戦極凌馬の短編集シリーズ   作:ロボ戦極凌馬

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短編集置き場に移しました。内容は変わらないです!


第02話 赤き蛇vsはぐれ悪魔

 

 

 

 

「それじゃあ、今日の授業はここまでとします。日直の方、号令を」

 

「起立、礼!」

 

『ありがとうございました!』

 

 

 日直の号令と共にクラス全員が担当の先生に礼をする。

 

 

 今日の授業は全て終わり、今から放課後となる。教室を見渡せば、仲の良い子同士が楽しそうに会話していたり、学校指定の鞄に筆記用具と教科書とノートを仕舞って帰宅の準備をする者や、これから部活動や委員会等に参加する者等、それぞれが行動を起こしている。

 

 

 そんな中、教室の一番後ろの窓際の席に座っている俺は、隣の席に座っている元浜の元へ寄る。松田は元浜の真ん前が席なので、椅子に座ったまま体だけをこちらに向けている。

 

 

「さぁ~て、今日もかったるい授業が終わった訳だが、二人はどうするよ?」

 

「俺は部活の助っ人に呼ばれてるから、そっちに行こうと思ってる」

 

「ふむ、俺は……む?」

 

 

 話していると、突然、元浜が言葉を途中で区切り、所持しているタブレットを操作し始めたのだ。数秒すると、元浜が他の生徒達に見えないように俺達だけに見せてきた。

 

 

 俺と松田はタブレットを注視する。画面にはこの町の地図が表示されており、地図のある一点にに赤い印が出来ていた。これの意味を察した俺と松田は、タブレットから元浜の顔に視線を変えた。

 

 

「おぉっと、はぐれか?」

 

「あぁ、その様だ」

 

 

 俺は小声で元浜に話し掛ける。タブレットが表示している赤い印は、はぐれ悪魔が侵入した事を意味している。

 

 すると、今度は松田が元浜に話し掛けた。

 

 

「場所は何処なんだ?」

 

 

 その言葉に、元浜は再びタブレットを操作し始める。そして……

 

 

「町外れにある、廃墟になった工場だな」

 

「ま~た、あそこか」

 

 

 この間も、あの工場に住み着いた奴がいたなと思い出す。はぐれ悪魔は、あぁ言った廃墟や森の中、人があまり居ない場所に住み着く傾向がある。

 

 

「にしても、相変わらず優秀だよな。元浜の『忍者プレイヤー』達ってさ」

 

「うむ、どうする? 忍者プレイヤーに始末する様に指示を出すか?」

 

「いや、俺が行こう」

 

 

 元浜が指示を出そうとするが、敢えて俺が行く事にする。

 

 

「何故だ? 忍者プレイヤーに任せた方が楽だぞ?」

 

「だろうな。勿論、理由はあるさ。お前の持ってるアレの完成には『死のデータ』が必要だろう?」

 

「ふむ、確かにそうだが……」

 

「だろ? それにお前、これから委員会があったよな? お前はそっちに参加しろ、データ集めは俺がやっておく」

 

「……すまない、助かる」

 

 

 そう言って、元浜は懐からある物を二つ取り出して俺に渡す。それは、中央の画面を挟むかの様にAボタンとBボタンが配置し、Aボタン側に二つの銃口、Bボタン側にチェーンソーの刃の様な物が付いた紫色のパッド型のゲーム機と、グリップガードとラベルが貼られた白いゲームカセットであった。

 

 

  それらを受け取った俺は、瞬時に懐に仕舞う。

 

 

「んじゃ、行ってくるわ。あぁ、念の為に忍者プレイヤー達に指示を送ってくれ。俺が着くまでに奴が工場から出ようとしたら殺して良いってよ」

 

「分かった」

 

「頑張れよ~」

 

 

 二人に見送られながら、俺は教室を後にした。

 

 

 

 

 

 

「この辺で良いか……」

 

 

 学校を出た後、人気の無い場所に移動した俺は、制服のポケットからスマホを取り出す。ただし、取り出したスマホは一般的な物とは少し違った。スマホにしては妙にゴツく、裏側には何かを装填出来るスロットと車輪の意匠がある。俺が開発したスマートフォン型ガジェット────『ビルドフォン』である。

 

 

 更に、ポケットから縁が黒でキャップのある『フルボトル』と呼ばれる小さなボトルを1本取り出す。取り出したライオンの意匠のある黄色のボトル『ライオンフルボトル』を手首のスナップを活かして数回振る。振った後、『シールディングキャップ』と呼ばれる蓋を正面に回す。ボトルをビルドフォンの『フルボトルスロット』に装填する。

 

 

【BUILD CHANGE!】

 

 

 ビルドフォンから音声が鳴ると、それを空中に投げる。ライオンフルボトルから送られてくる成分により、ビルドフォンは空中で複雑に変形・巨大化し、1台のバイクとなり地面に着地する。ガシャンと音を立てて着地したバイクは、黒をベースにカウル部に歯車が付けられており、後ろには肥大化したライオンフルボトルが固定されている。

 

 

 専用マシン────『マシンビルダー』である。

 

 

 マシンビルダーに跨がり、付属しているヘルメットを被りエンジンを起動させ、目的地である工場に向かって走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 暫くすると、目的地に到着した。バイクから降りて、マシンビルダーを元のビルドフォンに戻してポケットに仕舞う。

 

 

 辺りを軽く見渡すが、人の気配は一切感じない。住宅街から距離があるから当然なんだが。少し歩くと、工場の出入り口らしき門が見えた。門は閉まってはいるがあちこち錆び付いており、見た感じでは門を開けた形跡はない。

 

 

 俺は、その場で軽く地面を蹴ると数m飛び上がり、そのまま門を飛び越えた。工場の敷地内に入ると、目の前に音もなくソレは現れた。

 

 

 現れたのは、全身を紺のメタリックと白をベースにオレンジのアクセントを効かせ、手足にはブレードが付いており、単眼で頭にハチマキを巻いた忍者の格好をした───『忍者プレイヤー』である。

 

 

 この忍者プレイヤーは、元浜の部下みたいな感じだ。忍者プレイヤーは結構な数が居て、駒王町全域に放っている。隠れてたり、侵入したはぐれ悪魔等を発見次第、俺達に報せてくれる役割を持っている。時には、忍者プレイヤー達にはぐれ悪魔の始末も任せている。

 

 

 俺は、出迎えてくれた忍者プレイヤーに話し掛けた。

 

 

「出迎えご苦労さん。奴はまだ中に居るか?」

 

「……」

 

 

 俺の質問に対し、無言で頷く。奴がまだ中に居るなら、さっさと用を済ませるとしよう。

 

 

 懐から二つの物を取り出す。左手には縁が銅色で白いコブラの意匠がある『コブラフルボトル』を、右手には黒をベースにした機械的な銃『トランスチームガン』を持つ。フルボトルを数回振った後にキャップを回し、それをトランスチームガンの銃身下部にある装填スロットにスライドさせる要領で装填する。

 

 

【COBRA!】

 

 

 装填すると、トランスチームガンから低い音声と不気味な待機音が鳴り響く。トランスチームガンを顔の近くにまで持っていき、自身を赤き蛇に変える言葉を告げる。

 

 

「──蒸血」

 

【MIST MATCH!】

 

 

 トランスチームガンを下に向けた瞬間にトリガーを引きながら上に振るう。銃口から灰色の煙が放出し、俺の体を覆う。煙の中で赤銅色の発光が起こると、俺の体が変化していた。

 

 

【CO・CO・COBRA! COBRA!】

 

 

 全身をワインレッドのアンダースーツに身を包み、胸部装甲の中央には青緑の蛇の意匠。首回りにはパイプが二重に巻かれており、パイプの両端が胸部装甲と肩アーマーの間に来ている。両目を覆う蛇を模したバイザーを装着し、バイザーの一部がアンテナとして左頭部に付いていて、ナニカの塔を彷彿させる角の様な物が頭部から生えている。

 

 

【FIRE!】

 

 

 煙が晴れると、頭部の角とパイプの両端から白煙と赤と緑の花火が勢い良く噴出した。

 

 

 赤き蛇─────“ブラッドスターク” へと姿を変える。

 

 

『んんッ! さぁ~て、お仕事開始だ』

 

 

 ボイスチェンジャー機能で四、五十代のダンディな声に変えた俺は、はぐれ悪魔の気配を辿って歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 工場の敷地内にある開放的な倉庫に、はぐれ悪魔は居た。大きな鉤爪の様な足に、上半身が裸の悪魔である。

 

 昼寝をしていたはぐれ悪魔は、ふと、目を覚ます。何か気配を感じたのようで、眼を開けて顔を正面に向けると───

 

 

 

 

 

 ──────足が迫っていた。

 

 

 

 

 

『ヨイショォオオオオオッ!!』

 

「ぐわぁああああああああああッ!?」

 

 

 迫っていた足、ブラッドスタークの飛び蹴りがはぐれ悪魔の顔面に炸裂した。突然の攻撃にはぐれ悪魔は反応する事が出来ず、それを諸に喰らってしまい、倉庫の奥まで吹き飛んでしまう。

 

 

『ビンゴォ! 顔面ストライクだな。今のは中々良い蹴りだったと思うんだが……お前さんはどう思う?』

 

「きっ、貴様ぁああああ……!!」

 

 

 着地したスタークは、そのダンディな声で愉快そうにはぐれ悪魔に話し掛ける。逆にはぐれ悪魔はスタークの話し方が気に入らないらしく、怒りで歪ませた顔に片手を置きながら睨み付ける。

 

 

 そんな、機嫌が悪いはぐれ悪魔にスタークは更に言葉を掛ける。

 

 

『悪い悪い。丁度、俺の視界に昼寝してるマヌケが入ったもんでなぁ。良い的になると思って、つい蹴り込んじまった』

 

 

 謝る所か、余計火に油を注ぐという、とんでもない事を仕出かし始めた。これには、はぐれ悪魔も我慢の限界であった。

 

 

「貴様、どうやら死にたいらしいなぁ!」

 

『ホォ~、で? どうする?』

 

「お望み通り、殺してやるよぉおおおおおおッ!!!」

 

 

 はぐれ悪魔は戦闘体勢に入ると、その巨体からは想像出来ないスピードでスタークに接近し、その豪腕な右腕を振り抜いた。

 

 

 だが……

 

 

 

「なに!?」

 

 

 振り抜かれた右腕をスタークは片手で止めて見せた。そんな馬鹿な、と内心思いながら今度は左腕も使って何度も何度も攻撃するも、結果は変わらない。スタークは全ての攻撃を止め、時には弾いて防いでいた。

 

 

 ワンパターンな攻撃に飽きてきたのか、スタークは攻撃を防ぎつつ、戦闘中にも関わらず欠伸をする始末だ。

 

 

『おいおい、お前の足は飾りか? 腕だけで俺を倒せるとでも思ってるのか?』

 

 

 腕だけで、足を全く使わないはぐれ悪魔に問い掛ける。唯でさえ、攻撃が当たらない事でイライラしているはぐれ悪魔にとって、スタークの発言一つ一つが余計イライラを増長させる。

 

 

「うるせぇえええええッ!! いい加減くたばりやがれぇ!」

 

 

 大声を上げながら、巨大な鉤爪の足を勢い良く振り上げる。足を振り上げた瞬間、スタークはまるで蛇のような滑らかなスライディングではぐれ悪魔の下をすり抜けて背後に回った。

 

 

 何処からか赤いバルブの付いた片刃の剣『スチームブレード』を取り出したスタークは、はぐれ悪魔の後ろ足に向けてスチームブレードを横に一閃。切れ味が良いのか、足を難なくスパァッ! と切断した。

 

 

 更にもう1本、後の足を切断したことではぐれ悪魔はバランスを保てなくなり、倒れてしまう。何とかして前足だけで立ち上がろうとするが、はぐれ悪魔の頭上を飛び越えて背後から正面に移動したスタークによって前足も切断されてしまい、 立つことが出来なくなってしまった。

 

 

『所詮、図体がデカいだけの雑魚か……』

 

 

 右手のスチームブレードを弄びながら、あまりの呆気なさに落胆するスターク。スチームブレードを仕舞う代わりにトランスチームガンを右手に装備すると、変身に用いたコブラフルボトルを取り出して数回振るう。振ったボトルをスチームガンのスロットに装填した。

 

 

【COBRA!】

 

 

 スチームガンから音声が鳴ると同時に、銃口にエネルギーが充填し始める。

 

 

 スタークがこれから行うであろう事を察したはぐれ悪魔は、その醜い顔を恐怖に歪ませる。

 

 

「ま、待ってくれ!? いいい今すぐこの街を出ていく! だから、命だけは!?」

 

『足が無いのにどうやって移動するんだ?』

 

 

 そう言いながら、スチームガンの銃口をはぐれ悪魔の頭に照準を合わせると、スタークは左手をパーにした状態で腕を軽く上げ……

 

 

『Ciao!』

 

【STEAM BREAK! COBRA!】

 

 

 そう告げると、スチームガンのトリガーを引いた。スチームガンから放たれた紫色のエネルギー弾がはぐれ悪魔の頭部を吹き飛ばしたのだ。断末魔を上げることなく死亡したはぐれ悪魔。頭部があった部分からは噴水の如く出血している。

 

 

 スタークはスチームガンを仕舞い、懐から別の物を取り出す。

 

 

『さて、死のデータを回収するとするか』

 

 

 取り出したのは、元浜から預かった紫色のパッド型ゲーム機『ガシャコンバグヴァイザー』と、『DANGEROUS ZOMBIE』というラベルが貼られた白いゲームカセット『デンジャラスゾンビガシャット』の二つだった。

 

 

【ガシャット!】

 

 

 スタークは、持っていたガシャットをバグヴァイザーにセットして銃口をはぐれ悪魔の死体に向けると、バグヴァイザーのAボタンを押す。

 

 

 すると、セットしたガシャット内に蓄積していた『死のデータ』を死体に散布する。黒紫色の粒子が死体全体に行き渡ると、死体が黒紫色の粒子に分解された。

 

 

 それを確認したスタークは、粒子に向けてバグヴァイザーのBボタンを押した。粒子はバグヴァイザーの銃口に吸い込まれ、セットしたガシャットに蓄積されていく。

 

 

『データの回収完了。これでアイツも喜ぶだろ』

 

 

 満足そうにしながらバグヴァイザーを懐に戻すと、スタークの後ろに数人の忍者プレイヤーが音もなく現れた。

 

 

『んじゃ、後はよろしく頼むぜ』

 

 

 スタークの言葉に頷く忍者プレイヤー達。彼等はスターク達が戦闘した後、破損した壁や飛び散った血などを修復・掃除する役割も持っている。

 

 

 スタークは一番近くに居た忍者プレイヤーの肩をポンと叩くと、スチームガンを取り出して横に振るう。灰色の煙が彼を包み込むと、その場から離脱したのだった。

 

 

 

 

 




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