞いたばかりだ。ということは……。

 

「私のお父さんはね…双子の内、あなただけ不治の病になったから、J-ウィルスを開発して助けようとした。でも…結局は失敗したの。それで死んだ。でもお父さんは諦めなくて、ウィルスに適応できる身体を作り出すと同時に…死んだあなたの細胞を使って、クローンを作り出した。それがあなたよ、作り物」

「嘘よ……嘘よ!嘘よ‼」

 

そうじゃないと玲奈は何度も叫んだ。しかし、2人は嘲笑(あざわら)う。

 

「信じなくてもいい。事実に変わりはない。それに君が誰だろうと…もう何も出来まい」

 

横の扉が再び開き、そこから頭に手を置いている紗枝と薺の姿が映った。後ろには拳銃を突き付けたジョンが立っていた。

 

「俺が君たちに言いたいことはたった1つだ。諦めな、お前たちは負けたんだ」

「……っ」

「俺たちは君たちを殺し、新しい世界を手に入れるんだ」

「…そうよ、“()が手に入れるのよ…」

 

そう呟いた美奈は腰から拳銃を抜き、淳の腹を撃ち抜いた。

ブシャッと血飛沫が飛び、机と美奈の身体を汚した。その光景をその場にいる全員が驚いている。

 

「ふーん…。あのレンズを付けていたみたいだけど…流石に背後からじゃ対処出来なかった?」

「な……ごほっ…何…を……」

「新たな世界を手に入れる?笑わせないでよ。あんたたちが新しい世界を作っても、いずれまた汚れて(すさ)んでいくだけ…。それなら、ずっと荒んだままの方がよっぽど良いわ」

「ふ……ざ…け……」

「さよなら。お父さんを殺した淳さん♪」

 

美奈はもう1度引き金を引き、淳の頭を撃ち抜いた。再び血が飛び、今度は美奈の真っ白な髪にかかった。

 

「さて……じゃあこれは要らないね」

 

美奈は死んだ淳の懐から、例の抗ウィルスを取り出し、暖炉の中に捨てた。

 

「あんた……」

「何?いいじゃない。どうせ人類は同じことを繰り返すことだけ…。それなら、アンデッドがいる世界のままがいい。あ、それと他の地下研究施設ではクローンを使って、大量のアンデッドを作らせておいたから。奴らが解放されるまで、残り1時間」

 

美奈はとんでもないことを言っている。

ただでさえ、半端ではない量のアンデッドが(ひし)めいているのに、更に増やしていこうと考えているのだ。

 

「さあて…作り物とそのお仲間さんはどうしようかなぁ?…!」

 

突然、美奈は玲奈たちの後ろを見て、驚いた表情を一瞬作った。玲奈も目だけ後ろに向けたが、そこには車椅子に乗った老婆がやって来た。

 

「何しに来たの?ババア」

「…お母さんにそんな言い方するのね」

「何でもいいのよ。邪魔はしないでよ。私が全員殺すんだから」

「……そう…。でも、それは出来ないわね」

「……は?」

「忘れてない?私はアンブレラの社長なんだよ?」

 

そう言った瞬間、ジョンが立っていた真上の扉が急に降りて来た。

すぐに逃げるにも、それに気付くのに一瞬遅れたため、右足首を荒く切断されてしまった。

 

「グアアアアアァァ‼」

 

そこに目が行ってしまった桐生に玲奈は即座に近付こうとする。桐生は構うことなく引き金を引くが、カチッと弾切れの音が響いた。玲奈は元から桐生がスパイだと気付いていたため、さっきマシンガンを渡すときに弾を抜いておいたのだ。

玲奈は桐生の右腕をへし折り、顔面に肘をぶつけた。

 

「ぐふっ‼」

 

それから玲奈は机の方を向いたが、美奈の姿はなかった。どうやら逃げたようだ。

玲奈は床に落としたマシンガンを掴んだ。

 

「玲奈、早くあの女を追わないと…」

「待って。こいつをどうするか決めないと…」

 

玲奈は右腕を抑えた気流に詰め寄る。彼のせいで何人も仲間を殺されたことか…。

 

「私に任せて…」

 

名乗り出たのは紗枝だった。

 

「……分かった」

 

玲奈と竜馬、薺は見届けることにする。

紗枝は桐生の胸ぐらを掴んで、壁に叩きつけて質問する。

 

「ジョッシュは……彼はどうしたの⁈」

 

紗枝は完全に声を震わせていた。紗枝とジョッシュの関係を知っていた桐生は、死ぬ前くらい紗枝の心を傷つけてやろうと思い、真実を言う。

 

「死んだよ…。奈落の底に落ちてな…」

 

紗枝の表情が一気に怒りに染まっていく。ナイフを持った手は激しく震え、目尻には涙が溜まっていく。

 

「あんたが……ジョッシュを……!」

 

紗枝が殺そうと思って、ナイフを振り上げた時…。

 

「おいおい…。勝手に死んだことにしないでくれよな…」

 

だらけた声が、エレベーターの方から聞こえてきた。

そこには汚れきったジョッシュの姿があった。桐生は驚きのあまり目を見開いた。

 

「何で…生きてんだ⁈」

「生憎様…しぶといんでね…」

 

紗枝は桐生の胸ぐらから手を放し、ジョッシュに抱きつく。ジョッシュも抱き締め返し、紗枝が持っているナイフを奪い取った。

そして、桐生の腹部に深々と突き刺した。

 

「ぐはっ…!」

「苦しんで死にやがれ…このゲス野郎……」

 

ジョッシュは更に奥へとナイフを刺し、抉る。

桐生は吐血し、ナイフによる苦しみを最大限与えられ、死していくのだった。

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