バイオハザード リターンズ   作:GZL

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彼らの前に再び現れる、悪夢の化身…


第2話 蘇る悪夢

空港の前で抗議デモが行われていると知り、衆議院議員の斎藤氏は苛つきを爆発させていた。

 

「どうしてワシがここにいることがバレているんだ⁈ちゃんと仕事してんのか!ああぁ⁈」

 

傲慢な態度に周りにいる全ての人間が飽き飽きとしてしまう。しかし、彼に逆らっても無駄だと知っている彼らはどうにか斎藤の怒りを(なだ)めようとする。

 

「落ち着いてください、議員。彼らがいるのは正面出口だけで我々は裏のVIP専用出口を使えば……」

「何を言ってるんだ⁈」

 

宥めようとしたのだが、斎藤の苛つきは更に増していく。

 

「私は国民から選ばれた議員だ!なのに何故コソコソ隠れる必要があるんだ⁈おい!あの外にいるクズどもを退かせ‼︎そうしたらここから動いてやる。抵抗するなら逮捕しちまえ!」

「しかし…彼らは抗議デモを()()()()だけであって、逮捕することはどうも…」

 

空港警察の署長はそう言って言葉を濁す。

 

「だから何だ!奴らはワシを狙っているんだ!危険なことに変わりはない!いいか⁈ワシはあの外にいるゴミどもを掃除してくれるまで、ここから一歩も動かないからな‼︎」

 

と、言っていた斎藤だったが、いつまでも部屋に閉じ籠っていられるはずもなく、やむなく帽子を深めに被ってロビーを歩いていた。

周りに2人のSPに秘書が付いていてバレバレ感もあるが、これでどうにか出来ると斎藤は思っていたのだ。

すると、1人の子供が議員の方を見て、「あっ!」と声を漏らし…。

 

「あのテレビに写っている人だ!」

 

と叫んでしまい、周りの人が帽子を被った斎藤に注目してしまった。中には取材のためのキャスターもいて、斎藤は完全に変装を見破られてしまったのだ。

 

「議員だわ!間違いない!斎藤議員!」

 

斎藤は面倒臭そうな表情を作り、被っていた帽子を秘書に渡した。

キャスターが議員に近付こうとした時、急に周りの空気がザワザワとし始めた。

その理由は、ロビーのやや真ん中をふらついて歩く男が原因だった。彼の顔は青く血の気がなく、口からは小さな呻き声が聞こえてくる。誰しも…不気味に思った。それにその怪しげな男はゆっくりと議員の方に向かっていた。

SPが前に立ち、議員の盾になる。あと数mも行けば議員のところに着くところで…薺が動いた。薺は青白い肌を持った男の髪を鷲掴みにして、一気に引っ張った。ズルッと取れたのは、マスクだった。そう…この男はマスクをして、アンデッドになったふりをしていたのだ。

しかもその男は薺と同じテラセイブのメンバーだったのだ。

男は冗談と言いたげに笑うが、目の前に立っていた空港警察署長の眼力に負けて、逃げようとしたが腕を掴まれて手錠までかけられてしまう。

 

「あんた、こいつと知り合いかね?」

「…一応ね」

「それならあんたも来てもらおう。事情を聞くからな」

 

薺は律代の方を向いて、やってられないと表情を作った。

だが…周囲はザワザワしたままだった。署長は手錠した男を部下に引き渡すと、騒がしいところに視線を定めた。

そこにはさっきと同じような行動を取る男がいた。

署長は「またか」と呟きながら男の髪の毛を容赦なく掴んだ。またマスクなどの作り物だろと思ったのだ。

だが、触れて分かった。

この感触は……本物の人間だということに…。

驚いて男の顔を見ると…口からは僅かだが、血が垂れていた。そして、頭を掴んできた署長に白い眼を向け…喉元に噛み付くのだった。

 

「ぎゃあああ⁈」

「いやああああああああ‼︎」

 

署長の悲鳴と女性の悲鳴が同時にロビー内に木霊した。

斎藤も今起きている状況についていけていない様子だった。

その様子を見ている周りの客も恐怖に戦き、我先へと逃げ出す。

明らかに異常な行動だった。人が人を喰らう…。常人では考えられない行動だが、薺はこの光景をほんの1年前に見ていた。

あの東京で起きた地獄の光景と、何ら変わりなかった。

客が逃げている中、斎藤のSPは果敢にも噛まれている署長たちの方に駆け寄り、警告する。

 

「おい!署長から離れろ‼︎早く離れるんだ‼︎抵抗すると撃つぞ!」

 

しかしいくらSPが叫んでも男は署長を離そうとすることはない。

業を煮やしたSPは男の肩を掴んで、無理矢理引き剥がして地面に倒させる。が、男は今度はSPに襲いかかろうと上体を起こしてきた。SPは咄嗟に構えていた拳銃で、男の身体に2つの風穴を開けた。

銃声のせいか、更に悲鳴が大きくなった。

SPは傍に倒れたままピクリとも動かない署長の首に手を当てた。

 

「……ダメだ、死んでる…ん?」

 

SPは斎藤の近くで守っているもう1人のSPが先程撃ち殺した男の方に指を指していた。

そっちを見ると、そこでは身体から血をドバドバと流しているにも関わらず、僅かに動く男の姿があった。SPがもう一度拳銃を向けた時、薺が声を上げた。

 

「離れて‼︎」

 

SPは薺の方に顔を向けたが、離れようとしない。

 

「そこから離れて‼早くしないと……!」

 

SPが死んだ署長を見た時、彼の目が唐突に開き、SPの足に噛み付いた。SPは痛みのあまり悲鳴を上げるが、拳銃で背中に銃弾を撃ち込む。しかし…さっき撃った男もSPに襲いかかり、SPの首に噛みつき、頸動脈を裂いて殺した。

もう1人のSPも助けに入ろうとしたが、どこからともなく現れてくるアンデッドの集団に襲われ、なす術なく地面に伏せられてしまった。

SP2人がやられてからはもう滅茶苦茶だった。

アンデッドの数は増えるばかりで、客は混乱したように逃げ惑う。

薺もすぐにここから離れたかったのだが、玲奈が連れてきた律代の姿がなかったのだ。逃げ惑う客たちのせいで小さい背の律代を見つけるのは至難だし、呼んでも悲鳴で声を掻き消されてしまった。

 

「律代‼︎律代‼︎」

 

薺はそれでも何度も呼ぶが、返事もないし見当たらない。人々を押し退けて探していると、搭乗口近くでどうしようか彷徨いているのが薺の目に入った。

急いで駆け寄ろうと思った時、1人の男性と肩がぶつかり、地面に倒れてしまう。薺と男性の顔が合う。

その顔を見た時、薺には見覚えのある男であり、思わず言葉を出してしまった。

 

「あなたは……!」

 

男性は薺を助ける気もなく、無表情のまま人混みの中に消えていった。薺は一瞬追おうと思ったが、律代を放って行くことは出来なかったため、仕方なく律代の傍に走った。

 

「薺お姉さん!」

「律代!大丈夫⁈」

「うん、大丈夫だけど…どうなってるの?まさかこれって……」

「…とにかく、今はここから逃げるわ……」

 

薺が律代を連れて出口に向かおうと思った時、重く響く轟音が2人の耳に聞こえてきた。その音の出所がどこか周りを見回していると…1階の大きな窓ガラスに写った光景に薺は絶句した。

 

「嘘……」

 

薺はそう呟き、身体が固まってしまうのだった。

 

 

 

 

玲奈は突然来た電話の人に面倒臭そうにも出ると、掛けてきたのは薺の兄の海翔だった。

 

「どうしたの?」

『やあ、元気かい玲奈?』

「…そんなことを聞きたくて電話してきたなら、もう切るわよ?」

『違う違う!いや…あのな…薺、元気だったか?』

「ああ、薺?ちょっと焼けてたくらいよ。全然普通だったわよ」

『なら良かった。いきなり海外に行ってバイオテロに遭った人々を助けに行くなんて言うからさ…』

「気持ちは分かるわよ」

『元気で何よりだ。突然電話して悪かっ…』

 

ドンッ‼︎ドンッ‼︎

 

海翔の声を遮ったのは2発の銃声だった。

玲奈はすぐに電話を切り、その場に向かおうとする。空港入り口から中に入るのだが、もう人が逃げ惑っていて前に進むのは大変で仕方なかった。

漸く薺と会った場所にまで着いたのだが、そこで空港警察に止められて奥に進ませてくれなかった。玲奈の視界には既に薺と律代が写っているのに…だ。玲奈は警察官を突き飛ばして無理矢理行こうとするのだが、多くの警察官に取り押さえられてはいくら玲奈でも無理だった。

 

「薺ぁ‼︎律代ぉ‼︎」

 

いつもの何倍の大声で叫んだが、その声は空からこっちに向かってくる飛行機の轟音で消された。

飛行機はそのままこの空港のロビーに突っ込んで、数多くの人とアンデッドを()いてロビーの中程にまで進んだ。

墜落した飛行機の陰に隠れた薺たちを助けに行きたかった玲奈だが、取り押さえられた玲奈はまた抵抗してしまったのがダメだったのか、遂に手錠をかけられてこの場から無理矢理連れて行かれてしまうのだった。

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